ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第49話 A帯のガチマッチ

 あるリゾート地のものが再現されたゴージャスな匂いがするホテル。実際にこの世界のどこかにある場所が再現されているステージ達はどこでも、最初の1試合目のバトル開始時にリスポンに立つとワープでもしたのかと思う。

 

 旅行に行った時、ホテルに着いた時が1番興奮するようにユウキはホテルニューオートロを見て上がる口角を止められなかった。テラコッタタイルも植えられた南国風の植物も心を躍らせる。今からバトルが始まるのでなければもっと景色を楽しみたい。

 

 しかし……集中して見据える先はステージの中央にあるヤグラ。改めて見ると無機質なキューブに網と棒が付いたヘンテコな乗り物。このバトルではあのオブジェクトにより上手く関わったチームが勝利する。

 

 ガチエリアの次に古い言わずと知れたガチヤグラというルールは、乗ることで進むヤグラを相手陣地に進め合うバトル。関門を中心に要所での攻防が熱く、攻め時や守り時の見極めも大事。立ち回りはヤグラに絶対乗るマンでも絶対乗らないマンでもダメだ。

 

 ユウキはバトル開始と同時にヤグラに向かって一直線に進んだ。まずは相手の出方を見ながらヤグラ周りでの最初の攻防に挑もうとする。そしてそれは隣のフウラも同じだった。

 

 高台から下りてプールを渡る金網に立った時にユウキはボムを投げるか迷ったが、そのまま右に抜けた。ゲームなら少し後ろから見下ろしているので相手が見えるが、ヤグラが邪魔で相手チームがよく見えなかったからだ。

 

 しかし、フウラは迷うことなくボムを投げた。わかばのインクタンクを活かして2つ連続で。

 

 そのボムの軌道を進みながら追ったユウキはその完璧な着地点に驚いた。相手チームの先頭のタコをちょうど挟み込み……後ろにいたイカも前に行くか後ろに行くか迷ったようでデスした……。

 

 おそらくは相手を見ずに投げた決め打ち。腕が立つ者にとっては初動ではよくやる行動ではあるけれど、ボム2つをヤグラ越しにあんなに完ぺきに投げ分けるなんて。緊張を心配していたけれどやっぱりこの子は……。

 

「カジキっ。詰めよう」

 

 ステージの左から進んでいたカジキに声を出す。初動でこんなに良い2キルが取れたなら一気に押すべき。

 

「私ヤグラ乗るね」

 

 アユ子も中央に入ってきて、前に出たユウキとカジキは上手く相手の残り2人を退かせながらその内の1人をキルした。

 

 完璧と言える初動。ヤグラとカウントが進み始める。

 

「ナイス!」

 

 ユウキチームの4人は声を合わせていった。

 

 バトルは当然、仲のいい人と一緒のチームでやるほうが楽しい。知らない人とやるよりも何倍も。仲間の為に活躍したいと思うし、ナイスや誰がヤグラに乗るだとかを気兼ねなく言えるので連携も取りやすい。

 

 初動を制してヤグラを進めていくユウキチームに復活した敵が連携して止めに来るタイミングでフウラからアーマーが付与された。誰が指示せずともベストタイミングだった。

 

 そのまま各々が己の力を発揮して、スペシャルも上手く使いストレートのノックアウトでチームでの初戦を勝利する。ヤグラやホコは初動で圧勝するとそのままゲームが決まってしまったりするものだ。

 

「フウラちゃん聞いてた通り凄く上手だね。初動のボム超ナイスだった」

 

「本当ですか。ありがとうございます」

 

「うん。私チャージャーで倒す相手がいなかったもん」

 

 休憩を挟みながら2試合目、3試合目と順調に危なげなく勝利を収めていった。続く試合でもギリギリの勝ちはあれど負けることはなく勝ち星ばかりを増やしていく。

 

 フウラの緊張を心配しながらも自分自身も初めてのA帯ガチマッチということで、抱えていた緊張もほぐれた7試合目の後の休憩時間だった。ステージと待機エリアを繋ぐ廊下で1人のタコボーイがカジキに話しかけた。

 

「ようカジキ。ここに4人でいるってことはお前もチーム組んだのか」

 

「おう。久しぶりだな。俺もチーム組んで、今日が初めてのガチマッチ。なんならチーム組んだのも今さっき」

 

「マジかよ。ってことは今A-か。それで調子はどうなんだ?」

 

「今んとこ全勝だよ。そっちは?」

 

「こっちも全勝。……次の試合俺たちとだぜ」

 

「そうなんだ。楽しみにしとく」

 

「こっちはS目前だから。お手柔らかに」

 

 カジキより少し背が低いボーイはカジキの肩を軽く叩いて去っていった。あれが誰かは知らないが、どうやらカジキと仲が良くはないみたいだった。ユウキはそんな風に見えた。笑って話してはいたが自然な笑いじゃなくて取り繕っている感じ。

 

「さっきの誰?」

 

「ああ、何と言うか。俺の昔からの知り合いってところか」

 

「私も初めて見たなあんな子」

 

「あいつはB帯の頃からチーム組んでるから。顔合わせてたのはアユ子と仲良くなる前かな。何かにつけて俺に絡んできてたんだよな何故か。あいつもA帯にきてたのか」

 

「次の試合の相手だって言ってたよね。強いの?」

 

「まあ随分前だけどC帯で戦ってた時は普通にうまかったよ。俺もライバルの1人だと認識してたし。少なくともチームとしての熟練度ならあっちが上なんじゃね。たしか1年以上チームでやってるし」

 

「強敵ですか……私……」

 

 緊張がほぐれていたように見えたフウラが強いと聞いて再び緊張モードに入った。この子はバトル中とそれ以外では頼もしさがまるで違う。

 

「いい機会だと思おうぜ。あっちがS目前ならそれに勝てば俺達も既にSあがれる実力あるってことだし。勝って自信にしよう」

 

「うん。そうだね」

 

 ユウキもそう思っていた。今日1番の強敵なら今日1番の力でぶつかろう。

 

「今んとこの調子ならたぶん俺たちが勝てるはず――」

 

 そのバトルのステージは再びホテルニューオートロだった。1年以上一緒にやっているチームの実力はいかほどかと集中して臨んだバトルは思ったよりも余裕を持ってユウキチーム優勢で進んだ。

 

 円陣を組んでからリスポン地点に入り、大会に挑むような雰囲気を漂わせていたユウキチームはユウキの目から見てそれぞれ今までの試合で1番いい動きだった。ユウキ自身も昔の記憶からオートロヤグラの動きを思い出して、自分にとって理想の立ち回りを最大限の頭の回転で表現した。

 

 その結果、最初から最後までユウキチームが攻めるような形になった。相手もさすがにノックアウトは防いできたけれどヤグラを敵陣へ進める余力は無かった。

 

 卓越した個の力は時に鍛えられた一枚岩を貫く……。

 

 ユウキの判断力、アユ子の制圧力、カジキの対面力、フウラの支援力。どの競技でもそうだが本当に優れたプレイヤーはその場で集まった人とでも力を発揮できる。

 

 カジキのライバルチームに勝利したユウキ達は自分達の可能性とプロへの道が確かに見えた。

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