ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
スシコラのトリガーを引いて真っ直ぐにインクを飛ばし――作ったオレンジ色の道をイカの姿になることで泳ぐ――。
バトルの基本的な動作は昨日アユ子に一通り教えてもらった。しかし、まだ意識すればできるようになっただけで、「インクを飛ばす」「イカになって泳ぐ」「ヒトに戻る」と、一つ一つの動きをするのに一瞬止まる必要がある。
インクの中を泳ぐのはまるでゼリーの中を泳いでるような感覚がした。水よりも重くて濃いので体にまとわりついてくる。けれど、不思議とスイスイ進める。ゲソになった自分の足にも違和感は無くて軽くバタ足をするだけで進行方向に引っ張られていると錯覚するほど。
よし……動けてる……えっとボムを投げるには……。
右手首に付けている小さな液晶が付いた黒色のリストバンド――これの詳しい仕組みは分からないが、一瞬でボムを取り出したりスペシャルウェポンを発動したり、やられたときにリスポーン地点に戻ることまで、物理的にありえないゲームチックな部分を纏めて可能にする優れものだ!
腕を早く短く振ることでスプラッシュボムを取り出し、中央の高台に向かって投げ込む。だいたいユウキの狙い通りに投げられたボムは高台の上でオレンジ色にはじけた。それを見たユウキは自分の胸をそっと撫でて深く息を吐く。
「ユウキ君!楽しんでいこうね!」
「……うん!」
アユ子の隣から真っ直ぐ走り出したユウキは、高台の裏に回り込み壁に目を向ける。青色のインクに飛沫が見えるとすぐに攻撃を始めた。
「何っ」
1人の敵がデスして破裂する様子を見届けても射撃を続け、もう敵がいないか確認しつつ壁を塗り高台の上へ。そこからは敵陣から右側へ伸びる青いインクの道があり壁で止まっているのが見えた。
すぐにボムを取り出し青いインクの先へ投げると、さらにその後ろへ射撃する――。潜伏していたのは、ぽっちゃり系タコボーイのゲソ太郎。
「バレたかっ――お前は……」
ローラーを転がしてバルーンの後ろに身を隠そうとするゲソ太郎の体は自分が飛ばしたインクまみれ、おそらく追い打ちして後1発当てればという状態――けど……ジャンプして下りるか?この高さを?
やるしかない。圧倒的に有利な場面だ。
ユウキは高台から飛び降り、空中で狙いを定めてスシコラのトリガーを引く。狙うはバルーンの上、ローラーを持つゲソ太郎には近づかず、曲射で倒す。
当たってくれ――。
バラバラに飛んだインクの弾だったが運よく当たってくれた。それを確認したユウキはすぐに、イカ状態になりインクの中に飛び込む。
やった2キル目……そろそろ正面から誰かカバーを入れに来るかも――
気を抜くことはなく、見る前から敵陣へ向かって腕を振り上げ撃ち出した弾は、泳いで迫ってきていた敵のイカガールが持つ赤いN-ZAP89よりも早く、敵をインクに染める。
スプラの世界に転生した男、ユウキの初戦初動はA帯3人をキルで幕を開けた……。
――こ、怖えよ。
初動を制したユウキは落ち着くために一旦自陣に戻って歩きながら塗り広げていた。カラフルなデザインをしたスプラシューターコラボを握る手は小刻みに震えている。自分の手足を使って実際に撃ち合うのはゲームと違って怖かった。三人称と違って視野は狭いし、インクとはいえ弾を撃ち合うのは緊張する――
けど、すごく楽しい!
「ナイス!ユウキ君!」
「お前本当に初心者かよっ」
ユウキはその後も丁寧に立ち回った。決して2対1になりそうな場所には近づかず、逆に2対1で倒せる場所を探した。
「何でここにいるってバレたの?」
敵がいそうな場所にはボムを投げて、撃ち合う時も敵の少し後ろを意識してボムを投げた。余裕があるときは動きやすいようにしっかり高台の壁を塗っておく。
――その立ち回りの結果ユウキチーム有利で試合が続いていたが、残り時間1分を切ったところで試合の流れが変わった。ユウキ以外の味方3人がステージのどこかでデスして、瞬間的に1対4という状況が生まれてしまった。