ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
11月の終わり。イカスツリーを目の前に見上げる空は雲一つない晴天だった。前にいた世界では随分寒くなってくる季節のはずだが、この世界のイカスツリーを中心とした広い範囲は暖かい気候なようで……それほど寒くはない。
今日くらい晴れていたら上着がいらないくらいだった。クラゲや小さなイカ達は薄着で広場を走り回っている。
オシャレが好きなイカやタコ達は季節を気にしないで好きな服を着ていた。もっと言うと見た目も気にしていない感じがする。人からどう見られるかなんて気にしていなくて自分がオシャレだと思った服や髪形がオシャレなのだ。
ユウキはチームを組んだ仲間たちと歩きながら、今日もすれ違うイカやタコ達を眺めていた。夏っぽい服を着ている者もいれば、冬っぽい服を着ている者もいる。そのカラフルさが気持ちを明るくするし、自由な感じが落ち着く。中にはコスプレのように騎士や魔法使いのような恰好をしている奴がいて……ひれおくんの着ぐるみも真顔で立っていた。
そして今日は隣のアユ子もコスプレをしていた。
「やっぱ着ぐるみ着てると暑いなあ」
「何で今日はこんな格好にしたの?」
「気分っ。あとは……フェスの日しか着ないなんてもったいないし」
雪だるまのコスプレをしたアユ子は見るからに暑そうで、歩き方もだれてきていた。
「もう限界。ごめんユウキ君。運んで」
アユ子がイカ状態になってユウキの胸にジャンプした。
暑かったり寒かったりしたらイカ状態になるのが良い対処法だった。イカになればインクがちょうどよく肌を包んでくれて、暑さにも寒さにも快適な体になる。
「やっと着いたね」
「じゃあ今日も張り切っていこうか」
「はい……」
A帯のガチマッチが開催される今日の日に、1週間予定が入りっぱなしだったらしいフウラも時間に遅れずに来た。何やら忙しそうだったので疲れていないか心配だったが今のところは変わりなさそうで良かった。
受付と着替えを終えると、試合が始まるまでチームで作戦会議をする。
「はあ。やっと着ぐるみ脱げたよ。体が軽い軽い」
「今日のルールはガチエリアだけど。皆持つ武器は同じでいい?」
「いいんじゃないか。今の俺たちの編成。バランスは良いと思う。ちょっとシューターが多いけど」
「あの私、同じアーマー武器だったらヒッセンとかダイナモも持てますけど」
フウラが小さく手を挙げる。
「フウラちゃん。ダイナモも使えるの!?こんなにかわいい感じなのに」
アユ子がまたフウラを抱きしめる。
「はい……練習はしてます」
「じゃあ今日は色々試してみるか。ダイナモいいんじゃね。今日のステージだと強そう。俺もプライム以外持ってみよっかな――」
作戦自体は前と同じ各々が最善な動きというもので編成が、カジキがデュアルスイーパー、フウラがダイナモローラーテスラを持つことになって試合は始まった。
合わせて練習はしてなかったけどその日のガチマも結果は上々。次々に勝ちを重ねていった。
カジキはシューターとマニューバーなら大体高いレベルで扱えるのでゴリゴリ頼れる前線で、フウラも相変わらずの時に鋭い安定した立ち回り……それにスプラッシュボムの見たことが無い曲投げ。
特に一際目立って活躍していたのはアユ子だった。チャージャーの腕が覚醒してからのアユ子は毎試合手が付けられないほど暴れていて、1人で試合を終わらせるほどの力を持っていた。
母親の正確無比なチャージャーとも違う、前線に出てガンガン攻めるチャージャーがアユ子のスタイルだった。それが成り立つ腕があって本当に頼もしい……だけど……。
おそらく、時間的に今日最後となる試合でつい考え事をしてしまっていたユウキ。エリアの後ろでカウントを止められなければ勝てるだろうとだらだらエリアを塗っていると静かに裏から回り込んできた敵にキルされる。
「ごめん……あの時敵に気づけなかった」
「どんまいどんまいユウキ君」
「ああ。その1回だけだ。気にすんな」
結局その試合は相手に逆転勝ちを許してしまった。トータルの戦績は9勝3敗で高い勝率だったが、ユウキにとっては後味の悪い最後となった。
「次の予定はどうする?フウラちゃんは今週も忙しいの?」
「すみません。私言いづらいんですけど平日は忙しくて、また来週にしてほしいんです」
「そうなんだ。じゃあ俺たちは毎週の週末にガチマ潜っていく感じにするか。そういうチームって多いし」
帰り道の廊下での話にユウキはぼんやりしていた。気持ちよく勝ったはずなのに煮え切らない気持ちを抱えていた。
「大変なんだねフウラちゃん。今度ゆっくりできるときに色々聞かせてよ。なんなら今からでも私はいいよ……」
楽しそうに歩いていくアユ子とフウラを見て、ユウキは思わず足を止めた。
もっとバトルがしたかった。ガチマッチ十数戦だけじゃ体を動かしたりない。疲労感はあるけどまだまだ足りなかった。自分はもっと……。
「どうしたんだユウキ?」
それを見てカジキも足を止めた。
「……いや、なんか体を動かしたりなくて」
「まだガチマしたいってこと?俺もやりたいけど、まあ開催されてる時しかできないし仕方ねえよ」
「……えっと、違うんだ。何というか、ガチマじゃなくてもいいから体を動かしたいっていうか」
自分自身でも上手くまとまっていない心のモヤモヤをどこまで口に出していいか迷う。
「練習したいってことか?」
「そうだけど……それとも違う……すまん変なこと言って」
「チームは好調だし無理するのはダメだぜ。帰って家の試し撃ち場で軽く体動かせばいいんじゃね」
「うーんそれでいいんだけどそれじゃダメなんだよな…………俺さ……もっと強くなりたいんだ」
少し恥ずかしい言葉を思い切って口にする。廊下にカジキと2人だけで良かった。
「そっか……。じゃあ、俺と一緒にサーモンラン行くか?」
「え、サーモンラン?」
カジキから出た言葉にユウキは何でそうなったと思った。