ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第55話 危険度1000%

 船の急発進に体がついて行かなくて、船床に顔をぶつけそうになるほど引っ張られる。かろうじてユウキは手をついて、鼻がつぶれるのを防いだ。

 

「おい!急発進すんなよ!いつも言ってんだろ!」

 

 同じように急発進に揺られたカジキから舵を取るタコガールに怒声が放たれる。

 

「いつもそうなんだから構えときなよ。どんくさいねえ」

 

「船に乗ってきて数秒でこんな発進されたら構える時間もないっての」

 

「色男がぎゃあぎゃあ言ってんじゃないよ。これ以上振り回されたくなければしっかり捕まっときな」

 

 エンジン音に負けじと大声を出す2人のやり取りが船内に響く。きっとこの船ではいつもの光景なのだろう。バイトと社員という関係ながらタメ語で随分親しく見える。

 

「ったく。どんだけ自己中だよ」

 

 カジキが運転室に背中を預けて座る。そうするかどこかに捕まっていなければ、振り落とされてしまいそうだからだ。ユウキはもうその隣のポジションに来ていた。

 

 最後に船に乗ってきたタコガールはバイトのキャップをつばを反対向きに被るエロ被りで頬には星形のフェイスペイントといういかにもファンキーな容姿をしていた。会ってまだ1分と経たないが、性格も見た目のままだということが分かる。

 

「この人が社員さんだよね」

 

 隣に座ったカジキに一応確認する。

 

「ああ。とんでもない人だけどな」

 

「俺のことって知ってんの?」

 

「知らないと思う。あの人乗員リストとか見ないタイプだし」

 

「ちょっと挨拶してくる」

 

 ユウキはそっと腰を浮かして、ハイハイの態勢で船の後方にある運転室の入り口に向かう。後ろからの風で自分のキャップが飛んで行ってしまいそうで頭を抑えた。

 

 運転室の裏側まで来たユウキの視界に広がったのはタコガールの素晴らしい絶対領域だった。

 

 さっきはちらりとしか見えていなかったが、社員タコガールは制服もかなりラフな感じになっている。というか、水着にエプロンと長靴を付けているだけ。膝上まであるタイプの競泳水着と長靴との間にはいわゆる絶対領域のようなものが作られていた。

 

「お?なんだお前。新入りか?」

 

「は、はい。そうです」

 

 社員タコガールは後ろのユウキに気づいて振り向く。

 

「私はコダマ。この船の船長だ。お前は?」

 

「ユウキです。初めてなんですけどよろしくお願いします」

 

「初めて!?それってユウキお前サーモンラン自体が初めてって話か?」

 

 コダマと名乗った社員タコガールはユウキが初心者だと言うと驚いた。はっきりとした目がよりぱっちりと開く。

 

「はい。そうですけど」

 

「あっはは。サーモンラン初めてで私の船に乗るとは面白い奴もいたもんだ。カジキの奴の連れか」

 

「はい。チームメイトです」

 

「とんだ命知らずだね……大歓迎。よろしくね」

 

 ユウキはカジキの隣に戻った。船はもう港が見えないほどに海を進んでいて、小型のボロ船から大海原が広がって見える。太陽の光を反射する水面が眩しい。

 

 そして、今更不安になってきたユウキはカジキに言った。

 

「なあやっぱり1回サーモンランについて1から教えてくれないか。結局俺たちは今から何するんだ」

 

「急に自信なくなったな。オオモノシャケの倒し方は知ってるのに、何をするかは知らねえのかよ」

 

「わりぃ」

 

「変な奴だな。1からって初めから全部?」

 

「うん」

 

 そう言うと、カジキはまず自分の顎をつまんで考え込む仕草をした。

 

「そうだな。まあまず簡単に言うとシャケ漁のことだな。正式名称はサケの魚の方のサケ。でもサケを取ってるとシャケ達が邪魔してくるから、それをバイトの俺たちが追っ払う」

 

「サケとシャケ?」

 

「そうサケが魚でシャケが魚人の。それは分かるだろ。シャケ達にとってもサケは食いもんだから取ろうとしたら襲ってくんの。サケとシャケの住処は近いからどうしても衝突は避けられない」

 

「へー」

 

 ユウキはなんとなく自分の頭の中で情報を補完しながら話を聞いた。この世界ではサケは川には行かずに海だけで生活するんだろうとか。

 

「シャケ達がいると船だけじゃ漁になんないから俺達もインクの武器で応戦する。陸地に降りてな。その時に金イクラっていうのでシャケ達の注意を引くんだ。金イクラに集まってくる凶暴なシャケ達と俺たちはひたすら戦うことになる」

 

「戦うってさ……。その、戦争というか。負けたらどうなんの?」

 

「シャケ達に勝ち誇られて笑われるな。酷いときは浮き輪にされたまま日が落ちるまで返してくれない」

 

 良かった。やっぱり暖かい世界だ。そうユウキは安堵して胸に手を置いた。

 

「そこなんだよな。結局シャケ達もバトルが大好きで戦いだけなんだよ。サケ漁の邪魔っていうのは建前で、サケは互いの種族が取り合っても取り切れないほどいるし、シャケ達が漁の邪魔をバトルの口実にしたいってのは暗黙の了解で俺達も分かってる」

 

「そうなんだ」

 

「要はシャケ達とバトルして報酬にサケを取らせてもらおうってバイトだな。サーモンランは」

 

 知っているサーモンランとは随分違っている。けれどカジキの説明で大体のことは把握できた気がする。

 

 まあとりあえず自分はひたすらシャケと戦うっていうのが分かっておけばいいのだろう。金イクラを集めるとかが無くて、シャケやオオモノシャケと戦い続けるサーモンランがおそらくこの世界のそれだ。

 

「シャケ達は俺たちと同じでバトルが大好きで、それにバトルに真剣だからな。気を抜くと一生浮き輪だし、多少の怪我もするぜ」

 

 大丈夫だとユウキは思った。社員タコガールのコダマが命知らずなんて言うし、謎の爺さんのニシキが怖い顔するから想像よりヤバいのかと焦った。

 

 そのニシキはというと、全速で進む船の前方で腕を組んで仁王立ちしていた。

 

 一緒に向かうメンバーはかなりヤバいのは確かだ。キャラが濃すぎる。

 

「それに俺たちの船が行くところなんかは体力的に死ぬってレベルかもな」

 

「え」

 

「強くなりたいって言われて俺が誘ったからにはぶっちゃけかなりきついぜ。サケの漁場はサケの住処の奥に行くほどシャケ達の住処も近くて数もレベルも上がってくる。この船が行くのは最奥地。待つシャケ達も強者を求めてる」

 

「なるほど……」

 

「そのシャケ達の数は平均的な漁場の実に“10倍”だ」

 

 カジキがそう言うと、前方の海からシャケが一匹飛び出してきて船に向かって襲い掛かってきた。

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