ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第58話 2番目のふるさと

「うん。マジ」

 

「あはは……そっか。じょ、上等じゃねえか……」

 

 サーモンランクリアした時あるあるのみんなでビチビチしたり残ったスペシャル

をぶっ放すような元気がユウキには無くて、ただ倒れていた。そこに次からはさらにきつくするという言葉を言われたものだから、もう笑うしかなかった。

 

 けれど、とりあえず今のユウキは解放感を抱いていた。体の為になるであろう気持ちの良い疲労を感じる。だんだん体が楽になってきて、見上げた空が来た時よりも晴れて見えた。

 

 ユウキから見えるその空の半分を競泳水着姿のタコガールが覆う。

 

「お疲れさん。ナイスバトルだったぜお前ら」

 

 もう完全に制服を脱いでしまっているコダマはサーモンラン中に周りの海で漁をしていた。ユウキはちらりとその様子が見えた場面があったが弓のような釣り竿みたいなものを操っていた。

 

「いやあ。今日も大漁だったぜ」

 

 コダマの手にはその弓みたいな釣り竿と網に入った数匹の魚のほうのサケがあった。

 

「あの、そのサケってもらえたりするんですか?」

 

「ああ。これはお前の初サーモンラン祝いだ。コダマさんに礼を言ってありがたく頂きな」

 

「ありがとうございます!――」

 

 いつの間にかよぼよぼの老人に戻っていたニシキとも一緒に港へと帰る。船の中には捕まえられたサケが山のようにあった。ユウキ達乗組員は足の踏み場もないそこでぎゅうぎゅう詰めの状態で帰った。

 

 制服を脱いだ時にはより大きな解放感を覚えた。コダマの制服の着こなし方には驚いていたが、確かに脱げるなら脱いだほうが動きやすいと思う。

 

 コダマからクーラーボックスごともらったサケを肩にかけると、受付で本日の仕事を報告して、初サーモンランはそこで本当に終了となった。

 

 クマサン商会から出て、カジキと肩を並べて歩くユウキは軽快な足取りだった。きつい運動をした後も少し休めば意外と元気になるもの……そういう理由もあるけれど今回は違っていた。

 

 頭が疲れている場合ではないと言っている。気分が疲れを忘れさせていた。何しろ今日の楽しみはまだまだこれからだ。

 

 向かう先はハイカラスクエア。来るときは通るだけだったが、これからカジキと軽く遊んで帰ることになっている。

 

「あっちがボウリングで、こっちがゲーセン。んでここもゲーセン。どこ行きたい?」

 

「色々あるな。あとゲーセン多いな」

 

「ここらはそんなんばっかだな。遊ぶとこには困んない。もちろんナワバリできるとこもあるけど、今日はもうバトルはいいっしょ」

 

 ハイカラシティよりもごちゃごちゃしていて、歩くイカは若者が多い。学ランやブレザー姿の学生らしきイカ達も多い。ゲーセンの前にあるプリクラではギャルっぽいイカ達が身を寄せてはしゃいでいた。

 

「できれば全部細かく見ていきたいくらいなんだけど、ここらの事はよく分かんないしカジキに任せるよ」

 

「じゃあ俺がよく行ってるゲーセンにすっか。最近は行ってないんだけど」

 

「うん。でも後でいいから1つだけ行きたいところがある」

 

「どこ?」

 

「ロブのフードワゴン。名前はなんて言ったっけ。でもあるだろ。来るときに見たんだ」

 

 ゲーム内ではギア厳選でお世話になったその店。ユウキはそこに行きたかった。店でドリンクを飲むと特定のギアが付きやすくなるという謎システムで、飲食する場面も画面には映らなかったが、本来は味を楽しむ屋台だ。

 

 ユウキは実際食べるとどんなものなのか気になっていた。

 

「ロブの店なら道なりにあるし、先に行くか」

 

「そうなん。じゃあ行こうぜ」

 

「食べるとこなら色々あるけど何でロブの店?」

 

「ハイカラスクエアと言えばそこでしょやっぱ。ハイカラスクエアの飲食店と言えばそこ以外ねえよ」

 

「よく分かんないけど見所あるな。俺もあそこは大好きだ」

 

 ってなわけでやってきましたロブの店。近づくと共に待ちきれなくて徐々に歩くスピードを上げたユウキは車内で出迎えた店主を見上げる。

 

「いらっしゃい。どれでアゲてく?」

 

「……おお」

 

「メニューに書いてるものなら何でもあるよ。今日のおすすめはこれ」

 

「……おお」

 

 感動で少しの間「……おお」しか言えなくなってしまったユウキの横でカジキが上手いこと注文をしてくれて2人は空いているテーブルに着いた。

 

 ユウキは注文したドリンクが来るのを待っている間も、エビフライのような体を動かして商品を作るロブを眺めていた。

 

「これまた凄いもの食べてるな」

 

 カジキが注文していたのはロブの店名物のテンプラスイーツだった。揚げたエビにホイップクリームがデコレーションされている。ゲーム内でもそんなものがあったがカジキが食べるそれにはチョコレートやら何やら分からないソースがかかっていた。

 

「そうか。俺は昔っからこればっかりだぞ。めちゃくちゃ旨くて大好物だ」

 

「へー」

 

 ドリンクを飲みながらユウキはたぶん不味いと思った。

 

「子供の頃初めて食べた時は旨すぎて感動したな。それからはもうロブの店みたいな味を追求する日々」

 

 カジキの変食はいつの間にか見慣れて当たり前になっていたがそういう背景があったのかとユウキは思った。テンプラスイーツが始まりで、犯人はロブの店か。

 

 屋外のテーブルからは周りの建物に設置された大きなモニターがいくつか見える。そこではおそらく今どこかのスタジアムで繰り広げられているであろうバトルの様子が映し出されていた。

 

 モニターに映るプレイヤーが鋭い動きをする度に観客が湧く。近くのテーブルに座るイカ達もご飯を食べながら視点はそこに向けている者が多かった。

 

 ユウキもストローを加えたまま気づけば集中してそのバトルを見入っていた。やっぱりバトルは見ているだけでも楽しい。どこの誰だか分からないプレイヤーの試合でも一進一退の攻防の末、最後はどちらが勝つのか見届けたくなる。

 

 見入った1つのバトルの勝敗が画面に映るとユウキは視線を対面に戻した。そこでは1つのバトルが終わってもずっとモニターを食い入るように見つめるカジキがいた。食べる手を完全に止めて。そのフォークを握る手はかなり力が入っているように見える。

 

「カジキ……?」

 

「あ、悪りぃ。何か話してた?」




・後書き
中途半端に終わっちゃったので明日か明後日には続き書きます。
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