ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
「いや、別に……すげえバトルだったな」
「ああ」
バトルのレベル的にプロ対プロのものだった。モニターでは試合後のスタジアムで勝ったチームが喜び合っている。その中心にはプライムシューターベッチューを持ったタコボーイがいた。
「そういえばさ。何でカジキはプロプレイヤーになりたいんだ。なんか特別な理由でもあるのか?」
「ああ……まあ……。でも、大した理由じゃねえよ。ただみんなと同じバトルが好きだからってだけかな。プロは皆のあこがれだから」
カジキはユウキから目を逸らして、再びモニターを見ながら言った。どこか形式的な声色だった。
「お前はどうなんだ?プロになったその先に何か目標はあるのか?」
ユウキはアユ子の家の道場の話をした。カジキには初めて話すことだった。道場を復興させたいというアユ子を支えることが自分の夢だと。
それを聞き終わった時にカジキは微笑んでくれた。良い夢だと褒めてくれた。
自分ばかり話していて、カジキの生い立ちやバトルを始めたきっかけなんかも知らなかったユウキはこの際色々聞いてみることにして質問を重ねた。しかし、カジキはあまり話してはくれなかった。
全て一般的で誰でも咄嗟に作れるような返答しか返ってこなかった。
代わりに聞けたのが今日一緒に船に乗った2人の乗組員コダマとニシキについてだった。
コダマはカジキの小さい頃からの知り合いで同じ町の出身だということ。子供の時から開放的な性格で近所ではハチャメチャな悪ガキとして有名だったこと。
あとは、バトルをしたらけっこう強くてA帯以上のレベルはあるということ。昔はガチマに潜っていたらしくて、プロチームの裏方で選手をサポートするトレーナーの仕事をやっていたこともあると聞いた。
そして驚いたのがコダマと最近会っていないぽっちゃりタコボーイのゲソ太郎がいとこであるということだ。別にそこまで驚愕ではないが、ゲソ太郎とコダマに何の共通点も無かったので2人が並ぶ姿が想像できなかった。
ニシキについては言われたことは驚くべきことであったが、どれも心が揺れることは無かった。元プロで現役時代は有名な強者だったとか、昔もっとシャケとの戦いが激しかった時にオオモノシャケの大群を1人で撃退し、長く続いた戦いを1人で終わらせた歴戦の戦士だったとか。
凄いことだけど、今日の動きを見ていたらまあ何かしら凄いことしている爺さんだということは分かっていた。あとのことはよく知らない。カジキがサーモンランを始めた時からいたけど、何であの年でずっとサーモンランをしているかとかはしらないとのことだった。
ロブの店を後にすると、2人は言っていた通りゲーセンに立ち寄った。クレーンゲームやレーシングゲームを軽く遊んだあとはカジキの特技を知れたあるイベントがあった。
話では聞けなかったけれど、遊んでいると分かった。スプラ2のミニゲームで音ゲーとしてあったようなダンスゲーム。店の前にあったそのゲーム機でカジキが踊ると、そこで小さな人だかりができた。
キレッキレの上半身と、何がどうなっているのか分からない無重力のような足捌き。カジキはダンスが鬼のように上手かった。
ユウキも音のハマり方が見ていて気持ちが良くって、曲の終わりで決めポーズを取ったカジキには思わず拍手をしてしまった。
踊り終わった後に他人にダンスで注目されていることに気づいたカジキは頬を赤らめて足早にその場から離れた。それを見てユウキはサーモンランを続けているとカジキの事をもっと知れて、もっと仲良くなれそうだと思った――。
アユ子家に帰宅すると、丁度夕飯の支度を始める時間帯で、ユウキは誇らしげにもらってきたサケを一同に見せた。
アユ子とナマ子お婆さんがそのサケを色んな風に料理して夜は食卓に所狭しとサケが並ぶサケパーティになった。
皆がおいしそうに食べる姿を見て……自分で頑張って取ってきたサケのおいしさを噛みしめて……ユウキはまた明日もサーモンランを頑張ろうと奮い立つ……。
そう、翌日またユウキはサーモンランで最奥地に向かう船に乗っていた。
「おっしゃー!着いたぞー!野郎ども働く時間だー!」
昨日と変わらない船員が乗る船の中に高い声が響く。
ユウキは筋肉痛がビビるほど主張する足で船から陸へ降り立つ。今日もがんばるぞと意気込みながら待機しているシャケ達を見ながら深呼吸していると、後ろから頭に何かを乗せられた。
少しずっしりと重いヘルメットだった。
「今日はこれ被ってやってみ」
ユウキはどんなものなか気になって一旦脱いでみると、そのヘルメットの上には金イクラのケースがあった。
「俺が考えて俺が作った修行法、名付けてヘイト集中シャケ興奮“俺が金イクラだ特訓”だ」