エロゲのヒロインに転生したんだが、もうオレは限界かもしれない。   作:サボテニウム

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第12話

 

 

 

 

 禁止区域をしばらく走っていると、かなり老朽化の進んだショッピングモールが見えてくる。

 

(おっ、あれかな?)

 

 モールの外をぐるりと一周し、入れそうなところがガラスの散らばった正面入り口くらいしかないことを確認すると、オレは散乱したガラスを踏まないようにおそるおそる中に入ることにした。

 

 すると二階のバルコニーから何者かがいきなり──

 

(うおっ! あぶねっ!)

 

 ──日本刀をきりもみ回転にして襲い掛かって来たので、思わず避ける。

 

 ……これが俗に言うエクシア斬りというやつだろうか。初めて見たな。

 

 うしろの柱が絹豆腐のように一刀両断されたのを見て思わず冷や汗がでた。

 

 正面を見る。

 

 そこには、月明かりに照らされ、日本刀を構える10歳前後の年端も行かない女の子が。

 

 いきなり襲ってくることを見るに、オレは招かれざる客ってわけだ。

 

 こうなることも予想の一つにあったので動揺はない。

 

 ……ただ、その相手が女の子ってのがな。

 

 一瞬だけ逡巡するも、

 

「ちっ」

 

 女の子を殺す趣味はないが、襲われた以上は仕方ないとすぐに割り切る。

 

 オレは即座に反撃をしようと超濃度の魔力を体内から放出。

 

 そして、バチバチと妖艶に輝く紫色の雷撃を右手にかざす。

 

(消し飛べ──)

 

 しかし、

 

「ああ、ごめん。同族か」

 

 オレの魔力を見て吸血鬼と悟ったのだろう。

 

 目の前の少女は敵意はないとばかりに刀をしまったので仕方ないのでこちらも雷を止めた。

 

「あなたが入って来た時、あまりにも魔力(マナ)が感じられないから思わず人間かと思った。けど、いまのあなたからは噎せ返るほどの高濃度の魔力を感じる。高位の吸血鬼ほど魔力のアップダウンの制御が上手いって聞くけど……あなた、そうとう強いね」

「あはは、……そりゃどうも」

 

 人間と誤解して襲ってきたわけか。

 とりあえず吸血鬼同士で争う気はなさそうなのでひとまず安心した。

 

 話は通じるみたいなので、オレはこの少女に本題を話すことにした。

 

「あの、今日ここでディアボロスの集会があるって聞いたんだけど……私も参加していいかな? 飛び入り参加で申し訳ないんだけど」

「へえ。うちの集会があるって誰から聞いたの?」

「……し、知り合いの吸血鬼から。ダメ、……かな?」

「ん、私たちディアボロスは来るものを拒まない。特に強いやつは大歓迎だ」

 

 そう言って彼女は初めて白い歯を見せる。

 

 いきなり襲ってきたくせに、こちらが結構強い(真祖なので結構強いどころではないが)のを察知すると、急にフレンドリーになるんだな。吸血鬼らしいっちゃ吸血鬼らしいけどさ。

 

 力に従順すぎやしないか? 君たち。

 

 そんなんじゃ悪い真祖に利用されてポイされちゃうよ? いいの? 

 

 ……ま、その悪い真祖ってオレなんだけどさ。

 

「こっちだよ」

 

 少女は顎でついて来いとばかりにオレにそう言うと、廃モールの中へと案内してくれた。

 

 二人で廃モールを歩く中、こちらに気を遣ってくれたのだろう。

 

「私ロウカ。狼に花って書いてロウカ。あなたは?」 

 

 少女が突然そう自己紹介をしてきたので思わず彼女を二度見してしまった。

 

 ロウカ、という名前のキャラクターをオレはよく知っていたからだ。

 

 たしかロウカは、憤怒の吸血鬼(ヴァンパイアオブジアラストル)の第1章で出てくる小ボス的な存在だったはず。

 

 トウキョウエリアに住む人類が食糧不足問題を解決すべく、生存圏を拡大を目的に実施した『西トウキョウ掃討作戦』において、初陣のアギトが初めて自分の手で討ち取った吸血鬼なんだよな。

 

 原作登場時のランクはC級で、吸血鬼名はルプスレクス。ラテン語で狼の王という意味だ。野良吸血鬼にしてはそこそこ強い部類だったと記憶している。

 

 ここまで聞くと「ふーん。そうなんだ」で終わる話なのだが。

 彼女にまつわる話はここでは終わらない。

 

 新兵にしてC級を倒すという大金星をあげたアギトだったが、なんとこのロウカは、自分の幼い妹たちを守るべくたった一人で討魔師たちと戦い奮闘していたという事実が明るみになる。

 

 そして、泣きながら「妹たちの命だけは取らないでください」と懇願するロウカの処刑を命じられるアギト。アギトは武士の情けで「お前の妹たちは俺がなんとかする」と約束をし、ロウカに「ありがとう」と感謝されながら彼女の首を刎ねるのだが……上官の命令で、彼女の幼い妹吸血鬼たちをも全員処刑しなければならなくなるという中々エグいエピソードなんだよな……。 

 

 なにが『人類に忠誠を示せ、アギト!』だ。

 ふざけんな。

 

 →処刑する

 

 →処刑しない

 

 で、修羅ルートかそうでないルートかに分岐するため。

 ロウカファミリーは小ボスながら作中ではなかなか重要なキャラたちだったりする。

 

 ちなみにどちらを選んでもロウカとその妹たちは死ぬ。

 

(あちゃー……面倒なのと知り合いになっちゃったな)

 

 よくも悪くも印象深い、アギトとプレイヤーの心に深いダメージを負わせたキャラである。

 

「あ、オレ……じゃなかった、私はリーシャ。リーシャ=クーゲルシュタイン。よろしくね」

「うん、よろしく。リーシャ」

 

 そう言ってロウカはオレに手を差し伸べてきたので軽く握り返した。

 

 ぶっちゃけ言うと。

 

 原作で死ぬとわかっている以上、あまり関わりたくない相手なんだよな。

 

 変な情とか湧いたら悲しいしさ。

 

 

 

 

 

 

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