エロゲのヒロインに転生したんだが、もうオレは限界かもしれない。   作:サボテニウム

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第16話

 

 

 

 それからクリスマスまでの一週間。

 

 夜はロウカたちと吸血鬼として過ごし、

 

 昼はアギトたちと人間として過ごすという二重生活をオレは送っていた。

 

「いやー、明日のクリスマス楽しみだなーリーシャ」

 

 アホ面を晒してアギトはそんなことを言っていたが、当のオレは気が気じゃなかった。

 

 それもそのはず。

 

 クリスマスには討魔師側の主力戦力──十三戦鬼(じゅうさんせんき)がくるかもしれない。

 

 もしオレがやつらに第六真祖だとバレたら戦闘は避けられない。

 

 オレも十三戦鬼たちも無事では済まないことは確かだ。

 

 それに、そんなことになったら、せっかく立てているオレのトウキョウ侵攻作戦がすべて水泡に帰してしまう。それだけはなんとしても避けたかった。

 

 ちなみにこのオレは一週間、やつらに対する情報を整理していた。

 

 十三戦鬼でも特に危険なやつらを数名リストアップしていたのだ。

 

 要は敵側の強い順。

 

 クリスマスに来てほしくないやつらリストだ。

 

 1位は鬼龍院旭(きりゅういんあさひ)

 

 トウキョウ政庁のトップで、この国の討魔師協会で一番の権力者だ。

 

 原作ではアギトたちと絡むことはあまりなかったが、物語後半の『ヨコハマ決戦編』にて、第六真祖の軍勢に対して一騎当千の活躍を見せためちゃくちゃやばいやつだという認識。おそらく、オレの軍のナンバー2であるバフォメットを単騎で倒せる可能性があるのはこいつだけだ。人類の中では特筆したチート戦力である。

 

 2位は鬼龍院月夜(きりゅういんげつや)

 

 こいつは鬼龍院旭の異母弟で、アギトやリーシャたちの育ての親となる人物。いまはちょうど20歳くらいか。普段は皮肉屋で、どこか冷めた性格をしているが、仲間たちの危機に対しては、一切ためらわず命をかけて守ろうとする、義理に厚い一面も持ち合わせている。何やら裏で色々暗躍しており、物語後半で禁忌に触れる実験を行っていた様子だったが、憤怒の吸血鬼(ヴァンパイアオブジアラストル)の作中ではそれが何だったのかは最後まで明かされることはなかった。

 

 きっと憤怒の吸血鬼(ヴァンパイアオブジアラストル)Ⅱで明らかになったんだろうな。

 

 ……クソ。オレも続編をプレイしたかったぜ。

 

 3位は百目鬼玄武(どうめきげんぶ)

 

 こいつは前にも言ったが、二刀流だけで吸血鬼を圧倒するという、単純に技量がやべーやつだ。鬼龍院兄弟みたいな一撃であらゆる敵を薙ぎ払うド派手な必殺技はもっていないが、単純にただただ強いので原作リーシャ的にはかなり苦戦した模様。油断していたとはいえ、原作ではこいつに右腕を切り落とされているからな。それを知っているからには、まったく侮れない相手だ。

 

 番外 シスタークロエ。

 

 我らがセントテレジア孤児院の院長を務めるお姉さん。でかいモーニングスターをぶんぶん振り回したり、結界魔術で吸血鬼を足止めしたりと、作中でもかなり多彩な才能を発揮する。設定資料集によると、鬼龍院月夜や百目鬼玄武とは討魔師育成学園(アカデミー)の同期生だったはず。こいつも戦えばかなり厄介な相手には違いないが、そもそも孤児院の院長なのでクリスマスにいることはほぼ確定している。そのため今回のランキングからは除外させてもらった。

 

(こうしてみるとバケモノ揃いだな……)

 

 もちろん、憤怒の吸血鬼(ヴァンパイアオブジアラストル)の世界では、単騎での戦力は蠅の王(ラスボス)であるリーシャが圧倒的に強かったのだが、集団戦は別。……こうしてみると、戦力層はトウキョウ側のほうが圧倒的に厚く見えるな。リーシャ側にも第六真祖眷属の四天王的なやつらはもちろんいるのだが、序列二位のバフォメットは横浜の防衛に。三位のやつはマダガスカル島で人類側の反第六真祖組織たちと交戦中。四位のやつはアルカディア地方(前世のアメリカ東部)で第四真祖の軍勢と小競り合い。五位のやつは帝都ゲルマニアの防衛を任せているため動けないという、なんともしがたい状況なのだ。

 

 しかも、本来ならバフォメットは台湾統治を任せていたのに、それを無理やりヨコハマまで連れてきてしまったので、バフォメットのいなくなった台湾では『国民党 人類解放軍』なる、きな臭い連中がたびたび反乱を起こしているという。つまり、はやくトウキョウ政庁を陥落させてバフォメットを台湾に戻さないといけないという時間制限つき。もうマジで誰か助けてくれ。

 

 この状況を打開するためには、原作のリーシャ以上にオレも戦力を増強するしかあるまい。

 

 原作のリーシャは一人でなんでもこなせてしまうため、かえってそれが仇となった。

 

 彼女は自分ですべて背負い込んでしまって、仲間に頼るということをしなかったので、そこを鬼龍院月夜たちに突かれて蠅の王の正体を掴まれてしまうという失敗を犯すんだよな。

 

 そうだとするのなら、オレがやるべきことは仲間を増やすこと。

 

 ロウカたち野良の吸血鬼を味方につけようと暗躍しているのもそれの一環だったりする。

 

(まあ、状況は芳しくはないが……)

 

 なんとかディアボロスの連中を味方につけられないものだろうか。

 

 あいつらだけでも味方にできたら、だいぶ変わるんだがな。

 

 まあ、それはともかく。

 

 いまのオレがしなければならないことは十三戦鬼たちに尻尾を掴まれないこと。

 

 そのためにもオレは、明日のクリスマスを上手く乗り切らねばならない。

 

 具体的には、吸血鬼たちに親を殺された可哀想な孤児としての役割を演じきる必要がある。

 

 のだが…………。

 

 ──翌日。

 

 ……なんと、あろうことか。

 

 クリスマスにオレが来てほしくないリストの第2位──鬼龍院月夜(きりゅういんげつや)と邂逅してしまう。

 

 心臓がバクバクと音が鳴る。

 

「おい……お前……」

 

(やばい……バレたか!?)

 

 鬼龍院月夜は、朝のお仕事として、

 

 庭で雑草を抜いたり小石拾いをしているオレの手を強引に取ると、

 

「お前……名前は……?」

 

 何の脈絡もなく、突然そんなことを聞いてきたのだった。

 

 

 

 

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