エロゲのヒロインに転生したんだが、もうオレは限界かもしれない。   作:サボテニウム

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第3話

 

 

 

 

 オレとアギトがトウキョウエリアについて1年が過ぎた。

 親を失った子供たちは孤児院へと預けられ、そこでの集団生活を余儀なくされていた。

 

 ヨコハマエリアとは違い、ある程度の食料備蓄や物資の貯えのあったここトウキョウでも、予想以上に避難民が多かったのか食べ物は次第に配給制となった。

 

 一日に与えられる食事は干からびたパンとよくわからない穀物を混ぜて煮込んだスープ。戦時であるため贅沢は言えないのだろうが、ぶっちゃけ言うとすげえまずかった。

 

「また今日もこのスープか……」

 

 げんなりとした表情でスープを口に入れるアギト。

 彼にとってもあまり美味しくないようで、食事の時間はどんよりとした空気が食卓に漂っていた。

 

「アギトこれ嫌い?」

「……ああ。なんか味がごちゃごちゃしてて、何くってるのかわからねえもん」

 

 ちなみにアギトは不平不満を言いつつも食事は残さずしっかり最後まで食べていた。

 いわく、討魔師になるために身体を作らないとだそうだ。

 8歳のガキのくせにしっかりしていると素直に感心した。

 

「これ食ったら掃除か……やだなあ」

「仕事だからしょうがないよ。私たち、タダでここに住まわせてもらってるんだし」

 

 孤児院での生活は、まさに刑務所さながらで家事はほとんど全て自分たちでやらなければならなかった。朝食を食べ終わると、院内にいる最年長の孤児が皆に仕事を割り振り一日が始まる。

 

 掃除、洗濯、料理、建物の修繕……などなど。

 

 日曜日だけは「安息日」として定められているためこれらの仕事はお休みだが、この日に限りシスターたちが読み書き算数の勉強を教えてくれるので皆が競うように勉学に励んでいた。どうやら人は教育を取り上げられると自分から率先して何かを学びたくなるらしい。なんとも皮肉な話だ。

 

「なあリーシャ。きょうも、その、勉強……頼めるか?」

「うん。いいよ」

 

 アギトも勉強をしたがっていたがオレたち年少組の勉強を見るのは後回しにされていたため、とても悔しがっていた。そんなアギトを不憫に思ったオレは、夜になると毎日こっそり同じ布団の中で読み書きを教えてあげていたのだ。

 

 本来ならば敵に塩を送る行為のためあまりよくないかもしれないが、これも原作リーシャの役割だったので、オレは快く快諾した。ストーリーが原作から大きくズレたりしないようにオレはオレの役割をしっかりとこなさなければならないと思ったからだ。

 

 原作知識を活かせる場面が突然なくなったりすると困るからな。

 アギトを始末するのは、もう少し後でいいだろう。

 

 

 

 この日の朝は、朝食を食べるとオレとアギトは汚いぼろ切れを一枚ずつ渡され、大聖堂の掃除を行うグループに入れられた。ここの担当のリーダーは矢原とかいう16歳の少年で、アギトとは特に折り合いが悪かった。

 

 この矢原少年のことをアギトはとても嫌っており、ここの配属になると決まってムスッとした顔になり態度が悪くなる。

 

「おいアギト。なんだよその顔は~。不満でもあるのか?」

「……別に。いいからさっさと始めてくれよ。お互い時間を無駄にしたくないだろ」

「なんだその言い方は! 生意気なんだよ! てめえ!」

 

 矢原がアギトにつかみかかると、咄嗟にオレは二人のあいだに入った。

 

「やめてください。暴力は」

「なんだよリーシャ。お前もアギトの味方するなら容赦しねえぞ?」

「どちらの味方とかじゃないです。そろそろシスターが見回りに来ます。センパイも暴力を振るってるところを見られてまた懺悔室に入れられたくはないでしょう?」

 

 オレがそう言うと慌てた様子で矢原はアギトから手を放す。

 そして、その数十秒後にカツカツと足音を立ててシスタークロエがやってきた。

 

「なにか……もめ事ですか?」

「いえ。特に問題はありません」

「……そうですか。では引き続き、お掃除をお願いしますね」

 

 オレの言葉に小さく会釈をするとシスタークロエはカツカツと別な部屋の見回りに言った。

 金髪碧眼でおっとり巨乳の見た目だが、原作既プレイのオレにはわかっていた。

 

 あいつはやばい。

 

 シスタークロエは修道女などを装っているが、実際には討魔師の中でも選りすぐりのSランク討魔師で、この国に13人いる『十三戦鬼』のうちの一人である。

 

『十三戦鬼』とは過去に一人で(真祖以外の)上級吸血鬼を倒したことのある討魔師に与えられる称号で、ぶっちゃけ滅茶苦茶強い。原作ではあのバフォメット(黒山羊)と互角にやりあっていたので初対面の時からオレはかなり警戒していた。

 

 あんな華奢な見た目でモーニングスターをぶんぶん振り回すんだもんな。

 そりゃ恐ろしいわ。

 

 もっとも、オレが吸血鬼であることに彼女は気づいていないため、いまのところ実害はない。それどころかオレたちを守ってくれる頼もしい味方である。

 

 いずれは殺さねばならないと思うと惜しい限りだ。

 

 掃除が終わるとアギトはどこか恨みがましくオレに声をかけてきた。

 

「…………余計なことすんなよリーシャ。お前があいだに入ってこなきゃ、矢原のやつをボコボコにできたのによ」

「ダメだよ。暴力は」

「ちぇ、真面目かよ」

 

 アギトはぶっきらぼうにそう返すと、少し照れくさそうに

 

「……でも、ありがとよ」

 

 と小さな声でお礼を述べてきたのだった。

 

 

 

 

 

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