エロゲのヒロインに転生したんだが、もうオレは限界かもしれない。   作:サボテニウム

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第8話

 

 

 

 アギトと二人、カイをつれて孤児院内を案内する。

 

 まずは食堂。

 

「ここが食堂。朝の9時と昼の12時、夜の6時に食事が出るから遅れないようにね」

「なんか小汚いところだね。衛生面とか大丈夫?」

「あ、あはは。汚くてごめんね」

 

 次に中庭。

 

「ここは中庭。仕事が終わった子たちはいつもここで遊んでるかな。サッカーとか、縄跳びとか、鉄棒とか。カイは運動好き?」

「別に。早く次に行こう」

「……わかった」

 

 お次は洗濯場。

 

「ここは洗濯場ね。朝の班分けでお洗濯のグループになった子は、ここでみんなの分の洋服を洗うの。井戸水をくみ上げて洗うから結構重労働なのよ?」

「そう。使用人がいないなんて大変だね」

「…………そ、そうだね」

 

 最後に寝室。

 

「ここが私たちの寝室。いつもだいたい6人くらいが布団を広げて寝るんだよ」

「寝室? 狭すぎて犬小屋かと思ったよ」

「……………………」

 

「なあリーシャ。そろそろこいつぶっ飛ばさないか?」

 

 カイの不躾な態度にすでにぶちぎれ寸前のアギト。

 正直言ってオレもアギトと同じくキレていたので心のうちで激しく同意した。

 シスターの目が無かったらゲンコツの一発くらいお見舞いしたいくらいだった。

 

「シスターリリア。施設の案内が終わりました」

「あら早いわね。ありがとうリーシャ」

 

 キレ気味のアギトを宥めつつ、すべての案内が終わったことをシスターリリアに伝えると、彼の寝室に新しく部屋を用意したということを伝えられた。場所を案内されそこに行くと、畳三畳ほどの空き室が用意されており、どうやらオレとアギトも今日からこの部屋に引っ越しするらしい。

 

 人数は3人。布団は2枚。

 

 新しい部屋に移ったものの、前の部屋と同じく布団は共用みたいだ。

 

「布団二枚しかないな。つーことは同じ布団で寝なきゃなのか。またかよ」

 

 アギトもそれに気付いたのか部屋の隅に並べられた布団を指さしてそう言ってきた。

 

「そうみたい。アギト、カイをよろしくね」

「は? やだよ。なんでこんなロボット野郎なんかと」

「そう言うと思った。じゃあ私がカイと寝るから」

「そ、それはダメだ! 絶対だめ!」

 

 オレの言葉にあたふたと取り乱すアギトを見て思わず笑ってしまった。

 リーシャが他の男に取られるとでも思ったのだろうか。

 

 だとしたらかわいいやつだ。

 

「し、仕方ないな。嫌だけど俺がリーシャと寝てやるよ。うん。嫌だけど」

「えー……アギトたまに寝ぼけたふりしておっぱいとか触ってくるからなあ」

「さ、触ってねーし! あ、あれはたまたま手が当たっただけで!」

「やーいスケベ。スケベアギトー」

「すっ、スケベとか言うな!」

 

「どうでもいいけど、案内が済んだならもういいかな? 少し疲れてるから休みたいんだけど」

「あ、うん」「お、おう」

 

 心底気だるそうな顔をしたカイに思わず仲良く部屋を追い出されるオレたち。

 

 そして、

 

「夜になったら入って来てもいいから」

 

 しばらくの入室禁止を言い渡されてしまった。

 

 ガチャリと内側から鍵をかけられ部屋から閉め出されてしまう。

 

 って、え? 鍵? 

 

 あのー……この部屋、オレたちの部屋でもあるんですが……。

 

「お、おいロボット野郎! ふざけんな! 開けやがれ!」

「…………」

 

 へんじがない ただの しかと のようだ。

 

「ちょ、ちょっとカイー、あけてよー。うるさくしたの謝るからさー」

 

 コンコンとノックしても開けてくれる様子が無かったので、オレとアギトはしばらく唖然とした表情で顔を見合せてから、外をぶらつくことにした。

 

「食堂でも行こっか」

「そ、そうだな……」

 

 食堂につくとちょうど昼飯時だったので、いつものようにクソ不味いパンとゲロ不味いスープを受け取り、食卓の席に着く。

 

 毎度のことながらこの食事、どうにかならんのかね。

 

 前世だと、囚人ですらこれよりはるかにましな食事取ってたぞ……。

 

 臭い飯を食わされるという言葉があるが、ここは飯自体が臭かったりする。

 

 いったいいつの豆使ったスープだよ……。

 

 ひさしぶりに甘いものでも食べたい気分である。

 

(あ、そうだ)

 

 甘いものと言えば、アギトに渡したクッキーはどうなったんだろうか? 

 

「ねえアギト。前に渡したクッキー、ちゃんと売れた?」

 

 オレがそう言うと正面に座るアギトはズズズ……とスープを吸っていた手を止めこちらを見た。

 

「ああ、全部売れたよ。4万円くらいになったな」

「そうなんだ。すごいじゃん」

「んー、まあ、そうなんだけど……指輪って結構高いのな」

「え、なんで指輪?」

「あ! い、いや、なんでもない。こっちの話!」

 

 アギトは目に見えるように動揺してあたふたと取り乱すと、カランと箸を二本とも落としてしまった。彼はそれを拾い上げると「洗ってくる!」と、どこかオレから逃げるように足早に手洗い場のほうへと言ってしまったのだった。

 

 指輪……か。

 

 もしや今ひそかに流行っているらしい吸血鬼避けの指輪だろうか。

 

 吸血鬼避けの指輪と聞くと、前世でいうところの幸運を呼ぶ壺や魔除け数珠みたいな胡散臭い類のものと思うかもしれないが、この世界の純度の高い銀でできた指輪は、ほんとに吸血鬼避けの効果がある為、意外とバカにはできなかったりする。アギトもそれが欲しくなったのだろうか? 

 

 でもあれって絶対4万円(前世基準だと4000円)じゃ買えないよな。

 

 この世界では吸血鬼との戦いで常に需要があるため、銀は金やプラチナよりも遥かに高価だったりするからな。このエリアの国境付近にいけばいくらでも手に入るかもしれないが、第四真祖の力を継承していないいまのアギトにあの十字架を壊すことは無理であろう。

 

(ま、頑張りたまえ)

 

 オレは他人事のようにアギトの健闘を祈りつつ、パンを口に放り投げた。

 

(うん。不味い)

 

 

 

 

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