ホロ学園の「俺」君物語   作:零円

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登場ライバー
星街すいせい
雪花ラミィ
白上フブキ
大神ミオ


Eve、昼

 午前中の授業終わりを告げる鐘の音が響く。

 それを聞いて、最後の授業を担当していた教師が、教科書から顔を上げた。

 

「おわりね。きりがいいし、今日はここまでにしましょうか。日直」

「きりーつ、れーい」

 

 早く昼休みに入りたい生徒達がおざなりに頭を下げて。

 四限の授業は終わりを迎えた。

 

「なんか久しぶりで疲れたー」

 

 背筋を伸ばす。隣では、すいちゃんが俺の──というかスバルのノートのコピーと教科書を並べて睨んでいた。

 

「大丈夫?」

「なんとか。アンタは平気そうね」

「一応昨日予習しといた」

「……やっぱり教科書買うか」

「その方が良いとは思うけどね」

 

 まあ、それも今からの時間次第だ。

 

「それじゃあ行こうか」

「ええ」

 

 すいちゃんと二人、教科書とノートをしまい、席を立つ。

 

「あれ? 今日は学食?」

 

 後ろの席で、お弁当箱を取り出していたいいんちょが、そう尋ねてくる。

 

「俺は弁当だよ」

 

 ほらあれと、後ろのロッカーの上に置いていた重箱を指差す。

 

「いや、でかいな!」

「だから、部活の先輩と一緒に食べてくる」

「すいちゃんは?」

「こいつの付き添い」

 

 俺を指差すすいちゃん。「成程ねー」といいんちょ。

 

「学食ならついて行こうかと思ったけど、そう言う事なら止めておこうかな。いってらっしゃーい」

「いってきまーす」

「まーす」

 

 ***

 

「そういえば」

「ん?」

 

 部室に向かう道中。そう切り出したのはすいちゃんだった。

 

「ちゃんと聞いていなかったけど、そのフブキ先輩ってどういう人なの?」

「どうって、同じ部活の先輩だけど」

「そうじゃなくて。アンタにとってって意味」

「俺にとって?」

 

 聞き返すと、頷くすいちゃん。

 

「んー……憧れている人」

 

 指針の様な物を教えてくださった、恩人というか師匠というかのような人だけど、多分言葉にするにはこれが正しい。

 フブキ先輩のように、好きな物に全力で挑んで、楽しめるような、そんな生き方をしたい。

 少し悩み出した答えに、ぽかんとしたすいちゃん。呆けたその様子に求めている答えでは無かったのだと思う。

 

「えっと……」

 

 ただ、何が聞きたいのか、正直良く分からず。とりあえず普段の過ごし方を教える事にした。

 とはいえ、フブキ先輩との普段の過ごし方ってゲームしたり、アニメとかの同時視聴をしたりだ。

 

「普段からフブキ先輩には色々お世話になっていて、夜は良く遊んでいるよ。休みの日とか一日中って事もあるかな」

「へぇ」

「あと、たまに家に泊まったりもしている」

「お泊り? フブキ先輩って女性よね?」

「うん」

「……因みにどっちの家?」

「フブキ先輩の家」

 

 ゲーム機とか映像のディスクとか、ほぼフブキ先輩の私物だから、自然とそうなっている。

 オンラインゲームだって、フブキ先輩のゲーミングノートを貸してもらえるし。

 家に来る事もあるけど、わためを見ていると、特にミオ先輩の方が狩猟本能に目覚めそうになるらしく、泊まる事は最近では無い。

 

「その時に親は?」

「親?」

「フブキ先輩の」

「居ないよ。フブキ先輩、一人暮らしだし」

「!?」

 

 まあ、基本的にミオ先輩も居るけど。

 一応フブキ先輩の住んでいるマンションの隣室がミオ先輩の部屋ではあるらしいが、基本フブキ先輩の家に入り浸っているから、ほぼ二人暮らしみたいなものだ。

 たまにミオ先輩が用事があって幽世に帰っている時なんかは、本当に二人きりだったりするが、それもまれだ。

 「じゃあ、なに」とすいちゃんが、ちょっと震える声を出す。

 

「一人暮らしの家にアンタを招いて、一緒に遊んで、そのままお泊り?」

「うん。まあ、たまにだけど。月二位」

「それはたまにとは言わない!」

 

 急なすいちゃんの大声に、すれ違っていた先輩がびくりと肩を跳ねさせるのが見えた。

 

「……え? そうなの? すいちゃんの家に泊まっていた頃ってそれ位の頻度じゃなかった?」

 

 何ならもうちょっと多かった。

 

「それは保育園時代の話でしょ! それに家が家だったじゃない!」

「……確かに。ごめんね」

「違う! その側面も確かにあったけど、私も普通に楽しかったからね!」

「お、おう」

 

 迷惑をかけていて申し訳ないなぁと思ったが、思考が筒抜けの様で、即否定される。ちょっと安心。

 

「ただ、言っておくけど、普通お泊りなんて、同性だって数ヶ月に一回、あるか無いかだからね!?」

「そうなんだ。特に断る理由も無かったから、誘われるままだったよ」

 

 何も知らない俺に、色々と布教するのが兎に角楽しかったらしい。俺自身も楽しかったし、そんな物なんだなぁと思っていたくらい。

 呆けた様子は一転、鬼気迫る様子になっているすいちゃん。なんだろう、なんか怒っていらっしゃる? 

 

「家に行ったとき、何もされていないでしょうね」

「へ?」

 

 すいちゃんの言葉の意味が分からず、首を傾げる。

 

「何もって何?」

「何でもよ」

「そう言われてもなぁ」

 

 本当に思いつかない。沼に沈められたくらい。

 ただ、すいちゃんの雰囲気的に、何も無いと言っても納得し無さそうだなのだが。

 

「何も無いよ? 楽しく遊んでいただけで」

「本当に?」

「…………うん」

「今の間は何!」

「いや、なんでもない! 本当に!」

 

 ただちょっと、部屋着姿のフブキ先輩を思い出しただけだ。Vネックが深いし、下を本当に穿いているのか怪しかったり。

 今は流石に慣れたのだが、以前はドキドキしてしまい、からかわれた事も合わせて思い出す。それももう、去年とかな気がする。

 

「……」

「ひぇ」

 

 ただ、どちらかというと俺のやらかしを隠したいと思っての反応は、完全に誤解されたようだった。

 

「あの、星街さん」

「すいちゃん」

「すいちゃん、何を考えているのかは、正直良く分かっていないけど、本当にフブキ先輩には日頃お世話になっているだけだよ?」

「お世話ねぇ」

「う、うん」

 

 なんだろう、ニュアンスが乖離している気がする。言葉が言葉通りに捉えてもらえていないような。

 とはいえ、お世話の部分については、幽世回りの事があるから、流石に喋れない。

 ただ、何となくこの状態のすいちゃんをフブキ先輩へ会わせない方がいい気がする。保育園時代、いじめっ子にスコップを振り回していた時と似ているのだ。

 今からでもやっぱり延期にした方がいいかと思うも、自分から言い出した結果、フブキ先輩とミオ先輩にはお弁当が用意されてない。

 ドタキャンした挙句、食事はそちらでというのは、不義理が過ぎる。ただの屑だ。

 

 ──ここからすいちゃんを撒いて、部室へ直行。お弁当だけ渡して退散するか……。 

 

 そうすれば、怒られるのは俺だけで済む。

 

「……すいちゃん」

「なに?」

「えっと……あ、UFO」

 

 廊下沿いの窓の外を指差す。マジでなんか謎の飛行物体があった。

 何を言っているんだという目のまま、すいちゃんもそちらを向く。「え? 嘘?」とすいちゃんにも見えているらしい。何だあれ。

 気になりはしたが、今はそれよりもお弁当である。

 未知の探究への渇望を追いやり、すいちゃんの視線が外れている隙に、俺は限りなく足音を殺しながら、早足に退散。

 お弁当の事と走って捕まった時の時間ロスを考え、すり足で早歩きという忍者の様な移動を実行。

 元々残りは大したことが無い距離だった事もあり、ものの数分で部室の前に着いた。

 中からは既に話し声が聞こえる。息を整えつつ扉を開けた。

 フブキ先輩とミオ先輩。いつもの席に座っている。

 

「きたきた。おつかれさまー。体調はどう?」

「お疲れ様です。おかげさまで。こうしてお弁当も作れるくらい元気です」

「なら良かった。聞いたよー、お弁当作りすぎたって」

「そうなんですよね」 

 

 笑い返すと、同じようにフブキ先輩も笑う。

 

「急に朝、ミオからお弁当抜き! って言われてびっくりしたよもー」

「ごめんごめん。その方が面白いかなって」

「下剋上されるのかと思ったー」

「あはは。お口に合えばいいのですが」

「君の料理なら大丈夫。何度も食べているしね。ほら、早く食べよ?」

「あ、それなんですけど」

 

 入りつつ、後ろ手に扉を閉めようとして、それが妨害される。

 背筋に、冷たいものが走った。

 中に居るフブキ先輩からは、俺の陰になっていて見えていないようで、「どうしたの?」と首を傾げている。

 

「あの……ですね」

「なーに?」

 

 がっつり、肩を掴まれる。

 

「早く入れなさい」

「あ、はい」

 

 逆らえない。脇へ退く。

 俺の陰から現れたすいちゃんの姿に、フブキ先輩は立ち上がって驚いた。

 

「うぇえええ!? す、すいちゃん!?」

「あ、やっぱり」

「ミオ、知っていたの!?」

「何となく、そうじゃないかなって」

 

 何故ミオ先輩がそう思ったのかは分からないが。

 これから起こるかもしれない悲劇を想像し、俺は顔を伏せる。

 部室の戸を、すいちゃんが閉めたらしい。

 響いた音が、俺には惨劇の幕開けを伝えるSEに聞こえたが。

 

「──ごめんなさい」

 

 ただ、想像に反し、すいちゃんの第一声はそれだった。

 

「彼が今日部活の先輩方とお弁当を食べるというから、無理を言って参加させて貰いました」

「そ、そうなの? どうしてまた……あ、とりあえず座って座って! 今お茶出します!」

「お構いなく」

「……」

 

 ぽかんとする俺の前を抜け、すいちゃんが部室の中を移動した。

 そのまま腰を下ろしたのは、いつも俺が座る席。この部屋には基本的に先輩方と俺しかいないから、出している椅子は自分達の分だけだし、仕方がない。

 

「君の分の椅子、其処に置いておいたよー」

「あ、本当だ。ありがとうございます、ミオ先輩」

 

 立ち尽くす俺を、椅子が無いからだと考えたらしいミオ先輩が、部屋の隅を指差すと、其処には確かに椅子が一脚。

 お弁当をテーブルへ置いて、椅子の方へ。とりあえず、適当な場所にでも座ろうと、椅子を持ち上げつつ振り返った先で、すいちゃんが、自分の隣を叩いた。

 ここに座れ、という事らしい。大人しく、指定された場所へ椅子を運び、其処に腰を下ろす。

 

「はいこれ、粗茶ですが」

「ありがとうございます」

 

 魔法瓶から注がれたお茶を、すいちゃんの前に置くフブキ先輩。

 

「はぁ、本物のすいちゃんがこんな近くに」

 

 匂いでもかぎだしそうなくらい、恍惚とした表情を浮かべているフブキ先輩。

 そんなフブキ先輩へ、笑顔を向けているすいちゃん。怖すぎる。

 空気を変えるために、俺は拍手を一つ入れる。

 

「お弁当食べましょう! 頑張って作りましたので!」

「そうだね。ウチもお腹空いちゃったし。ほらフブキ、席について。お話は食べながらでも出来るでしょ」

「う、うん。そうだね」

 

 すごすごと自分の席に移動するフブキ先輩。そんなフブキ先輩を追うように、すいちゃんは椅子をフブキ先輩の方へスライドさせた。

 

「う、うぇぇ」

 

 フブキ先輩が気持ち悪い声を出してる。偏見かもしれないが、オタクって感じだ。

 

「テーブル、広いですから。近づかないと食べづらいですし」

 

 そして、誰だこの人。すいちゃん? 

 

「そ、そうだね! じゃない、ですね!」

「敬語はいいですよ、喋りやすい方で。私の方が後輩ですし」

「じ、じゃあ。お言葉に甘えて……」

 

 明らかに猫を被っているすいちゃんに、フブキ先輩はすっかりデレデレだ。このまま被り続けてくれればいいんだけど……。

 そう思いながら、俺も席を移動させ。お弁当の風呂敷を解いて、重箱を広げた。

 

 




没案
すいちゃん「一体いつから――私が部室の場所を知らないと錯覚していた」
主人公「なん…だと…?」


ミオシャがなんとなく察していた理由↓
https://syosetu.org/novel/249339/60.html
(第2部 襲撃)

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  • 地文と会話文の間に改行を入れる(今回)
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