百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで   作:流石ユユシタ

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23話 オシャレ

 素晴らしいクリスマスイブを過ごした次の日。珍しく千秋と千夏が早起きをした。先日頼んだ服や装飾品が今日届くからだ。黒のダウンコート、そして、うちはベージュのマリンキャップ。イヤリングもピンクのひし形の物だ。

 

 オシャレなロゴの入ったTシャツもピンク。ダメージジーンズとダウンコートはピンクじゃないけどうちはピンク色好き。

 

 

 うずうずと待って待って待ち尽くす。取りあえず宿題を机に広げてはいるが千冬ですら全く集中できていない。

 

 

「ああー! はやく新品の服着てー!」

「五月蠅い! 集中できないでしょ!」

 

 

 これでは宿題どころではない。本当にただ広げているだけになってしまっている。

 

「千夏一問も解けてないじゃん」

「アンタの声がうるさくて集中できないの!」

 

二人が言い争っているとピンポーンとインターホンが鳴る。三人が来たと期待のこもった視線が交差する。

 

千秋が真っ先に部屋を出て下に降りていく。

 

その後に千冬が向かい、それをうちが追いかけるように向かい、千夏はさらにうちの後をついてくる。

 

玄関でお兄さんが宅配の人から大きな段ボールの荷物を受け取っているのが見えた。お兄さんはそれをうち達の近くに置く。

 

「開けて良いのか!?」

「勿論だとも」

 

 

千秋が大きな段ボールを開けるとその中にはこの間頼んだ衣類の詰め合わせ。

 

うわぁぁぁ、うち早く着たい……いけない! 威厳! 姉として常に落ち着いた姿勢で臨まないと。

 

「うわぁぁぁ、我の頼んだダウンコート!」

「千冬のダメージっス……」

「私の黄色キャップ……」

 

 

三人が無我夢中で開封の義を執り行って行く。お兄さんはそれを見て満足そうな表情。

 

「ありがとう、お兄さん」

「何度も言わなくていいよ」

 

そう言ってお兄さんはリビングに戻って行った。

 

 

「早速着て見よう!」

 

千秋の号令を皆聞いて、ワクワクしながら部屋に戻って全員で服を着る。帽子をかぶる。イヤリングを耳につける。

 

 

「おおお! オシャレインテリ系美女って感じだな!」

「確かに私もオシャレインテリ系美女って感じね」

「インテリ……」

 

 

三人がオシャレに身を包んだ姿を見る。三人のセンス抜群。センスが光ってるね、眩しいよ。

 

だけど、全員色が違うだけで大体一緒な雰囲気は拭えない。ダウンコートは全員黒。ロゴシャツはうちがピンク、千夏が黄色、千秋が赤で千冬が青。イヤリングはひし形でシャツのように色が違う。

 

ジーンズはうちが黒で、千夏も黒、千秋が青で、千冬はダメージの青。マリンキャップもシャツに合わせてそれぞれ色が違う。

 

パソコンで選んだ時に分かってたけど、やっぱり姉妹って好みとか似るのかなぁ

 

「カイトに見せに行こう!」

「そ、そうっスね……着る時に少し髪型ずれたかも……」

「まぁ、買ってもらったしね……」

 

 

千秋を先頭に再び下に降りていく。いつもより足取りが凄く軽い感じがする。身につけている物が違うだけでここまで変わるのだと思う事に僅かに驚きも感じた。

 

「カイトー! どうだ!」

「似合ってるぞ」

 

お兄さんが親指でグッとマークを出す。お兄さんの褒め言葉は千秋だけでなく全員に万遍なく行き渡るような褒めだった。

 

「えへへ、そうだろう!」

「完璧だな」

「おおー! ありがとう!」

「……あー、それでだな。その、初詣それでいかないか?」

「良いな! そうしよう! それでいいよな!?」

「そうっスね……確かにこの格好で初詣行って見たいッス」

「お兄さんのご迷惑でなければ」

「千春が行くなら……」

 

 

お兄さんの提案に千秋が強く肯定する。千冬とうちと千夏もそれに同調する。

 

「カイト、何処に行くんだ。初詣」

「狭山不動尊かなぁ」

「それって何処だ?」

「西武球場の近くだな。初詣は車止めるの大変だから、電車で行くことになるかもな」

「おおー、最高だな! また楽しみが増えた!」

 

 

千秋の屈託のない笑顔にお兄さんはほっこり。うちもほっこりである。

 

そして、うちも初詣が少し楽しみである。

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

「と言う事があったんだ」

「つまりクリスマスプレゼントを喜んでくれた事が嬉しいってことを言いたいのか?」

「そうだな」

 

 

クリスマスと言う一大イベントを終え数日。仕事場にて書類を整理しながら隣の佐々木に俺は最近の数日の事を自慢げに話した。

 

「それで、そのクリスマスカードを貰ったと?」

「ああ、その通りだ」

 

 

俺の手にはラミネート加工された四枚のカードがある。四人の娘から貰ったこれ等のカードは仕事場に持ってくることにしたのだ。

 

 

「見て良いか?」

「汚すなよ」

「いや、ラミネート加工されてるだろ」

 

 

佐々木に日頃の感謝の言葉と可愛い絵が描かれている四枚のクリスマスカードを渡す。

 

「『我はカイトが大好きです。どれくらい好きかと言うとハンバーグとから揚げと同じくらい好きです。毎日ご飯を作ってくれてありがとうございます。カイトの料理は全部上手で味噌汁とか、ポテトサラダも好きです』この子、ご飯の事ばっかりだな……」

「そこがいいんだよ、あとこの子も色々考えてるからご飯事だけじゃない」

「へぇ……」

 

最初に千秋のカードの読んだ佐々木は二枚目のカードを見る。

 

 

「『千冬たちにいつも色々なことをして下さりありがとうございます。寒くなってきましたので寝る時は暖かくしてくださいね』……何だこの堅苦しい文は、あとこの子絵下手……」

「真面目で良い文じゃないか。あと下手言うな、個性的と言え」

「そ、そうか、すまん……えっと、次は」

 

 

千冬のカードを見てそれを束の一番後ろに持っていき今度は千夏のカードを見る。

 

「『いつもお世話になっております。今後ともよろしくお願いいたします』……簡潔だな」

「シンプルイズベストと言うからな。千夏なりに四苦八苦したんだろうさ」

「ふーん、まぁ、可もなく不可もなくだな」

「可しかないだろう」

 

 

佐々木は最後に千春のカードを見る。

 

「『お兄さんいつも大変お世話になっております。大したことが出来ないのですがこのカードで少しでも感謝の思いが伝わればいいなと思います。今後ともよろしくお願いいたします』……この子も堅苦しいな」

「真面目なんだよ」

 

 

佐々木にカードを返してもらうとそれをすぐさま机の引き出しにしまう。何だか、仕事場に娘の写真を置く父親の気持ちが分かった気がする、やる気がわくと言うか元気が出来ると言うか。

 

 

「クリスマスが終わるとすぐに正月だけど、お年玉ってあげるのか?」

「当たり前だな。金額は四年生だから4000円にしようと思っている」

「何だその謎理論……いや、うちの親もやってたけど」

 

 

 

お正月は大掃除もやらないといけないし、お雑煮とかおせち作らないと。

 

「あんまり無理しすぎると倒れるぞ?」

「大丈夫だ。今はぴんぴんしている」

「ならいいが……仕事休まれると俺に負担が来そうだからやめてくれよ」

 

 

この同僚にはうちの娘の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいな。

 

それにしてもクリスマスに続いてお正月とはイベントが続くな。だから、おもちゃとかゲームとかを企業は安売りをするんだろうけど。

 

お年玉、本当に4000円で良いのか、相場実際どれくらいなんだろう。後で宮本さんに聞いてみるかな。

 

そんな事を考えていると急に鼻もムズムズするので手で口を抑えて思わずくしゃみをした。

 

「おい、休むなよ! 俺が職場で話せる人が居なくなる!」

「分かったから」

 

 

隣の佐々木が凄い顔でこちらを見るが偶々寒気がしてくしゃみをしただけだ。余り仕事中に話しすぎるのは良くないのでそれ以上は特に話さず目の前の業務に没頭した。


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