百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで   作:流石ユユシタ

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6話 長女

今回は多少、残虐な表現がございますので苦手な方はブラウザバックをお願いします

 

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 うち達はお風呂から上がって用意していた呼びの服を着る。お風呂に入り全身がさっぱりしてとても心地が良い。

 

 ホカホカと体も心が温まりながらお兄さんのいるリビングに戻る。お兄さんはソファの上に座りながらスーパーのチラシ、そしてお菓子を並べていた。背中に隠れている千秋がそれを見てソワソワしている。

 

「温まったか?」

「はい。とても……ありがとうございます」

「気にしないでいいよ」

 

お兄さんはそう言いながらお菓子を差し出す。柑橘系のグミとロングポテトのスナック菓子。

 

「あー、えっと食べたいって言ってたから……良かったら食べて?」

「ッ!! え? 良いのか!? 我嬉しい!」

「ありがとうございます」

 

 

後ろから出てきた千秋がお菓子を持っていく。背中に居るから見えないが目をキラキラさせているのは容易に想像できた。

 

「晩御飯、何か食べたい物ある?」

「何でも大丈夫です」

「ハンバーグ!」

 

後ろからまた千秋が声を上げる。お兄さんとは殆ど目を合わせないが徐々にわがままを言い始めている。それが良いことなのか、悪い事なのか分からない。でも、あんまり言いすぎると不機嫌になられて、愛想をつかされて家から追い出されて……と言う心配はうちの中にもう、殆どなかった。

 

この人はそういう事はしない。それは僅かな時間だが分かった。恐らくだけど今まで出会って来た大人の中で一番やさしい人だと思う。

 

 

千秋もそれが分かってきたから徐々に我儘を言い始めているのだ。千秋が我儘を言うのは姉妹だけだった。外には一切感情を出さず内の中で留めるだけ。それが外に出始めているのは嬉しい事だと思う。

 

 

「分かったよ。今日はハンバーグだ!」

 

恐らくお兄さんは無理をしてテンションを上げているのだろう。安心感をうち達が抱けるようにこの家に慣れるように、気心なく家で解放感に浸れるように。この人そうしている。

 

その証拠に笑顔がぎこちない。凄くぎこちない。でも、そのぎこちなさに何処か安心感を抱いてしまったのも事実だ。

 

 

お兄さんは部屋で四人でゆっくりしてと言ってくれた。だから、リビングを出て二階に上がって行く。千夏は未だに不信感を拭えない表情だ。千秋はお菓子を嬉しそうに持って、千冬はうちに負担がかかり過ぎていないか気にしてこちらをチラチラ見ている。

 

千冬に大丈夫だと視線を送る。互いの蒼い眼が交差する。彼女もホッと安心して目を逸らした。心配してくれるなんて、姉思いの最高の妹であると感じた。うちはそれに恥じない様に最高の姉で居ようと思った。

 

今、目が合って思ったがやっぱり千冬の眼は綺麗な目だな。海のように澄んでいる感じがする。

 

千夏も千秋も綺麗な眼だ。……眼か……そう言えばお兄さんと初めてあった時、うちはあの眼に優しさや安心感を感じた。

 

その後、三人には言わなかったけど実はもう一つ感じたことがあった。

 

あの時のお兄さんの眼……何処かで見たことがあるような……既知感のような、何か。お兄さんは黒い眼。でも、その黒い眼のどこか感情の無い透明のような無機質のような……何かがあった気がした。

 

 

気のせいと言えばそれまでかも知れないが……考えても分からない。これ以上、考えるのは止めよう。意味もない。うちは目の前の姉妹たちの事だけを考えることが精一杯なのだからそれに集中しよう。

 

 

部屋につくと早速千秋がお菓子を食べ始める。

 

「美味すぎて、草」

「私にも寄越しなさいよ」

「嫌だ」

「むっ」

 

またまた取り合いを始める二人。

 

「千秋、分けてあげて」

「千春がそう言うなら……」

「元々、皆の分って事で貰ったんじゃない」

「このお菓子食べるの久しぶりっスね」

 

 

千夏、千秋、千冬が床に腰を下ろす。部屋の中には机も置いてあるからそこにお菓子を置いて楽しそうに食べている。その光景が昔の光景に重なった。

 

 

自分達を化け物だと恐れ、古いアパートにほったらかし。その家はトイレは汚くて、お風呂も狭い。小さい一人用のちゃぶ台に僅かに与えられたお金で買った食事を置いた。食事はスーパーで半額になるまで待ったり、パン屋さんのパンの耳を貰ってそれを食べた。

 

お菓子なんて滅多に食べられない。食いつなぐために必死だった。普通の子達がお菓子を買って貰って食玩を買って貰って、誕生日にはケーキとプレゼントを買って貰って、それが羨ましかった。それが普通だったから。そんな毎日になって欲しいと何度も思った。

 

それが、今は綺麗なお風呂に入れて、お菓子も食べられる。三人が幸せそうにしている。それを見て思う……うち達にはお兄さんが必要だ。

 

この先の三人の幸せの為には絶対に必要。

 

 

――何が何でも必要だ。

 

 

「ちょっと、千春も座りなさいよ」

「うん、今座るね」

 

 

千夏がうちを呼ぶ。薄く笑って三人の和に入る、不意に視線を感じる。千冬がうちを心配そうに見ていた。

 

 

「春姉……大丈夫っスか? 何か……思いつめてる様な」

「大丈夫だよ。ありがとう、心配してくれて」

「……何かあったらすぐに言って欲しいっス」

「うん、ありがとう」

 

 

千冬は優しい、視野も広い。本当に良い子。千冬だけは超能力が無いのに親にいつか化け物になると恐怖され、うち達は能力があるのに一人だけなくて疎外感を感じているときもあるのに長女であるうちを心配してくれる。

 

お姉ちゃん……ガンバラナイトね……

 

 

◆◆

 

 

 俺は四人を引き取った。快適な生活を送ってもらいたい。本来の生活より楽しく過ごして本来の彼女達の人生とは違った経験をしてほしいと思っている。考えも僅かに変えて欲しいと思っている。特に日辻千春には……彼女がゲーム開始まで辿る経歴は一番の胸糞だ。

 

 日辻千春と言う少女は姉妹絶対至上主義だ。四姉妹の長女でありしっかり者。超が付くほどの過保護。

 

 姉妹に対する愛は本物だが同時に歪んでいるともいえる。

 

 彼女は小さい時から両親から虐待を受けていた。姉妹全員虐待は受けていたが彼女が最も受けていた。それは他の姉妹を庇っていたから、庇える範囲で庇っていた。最悪な生活でも彼女が正気を保てていたのは姉妹が居たから。

 

 ちょっと強気だけど優しい千夏、可笑しなことを言って笑わせてくれる千秋、心配をしてくれる千冬。彼女は僅か小学一年生と言う若さで姉としてこの姉妹たちをなんてもしても守り抜くと誓ったのだ。

 

 超能力が発現し、軟禁されても彼女は他の姉妹を気遣い、母親代わりのように愛を与え続けた。

 

 他の家を転々としても常に後ろに姉妹を置いていた。正面には自分が立って、常に守り続けた。だが、その過程で彼女は知ってしまった。人の悪意や恐怖。彼女が全部それを受け止めたからこそ……気付いてしまった。

 

 

『不条理な世界』

 

 

 ……それに気づいた彼女はそれでも姉妹たちを気遣い続けた。中学になったら勉強も運動も頑張り三人の手本となるように頑張り、勉強を教え、運動を教え、家の住人から小言を言われ。

 

 三人にお小遣いを上げたくて臓器を売ろうかと本気で考えていたこともある。それか、自身の体かと……

 

 彼女の自己犠牲に千冬が気付いて止めた事で何もなかったが彼女の姉妹愛と自己犠牲の心は異常である。

 

 

 この家での生活で何かが変わって欲しいと思う。彼女が楽しく、楽観的に生活できるように俺も色々考えないとな……

 

 

 

 

 

 

 

 


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