イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第2話 ワンピ世界にも宗教団体ってあるんでせうか

こんにちは、イアイアの実・モデルニャルを食べてしまったワンピ世界の一般モブ少女ことニアです。

 

ちなみに名字はありません。

 

麦わら一味の中にも名字がない人たち普通にいますし、突っ込んだら負けですよね。

 

そういう世界なんだと思います。

 

 

 

さて、幼少期にイアイアの実なんてものを食べてしまったせいで、主人公と書いて邪神の玩具と読むになってしまった私ですが、不運不幸はワンピ世界のモブあるあるだと思うので、泣きません。

 

泣いたところで誰も助けてくれませんし。

 

 

 

いえ、麦わらの一味の仲間にしてもらうルートを辿ればきっとルフィくんは助けてくれるでしょう。

 

だって私、主人公ですし。

 

うぬぼれとかそういうのではなく、主人公が動かないと話が始まらないでしょ?って、ずっと引きこもってたらそれこそ観てて退屈だからとか何とかいう理由でニャル様におうち燃やされそうですし。

 

 

 

そういうわけで、今回はいよいよ麦わらの一味に接触...というわけにはいきません。

 

何故か?この広い海の上で、そうそう簡単に出会えるわけがないんですよね。

 

あっちも船旅をしているわけですし。

 

そもそも今が時系列的にいつなのかがわかりません。

 

 

 

新聞とかから入ってくるニュースを読む限り、まだアラバスタ王国で内乱やってるみたいなので、少なくともアラバスタ編には突入していないぐらいの頃合いなのでしょう。

 

であれば、アラバスタに行けば確実に会えるじゃん!と思うかもしれませんが、遠いんですよね、アラバスタ。

 

 

 

私の出生地はグランドラインに浮かぶとある島です。

 

平凡な漁師のお父さんと港町で食堂を営んでいるお母さんに愛されながら育ちましたが、ええ、幼い頃に海賊が街を襲い、両親は私の目の前で射殺されました。

 

まあ両親だけでなく、わりとかなりの大量虐殺だったんですけどね。

 

 

 

そんな精神的ショックから引きこもりがちになってしまった私は海軍に勤務する遠縁の伯父に引き取られ、男手ひとつで育てられました。前回身寄りがないって言ってたやん!とお怒りの方すみません、私も実際に伯父が会いに来るまでは彼の存在を知らなかったんですよ。

 

海軍ルートなら当然覇気だろ?剃だよな?六王銃はもう使えんのって?悪魔の実を食べちゃっただけの当時まだ五歳ぐらいだった一般人少女にそんなの求められてしまっても私、困ります。

 

なろう主人公じゃないんですから、無理ですよ無理。

 

 

 

そもそも性格的に、私は戦いに向いてません。

 

殴るのも怖いし殴られるのも怖いです。銃なんか怖くて持てませんしなんなら刀剣だって嫌です。なので格好いいバトルシーンとか期待しないでください。初期ウソップくんみたいな感じで。いえ、勇気を振り絞って恐怖に打ち勝って立ち向かう度胸があるだけウソップくんの方が100万倍マシですが。

 

死んだら次の私が何事もなかったかのようにひょっこり物影から出てきますから、きっと次の私は上手くやってくれるでしょう、なんて割り切れないんですよねほんと。

 

ええ、いくら邪神の関係者でも死ぬのは怖いので。

 

 

 

幸い私は伯父の理解を得て、というか伯父を騙くらかして、なんか見えちゃいけないものが見えちゃうようになった分身能力者、ということで悪魔の実の能力をひけらかすことなく生きてきました。

 

下手に余計なことまでバレると間違いなくロビンちゃんみたいに処刑だー!ってされちゃうでしょうし。

 

 

 

両親を亡くし、伯父に引き取られ、特に虐待とかそういったものはされずに普通に育てられて数年。

 

十五歳になった私は今、とある島の診療所で看護師の真似事をしながら暮らしていました。

 

過去形です、ええ。

 

ごめんなさい、今の私はなんというか、そう、一言で言うのなら、邪教の教祖様、でしょうか。

 

 

 

「ニア様、おはようございます」

 

「ええ、おはようございます。奥様はお元気?」

 

「もちろんですとも!もう一度妻とともに暮らせるなんて、これも全てニア様が起こしてくださった奇跡のお陰です!」

 

「いいえ、いいえ。私はただ、あなたを想う奥様のお気持ちをほんの少しだけ呼び止めただけ。全てはおふたりの愛の賜物ですわ」

 

「おお、おおお!なんと!なんとありがたきお言葉!」

 

感涙にむせび泣くハゲたおっさん、数年前に妻に先立たれ、失意の中"もう一度だけ死者に出会える"という眉唾ものの噂を鵜呑みにして、というかほとんど縋るようにして、ここドリームアイランドと呼ばれるようになってしまったこの島にやってきてしまった大金持ちです。

 

 

 

大金持ちです、そこが厄介なんですよね。

 

「あなたー!ランチができましたわよー!」

 

「おお、すぐに行くぞジョセッフィーーーヌ!!」

 

サンジくんばりにハートマークを乱舞させながら、Y字バランスよろしく片脚上げてホバー移動していくという、あなたの方こそ本当に人間ですか?みたいなおっさんを見送り、苦笑いをひとつ。

 

 

 

お前、前回目立ちたくないとかヒッソリ生きていたいみたいなこと言ってたよな?詐欺か?ん?目立ちたくない詐欺なんか?俺またなんかやっちゃいました案件か?お?とお怒りの皆様には本当に申し訳ないのですが、不可抗力です。

 

ええ、不可抗力ですとも。

 

私だって大変遺憾です。

 

苦情は全てニャル様にお願いします。

 

 

 

あの方、"ワンピ二次創作SSの主人公の分際で引きこもるとか許されるとでも思ってんの?僕が許しても読者が許さないよ?"とかなんとか言いながら、私の能力勝手に暴走させて、島中に死んだ人間の幽霊を大量発生させてたんですよね。

 

しかも、生きてる幽霊だからこれがまたタチが悪い。

 

 

 

わかりやすく例えるならあれです、たとえば今ここにベルメールさんがいたとしましょう。

 

彼女はアーロンに射殺された直後の本人がそのままここに生き返りましたー状態です。

 

記憶もあれば知識もありますし、自我もハッキリしています。

 

でも、私の造り出したクローン人間です。

 

スワンプマンとか、パラノイアのクローン的な、そういった倫理観の崩壊した冒涜的生命体なわけですね。

 

 

 

彼女は自分が殺されたことを覚えていますし、そこから呼び戻されたことも自覚しているでしょう。その気になればここから逃げ出すことや自殺することだって可能です。

 

ヨミヨミの実で一年近く死後彷徨ってましたーみたいなブルックさんの実例もあるように、ワンピ世界には魂とか死後の世界の概念があるみたいですしね。

 

そこから無理矢理呼び戻した彼女の魂を、泥や塩でできた仮初の肉体に定着させているわけです。どっちなんだよって?その時の気分なので気にしないでください。

 

 

 

そして最高にタチが悪いのは、私もベルメールさん2号になれるという点でしょうか。

 

ニャルなので、化けるのはお手の物なんですよね。

 

そうすると当然、彼女本体から複写されたクローン魂が持つ知識や記憶が私にも流れ込んできます。ナミちゃんやノジコさんを想う気持ちとか一切合切全部そのままに、です。

 

本物のベルメ-ルさんと遜色のないベルメールさん本人そのもののクローンと、蘇った彼女と遺伝子的には1ミクロンの差異もないソックリさんになった私。

 

 

 

危ないですね、とても危ない。

 

あまりにも冒涜的すぎて、原作愛読者の方はこの時点でお冠ではないでしょうか。

 

私だってやりたくてやってるわけじゃないというか、そもそもそんなことしませんよ!今のあくまでたとえ話です、たとえ話。

 

でも、そんな感じで実際にニャル様が能力を暴走させてしまった結果が、これ。

 

 

 

「ニア様!おはようございます!」

 

「ニア様!」

 

「ニア様、救いを求める者たちが今日も参りました!どうか、彼らにも救いを!」

 

ちょっと朝の散歩をしているだけで、教徒の方方が私のところへやってきます。

 

彼らは皆一様に、私の力で蘇ったように見える死者との生活をこの島で望んだ者たちばかり。

 

今現在、私はドリームアイランドと呼ばれるようになってしまった超高級リゾート地にあるニャルラト教という宗教団体の運営する施設で暮らしているんですよね。表向きはただの教団のアルバイトの事務員ですが、裏の顔は教祖様として。

 

 

 

最初は、なーんにもないただの辺鄙な離島だったんですよここ。

 

辺鄙な田舎の、人口なんて千人もいないようなちっぽけな移住先。

 

それがいつの間にか死者の蘇りの噂でもちきりになってしまい、噂を聞きつけてやってきた人たちがふらっと街中を歩く死者に目を留めてしまったらさあ大変。

 

噂は本当だったんだ!と口コミは広まる一方で、そんな怪しい噂に縋ってでもいいからダメ元でもいいからもう一度だけ会いたい!なんて心を病んでしまっている人たちが、いざ本当に死んでしまった大切な人たちに再会できてしまったらどうなるかなんて言うまでもありません。

 

 

 

ありがたいのはそれが眉唾ものの怪談話であろうと、島外の人間たちには本気にされていないところでしょう。

 

もし海軍辺りが不審に思って調査に来たりしたら詰みです。そうならないように意図的にデマだとか嘘だとかそういった噂話を教団のお偉いさんたちやそんな彼らと癒着してる島のお偉いさんたちが率先して広めているわけなのですが、実際どんな手を使ってでももう一度だけでいいから一目死者に会いたい、なんて限界精神でこの島にやってきたSAN値の怪しい人びとは別でして。

 

どれだけ周囲にバカにされようが何しようが、狂っていると罵倒されようが、それでもまだここへやってくるような骨のある人間には教団の人間が接触して、コッソリこの施設へと連れてきて私に会わせる、というのがここ最近の流れとして定着してしまっておりまして。

 

 

 

こうしてニャル様の暗躍により、この島は精神を病んだ低SAN値の移住民ばかりであふれかえる結果となってしまいました。

 

厄介なのがその中に、先ほどのハゲのような金持ち連中が混じっていたことです。

 

彼らは悪魔の実の射程圏外に出てしまうと消えてしまう死者たちとともにこれから先も暮らしたくないわけがありません。

 

 

 

幼い子供を失くした両親、海賊に家族を殺された老人、親を亡くした子供、そんな人たちがこの島にやってきては居つき、いつの間にか島にはホテルや別荘やペンションやアパートメントなんかが立ち並び、繁華街ができ食堂ができ、大型ショッピングモールみたいなものまで建っている始末。

 

人や金が集まるところには必ず利権の波が押し寄せてきます。教団の人間、SAN値がヤバ目なトチ狂った大金持ちや権力者ばかりが実権を握るこの島で、そんなことが起きたらどうなるかなんて想像もしたくありませんね??

 

 

 

おまけに余生を愛する者とこの島で送りたい金持ち老人たちのワガママのせいで、名だたる大企業のドリームアイランド支社なんてものが大量にできてしまってからは、すっかり開発が急ピッチ進み、今ではワンピースフィルムゴールドみたいなとんでもない島に早変わりしてしまったのでした。

 

どうしましょうね、ほんと。

 

 

 

「教祖様!どうかわたくしどもの息子を!ゲーテの命を呼び戻してください!そのためならばどんな大金だってお支払いします!一生かかっても必ず返しますから!」

 

「教祖様!どうか!どうかあの子に会わせてください!」

 

なんですかねえ、困るんですよねえ、こういうの。

 

断られたらその瞬間自殺します!と言わんばかりの鬼気迫る夫婦とか、この島じゃ日常茶飯事ですし。ものすごく相対しているのが怖いんですが、一応は教祖様なので嫌な顔はできません。営業スマイルです。頑張れ私。

 

 

 

現在、私は職場としてレンタルした海沿いの小さな事務所で一組の夫婦を迎えております。

 

室内にいるのはそのふたりと、あまりにも大きくなりすぎてしまったこの島を取り仕切るお偉いさんたちが教祖様である私の身柄を護衛するために派遣してきた屈強な黒服の男性がふたり。

 

 

 

ここでウッカリコイツ原作キャラじゃん!みたいなことになる展開はさすがにないので安心してください。

 

そもそも原作のネームドキャラになれるような精神性の持ち主ならこんな島には来ませんよ。

 

普通に死者との別れを済ませてこの島を去っていく人たちだって中にはいるわけですから。

 

ものっそい低確率で、ですけど。

 

「パパ!ママ!」

 

「ゲーテ!」

 

「おお神よ!!奇跡が!!」

 

ニッコリ微笑む私の背後から、ひょっこりと顔を出した小さな男の子がとててと愛らしく親御さんのところへ駆けていくと、ふたりはあなた方の方が死人では?みたいな憔悴しきって青褪めていた顔にみるみるうちに精気を取り戻していくではあーりませんか。

 

 

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!このご恩は一生忘れませんわ!」

 

「本当に、本当にありがとうございます!」

 

「いえ、私はただ、ゲーテくんのパパとママを想う気持ちをこの世に一時的に留めているだけにすぎません。皆さんの家族愛が起こした奇跡に、ほんの少しお力添えをしただけですから」

 

ニッコリ笑って黒服に退室を促してやると、ご両親は言葉にならないといった超絶号泣でお子さんを抱きながら出ていきます。ウソップくんのごべーん!!に匹敵する感じと言えば伝わりやすいでしょうか。

 

後は落ちつき次第別室で事務所のスタッフから説明を受けることでしょう。

 

この島から出るとあの子が塩の柱になって砕け散ってしまうこととか、そういったあたりを含めて重点的に。

 

 

 

なんかもう、最高にタチ悪いですよねニャルの所業。

 

これからも子供と一緒に暮らしていきたいならこの島に永住するしかないよって、実質的に選択肢なんてないも同然なわけですから。

 

おまけに私が死んだり能力を解除したら、当然あの子は消えてしまうわけで。

 

これが私が教祖様なんてものに祭り上げられてしまった理由です。

 

 

 

言うなれば、島の住人ほぼほぼ全員が共犯者であり狂信者。

 

島の情報を漏らしたり私の情報を売ったり裏切ったりしたら、その時はこの島の住民ほぼ全員が恨みつらみの復讐の権化と化して襲いかかるわけですかね。誰かエドワードエルリックでも呼んできてって感じです。あ、伯父さんは呼ばないでくださいお願いします。

 

私はただ最高級リゾート地の辺鄙な教会でアルバイトしながらのんびりスローライフしてますーとしか伝えてないんで、バレたら殺されます。伯父さんが。既にこの島の権力者たちの中には私の唯一の親族である伯父様のことまで突き止めてる人もいますし。金持ちって怖いですね?

 

 

 

しかしなんでしょうねこの、着着とヤバいフラグが目の前で積み立てられているのに逃げ場のないやな感じ。ものすごく劇場版臭がしてきませんか?

 

”劇場版ONE PIECE FILM NIGHTMARE”みたいな感じで、ドクターヒルルクとかベルメールさんとかくいなちゃんみたいななっつかしー!ってなる顔ぶれが次次と笑顔で切り換わっていって、最後に

 

「ようルフィ、久しぶりだな」

 

「エー...ス!?」

 

みたいなのを予告の最後にドン!とやって終わりそうな感じしません?ワンピースは空島ぐらいまでは読んでけどいつの間にか読むのやめちゃったなーみたいな盛大に刺さりそうな奴。

 

まあもしそうなるにしてもたぶん数年後なんですけどね。ルフィたちは今頃ローグタウン辺りなのかなー、それともまだその前なんかなーと原作キャラたちに思いを馳せつつ、今日も今日とて教祖様ライフを送る私なのでした。

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