イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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実家にコミックスが50巻ぐらいまでしかなかったせいで打ち切りの危機に瀕していましたが今なら今月末までジャンプ+で無料で読めるよ!!と教えてくださったガンが様ありがとうございました。


お陰でもうちょっとだけ続くんじゃできそうです。
打ち切られた方がいっそよかったのでは?と訝しむボブたちはしまっちゃいましょうね~


第18話 オカマは差別用語という風潮が既に差別理論

「残す言葉はあるか!!」

 

オカマ畑で

 

「本望」

 

また会おう!!

 

 

バロックワークスの中で一番好きなキャラを挙げよと言われたら、ボンちゃんかミス・ダブルフィンガーを推す偽りの聖女ニアです。

 

まあ、インペルダウン編で完全にボンちゃん沼に落ちたのですが。

 

 

人は多かれ少なかれ自身の性癖を隠して生きているものです。

 

そりゃあそうでしょう、バレたら明日から生きていけませんもの。

 

なので、たとえ他人から後ろ指をさされ嘲笑されようとも、堂々と自身のセクシャリティを誇るオカマさんたちは本当に格好いいと思います。

 

まあ、世の中には空気の読めない傍迷惑なオカマがいるのもまた事実ですが。何が嫌いかより何が好きかで自分を語れとルフィくんも言っていたような気がしましたがそんなことはなかったような気もしました。

Don't Mind.

 

 

オカマであろうがなかろうが、ボンちゃんというひとりの人間が凄まじく格好いいことに変わりはありません。

 

燦然と輝くオカマウェイに、コソコソと隠し事ばかりしている偽聖女としては心からの敬意を表します。

 

 

さて、いよいよ物語も第一部終盤、エースさんの処刑まで迫るところ残り三時間となりました。

 

 

現在私はエースさんの処刑とは何の関係もないドリームアイランドで煎餅でもかじりながらテレビを観て...いたかったのですが、世界政府からの出頭要請によりマリンフォードに来ています。

 

しかも、いるのはこれから公開処刑が執り行われる広場という、まさかの物語の爆心地...ということはさすがにありませんが。

 

 

 

「伯父様、何だか私、とても心が落ち着きません」

 

「お前も感じているのか?荒れ狂う時代のうねりの節目を。大丈夫だニア。たとえ白ひげであろうと誰であろうと、お前には指一本触れさせん」

 

まあ、イアイアの実・モデルアザトースとかいう碌でもない能力者となった今の伯父様ならばそれぐらいはできますよね。

 

頼もしいことこの上ありません。

 

あ、今肩に手を置かれましたね。

 

カリファさんの名言、『セクハラです!!』をやるなら今なのでは?と一瞬思いましたが、さすがに空気を読んで慎みましたとも。

 

 

開眼、ドリームエンド。

 

『可愛い可愛い姪にセクハラ中年扱いされてしまった汚物のような自分』を束の間の"白昼夢"だったことにしてなかったことにされてしまったらアレですし、伯父様は怖い顔とは裏腹に、年頃の娘になった私に気を遣って自発的に私の洗濯物と自分の下着や靴下を分けて洗うようになっていたようなナイーブなところがありますからね。

 

 

そもそもそんなくだらないことに能力使わないでください!!などとはまあ、私が言えた義理ではないので。

 

 

 

処刑場を眼下に一望できる海軍の建物にヒッソリと隠れ、成り行きを見守る私たちの周囲には、大勢の海兵さんたちもいます。

 

伯父様の味方と、そうでない方々が半分半分ぐらいの比率でしょうか。

 

以前、伯父様へのお力添えをお願いした、ニャルラト教幹部の中将さんもこちらにいらっしゃいます。

 

 

場違いなぐらいフカフカの椅子に座らされた私の左右には黒服姿のダゴンさんとロスさんがそれぞれ立ち、シャンタークさんが斜め後ろに控えています。

 

そして、私の背後に仁王立ちしているのは、伯父様、ダエモン・サルタン中将閣下ですね。

 

 

お前そんなとこで何やってんの?と思われるかもしれませんが、いわゆる一種の保険ですね。

 

私たちのではありません、海軍側のです。

 

死者の魂を黄泉の国から呼び戻せる聖女ニアが野放しにされていては、エースさんを処刑する意味がほとんどありませんから。

 

 

なので海軍&世界政府としては、聖女ニアが政府の側についていることを公の場で大勢に認知させたかったのでしょう。

 

そのための出頭要請だったわけです。

 

ですが、さすがに"白ひげとエースを見殺しにした女"の烙印を押されてしまっては、今後の人生が平穏とは無縁の代物になってしまうことは間違いないわけで。

 

 

そのため折衷案として、こうしてテレビカメラには映らないけれど海軍の目の届くところで、大人しくしていることで聖女ニアとニャルラト教団は海軍並びに世界政府に協力的ですよ、というパフォーマンスを行うわけですね。

 

 

事前に天竜人や海軍の中にも根深く食い込んでいるニャルラト教のシンパを使っての根回しに加え、こうして今日ここで何もせずに大人しくしていることで、これまでばら撒いてきた欺瞞情報が活きてくるというわけです。

 

 

これがエースさんの処刑に対し、私の選んだ選択です。

 

 

お前ワープだかテレポートだかできるんだから海軍も海賊も全員無視して遠くへ逃げちまえよ、と思われるかもしれませんが、私は一生逃亡者生活を続けるのは御免ですし、海軍全員を邪教の狂信者に仕立て上げてしまうような真似もしたくありません。

 

 

だって、そんなことしたら原作が崩壊しちゃうじゃないですか。

 

私はあくまでワンピースという素晴らしい物語の世界に生まれたひとりの人間として、この世界が織り成す物語の行く末を最後まで見届けたいのです。

 

 

赤犬さんも黄猿さんも青雉さんも、センゴクさんもガープさんもおつるさんも七武海の皆さんも、エースさんもルフィさんも白ひげさんも黒ひげさんもみーんなみんな私の泥人形!!さァみんな、私の思うがままに踊ってェ!!なんて虚しい人形遊び、やりたいなんて思いませんよ私は。

 

 

彼らが彼ら自身の意志で、生きていくからこそ素晴らしいのです。

 

外から観ている側からすればあーでもないこーでもないと意見が出るかもしれませんが、これは私の人生。

 

誰に何を言われようが、どう思われようが、私の人生にとやかく文句は言わせません。

 

 

観ていますか?ニャル様。

 

あなたの玩具はこんなにも滑稽に踊ってますよ。

 

 

そんなわけで、私は今ここにいます。

 

海軍さんたちにも海賊さんたちにも、聖女ニアはここにはいなかったけどここにいた、と思わせることが大事なのです。

 

私は私の平和な人生を諦めない。

 

 

できない、とやりたくない、は違います。

 

お巡りさんなんかその気になれば簡単に殺せるんだからさー、明日から指名手配犯になろうよ!と誘われて、それもそっかーと思える人もいるでしょう。

 

ですが、私は違います。

 

 

一点の曇りもない綺麗な経歴を。

 

誰に憚ることもなくお天道様の下を、大手を振って歩けるクリーンなキャリアを。

 

平穏無事な生活を。

 

そしてドキドキワクワクの、素晴らしい物語を、そんな私に間近で魅せてください!!最高のスリルを!胸躍る冒険譚を!

 

狂っていますね、ええ、第1話の時点で既に、SAN値はとっくに0ですもの。

 

 

さて、慣れないシリアスはこれぐらいにしておきましょうか。

 

ぶっちゃけ"聖女ニア"にはエースさんを助ける理由がありません。

 

私が一方的にあちらを知っているだけで、そもそも初対面ですらない完全な赤の他人なわけですし。エースさんがもし生き延びていたらのIFの世界線はここではない別のどこかの誰かさんにお任せ致します。皆さんそういうの、もう沢山観てきていらっしゃるでしょう?

 

 

更なるトリックスターらしさを追求するなら『私は本当はゴールド・ロジャーの隠し子が生んだ孫娘、ゴール・D・ニアです!!』とか何とか適当に叫んで『私の本当の伯父様!!助けに来たよ!!』とかトチ狂った乱入をかましでもすれば盛り上がるのでしょうが、ダゴンさんたちからすれば『は??何やってんのアイツ??』でしょうし。

 

 

そもそも私の母は海軍の名門ダエモン家の元ご令嬢。

 

結婚相手の船乗りの男も駆け落ちした時点で完璧に身元を洗い出されてしまっているでしょうし、そんな嘘が通用するはずがありません。

 

 

イアイアの実・モデルニャルの力をもってすれば伯父様の開眼、ドリームエンドの力にも対抗できるでしょうが、そんなことをやる意味もありませんのでさすがにしませんよ。

 

そんなわけで、私は苦悩するガープさんの素敵な横顔を望遠鏡で眺めながら、ジンベエさんとルフィくんたちがやってくるのを大人しく待っています。

 

 

フフ、いいですよね、普段は朗らかな笑顔がよく似合う太陽のような方の、十年に一回あるかないかぐらいの皆既日食が如き昏い表情って。

 

そんな苦悩懊悩を抱えてそれでも生きていく力強さ、プライスレスですね。

 

 

 

「俺の愛する息子は、無事なんだろうな...!!」

 

「オヤジィ!!」

 

さあ皆さん、よろしくお願いします。どうか手に汗握る極上の激闘を!!涙を禁じ得ない感動を!!ドキドキワクワク、大興奮のエンターテインメントで、私を、私たちを...

 

ど う か た の し ま せ て く だ さ い


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