イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第19話 コアブロック確保のチャンスでしょうか?

「"海軍本部"の...中将たちだァ!!」

 

「中将殿がこんなに揃うところはまず見れねェ!ガガガガ!!」

 

「バスターコールも真っ青だな!!」

 

激闘の最中にごきげんよう。

 

そろそろメッキが剥がれてきたような気がしないでもない女、ニアです。

 

前回何か大事なものを損なってしまった気もしますが、過去は振り返らずに前だけ向いて進みましょう。

 

たとえ方角が後ろ向きだったとしても、前に進んでいけばいつかはどこかにたどり着く筈ですし。

 

 

 

「伯父様方は行かれずとも大丈夫なのですか?後々、私のせいで敵前逃亡だなどと問題になってしまわないか心配なのですが」

 

「お前が案ずることは何もないさ、ニア。私たちはそもそも、"海軍本部"の中将ではないのだよ。お前の護衛、あるいは監視という名目で、ここにいるだけだ」

 

「爪弾きの窓際族でいることにも少なからぬメリットがありますのじゃ、聖女様」

 

伯父様と教団幹部の中将さん、名前をゴーント中将と仰るそうですが、私の護衛と監視を兼ねてこの部屋に残っているお二方にはどうやら今すぐ下へ降りていって戦えという命令は今のところ来ていないようです。

 

 

しかし、ことここに及んでもまだ派閥がどうとか本部支部がどうとか、大人の世界はしがらみが沢山あって大変ですね。

 

大人になんかなりたくないものですが、私ももはや十六歳。

 

この世界では立派な成人扱いです。

 

 

 

「エ~~ス~~!!やっと会えたァ!!」

 

「ルフィ!!」

 

「助けに来たぞ~~!!」

 

「ぎゃはははは!!世界よ覚悟しろ!!」

 

「さすがに総力戦!!半端じゃナッシブルね!!」

 

津波が押し寄せ、そのまま凍りつき、島より大きな氷山がぶっ飛んできたと思ったら、巨大なマグマの握り拳がそれを一瞬で蒸発させ、ところにより空から海賊が降ってくる。

 

戦場にいらっしゃるどなたかが、まるで世界の終わりのようだ、と呟くのもわかります。

 

 

これが大航海時代。

 

海賊たちの時代。

 

私の生まれ落ちてしまった世界。

 

ドキドキする。

 

ワクワクする。

 

そう感じてしまうのはきっと、よくないことなのかもしれない。

 

だけど今、この場にいる全ての人間が、何かを感じている。

 

それぞれの価値観、それぞれの意思、それぞれの思惑で、ここにいる。

 

 

 

「兄貴を助けに来たのか」

 

「そうだ!!」

 

「相手が誰だかわかってんだろうな。おめェごときじゃ命はねェぞ?」

 

「うるせェ!!お前がそんなこと決めんな!!俺は知ってんだぞ!!お前、海賊王になりてェんだろ!!"海賊王"になるのは俺だ!!」

 

「...クソ生意気な。足引っ張りやがったら承知しねェぞハナッタレ!!」

 

「俺は俺のやりてェようにやる!!エースは俺が助ける!!」

 

 

うーん、胸が熱くなりますね。

 

カッカカッカと心臓が火照ってしまって、いけませんよこれは。

 

ロジャーさん亡き後の海賊たちの頂点、世界で最も海賊王の座に近い男、大海賊白ひげ、エドワード・ニューゲート。

 

そんな白ひげさん相手にも、一歩も引かないルフィくん。

 

 

紛れもなく主人公。

 

これでもかと主人公。

 

いいえ違いますね。

 

彼は主人公だからああ言えるのではありません。

 

ああ言えるからこそ主人公なのです。

 

この世界に数多生まれては死んでいく海賊たち。

 

その中からたったひとり、夢に向かって突き進むまっすぐな少年。

 

 

彼はどうしようもない海賊バカで、だからこそ大勢の人間の胸を打つ。

 

かくいう私も、ノックダウン寸前です。

 

風に乗って建物の中まで香ってくる血の臭い。

 

誰かの悲鳴。

 

人が死ぬ音、人が生きる音。

 

この世界で生きている者たちの、命が奏でる音。

 

私の大嫌いな、暴力の音。

 

 

それを、私はただ観ているだけ。

 

安全圏から眺めているだけ。

 

物語のように鑑賞しているだけ。

 

本当に、それでいいの?折角この世界に生まれてしまった、と悲嘆していた私が、この世界に生まれることができた、と言えるようになったのに。

 

 

私は一生、傍観者のまま?

 

本当に、そのままでいいの?

 

 

 

ねえ、ニア?

 

 

 

「聖女ニア!!」

 

「何事だ騒々しい」

 

血相を変えた海兵さんたちが、室内に雪崩れ込んでくる。

 

その手に持っているのは、一枚の紙だ。

 

 

 

「聖女ニア!!世界政府からの勅命である!!戦え!!今すぐに!!お前の能力で、海軍側の死者を今すぐ全員蘇らせろ!!これは世界政府からの勅命である!!逆らえばどうなるか」

 

「え?嫌ですけど?」

 

「...は?」

 

いいに決まってるじゃないですか。

 

何言ってるんですかねこの海兵さんは。

 

ド派手なアクションってのは、安全圏から眺めているだけだからこそ面白いんですよ。いくらテンション上がったからって、空から核兵器級のヤバい攻撃がドッカンドッカン降ってくる中で、自分が鉄砲担いで地雷原に突っ込んで行きたいわけがないじゃないですか。

 

 

 

「だ、そうだ」

 

「お嬢は中立としてここにいらっしゃるってェことをよォ、おめェらみィんな忘れちまったのか?世界貴族ってェのは、どいつもこいつもバカばっかりか?」

 

「どうぞ、お引き取りを」

 

ロスさんが私を背に庇うように仁王立ちすると同時に、そちらに気を取られた海兵さんたちのおよそ半数を、ダゴンさんの足元から這い出した大量の、紫の半透明の触手が容赦なく絞め落としていきます。

 

ひとりも殺してはいませんのでご安心です。

 

 

私の監視のためにこの部屋にいた海兵さんたち。

 

彼らは触手に絞め上げられて、苦しそうにもがきながら、何事もなかったように直立する、私の護衛のためにこの部屋にいた海兵さんたちを、裏切り者を見る目で睨んでいますね。

 

 

 

「貴様らァ!!天竜人の奴隷如きが図に乗りおって!!そのような反逆的な態度が」

 

聖女一派の突然の凶行に望遠となっていた、この部屋に雪崩れ込んできた組の海軍さんたちの姿が、ふ、っと掻き消えてしまいました。

 

 

 

「開眼、ドリームエンド。戦いに巻き込まれて頭を打って気絶してしまった君たちは、世界政府からの勅命を受ける夢を見ていた。...そうだな?」

 

「ファファファ、本部の連中、よっぽど焦っておると見えるわい」

 

伯父様の能力を見慣れているためか、ゴーント中将以下、海兵さんたちにも動揺は見られません。

 

よく訓練されていらっしゃるようで。

 

 

最後に、蹴破るように乱暴に開かれたままだった扉をシャンタークさんが静かに閉め、室内には静寂が戻りましたとさ。




イアイアの実・モデルアザトース
全ては泡沫の夢。目覚めてしまえば、夢は終わる。いい夢見れたか?とはたぶん言わない。平たく説明するなら、きっと夢オチ製造機。
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