イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第1C話 聖女ニアの生写真は公認FC限定販売グッズ

皆さんこんにちは、最近歩く全自動性癖捻じ曲げ器扱いされていることに遺憾の意を表明したい大聖女ニアです。

 

 

私はただ何故か突然海軍本部視察中に『そうだ妊婦100人集めてクレー射撃大会しようず!!』とか言い出した天竜人のクソガキどもを止めるためにアホ面丸出しの天竜人のクソガキ三匹相手に土下座して靴を舐めるところを大勢の海軍さんたちと天竜人の海軍本部視察というイベントを遠巻きに取材していたマスコミの前で披露したたり、

 

『"ブルーブラッドって言うぐらいなんだから本当に血が青い奴誰かひとりぐらいいるんじゃね?よっしゃ世界中から王族1000人集めて全世界中にギロチン生中継祭りじゃあ!!え?やめてください?だったらお前が今ここ(何故かマリンフォードの大通り)で両手でスカートつまみ上げてパンツを丸出しにしたらやめてやんよオラァ!できねェだろこの偽善者オラ...わーほんとにオープンTHEスカートしやがったえ。たまげたぞえ』とかやって人助けしているところを何故か写真付き(さすがに後ろ姿ですが)で新聞の一面を飾ってしまったり、

 

ニャルラト正教会が売り出している聖女ニア様チャリティーカレンダーの七月の写真に"清楚な水着を着たニア様とふたりだけで海に遊びに来たよ"風の一夏の甘酸っぱいデートメモリアルっぽい写真を掲載した後に一枚捲った八月になると"デカァアイ!!説明不要!!"なガチムチ巨漢スキンヘッド黒人護衛のロスさんにちょっとだけ背伸びしてみました!みたいな七月よりもちょっとだけ大人な水着を着たニア様がお姫様抱っこされてはにかみながらピースしているというニャルラト正教会内の仲よしっぷりが微笑ましいほのぼの写真を掲載したりだとか、

 

国民的長寿可愛い動物番組にゲスト出演した際にウッカリ魅了してしまったワンちゃんに腰カクされてるところがゴールデンタイムのお茶の間に生放送で流れるという不幸な微笑ましい放送事故が発生してしまったり、

 

汗臭いむくつけき屈強なガチムチ体育会系海兵さんたちに囲まれての"一日大佐体験"イベントで何故かそれしか予備がなかったせいでダブダブの海軍の制服で参加し、息が切れて汗だくになるまでトレーニングたり、

 

海賊女帝ボア・ハンコックさんとの誌上対談で仲よし頬くっ付け自撮り風写真を撮ったりアイスクリームの食べさせっこ写真を掲載してもらったぐらいで、特に青少年の何かが危ないようなことは何もしていない筈なのですが、おかしいですね。

 

 

 

ちなみにエロ聖女なんてあだ名をつけられたりはしておりませんのでご安心ください。

 

大聖女はいつだってクリーンで清純で清らかで可憐で清楚なイメエジを死守しなければなりません。

 

 

あれもこれもそれもどれも全て天竜人の暴虐からか弱き無辜の人々を守るため献身として、これでもかとばかりに世界中で美談として語られていますので私のパブリックイメージは依然として一点の染みも曇りも汚点もない、綺麗なままのニア様ですよ。

 

そんなニア様を邪まな目で見るだなんて、男ってほんとサイテー!!

さすがに伯父様とシャンタークさんにはいくら世論操作のためとはいえさすがにやりすぎたバカ!!年頃の娘なんだから慎みを持てこのバカ!!的なことを大変遠回しに滾々とお説教されてしまいましたが、お陰で世間でのニャルラト大盛況と大聖女ニアの評判はいい感じのところをキープしております。

 

というか、カレンダー用の写真を撮影する際に私にフワモコパジャマを着せてベッドの上で可愛いポーズを取らせたり、エプロンとバンダナ三角巾をつけさせて新妻風のポーズを取らせたりと意外にもノリノリだった伯父様が言えた義理ではないのでは??その点シャンタークさんは実に紳士でしたね。ブラウスに伊達眼鏡姿で傘を差し、雨の中佇む文学少女というのは実に乙なものでした。

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

「だけど!!会えば命を落とすぞ!!」

 

「そんな!!」

 

「構わねェ...!!」

 

「サンジ!!」

 

 

「夢叶わず生き長らえるより...人魚たちをエロい目で見て死にたい」

 

「最低か!!」

 

 

二年の歳月を経て、ついに再結集した麦わら海賊団。

 

戦力もギャグのキレもますますパワーアップして、麦わら一味の新たなる大冒険の火蓋が再び切って落とされました。

 

その最初の旅先となったのが、魚人島。

 

 

美しいな、と、想います。

 

ダゴンさんの能力、イアイアの実・モデルダゴンの能力のうちのひとつ、人間を魚人に変える能力。

 

その力によって、私たちは今、この魚人島へとやってきました。

 

 

「ニャルラト正教会の教祖、ニア。あなたは...そんなまさか、本当は魚人だったのですか?」

 

「いえ、いいえ。私の大切な仲間の悪魔の実の力を借りて、一時的にこの姿になっているだけです」

 

ディープワン海賊団の船長、深淵のダゴン。

 

彼がこの魚人島へ、ビッグマム海賊団の縄張りへ足を踏み入れることは、波乱の引き金となりかねない。

 

ですが、だからといって、引き下がる理由にはなりません。

 

 

 

「だが、あんたらのような魚人など見たことも聴いたこともないぞ!?」

 

「この空の果てと海の底の間には、お前たちの哲学では思いもよらないようなことがしばしばある。お嬢様、なるべく私のお傍に」

 

「ありがとう、ダゴンさん。でも、大丈夫でしょう」

 

ホーディ・ジョーンズ一味の引き起こした魚人島内乱は終結を迎え、救国の英雄となった麦わらの一味は一路新世界へ。

 

いやあ、格好よかったですねえ、新生皆さん。

 

私もジンベエさんの渋すぎる活躍を"間近で見る"ことができるようになって、感無量ですよ。

 

 

 

「教祖ニアか。何の用だ?」

 

「いえ、用件はもう済みました。私はただ、モンキー・D・ルフィさんたちの戦いを、観に来ただけ」

 

「ルフィさんだと!?」

 

ザワっと王国の兵隊さんたちの間にどよめきが広がります。

 

彼らの中でも、この場では最も上の人間と思しき魚人の兵隊さんが、私に銛を突きつけようとして、ダゴンさんの触手に銛を絡め取られました。

 

 

「お嬢様に野蛮なものを向けるな、無礼者」

 

現在、この魚人島での、というか、世界からのニャルラト正教会に対する評価は大体真っ二つ。

 

 

 

「フン!何を企んでいる、女。麦わらの一味はこの島に住む者たち全員にとっての大恩人だ。もしも彼に危害を加えに来たというのならば、容赦はしない!」

 

「おい、ちょっと待てって!この女、有名人なんだろ!?勝手に事を荒立てちゃあまずくねェか!?」

 

即ち、悲劇を食い物にし、死肉を貪り肥え太ったハゲタカどもか。

 

あるいは、この末法の世に現れた本物の聖女か。

 

うちのやり方に好意を抱く者、敵意を抱く者。

 

疑う者、崇める者。

 

 

 

「何の騒ぎなんじゃもん?」

 

「国王陛下!!」

 

そこへふらっと現れたのは、この海底国の王、ネプチューン王だ。

 

 

 

「あなた様はまたおひとりでフラフラと出歩かれて!!」

 

「面目ないんじゃもん。じゃが、今はそれが怪我の功名のようじゃもん?」

 

私はスカートの橋をつまんで、一礼。

 

 

 

「お初にお目にかかります、ネプチューン国王陛下。わたくしどもはそう、ただの、通りすがりの見物人でございます」

 

「大聖女ニア。そなたの噂は海底にまで届いておるんじゃもん」

 

誰も彼もが天然でギャグキャラっぽいわりに、本気を出すとドシリアスになるのはワンピースキャラの王道ですね。

 

恐らく、彼の頭の中では今頃、私たちの来訪の真意を推し量っているのでしょう。

 

 

英霊、フィッシャータイガーの魂を手駒に加え、操り人形にできる"かもしれない"女。

 

亡きオトヒメ王妃を無理矢理蘇らせ、塩の柱に閉じ込めた彼女を支配・服従・使役させることができる"であろう"能力者。

 

 

いくら世間では大聖女などと呼ばれてチヤホヤされていようとも、私の人となりを直接知らない方々からしてみれば、悍ましい敵になり得る"可能性がある"危険人物。

 

そんな女が、ルフィさんたちに目をつけているとならば、なるほど見過ごせはしないでしょうね。

 

 

 

「どうぞ、ご安心を。わたくしは、ルフィさんの、麦わらの一味の皆さんの、大ファンですから」

 

ニア。

 

天竜人の暴虐に抗うために、恥をさらすことを厭わない女。

 

救う義理のない大勢の赤の他人の命を、わたくしがそうしたいから、こうしているのです、というたったそれだけの理由で、身を切って助けている女。

 

 

ニャルラト正教会の教徒の中には、人間に混じって魚人もいる。

 

彼女を支援するディープワン海賊団のクルーたちも、普通の魚人たちとはいささか異なる、ともすれば醜い、とも取れる風貌をした魚人たちが、しかし確かに混じっていることは、紛れもない事実だ。

 

 

 

「何を、しに来た?」

 

「本当に、何も。ただ、見に。世界が最も注目するあの人の旅路を。誇り高き王妃様の、受け継がれし意志が、夢が、まだ息づいていたこの国の、その行く末を」

 

「ッ!!」

 

オトヒメ王妃。

 

気高き人だ。

 

とても優しい人だと思った。

 

武力ではなく、意志の力で、最期まで戦い抜いた。

 

復讐は何も生まない、むしろ、更なる悲劇を生み出してしまう。

 

だからやめろ、と、部外者は気安く口にする。

 

 

だが、傷つけられれば痛いし、喪われたものは二度と戻っては来ない。

 

sの胸に渦巻く憤怒は、憎悪は、消えない。

 

納得などできない。

 

生かしてはおけない。

 

同じ海の上で、まだ生きているかもしれないと思うだけで、胸が焼き尽くされてしまいそうなほどの激情を、周囲を巻き込んで燃え上がるその怨讐の炎を、歯を食い縛り、喉が焼け落ちそうな痛みとともに、呑み込んでしまえる者は、少ないのだ。

 

 

だから私は、彼女を尊敬する。

 

亡き彼女に、目の前の彼に。

 

ふたりの子供たちに、敬意を払う。

 

 

 

「恩の押し売りは、せんのか?」

 

「皆々様方が、それをお望みとあらば」

 

 

ニャルラト正教会の方針は、来る者拒まず、去る者追わず。

 

決してその手を、自発的に差し伸ばすことはない。

 

ただ、誰かが力なく伸ばした手を、誰にも顧みられることなく朽ち果てかけたその手を、そっと取るだけ。

 

 

海軍も、海賊も、人間も、魚人も関係なく、ただ必要とされた救いを、必要な分だけ。

 

 

 

「...タダ見とは、いいご身分なんじゃもん。心ばかりの見物料ぐらい支払っていっても、罰は当たらないはずじゃもん?」

 

「ええ、そうですね。まったくもって、仰る通りで」

 

ついてこい、というのはつまり、そういうことなのでしょう。

 

ダゴンさんに目配せをして、ネプチューン王の後を追います。私たちに向けられる視線は好意的なものもそうでないものも沢山。でも、よいのです。国民ひとりひとりが、それぞれの感情で、人間に対する思いを決める。それこそが、何よりの自由意思、ですものね。


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