イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか? 作:露木曽人
皆さん、幸福ですか?
最近、APP19の頃は家族への愛で邪神の魅了を簡単に弾けていた教徒さんたちが、APP24になった途端に誘惑に負け欲望に屈してしまいそうになり、慌てて邪念を振り払ってからどこか後ろめたさや罪悪感を感じている姿に何か心がざわつくものを感じてしまうことが増えた清純派聖女ニアです。
恐らくこれはイキリニャル太郎丸出しで『APP19は人外の証!!』とかドヤってた赤っ恥の黒歴史案件を掘り返されてしまっているようで羞恥心から心が熱くなっているに違いありません。
ええ、そうでなくては大変なことになってしまいます。
主に私の人間性や人格面が。
最近、どうも思考回路がよろしくない方向へ引っ張られがちで、恐らくこれもまず間違いなく絶対にイアイアの実・モデルニャルを口にしてしまったがゆえの副作用、邪神の悪影響という奴なのでしょう。
くっ!!ひょっとしたらSAN値が0突き破ってマイナス方面に突き進んでいってしまっているのかもしれません。これも全部ニャルラトホテップって奴の仕業なんだ!!絶対に赦さねェ!!ニャルラトホテプーッ!!
ただでさえ、全ての並行世界に存在するニャル因子を持つ皆さんとの同期の瞬間はほんの数マイクロ秒未満の刹那とはいえ"自分が千重人格者になったかのような錯覚"に陥りますので、元となる人格が崩壊しないように強く自我を維持しておくのも地味に大変なんですよ。
こんなことならAPP19のまま井の中の蛙やらせておいた方がまだ無害だったのでは?と思わなくもないですが、恥の上塗りを重ねてしまう前に心へのダメージがほんの致命傷で済んでよかったと私は思います。
さもなくば、主人公恥ずか死により連載打ち切りになってしまうところでしたから。
「聖女様!」
「バッカお前!大聖女様だろうが!!」
「はっ!?失礼しました!!大聖女様!」
「いえ、いいんですよ皆さん。聖女でも、大聖女でも、皆さんのお好きなように呼んでください」
海兵さんたちの手を握り、そっと冒涜的スマイルをひとつ。
そんなニア様は、海軍さんとはとても親しくさせて頂いております。
上層部はあの厄ネタがみたいな感じで冷たい視線を寄越しつつもその利用価値や危険度は軽率に手を出してしまうと火傷では済まないと理解しているため、今のところはノータッチ路線が主流派のようですね。
ですが、言い方は悪いですが、いわゆる下っ端の皆さんからは、かなりの人気を頂いております。
軍隊生活を送る独身野郎ばっかりの集団ですからね、そりゃあAPP24の..いいんですよね?APP24って本当に人外の域ですよね?
実はCOC2021でAPPの上限値が30になったんすよとか言われたら今度こそ失踪不可避なのですが。
いえ、今は自分を信じましょう。
APP24のその...ギャラクシーというか、コズミック美少女?的な?感じとは言いきれなくもないような?女がですね、ニッコリ微笑んで手を振ってくれるわけですよ。
しかもハンコックさんのように海賊ではありませんから、上官たちに叱責されることもなく大っぴらに堂々と黄色い歓声を上げられるのですから、そりゃあもう人気もウナギのぼりでしょう。
私が引き連れてきた記者の新聞方々も、ここぞとばかりに"海兵の手を屈託なく取る大聖女"の写真を撮っています。
『汗の臭いは、皆さんが正義のために頑張っていらっしゃる証拠。足の臭いは、大切な者を守るために一生懸命働いてくださっている男性の証ですもの』などと、常日頃から大丈夫、私はわかってますよアピールをしている甲斐あってか、三十代以上の男性層からのニア人気って結構高いんですよね。
「貴様ら、いささか弛んでおるようだな?」
「げっ!?」
「も、申し訳ございませんサルタン中将殿!!」
「もう、伯父様ったら!」
そんな私は今、伯父様とともに海軍G5の前線基地を訪問しています。
あくまで伯父様の公務にくっついてきた、世間知らずの箱入りお嬢様、といった感じですが、これでもお仕事で来ているんですよ?私も。
「サルタン中将!?それに、あなたは!!」
「久しいな、たしぎ大佐」
「"初めまして"、たしぎさん」
そう、記者さんたちのお目当てはこちら。
パンクハザード編で、実験施設に囚われていた子供たちを見事救出し、奪還するという大手柄を挙げた、ということになっているたしぎ大佐のお手柄を、なるべく広範囲に報道することです。
頂上決戦以降、センゴクさん、ガープさん、青雉さんというあまりにも偉大すぎる柱を何本も失った新生海軍は、現在わりと苦しい状況に立たされています。
ヴェルゴさんのようなスパイも何人か入り込んでいますし、世間からの風当たりも強く、汚職に手を染める輩もちらほらと。
そんなわけで、あまりにも海軍の名声が下落しすぎると、海の抑止力としての正義の存在感が危ぶまれてしまい、悪戯に治安が乱れたり、海軍への信用が薄まったりと、よろしくないことになってしまうのは間違いないわけで。
『納得できんか?』
『はい、いいえ。力なき者には、納得しない権利などありませんので』
『なるほど、真理だ。だが、そう自分を追い詰めすぎるな。
たとえ泥を被ったような心持ちになろうとも、時として我々は、万人のために嘘を吐き、欺瞞に口を噤まねばならん時もある。
それで救われる人間が、いるのならば』
『...はい!!』
数日前にあらかじめ、私も交えて伯父様とのお話し合いの席を設けておいたせいで、たしぎさんは笑顔の仮面を浮かべてくれています。
G5の皆さんも同様です。
そうでなくば、彼女たちはこんな茶番に耐えられなかったでしょう。
そう、海軍にもまだ揺るぎなき正義があるのだと。
海軍の正義は、人を救う正義なのだと。
この海に生きる多くの人々に、海賊どもに、信じてもらわなくてはなりませんので。
私が普段やってるアッピルも満更趣味で悪ふざけやってるわけじゃないのですよ??世論は大事ですからね、世論は。
「あなたの、あなた方G5の皆さんの行いに、敬意を表します」
「光栄です」
はい、ここで握手。
居並ぶG5の皆さん、あの地獄のような島で海賊を好きになっちまった皆さん方が一斉に敬礼する前で、たしぎさんとにこやかに握手を交わし微笑みあう私。
そんな私の後ろに佇む伯父様。
明日にはこの写真と、G5お手柄のニュースが世界的に全面報道されることでしょう。
いわゆるネームバリューを利用した表敬訪問という奴ですね。
あのニャルラト正教会の大聖女ニア様も認める海軍の偉業、というわかりやすい箔付けです。
たしぎさんはあくまで不在のスモーカーさんの代役という位置付けですが、むしろあの人が私と笑顔で握手なんかしてくれるとも思いませんので、彼女がいてくれてむしろよかったと言えるでしょう。
アラバスタで、頂上決戦で、そして今回パンクハザードで、悉く自身の無力を突きつけられ、それでもなお折れることなく、腐ってしまうことなく、立ち上がり続ける彼女の心意気を、誰がどうして笑えましょうか。
「私の方こそ、お会いできて光栄でした。あなたのような海兵さんがいらっしゃること、嬉しく思います」
「...はいッ!ありがとうございます!」
この言葉の意味の裏に込められた想いを、新聞記者さんたちは知る由もありません。
海賊と、海軍と。
運命的な偶然と巡り合わせによって、あの島から救出された子供たちは、治療が終わり次第、今でもお見舞いに足繁く通ってくる親御さんたちのところへ帰ることができるでしょう。
そして、どうしてうちの子は帰ってこなかったの!!他の子たちは帰ってきたのに!!と慟哭する親御さんたちには、ちょうど私が都合よくここにおりますので。
汚いさすが聖女汚い?いいんです、救いのない綺麗さよりも、救いのある汚さの方が、皆さんもお好きでしょう?
しかし子供、子供ですか。
実際、あまり大聖女として好感度を上げすぎてしまうのも結構問題ありなんですよね。
APP24とか、魅了を通り越して精神汚染の域に至りかねませんので。
想像してみてくださいよ。
『父ちゃんも!!母ちゃんも!!ほんとは、ほんとは俺なんかより、聖女様の方が好きなんだッ!!』
とか子供に号泣されてごらんなさいな。
確実にルフィさんの逆鱗に触れてしまうこと間違いなしです。
だからといって、じゃあその子供も魅了しちまおうぜ、とはいきません。
『だって当然だろ?大聖女様は素晴らしいお方なんだ!!俺も、父ちゃんよりも母ちゃんよりも、大聖女様が大好きだ!!ここにいる人間たちは全員そうさ!!イアイ、ア!!』
なんてフォローしてるつもりで追い討ちをかけられてしまった日には、麦わらの一味全員が絶句するコマが分割で並べられかねませんよ。
そうなってしまったら最後、大聖女ニアは大勢の人間の心を惑わし狂わせる稀代の悪女認定されて、『ぶっ潰す!!』ルート確定です。
私はそんなの嫌ですからね!!ですので、美貌も好感度調整も、何事も程々を心掛けておくことは大切です。
ええ、ほんと、切実に。