イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第3話 ネームドのオリキャラって賛否両論ですよね

主人公以外のオリキャラという存在が地雷案件な皆さんにはごめんなさいをしないといけません。

 

どうも、私です。

 

SAN値0な住民ばかりが暮らす最高級リゾートアイランドに本部を構える邪教の教祖様、救いの聖女ニアです。

 

自称ではありません。

 

恥ずかしくて自分から名乗れませんよ聖女なんて!

 

「お嬢様、お時間です」

 

「お願いします、もう少しだけ」

 

「しかし」

 

「お願いします!」

 

「...仕方ありませんね」

 

嘆息するアロハ姿のマッチョなおじ様。

 

お前そのガタイで大学教授って無理があるんと違う?と筋肉に馴染みのない日本人はツッコミたくなるような、ハリウッド男優みたいな渋いおじ様。

 

 

 

彼の名はダゴンさん。

 

前回早死にしてしまった子供を取り戻しに来たご両親にご子息をお返しした時に部屋の隅にいた黒服ふたりのうちのひとりです。

 

残りのもうひとり?まだ何も考えてな失礼、そちらについてもおいおいということで、今はダゴンさんについてお話させてください。

 

 

 

勘の鋭い方ならお気付きかもしれませんが、彼はイアイアの実・モデルダゴンの能力者です。

 

はい、視聴打ち切り決定!と思ってしまったそこのあなた、気持ちはわかります。

 

異世界転生もの主人公以外の転生者が出てくるとか、タイムスリップもので主人公以外の未来知識持ちが登場したりする展開って、賛否割れますよねかなり。

 

 

 

言うなればあれです。

 

"ときめきメモリアルオンライン、ついにサービス稼働開始!課金アイテムを女の子に貢いで全てのライバルユーザーに差をつけろ!放課後一緒に帰宅できるのは好感度(=課金総額)に応じたたった一名のみ!気になるあの子と下校するのは誰だ!?"みたいな、やべえ奴。

 

 

 

現代知識とか未来知識をアドバンテージとして無双していくような作品において、ライバルキャラというのは高確率で邪魔にしかなりません。

 

ましてそれが主人公に敵対的なポジションであるならなおさらです。

 

オフラインゲームでチート使って遊んる時に、別のチーターにいきなり乱入されたら萎えますよね、わかります。

 

 

 

ですがご安心です。

 

ダゴンさんには変な知識はありません。

 

というか、私が例外なんです。

 

ニャル様の悪ふざけの結果今こうなっているだけであって、イアイアの実にはメタ知識標準装備機能があるわけではないみたいなので、初対面の時はそりゃあもう盛大にやらかしてしまいました。

 

 

 

何をやらかしてしまったのかは思い出したくもないので聞かないでください。

 

前回言ったあれです。

 

営業マンが取引先に出かけたら自分をジャンプ漫画の二次創作小説の主人公だと思い込んでる精神異常者が出てきて、君も邪神の端末なんだろ?お互い大変だねえとか言われたらどう対応すべきか的な奴です。

 

どんなビジネス教本にも載ってませんよねそんなレアケース。

 

 

 

幸いにもダゴンさんはビジネスライクなおじさんだったので、宗教団体の幹部連中なんてこんなもんだろう、みたいなやべえ奴を見る目をそっと逸らして営業スマイルを浮かべてくれたので私の尊厳は守られましたが。

 

ついでにニャル様の大爆笑が聞こえたような気がしましたが空耳です。

 

 

 

そんなわけで、彼は私の護衛になりました。

 

教団の幹部のおじさんお爺さんたちと話をした時に、できるならイアイアの実の能力者の情報もついでに集めてくれませんかとお願いしたところ、イアイアの実・モデルダゴンの能力者である海賊がいるとのことで、教団にスカウトしてきてもらいました。

 

 

 

幸い彼はとてもビジネスライクなおじ様で、金さえ稼げればそれでいい的なスタンスだったので、今のところ関係は上手くいってます。

 

ダンディな父親とちょっと思春期の娘、みたいな感じで、いわゆるパパ活的ないやらしさは...そんなにはまあ...なくはないとは言いませんが...まあ、ね?

 

「ルフィ...助けて」

 

「当たり前だ!」

 

さて、そんなダゴンさんと私が今何をやっているかというと、原作イベントの鑑賞です。

 

お前前回と言ってること違うよな?毎回毎回言ってること違うんだけど初期設定ぐらい固めとけや!とお怒りの皆さん、すみません。

 

これに関しては私の自分の能力の調査不足というか、ニャル様を甘く見ていた結果です。

 

 

 

どこにでもいてどこにもいない、いつもいるのにいつだっていない、が売りのニャル様なんだから、空間転移ぐらい普通にできてしまいました。

 

もちろん教祖様とか聖女様とか呼ばれてる人間が勝手に不在になるのはまずいので、今ここにいる私は本体から分裂したニアB的な存在です。

 

 

 

大本のニアAは今頃島でお仕事をしているでしょう。

 

しかしなんですかね、この分裂してるのに同時進行にリアルタイムで意識の共有が進んでいるこの感じ。

 

ラーメン屋さんと牛丼屋さんで昼食を取っている自分ABが同時進行で飯食ってる結果、ラーメン食べてるのか牛丼食べてるのか脳が混乱するこの感じ。

 

口の中に広がる牛丼とラーメンの味。

 

いや、どっちだよと言われてもわかりません。

 

私自身どっちなんだろうと混乱してしまいそうになるので、あーラーメン美味しいなー牛丼美味しいなーぐらいに思考を単純化させましょう。

 

 

 

気にしたら負けです。

 

深く考えたら発狂待ったなしですので。

 

アイデアロールには失敗しておいた方が無難なのは探索者の鉄則ですね。

 

私、探索者からすれば敵側ですが。

 

余計なことは考えない。

 

何かに気付いてしまったら速やかに忘れる。

 

それが邪神と付き合っていくコツです。

 

 

 

本当はニアAとかニアBなんて呼称も不適切なものなんですよ。

 

だって、どっちも本当の私ですから。

 

仮にどちらかが海に落ちてウッカリ死んでしまったとしても、私が私であり記憶を共有している以上どちらが本物でどちらが偽物でなんて議論は意味がありません。

 

何事も深く考えない。

 

これが大事。

 

 

 

しかし深く考えずともあれですね、"ニャルっぽいこと"が大体できる、とかいうアバウトな感じ、悪魔の実の能力というよりヒロアカの個性みたいな感じですよね。

 

ヒロアカ世界で個性・ニャルで頑張ってらっしゃるあちらの世界のニャルさんはお元気でしょうか。

 

同じジャンプ漫画の二次創作小説の主人公同士頑張りたいものです。

 

 

 

「ルフィさん格好よかったですねえ。

 

さすがは」

 

主人公、と言いかけて、未来の海賊王候補、と言い直します。

 

 

 

「それでは、そろそろ教団本部にご帰還なさいますか?」

 

「そうですね、ほんとはウソップくんの生輪ゴームを見てみたかったのですが、仕方ありません」

 

ココヤシ村で黒のスーツなんて着てたら目立つことこの上ないという理由で、ラフな格好に着替えているダゴンさんの手を取り、私は空間転移を行います。

 

はい、さっきまでアーロンパーク付近にいたはずなのに、あっという間に教団本部の幹部以外立ち入り禁止の部屋に戻ってきました。

 

 

 

「護衛ありがとうございました。

 

後は引き続き私の護衛をお願いしますね」

 

目の前で人間が塩の柱に変わっても、もはや驚くこともなくなっている彼のSAN値も結構な感じなのではないでしょうか。

 

いえ、単にプロフェッショナルなので表情筋を鍛えているだけなのかもしれませんが。

 

 

 

「お帰りなさいダゴンさん。テンションの上がった私の子守は大変だったでしょう?」

 

「いえ、淑女の範疇を出ない盛り上がりぶりでした」

 

「ふふ、そう見えたならまだご安心ですね。

 

早速ですから、名物のみかんを頂きましょうか」

 

そして"聖女の間"なんてこっ恥ずかしい名前をつけられた海が一望できる部屋で仕事をしていた私は、アロハから黒服に着替え直したダゴンさんを出迎えました。

 

さっき塩の柱になった記憶も生で麦わら一味を見て大興奮してしまった記憶も普通に仕事をしていた記憶も全部ある、はい、私です。

 

ニアです。

 

私ってなんだろう?そんな風に考え始めてしまったら危険信号です。

 

深く考えすぎないようにしましょう。

 

本当は誰だって自分が何者かを一生かけて探し続けてるんだよ人生ってそういうものなんだよ的なサムシングで乗り切りましょう。

 

 

 

別に仕事の息抜きに遊んできたわけじゃないんですよ。

 

ただ、やっぱワンピ世界に来たからには、原作の名場面とか名台詞とか、生で鑑賞したいじゃないですか。

 

なので、ニャル様お得意の認識阻害を利用して、物陰からコッソリルフィくんたちの旅路を見守っていこうかなと。

 

 

 

ワンピースの原作コミックを読み返してみたら、いつの間にか背景に知らないモブ女がひとり増えてね?あれコイツイーストブルー編からグランドライン入ってもまだいねえ?いや他人の空似の別人だろ?みたいに考察班が盛り上がる程度の存在感で、背景モブに徹しながら見守っていこうかなと。

 

 

 

悪趣味?あーあー聞こえませーん!文句は折角ワンピ世界にいるんだからさー生イベント観てきなよーそしてクラウド同期で私たちにも体験させて(はあと)と漫画喫茶でワンピース全巻一気読みしてくれやがりました別の世界のニャルガールさんに言ってあげてください。

 

面白いですよねワンピース。

 

 

 

過去回想が長すぎるので単行本一気読みしないともどかしい感はありますが。

 

覚えてます?ルフィくんが旅立ってからアラバスタ編が終わるまでって大体二十何巻ぐらいまでしか使ってないんですよ。

 

今だったらココヤシ村編だけで過去回想込みで十巻ぐらい使うんじゃないですかね?すみません、話が逸れました。

 

 

 

「お嬢様、お茶でございますです」

 

教団本部でお仕事してる私の護衛のために、お留守番だったもうひとりの黒服さんがお茶を淹れてくれる。

 

ちなみに私の護衛をする際にはサングラスは外してもらうようにお願いしている。

 

だって黒服サングラスが部屋の中にふたりもいたら威圧感すごくないですか?ちょっと耐えられないですね...

 

「ありがとう。結構多めに買ってしまったので、よろしかったらおふたりもぜひお召し上がりになってくださいね」

 

「ありがとうございます。ですが勤務中ですので」

 

「同じく」

 

勤務中か、それならしょうがない。

 

お仕事してる人のお邪魔をしてはいけませんからね、これ社会人の鉄則ですわ。

 

 

 

しょうがないのでひとりでみかんを食べ始めた私。

 

うーん、これが本物のココヤシ村のみかんか!甘くて美味しーい!ひとりで食べててもちょっと寂しいので、並行世界のニャルさんたちにもお裾分けしてあげましょう。


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