イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第23話 破滅の光の足音が聞こえてくるヨ

皆さん、ハッピーバレンタイン(遅

 

ジャンプ漫画の週刊連載を追いかける別世界のニャルさんと仲よくなってから、毎週月曜はニャル様に無許可で勝手に彼女と同期するようになったのですが、長かった過去回想パートがようやく終わると思ったら更なる過去回想パートが始まった時の、もうそろそろ本編に戻ってほしいなあという気持ちと、連載が長期化するに伴いヒロインが増え、話の本筋そっちのけで主人公のハーレム祭りが始まり、今回はヒロインAとのイチャイチャ回、次回はヒロインBと、その次はヒロインC回を予定、と本編が一向に進まなくなったネット小説に対するアレな気持ちって、ちょっと似てる、と最近感じた聖女ニアです。

 

単行本一気読みなら気にならないのですが、週刊連載だとどうしてもね。

 

「お祭りですか?」

 

「ええ。島民の皆様より多数要望が寄せられておりまして」

 

シャンタークさんが持ってきた陳情によると、何でもドリームアイランドもかなり大きくなってきたので、ここらで一発、島の名物になるような感謝祭を開きたい、とのことで。感謝?何に?ひょっとしてニャル様に??やめておいた方がいいんじゃない?と思いましたが、そうでした、私は救いの聖女でした。

 

「最近、ようやく過激派テロ組織の壊滅も済んだことですし、残党狩りも兼ねて、人寄せの集客イベントを開くというのは悪くない発想かもしれません」

 

「ダゴンさん、言い方、言い方!!」

 

ちょうど帰港していたダゴンさんもいたので、三人でどうしましょうかねえと顔を突き合わせます。私としては開催するのはやぶさかではないのですが、気になるのがいつか未来の私から送られてきた未来の出来事。

 

そうなんですよねえ、ルフィさんたちが、この島へとうとうやってきちゃうかもしれないんですよねえ。

 

ドリームアイランドで行われる年に一度の奇跡の祭り、ドリームカーニバルだかドリームフェスティバルだかのチラシをこの近海の島で手に入れ、興味を持ってしまったルフィさんの号令の下、蘇った世界最強クラスの実力を持つ伝説の猛者たちが集うコロッセオ、世界中の大金持ちが大勢集うパーティ、世界一のアトラクション数を誇る超巨大遊園地ドリーマーズランド、世界最高峰の学術研究機関であるニア大学、そして一目拝めただけで寿命が19年延びるなどと噂される超越美少女聖女などを目的に、皆さんノリノリでこの島にやってきてしまうわけで。

 

ひょっとしてここでお祭りのアイデアを却下すればあの劇場版っぽい大騒動とは無縁でいられるのでは?と思わなくもないのですが、そうは問屋が卸しません。まず、反対する理由がないというのがひとつ。

 

この島に住まう大勢の人々が、せっかく毎年恒例となるような楽しいお祭りをやろうよ!!と盛り上がっているのに、大聖女が『特に理由はないけどなんかイヤ!!』と反対しようものなら、島民たちのテンションも私の好感度も盛り下がること間違いなしです。

 

ワンピースに登場する美女は残念率100%のジンクスがあるっていうし、別にそれでもいいじゃないかと思われるかもしれませんが、あれは敵の美女特有の現象なので味方側であればその限りではないと思うんですよね私。

 

ワンピの残念な美女と言われて真っ先に思い浮かぶであろうハンコックさん、私のイチオシのカリファさん、シリアスに徹しながらもG5の皆さんに大絶賛されて照れ顔を見せたモネさん、ものすごーーーく惚れっぽいベビ-5さんなど、敵として一度は麦わらの一味に刃を向けたとびっきりの美女の皆さんはいずれも思わずツッコミを入れてしまいたくなるような残念ポイントを抱えていらっしゃいますが、あれはただの嫌な敵で終わらせないための、存外憎めない奴じゃんと思わせるためのオダセン聖なりの気遣いの賜物だと思われます。

 

実際彼女たちは皆一様にガンギマリの覚悟を持って、普段のギャグキャラのような側面が嘘のようにシリアスな激闘を経て私たちの心に鮮烈な印象を残してくれました。

 

これがも徹頭徹尾付け入る隙のない、ただ美しいだけの嫌な女だったりしたら、どうでしょう。そういう意味でも、ワンピースの美女たちが残念なのは、恐らく敵役として描かれた彼女たちだって、少しでも読者に好きになってもらおうという創造神の気遣いなのかもしれません。

 

いえ、私のただの想像ですが。作者の人そこまで考えてないと思うよ?と言われてしまったらぐうの音も出ませんが。

 

 

ともかく、いくら宇宙レベルの美少女であるこの私だからといって、無理に残念な美少女としてのキャラづけを頑張る必要はないのではないか、と言いたいのです。私は終始一貫して、麦わらの一味の味方。だってバルトロメオさんばりに大大大ファンですし。

 

「わかりました、やりましょう」

 

ここで拒否して未来を変えることで劇場版を回避しようだなんて姑息な手に走ろうものならば、ニャル様がどんなちょっかいをかけてくるかわかったものではありませんし。それならばいっそ、最初からやるつもりでこちらから手を回しておくにこしたことはありませんよね。

 

既に私のところまで陳情書が上がってきているということは、島民の皆さんたちは少なくとも許可が下り次第開催に向けて動き出す準備が整っているということでしょう。気の早い幹部の皆さん何かは既に関係各所への根回しを始めていてもおかしくはありませんし。半ば事後承諾に近い形で、後は私が判子を押すだけの状況というのは中々にそれもどうなのと思わなくはありませんが、私も個人的に、お祭りは嫌いではありません。

 

思い出しますねえ、まだ幼かったあの頃。伯父様に連れられて行った、海軍基地でのお祭りを。屋台のグルメや花火というものは、いつの時代も人々の心を浮き足立たせてくれます。この血生臭い事件の多い大海賊時代においては、少しでも一般市民の皆さんの心の慰めにもなることでしょう。

 

「それはようございました。皆様さぞお喜びになられますでしょう。つきましては、ニア様には是非こちらの男性の場合は褌一丁、ないし女性の場合は際どいハイグレビキニ姿になった選りすぐりの猛者たち八人が担ぐお神輿の方にお座り頂きまして、島内一周パレードをとのことで」

 

「絶対に嫌ですけれど!?何で人力運搬なんですか!?普通にオープンカメ車でいいじゃないですか!!」

 

「はあ、それが、コロッセオの運営責任者の方から、上位八名のみがニア様神輿を担ぐ栄誉に与れる権利を勝ち取るための、第1回お神輿カップを開催したいとの要望が」

 

「すぐに中止するよう伝えてください!!」

 

「直ちに」

 

優雅に一礼したシャンタークさんを見送り、咄嗟に立ち上がってしまった私は力なく椅子に座り項垂れる。何が悲しくてダークキングにならなければならないのでしょう。人間に神輿を担がせてその上の玉座に座って移動とか、完全に悪役丸出しじゃないですか。

 

「お嬢様、お気を確かに」

 

「いえ、大丈夫です。しかしまあ、危うく人間神輿にされる寸前とは思いませんでした」

 

何だかどっと疲れてしまいましたが、とにかくやると決めたからにはお祭りに協力的で前向きな態度を取り続けなければなりません。幸い、私がちらりとだけ見たあの光景では、果物屋のおじさんは毎年開かれていると言っていました。つまり、初開催となる今年に限ってはルフィさんたちは来ない!

 

即ち、来年までの身の安全が約束されるわけですね!ならば、ここで乗らない手はないでしょう。少なくとも、いつ来るかいつ来るかとヤキモキする必要がなくなるわけですから、私の精神安定のためにもここは是非賛成しておく方向で。

 

え?映画版はパラレル時空なんだからそんなん知ったこっちゃないのではって?...気づかなかったことにしましょう。


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