イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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一度始めたからには、頑張って最後まで書き上げたいと思いますん
モチベに直結しますので、応援・感想のコメント、できればよろしくお願いしまつ!!
一件一件お返事することはできていない身で申し訳ないのですが、全て大切に読ませて頂いておりますん!!


第25話 FILM NIGHTMAЯE PART 1/B

青い空と青い海の間を、一羽の白い鳥が飛んでいく。やがて舞い降りたのは、高い高い塔の天辺にある、空中庭園だ。そこに、彼女はいた。白いワンピースを纏い、咲き乱れる青い薔薇の園に置かれた小さなテーブルと椅子で、ティータイムを楽しんでいる最中らしい。

 

美しい少女だった。彼女は突如、テーブルに舞い降りてきた鳥に驚くこともなく、小さく砕いたスコーンの破片を、そっとテーブルクロスの上に撒いてやる。鳥は警戒する様子もなく、美味そうにそれを啄み始めた。

 

「あ...」

 

ごう、と突然の強風が吹いた。その突風を羽ばたく好機と見たのか、バサリ、と、羽を広げた鳥が、あっという間に青空へと吸い込まれるように飛び去っていく。残された少女の手元には、どこからともなく風に乗って運ばれてきた、一枚の紙きれ。

 

モンキー・D・ルフィ。その懸賞金、5億ベリー。少女が手配書に手を伸ばそうとすると、またも、潮風に舞い上がったそれが、青い薔薇の花弁とともに、青空へと吸い込まれていく。椅子から立ち上がり、太陽に手を伸ばす少女。だが、手配書に届くことはない。

 

まるでかごの中の小鳥のような少女はしかし、少し寂しそうに、ふっと微笑みを浮かべるだけだった。

 

 

 

「うひょーっ!!うんまそー!!」

 

「ああ、美味いぜェ海賊の兄ちゃん!!何てったってうちの赤ブドウは聖女様御用達だからな!!」

 

新世界、ドロップアウ島。本流の航路からは外れた、小さな小さな辺境の島。大嵐のせいで次の島へ向かうルートから少し逸れてしまい、この島へとやってきた麦わらの一味は、物資補給のため街に繰り出していた。

 

「聖女?聖女って、あのニャルラト正教会の大聖女ニア?」

 

「誰だ?そいつ!」

 

「聖女様、だ!!海賊の兄ちゃん、あんたニア様を知らんのかい?こりゃあおっどろいた!!」

 

代金を払う前に、店先に並べられた瑞々しい赤ブドウをバクバクと食べまくるルフィに、クリマタクトによる強烈な一撃をお見舞いしたナミが尋ねる。殴られたルフィは大きなタンコブをこさえながらも、気にすることなく問うた。

 

だが、そんなことを問われるのも心外、とばかりに、果物屋のオヤジは店の壁にデカデカと拡大コピーされて貼られた、清楚そうな美少女のポスターを指さす。

 

「この世の楽園、ドリームアイランドにおわす我らが救いの女神様さ!!ただ可愛いだけじゃねえ!!優しくて、慈悲深くて、貧者の救済にも熱心でよお!!海賊どもに好き勝手メチャクチャに荒らされちまってるこの海で、最後に縋れる唯一の光が彼女ってわけさ!!」

 

「うっさんくさー!!」

 

「そういうのってよー、大抵詐欺なんじゃねーの??」

 

「ああ、何と麗しの女神様...写真越しでもこの胸に伝わってくるこの美貌、この慈悲深さ!!真の美しさとはかくも内面から滲み出るものなのか!!おいテメエウソップ!!いい加減なこと言ってんじゃねえぞ!!大聖女ニア様が詐欺なんぞ働くわきゃねえだろうが!!」

 

「早速洗脳されてる奴がひとりいるし...」

 

宗教、というものをはなっから信用していない様子のナミの下へ、別の店で野菜を買い込んでいたウソップとサンジが戻ってくる。目利きをしていたサンジなどは、既にポスターの美少女にメロメロのようだ。

 

そんな一同の背後を、カランカラン、と鐘を鳴らしながら、ドラキュラやミイラ、キョンシーにゾンビなどの仮装をした一団が、楽しげに音楽を奏でながら練り歩いていく。

 

「何だこれ?」

 

「ドリームカーニバル?」

 

彼らが配っているのは、どうやらチラシのようだ。

 

「大聖女ニア様感謝祭?」

 

「ドリームカーニバルゥ?」

 

「はは!!兄ちゃんたち、運がよかったな!!もうすぐドリームアイランドじゃあ、盛大な祭りが開かれるんだぜ!!その祭りに参加すりゃあ、聖女様の奇跡のお力でよ、死んじまった人間に、もういっぺんだけ会えるってもっぱらの噂さ!!」

 

「死んだ人間に...」

 

「...会える?」

 

「おうよ!!元々あの島はな、死んじまった人間の幽霊が出るってもっぱらの噂で誰も寄り付かなかったんだがよ。聖女様が奇跡のお力で荒ぶる幽霊たちを鎮めてくだすったもんだから、今じゃ誰もが安全に、死んじまった人間に再会できるってんだぜ?」

 

「ますますうっさんくさー!!ちょっとルフィ...ルフィ?」

 

珍しく、深刻な表情でチラシを食い入るように見つめるルフィに、ナミ、サンジ、ウソップは顔を見合わせる。赤ブドウを食べていた手が止まるぐらい、そちらに興味を惹かれているようだ。死者。三人の脳裏に浮かんだのは、亡きルフィの兄、エースの貌だった。

 

「なあ、おっさん」

 

「うん?」

 

「そこに行きゃあ、俺ももう一度、会えんのかな...死んじゃった、兄ちゃんに」

 

「気になるってェんなら、行ってみりゃあいいさ!!」

 

 

 

「行くぞ!!ドリームアイランド!!」

 

『おー!!』

 

サウザンドサニー号に戻ったルフィの号令により、一同はドリームアイランドを目指すこととなった。

 

「やめようぜみんな!!ほんとにオバケが出てきちゃったらどうするんだよォ!!」

 

「そうですよ!!死んだ人間が蘇るなんてそんな眉唾な!!ま、私一度死んで蘇ってるんですけれど!!ヨホホホホ!!」

 

「おいブルック、あんまチョッパーを脅かしてやるなよ」

 

涙目でビビるチョッパーに、得意のスカルジョークで場を和ませるブルック。世界最強クラスの死者たちとも戦える!!が謳い文句のドリームコロッセオに興味津々のゾロに、聖女ニアの美貌にまんまと釣られたサンジ。フランキーはどちらかというと噂を信じていないようだ。

 

「大丈夫だって!!それによォ、せっかくのデッケェ祭りなんだから、参加しなくちゃ損だろ?」

 

ニシシシシ!!といつもの調子で笑うルフィに、珍しく『実は俺は幽霊に会ってはいけない病なんだ!!』などと仮病を始めることもなく真剣な表情でいるウソップとナミは複雑な心境のようだ。とはいえ、死者にもう一度だけ会える、何て謳い文句に半信半疑なのは皆同じ。

 

「本当よ」

 

だが、そんな賑やかな空気を遮ったのは、船室から出てきたニコ・ロビンだった。

 

「ロビンちゃん?」

 

「何か知ってるの?」

 

「ええ。私はあなたたちに出会う前に一度、彼女に会ったことがある」

 

衝撃の告白に、一同の視線がロビンに集まる。

 

「彼女の持つ悪魔の実の力は本物だった。あの時少しだけ話せた私の母が、偽物だったとはとても思えない」

 

「お母さん?」

 

「ええ」

 

グルリ、とロビンは全員の顔を見渡す。あなたたちなら、きっと大丈夫だとは思うけれど。そんな意味を込めた視線で。

 

「気を強く持ちなさい。さもないと、あの島から出られなくなるかもしれない」

 

「ほらーやっぱり!!今からでも行くのやめようぜ!?な!?な!?」

 

涙目で暴れるチョッパーを抱きかかえながら、ルフィがロビンを見つめた。他のクルーたちも、その迫力に表情を引き締めている。死んだはずの母との再会。少なくとも、ウソップやサンジ、ナミにとっては無視できない言葉だ。

 

「なあロビン、その聖女ってのは、ひょっとして悪い奴なのか?」

 

「...いいえ。少なくとも、彼女から悪意は感じられなかった」

 

何とも言えない気まずい沈黙が船を支配する。だが、船は一路ドリームアイランドへ。その島影が見えてきたのは、出航してから数日後のことだった。


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