イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第27話 FILM NIGHTMAЯE PART 3/B

「うっひょォー!!うんまそーォ!!」

 

「これ、全部食べ放題なのかッ!?」

 

「ええ、もちろんでございます。好きなものを、好きなだけお召し上がりください」

 

シャンタークに一通り島を案内された麦わらの一味は、彼と別れを告げた後、居並ぶ高級ホテルの中から今夜の宿を決めると、部屋に荷物を一旦置くことにした。

 

夕方からのパレードが始まるまでは、各自自由行動だ。だが、その前にやることといえば腹ごしらえである。

 

「うんめえー!!」

 

「何だこれ、食べたことない食材だぞッ!!」

 

「こちらもイケますよー!!」

 

「へえ、変わった風味ね」

 

丁度お昼時なだけあってか、島内のレストランはどこも混雑していたが、腹一杯食いてェ!!というルフィの容貌と、なるべく安く済ませたい、というナミの要望が一致した結果、選ばれたのは、ビッフェバイキングをやっているレストランだ。

 

ガツガツと、まるで蝗害もかくやとばかりに店中の料理を食べ尽くさん勢いで大量に食事をかっ込んでいくルフィたちだが、さすがプロフェッショナルなだけあってか、店員たちも慣れたもの。

 

次から次へと補充されていく食事が、次から次へと胃袋へ消えていく。もはや、ちょっとした戦いの様相ですらあった。食卓は戦場だ、というのはまさに、このような状況を言うのかもしれない。

 

「はァ~食った食ったァ!!」

 

「美味かったー!!」

 

「よっしゃ、それじゃ腹ごなしに、思いっきり遊ぼうじゃねえか!!」

 

『おー!!』

 

「どう?サンジくん」

 

「よくお似合いでっす!!」

 

「これは?」

 

「世界一お似合いですとも!!」

 

「こっちはどう??」

 

「お似合いでーっす!!」

 

島の南のショッピングエリアに向かったのは、ナミとサンジだ。世界中の、ありとあらゆる服飾や宝飾が集まるこの街で、思いっきりお買いものを楽しみたい!!というのは多くの女性の夢である。多くの女性誌などで、頻繁に特集が組まれる程度には。

 

そんな夢の超広大なショッピングモールで、お買いものを楽しむナミ。その荷物持ちを買って出たサンジも、次から次へと流行の最先端の洋服を試着していくナミのファッションショーにご満悦のようだ。

 

「なあロビン!!凄いぞ!!ここは知識の宝庫だ!!最先端技術の山だ!!」

 

「そう、よかったわね」

 

ロビンとフランキーは、島の西の大学・研究施設エリアに来ていた。ここでは世界最先端の科学者や研究者たちが、こぞって多種多様な分野での研究を推し進めており、申し込みをすれば一般人でも見学したり、授業を受講することができる。

 

さすがにロビンの求めるポーネグリフの情報こそなかったものの、入館料さえ払えば巨大図書館で有名な考古学者が発表した論文やニア大学の研究チームが現地調査を行った際のレポートなど、希少な文献に好きなだけ目を通すことができる、というのは得難い経験だった。

 

「お久しぶりですね、強き海賊」

 

「お前はあの時の...!!」

 

「あなたに敗れてから、私はここで何年も研鑽を続けてきました。よもやあの時の私とは思わないことです」

 

「はッ!!上等だぜ!!」

 

島の東、数多の猛者たちが生者、死者を問わず古今東西から集まるドリームコロッセオ。入場料さえ払えば誰でも観戦でき、誰でも無料で試合に出場できる闘技場にて、かつてスリラーバークにて勝利したワノ国の侍と再会したゾロは、思う存分、死者たちと戦い続ける。

 

あいつも強そう、こいつも強そう、と、かつては世界最強、世界一などと謳われていた武術の達人たちが、まるで極上のご馳走ばかりが好きなだけ食べ放題と言わんばかりにゴロゴロしているこの闘技場は、なるほど危険な場所だと実感する。ロビンの言うように、数年島から出られなくなっちまいそうだ、と痛感する程に。

 

「うっひょー!!」

 

「ギャーッ!?」

 

「次はあれ乗ろうぜ!!」

 

残りのメンバーは、島の北側、世界でも有数の巨大遊園地、ドリーマーズランドにて、とても一日では乗り切れない量の絶叫マシンに片っ端から挑戦していた。何せ、一回乗るだけでも30時間待ちから5時間待ちはザラなのだ。

 

「すんげェーいい眺め!!」

 

「見ろよ!遠くの島までよーく見えるぞ!」

 

観覧車に乗ってはしゃぐルフィ、ブルック、チョッパー、ウソップ。だが、ルフィは観覧車のゴンドラが最高点に到達した際に、何かに気づいたらしい。

 

「あっちの方がまだ高ェじゃねえか!」

 

「あーほんとだな!」

 

この島のシンボル、ドリームタワー。それが島中どこからでも見えるように、あえてこの島の建築物は全て高さを抑えられているという。その唯一の例外が、この観覧車だ。だが、観覧車よりも、はるかにタワーは高い。一般公開されているという展望台すらも、遥かに上だ。

 

「よーし、次はあっち行ってみっか!!」

 

「え?」

 

「ゴムゴムのォー!!」

 

『ルフィ―!?』

 

「ルフィ―さん!?」

 

三人が呼び止めるのも聞かず、ルフィはゴムの腕を思いっきり伸ばし、ドリームタワー目がけてすっ飛んでいく。自由気まま、気の向くままに、誰よりも奔放な男。それが、ルフィという男だ。

 

「おー!!すっげェ眺め!!」

 

建物から建物へ、屋根伝いに移動し、戻ってきたタワーの外壁を、伸ばした腕で一気に天辺まで駆け上がる。展望台すらもはるかに通りすぎ、やがてルフィが到達したのは、高い高いタワーの天辺に広がる、美しい空中庭園だった。

 

標高666mという高さに吹く強烈な強風を緩和し遮るためか、強化ガラスでドーム状に守られている。スイッチ操作で開閉できるようであったが、今は閉ざされているため中に入ることは難しそうであったが、幸いにもいくつか大きな通風孔があったため、そこから内部へと入る。

 

「いい眺めだなー!!」

 

空島ほどではないが、およそ普通の人間には縁遠い高さの建物だ。強化ガラスに触れながら、しばしその絶景を楽しむルフィ。

 

「どなたかいらっしゃるのですか?」

 

「ん?」

 

「あなたは...麦わらの、ルフィさん?どうしてここに?」

 

背後から声をかけられ、振り向くルフィ。そこに立っていたのは、タワーの麓で会ったあの聖女だ。確か、ニアと言ったか。

 

「すげェ高さだったからさ、天辺まで昇ってみたくなったんだ!!ちょっと行きすぎちまったけどな!!」

 

「まあ。そうでしたか。いきなりだったもので、驚きました」

 

聖女はいきなりの不法侵入者に驚くこともなく、懸賞金5億ベリーの海賊に臆することもなく、ただ微笑みながら立っている。

 

「なあ、そういやさ。お前、死んだ奴に会わせてくれるって本当なの」

 

「そこで何をしている」

 

ルフィの声を遮ったのは、いつの間にか聖女の背後に立っていたひとりの男だった。海軍のコートをまとい、聖女を背後に庇うようにその前へ歩み出ると、ルフィをジロリと一瞥する。手強い男だ、とルフィの本能が一瞬で察した。

 

いかめしい顔、よく鍛えられた頑強そうな肉体。何よりも、その全身に纏う覇気が、その男が只者ではないことを窺わせる。まるで四皇クラスにも匹敵するかのような威圧感にも、ルフィは臆することなく拳を握りしめた。

 

「この場所への部外者の立ち入りは禁じられている」

 

「何だよケチ!!いいじゃんかちょっとぐらい!!」

 

「出ていけ。ここはニアのための場所だ」

 

「オッサン、俺はその女に大事な用があるんだ!!だからッ!?」

 

「伯父様!!」

 

ごう!!と目の前に靴底が迫り、ルフィが咄嗟にゴムの首を九十度右に曲げてそれを避ける。衝撃波で庭園に青い薔薇の花弁が舞い上がり、聖女が声を張り上げた。

 

「今のは警告だ。おとなしく出ていくというのならば、これ以上手荒な真似はしない」

 

「嫌だね!!おい女!!答えろ!!お前は本当に死んだ人間と話をさせてくれるのか!?」

 

「は、はい!!本当です!!」

 

「ニア、少し下がっていなさい」

 

「伯父様、あまり手荒なことは...」

 

伯父様、と呼ばれているからには、海軍将校風の男はニアの伯父なのだろう。姪を守るように、聖女とルフィの間に立ち、忌ま忌ましそうに顔を顰める。

 

「だから海賊は嫌いなんだ。自由、自由とバカのひとつ覚えのように騒ぎ立て、社会のルールも碌に守れやしない」

 

「うおッ!?」

 

突然背後に回り込まれ、首を削ぎ落とさんばかりの強烈な蹴りから逃れるルフィ。だがその一瞬の隙を突いて、男はルフィの頭から、大事な麦わら帽子を剥ぎ取った。

 

「おい!!返せ!!」

 

「ふむ。ならば君の言葉を拝借しよう。何だよケチ、いいじゃんかちょっとぐらい」

 

「この!!」

 

「やめてくださいふたりとも!!」

 

至極真面目な口ぶりで、先ほどのルフィが口にした言葉を吐き出した男が、ヒラヒラと手の平で麦わら帽子を弄び始め、激昂したルフィが射出された砲弾のように殴りかかり、聖女が叫ぶ。

 

「覚えておくといい、麦わら。君がルールを無視して他人のテリトリーへと勝手に侵入することが自由ならば、我々にはそれを撃退する自由がある」

 

「こん、のォー!?」

 

ガバ!!っとルフィは、ベッドの上で跳ね起きた。慌てて周囲を見回すと、そこは今夜宿泊するはずのホテルの部屋だ。慌てて頭に手をやると、大事な麦わら帽子が確かにある。

 

「ハァ、ハァ...夢??じゃ、ないよな??一体どうなってやがんだ...」

 

窓の外は、どっぷりと日が暮れかけている。西日の沈みかけた空は、黒と橙の不気味なコントラストに彩られており、それを串刺しにするかのように、ライトアップされたドリームタワーが見えた。

 

自分はたった今まで、あの塔の天辺の、空中庭園にいたはずなのに。枕元の時計を見ると、もうすぐパレードの開始時刻だ。時間までに戻ってくること!!戻ってこなかったら置いてっちゃうわよ!!と念押ししていたナミの貌を思い出す。

 

何が起きた?何かが起きた。何か不思議なことが。それだけは、紛れもない事実だった。


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