イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第28話 FILM NIGHTMAЯE PART 4/B

「なあみんな、この島、何か変だぞ」

 

「変って?」

 

「何が?」

 

とりあえず、ホテルのロビーに降りてみると、そこには仲間たちが集合していた。

 

「おいルフィ、いきなりどこ行ってたんだよ!」

 

「心配したんだぞ!」

 

話しかけてくるウソップとチョッパーに、悪ィと謝罪しながら、ルフィは先程まであったことを仲間たちに話し始める。

 

「あんたねェ!!いきなり不法侵入とか何考えてんの!!この島を牛耳ってる宗教の親玉にいきなり喧嘩売って、追い出されでもしたらどうすんのよ!!」

 

「まあまあ、それで?」

 

「気がついたらホテルの部屋にいたんだ。帽子もほら、ちゃんとある」

 

「夢でも見た、ってわけじゃ、なさそうだな?」

 

ルフィの体験した不思議な話に、考え込む一同。

 

「大方、悪魔の実の能力者なんじゃねえの?」

 

「恐らく、それが正解ね」

 

「ロビン!!」

 

ホテルのエントランスでも配布されているニャルラト正教会のパンフレットを一冊もらってきたロビンの言葉に、一同が視線を向ける。

 

「あなたが戦ったというのは、この男?」

 

「あ、こいつだ!!間違いねェ!!」

 

「しーッ!!静かにしろい!!」

 

「正教会のお偉いさんと戦ったなんて知られたら、周りの信者たちがどう思うか分かったもんじゃねェな」

 

ロビンが開いたページには、ニャルラト正教会の幹部の名が載っていた。

 

大聖女ニア。

 

その敬虔なる教徒を自称する名うての海賊、"深淵"のダゴン。その護衛や島の治安維持を務める猟犬部隊の隊長、サンジを止めた黒人の護衛、"猟犬"ティンダー・ロス。

 

彼女に直接仕える老執事、"死神執事"シャンターク。教団のパトロン団体である13使徒に名を列ね、なおかつ使徒たちの中で最も高い地位にいるという"夜の騎士"ゴーント海軍中将。

 

そして、もうひとりの海軍中将であり、大聖女ニアの伯父、"夢見"のサルタン。以上五名が、ニャルラト正教会の中核をなす人物であるらしく、それぞれの写真やインタビュー記事などが掲載されている。

 

「夢見、ってことは、やっぱり夢に関する能力者なのかな?」

 

「少なくとも、ルフィがその能力を食らったのは間違いなさそうだ」

 

「夢から覚めるみたいに、他人をベッドの中にワープさせる能力かしら?」

 

「おいおい、そんな相手とどう戦うってんだよ!!そもそも戦う必要なんかねえだろ!?」

 

「ま、そりゃ尤もだ」

 

ウソップの言葉に、フランキーが頷く。

 

「ここ見ろよ。聖女様に面会したけりゃ、ドリームタワー一階で手続きを踏んで申請すりゃいいって書いてあんだろ。だったらいきなり塔の天辺に乗り込んだりするよか、こっちの方法で頼んだ方がよっぽど確実だぜ?」

 

「でも、こんなことがあった後で会ってもらえるかしら?」

 

一瞬黙り込んでしまう一同に、ルフィはすくっとソファから立ち上がった。

 

「俺、行くよ。あいつ、言ってたんだ。噂は本当だって。だったら俺、もう一度だけ...エースに会いたい!!」

 

「だろうな」

 

「そう言うと思った」

 

「とりあえず、行くだけ行ってみましょうか」

 

麦わらの一味が、すくっと立ち上がる。ルフィの兄、エース。彼をあの頂上決戦で亡くしてから、仲間たちはそれぞれの場所で、二年を過ごした。

 

ルフィにとって、エースはそれだけ大切な兄だったのだ。もしも、もしももう一度だけ、本当に会えるというのならば、それに縋らない手はない。

 

『皆様、お待たせ致しましたー!!ただいまより、"エレクトリックde光るパレード"が出発致します!!黄金に輝くニア様お神輿を担ぐのは、今宵この一瞬のためだけに、群がる猛者たちの中から勝ち上がった八人の強者たち!!』

 

その時、突然、島のあちこちに設置されたスピーカーから、可愛らしい女性の声でアナウンスが始まった。この島で流れるアナウンスの大半は、彼女が担当しているのかもしれない。

 

『それでは生者の皆様も死者の皆様も、一夜限りの儚い夢のお祭りを、張り切って楽しみましょう!!』

 

「行こう!!」

 

『おー!!』

 

お祭りのイルミネーションでライトアップされた豪華ホテルの噴水の前で、一列に並んだ麦わらの一味。その背後で、七色に光り輝く噴水が夜空に美しい虹色を描く。

 

通りのあちこちに屋台が居並ぶ夜の街を、仮装した島民が、見物客たちが、楽しげに歩いていく。スピーカーからは祭囃子や陽気な音楽が代わる代わる演奏され、誰かの楽しげな話し声が、笑顔が、光と影が踊る街に溢れ出す。

 

普段のルフィであったならば、美味そうな肉ー!!と、串焼き肉の屋台に飛び込んでいっただろう。だが、今は違う。もう一度、エースに会う。会って話をする。心の中にあるのは、ただそれだけ。

 

「あ」

 

「あ」

 

だから、こんな再会は予想外だったのだ。まさか串焼き肉の屋台の暖簾から、ひょっこり串焼きをくわえたエースが出てくるなんて。

 

 

「よう、久しぶりだなルフィ」

 

「エー...ス」

 

 

 

「おーい!!みんなどこ行っちゃったんだよー!!」

 

「まずいな、はぐれちまったか」

 

チョッパーを肩車したフランキーが、キョロキョロ周囲を見回すが、仲間たちの姿は見えない。どうやら人混みがあまりにも多すぎたため、途中ではぐれてしまったようだ。元より、集団行動のできない団体である。

 

「あ!?え!?」

 

「おいチョッパー、どうし...」

 

ボタリ、と、フランキーの頭に、何かが落ちてきた。ボタボタ、ジョバっと大量に降るそれは、涙。そうだとわかったのは、フランキーの目からもそれが流れ落ちたからだ。

 

「ドクター?」

 

「よう、随分とまあ、久しぶりじゃねェか!エッエッエッエッエ!!」

 

「トムさん...本当にあんたなのか...!」

 

「たっはっはっはっは!!随分とまあ、でかくなりやがったなフランキー!!」

 

ドクターヒルルク。伝説の造船技師、トム。本来ならば面識などないはずのふたりが、小さな屋台で酒を酌み交わしていた。

 

 

「ねえ、何かあっちこっちから泣き声が聞こえない?」

 

「おいおい勘弁してくれよ!!そんな怪談めいたはな...し...」

 

はぐれた仲間たちを探すため、歩き回っていたナミは突然立ち止まったウソップの背中に激突してしまう。

 

「ちょっと、急に立ち止まらないでよウソップ!!」

 

何なのよもう、と顔を上げたナミの目に、信じられない人の顔が映り込む。

 

「ベルメール、さん?」

 

「なーによ、そんな怖い顔しちゃって。久しぶりに会ったんだからさ、笑ってくれても罰は当たんないんじゃない?」

 

「母ちゃん...いいやこれは夢だ、これもきっと夢見のサルタンの夢攻撃に違いねェ...」

 

「はは、母さんも、にわかには信じがたいけどね」

 

血の繋がりはなくとも、確かに自分たち姉妹を育ててくれた母、ベルメール。病床に没した母バンキーナ。ふたりがそれぞれに飲んでいたのは、屋台で売られている甘酒だ。

 

 

「ヨホホホホ!!私、仮装しなくとも違和感ゼロですね!!時にそちらの可愛らしいお嬢さん、もしよろしければ、パンツ見せて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「おいブルック、オメエこんな時にま...で」

 

「あははは!!ねえゾロ、すっごくユニークなお友達ができたんだね!!」

 

ひょい、と腰かけていた樽の上から降りた少女。ありえない、とゾロの胸に、熱いものが溜まっていく。月明かりに照らされた、少女の名はくいな。あの日から、少しも成長していない少女の姿に目を見開くゾロ。

 

「おいおいブルック、さすがにこんな小さい子相手にセクハラはダメだろ!!」

 

「そうそう!!船長が見たら泣くぜ?」

 

「船長たちは来てねェのかァ?まあ、俺らが死んでからたったの五十年だ!!意外とまだ生きてんのかもしれねェな!!」

 

「ヨホ?」

 

通りの向こう、屋台で買ってきたものを座って食べられるように、椅子やテーブルが設置されている広場。

 

そこから千鳥足で現れた船員と、その背後で宴会をやっていたのは、毒で死んでしまった、かつてのルンバ―海賊団の仲間たち。

 

 

「おいロビンちゃん!!これって!!」

 

「ええ、間違いないでしょうね。大聖女ニアの、イアイアの実の能力!!」

 

島のあちこちから、すすり泣きが、号泣が、男泣きが、嬉し泣きが響きあう。誰も彼もが、かつて亡くした大切な者に再会し、あり得ざる奇跡に膝から崩れ落ち、縋り、抱き締め、抱き締められ。

 

死者と生者が一緒になって楽しむ、年に一度の奇跡のお祭り。

 

「あなたと会うのは、これで三度目になるのね」

 

「母さん...」

 

「ロ、ロビンちゃんのお母様!?」

 

こんな時ぐらいは、違う格好で出てこられたらよかったのに、と軍服姿で微笑む母オルビアに、かつての再会とは違う、どこか余裕を持った微笑みで、そうね、と答えるロビン。

 

「ま、まさか俺も...」

 

「ちょっとちょっとーう!!サンジちゃんじゃないの!!お久しぶりねい!!」

 

「何でおれだけオカマ野郎なんだよ!!」

 

「あべし!?」

 

突然の顔面キックにぶっ飛ばされたベンサムことMr.2、ボンクレーが、近場の壁にめり込む。

 

「ちょっとちょっと!!いきなり何するのよーう!?せっかくインベルダウンから抜け出してお祭りを楽しみに来たら、懐かしい顔がいたから挨拶しただけだっちゅーのに!!いきなりご挨拶がすぎるんじゃないのうッ!?」

 

「え?ってことはお前、死人じゃ...ない?」

 

「どぅわーれが死人ですってェ!?覚えておきなさい!!オカマは早々簡単にはくたばねェんだオラァ!!」

 

失礼しちゃうわ全く!!とサンジの尻にタイキックをぶちかまし、プリプリ怒りながら去っていくボンちゃんを見送り、呆然とするサンジの耳に、クスクス笑いが届く。

 

「楽しいお友達ができたのね」

 

「あ、いや、その、えーと...」

 

ヴィンスモーク・ソラ。今は亡きサンジの母が、笑顔でそこに立っていた。




今宵はここまで。
続きは書き上がり次第投稿していければなと
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