イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか? 作:露木曽人
「うおおお!!聖女を寄越せェ!!」
「負けるな!!奪い取れ!!」
「あの女は俺のもんだあああ!!」
「ゴールド・ロジャーの幽霊を蘇らせりゃあ、俺たちが海賊王だァ!!」
「あの女を手に入れた奴が海賊王になれるッ!!」
島中が、酷い有様だった。千を超える海賊船が島に押し寄せ、万を超える海賊たちが怒涛の勢いで雪崩れ込んでくる。いずれも大聖女ニアと、ロジャーの幽霊という我欲にまみれた欲深き者たちだ。
「α部隊は港へ、β部隊は浜辺へ。γ部隊は塔の付近に散会しろ!!お嬢様の御前だ、いいところを見せたい奴は精々気張ることだな」
『ヨーソロー!!』
塔の南側。押し寄せる海賊たちに相対するのは、ディープワン海賊団の船長、深淵のダゴンだ。彼は部下たちに指示を飛ばしながら、自身も襲い来る海賊たちの人波を迎え撃つ。
「ディープ・インパクト!!」
「う、うわあああ!?」
「何だこりゃあああ!?」
壁から、床から、縦横無尽にうごめく半透明の、紫の触手に絡め取られた海賊たちが、壁や、地面の中へと引きずり込まれていく。助けを求める腕が、指先が、固いはずの煉瓦の壁や石畳の床に吸い込まれていき、やがて消える。
「嫌だあああ!!」
「助けてくれえええ!!」
「うわ、寄るな!?ひい!?」
仲間を助けようとした者、仲間に助けられた者。人間の体から、不気味にうごめく触手が生えてきて、自分を、そして仲間をも巻き込んで、締め上げていく。やがてぐったりと脱力した海賊たちは無数の触手に全身をグルグル巻きにされ、すり潰されるように消滅してしまった。
「うおお!?おっかねェー!?」
「どうなってんだありゃ!?」
世にも冒涜的な光景に、駆けつけたウソップとフランキーが驚きながらも、襲い来る海賊たちを返り討ちにしていく。
「必殺!グリーン火薬星!!」
「風来砲!!」
油の原料となるほどに油分に満ちた草を散会させることで、爆発の威力を底上げした火薬星と、両腕から連続発射される高圧圧縮された空気の塊が、相乗効果で次々と大爆発を起こしていく。
「お、俺たちは敵じゃねェぞ!!」
「知っている」
ギロリ、とキャプテンダゴンに睨まれたウソップが、慌てて両手を振りながら説明しようとすると、ダゴンは海賊帽の鍔を握りながら、そう返した。
「人生には時として、優しい嘘が必要な時もある。残酷な現実よりも、優しい姫が必要な時がな。お嬢様は、その夢の守り手だ。ならば俺たちは、そのお嬢様をこそお守りする。そのためならば、お前たちのような海賊の力を借りることも辞さん」
「よえェ奴はすっこんでなァ!!」
「力のねェ奴はこの海の上じゃ生きていけねェんだよォ!!」
「ならば、力のないお前たちが生きていけなくなったとしても、構わんのだな?」
「吐いた鍔呑まんときィや!!」
塔の西側。覇気をまとった猟犬部隊が次々と海賊たちを狩りながら、獲物を追い立てていく。軍服に、何故か首輪をしている者としていない者が入り混じったその姿は、さながら本物の猟犬のようだ。彼らを統率するのは部隊長のティンダー・ロス。
「つえェ奴がつえェ人間の言い分でよォ、よえェ人間の"弱さ"を責めちまったらよォ!!この海にゃ、よえェ奴の居場所がどっこにもなくなっちまうだろォがッ!!」
悪魔の実の能力者ではない。人間が人間のまま至れる高みへと愚直に己を鍛え上げ続けた巨漢の覇気をまとった拳や蹴りは、まさに人間凶器だ。
「お嬢は、そんなよえェ奴らの希望の星なんだッ!!どんな暗闇の中でも、見上げられる星がありゃあ人は上を向ける!!俺は、その星を守るッ!!誰にも穢させねェよォに!!奪わせねェよォに!!」
「怯むな!!たかが無能力者一匹ゲバァ!?」
「撃て撃て撃てェ!!蜂の巣にしてやブボォ!?」
「仔羊肉(ヴォー)ショット!!」
「爆弾白鳥(ボンバルディエ)アラベスク!!」
人間台風のように大暴れするロスを狙い、一斉に銃を構えた海賊たちが、サンジとボンクレーの蹴り技に一掃されていく。
「お前たちは...」
「よく言った炭焼野郎!!あの麗しの聖女様をお守りするためだ!!昼間のことは一旦水に流してやらァ!!」
「んだーっはっはっは!!あちしにも憧れの人がいるッ!!人は、憧れに近づくためならどんな底力だって踏ん張り出せるものよねいッ!!義によって助太刀致しちゃうわよーうッ!!」
「黒足と...誰だ、アンタ」
「通りすがりの、正義のオカマよッ!!覚えておきんしゃーいッ!!」
「三千、世界!!」
「鼻唄三丁...矢筈斬り!!」
塔の北側。続々と押し寄せる海賊たちを、ゾロとブルックが競いあうようにして斬り捨てていく。だが、スコアは思ったよりも伸びない。何故ならば、金属めいたコウモリのような翼を生やした老執事が、空から斬撃を飛ばし、次々と海賊たちを屠っていくからだ。
「ヨホホホ!!あのご老人、かなりのやり手のようで!!」
「おいジジイ!!後で俺とも戦え!!」
「ほっほっほ、実に血気盛んなことで、結構結構。若人は、それぐらいの威勢のよさがあるぐらいが丁度よいのです」
血のように赤い刀身を持つ二振りの刀が振るわれる度、目に見えない斬撃が血飛沫の花を乱れ咲かせていく。
「撃ち落とせェ!!」
「ジジイ一匹に何手こずってやがる!!」
「六輪咲(セイスフルール)クラッチ!」
「アギャア!?」
「ゴベェ!?」
夜空を舞うシャンタークに意識を取られ、上を見上げている海賊たちの足元から生えてきた腕が、次々と海賊たちに関節技を決めていく。駆けつけたロビンの仕業だ。
「お嬢様は、希望なのでございます。この残酷な海にもまだ、救いはあるのだと」
強くなければ生き残れない。ならば、強くなれない人間たちはどうすればいい?誰もが誰も、強者になれるわけではない。弱者は弱者なりに、それでも生きていかなければならない。
そんな者たちにとっての希望が、ニアという聖女なのだ、と。
「逆十字(さかさじゅうじ)」
一閃、いや、一閃にしか見えないほどの、超高速での二閃。シャンタークの剣技が、海賊たちの体に血染めの逆十字を刻んでいく。
「スノーストーム・テンポッ!!」
「何だ!?吹雪か!?」
「何でいきなり!?」
塔の東側。局所的な猛吹雪に見舞われた海賊たちが、あまりの寒さに凍え、凍りつく。
「刻蹄・桜(ロゼオ)!!」
「ウギャアーッ!?」
「ヒイッ!?ば、バケモンだァー!!」
そんな猛吹雪の中を、変身したチョッパーが駆け抜けていく。顔面に桜の花びらのような痕を刻み込まれ、次々と倒れていく海賊たち。
「おーおー、凄いもんじゃ」
「アンタもちったァ戦いなさいよッ!!」
「ほれ、ワシには優秀な部下がついておるからのう。頼もしいもんじゃ、フォフォフォ」
戦いを部下の海兵たちに任せ、胡坐を掻いて塔に寄りかかっている老兵ゴーントに、ナミが反射的にツッコミを入れてしまう。戦いの最中に、ひとりだけ馬上槍を床に置き、休憩されていては目に余るのも無理はない。
「死ねェジジィ!!」
「くたばれ海軍ッ!!」
「危な...い?」
そんなゴーント中将に海賊たちが狙いを定めるのは、当然だった。だがナミが最後まで言い終わる前に、五人の海賊が一瞬で吹っ飛ばされ、地面に転がる。いつの間に立ち上がったのか、老兵の手には馬上槍が握られ、億劫そうにため息をひとつ。
「ワシ、せっかくマイワイフとお祭りを楽しんでおったのにのゥ...ぬしらのせいで台なしじゃ。ワシだけではない。この祭りを楽しんどった者たち全てに、ぬしらは詫びを入れねばならん」
海賊たちを射抜く老兵の眼差しは、吹雪よりも冷たかった。
皆さん、沢山の感想ありがとうございます!!
モンスターエナジーのポカリ割りよりはるかによく効いております!!
執筆意欲ガンギマリですわ!!
このままの勢いで完結まで持っていきたいものですん!!