イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第31話 オーディオコメンタリというか舞台裏 破

映画の舞台裏からおはこんばんちはようございます、今年のパイケットでは大聖女ニアわからせ本が何冊出るのかなーと夜寝る前に取り寄せたカタログをチェックするニアです。映画本編が始まって、現在ドリームアイランドには三人の私がいます。某夢の国の着ぐるみさんたちみたいですね、ハハッ!!

 

最近、愉悦部員だのなんだのと風評被害に遭っている私ですが、どちらかというと私は誰かが苦しむ姿よりも、それを乗り越えた先にある鮮やかで痛快な大逆転勝利が大好きな人間なので、麻婆神父や愛玩の獣よりどちらかというとヴリトラ神に近い精神の持ち主のはずなのですが、おかしいですね。

 

『ダーッハッハッハッハ!!この俺様が律義に順番待ちなどやってられるかァ!!』

 

別人に化けつつ港でサウザンドサニー号の入港を見守っていると、早速ルフィさんたちの目の前でマナーの悪い海賊による暴動イベントが発生しました。

 

はえーすっごい運命力。私まだ何もしてませんからね?さすがワンピ世界、治安悪ーいというべきか、早速トラブルを呼び寄せるルフィさんの主人公力に感心すべきか。まるで遊園地の海賊ショーのように、ダゴンさんたちによる海賊の制圧が始まります。

 

「さっきまで何事もなかったというに、奴らがやってきおった途端にこれか。聖女様の語る運命論とやらが俄然真実味を帯びてきたのう」

 

「暴れ出した海賊どもの態度を見るに、よもや自作自演というわけでもありますまい。十分な警戒を払うに越したことはないでしょうな」

 

「やァれやれ、気が抜けんなァ」

 

映画ではダゴンさんとダーントさんの会話は遠巻きだったため何を喋っていたのかは読者の皆さんやルフィさんたちには伝わらなかったでしょうが、実はただ愚痴っていただけでしたという。

 

「それではシャンタークさん、後はお願いします。時間的に、正午ぐらいにちょうどタワーの玄関口につくようお願いしますね」

 

「お任せくださいませお嬢様。ただし、風の悪戯でスカートが捲り上がる、わざと転んで胸を揺らすなどのはしたない行為にはくれぐれも走りませぬよう」

 

「大丈夫ですって!!ちゃんとCERO-Aで申請できるようにしておきますから!!」

 

信用ないですね私。普段悪ノリしすぎていると、こういう肝心な時に信用を損なってしまうという実例かもしれません。

 

「ようこそ、麦わらのルフィ御一行様。わたくし、皆様をご案内させて頂きます、シャンタークを申します。どうぞお見知りおきを」

 

さて、いよいよルフィさんたちが島に上陸しました。ここですかさずシャンタークさんによるインターセプト。なんだかフィルムゴールドを思い出しますね。はいそこ、パクリとか言わない!!リスペクト、パロディ、オマージュと言いましょう。

 

無事オープンカメ車に乗って走り去っていってくれた皆さんを見送り、タワーにいる私にバトンタッチ。さすがは有能執事シャンタークさん。丁度正午になり、鐘が鳴り始めたちょっと後ぐらいの絶妙なタイミングで到着してくれました。

 

後はタワーの一階に集まってくれた、『天気もいいことですしたまには聖女様と一緒にお散歩しませんか??』と声をかけてもらったところ、集まりがあまりにもよすぎたためにジャンケン大会になってしまい、厳選する羽目になってしまった教徒の皆さんと外に出るだけです。

 

ジャンケンに負けてしまった皆さんがあまりにも懇願してくるので、聖女様と一緒にお散歩しましょうイベントを今後も定期的に開催する羽目になったのは謎ですが、まあ元々平日は暇してる私ですし、これぐらいは問題ありません。何回かやればそのうち皆さん飽きるでしょう。

 

「お嬢に触れるな」

 

「んだァテメェ!!」

 

「それはこちらの台詞だ!!」

 

さすがはAPP24、サンジくんが彼らしくメロメロになってくれました。APP19のままではこうはいかなかったでしょう(自虐。

 

「ロスさん、大丈夫ですよ」

 

「しかしお嬢!」

 

「大丈夫ですから、ね?」

 

ロスさんの生ハムの原木??みたいな屈強すぎる腕を白魚のような指で優しく制し、バチコーンとサンジくんにウインク。あ、ほんとに石化しましたね凄い。ギャグパートだからと普通に流されてますけど、人間が愛だけで石化できるワンピ世界って地味に怖いですね。

 

やはり最強なのは邪神よりもギャグ補正だったのでしょうか??ニャル様本体も現在ジャンプ+で10巻まで無料なボーボボを途中まで読んで『え、何これ意味がわからん、こわ...』と当惑してやがりましたから、やはりギャグマンガのキャラクタこそ最強...

 

「皆さん、ようこそドリームアイランドへ。どうぞ、お祭りを(途中まで)楽しんでいってくださいね」

 

はい、ここで聖女お得意の清楚なキラキラスマイル。これにはシャンタークさんもニッコリ。あまり安易なエロキャラ路線で売りすぎると安っぽい女と思われてしまいかねませんので、バランスが大事です。

 

ただでさえ若いイケメン男子系のオリキャラなんてひとりもいな...ハウトさんぐらいしか出てこなかった、ダンディなおっさんや渋い爺さんだらけのこの小説、女性読者さんからの人気は大事にしなければなりません。平成後期のジャンプ漫画の基本戦略ですし、多少はね?

 

「おー!!すっげェ眺め!!」

 

なんて現実逃避をしているのはそう、まさかのルフィさんが空中庭園のガラスドームの外壁に立っているからなのですね。ルフィさん、高いところが好きだからもしかしてと嫌な予感はしていましたが、まさか本当に来ちゃった☆するとは。

 

いえ、取り乱してはいけません。ここはそう、聖女のいい人アッピルのチャンスなのでは?ピンチをチャンスに変えてこその主人公。原作主人公とオリ主という圧倒的に不利対面ですが、ここで引き下がるわけには参りません。

 

「どなたかいらっしゃるのですか?」

 

「ん?」

 

「あなたは...麦わらの、ルフィさん?どうしてここに?」

 

伊達に世界政府や世界貴族相手に劇団狂季でお芝居していたわけじゃありません。コナン映画の棒読みゲスト声優のような醜態はさらしませんよ!!

 

「すげェ高さだったからさ、天辺まで昇ってみたくなったんだ!!ちょっと行きすぎちまったけどな!!」

 

「まあ。そうでしたか。いきなりだったもので、驚きました」

 

あれ?ここは『はあ、』じゃなかったっけ?と気づいたあなたはコアな読者です。ヒロインっぽさの追及は大事ですし、空中庭園がいきなり朝起きたらタワーの天辺に鎮座しているわけですから、これぐらいは誤差ということで。

 

「なあ、そういやさ。お前、死んだ奴に会わせてくれるって本当なの」

 

「そこで何をしている」

 

げ、伯父様の登場です。そういや、私のことを世界で一番大事に思ってくださっている伯父様が、突然の不法侵入者を見逃すはずがありませんでした。しかも伯父様、怒ってますね結構。元々、私の両親が海賊に殺されたこともあり、大の海賊嫌いで知られる伯父様です。これはまずい流れですよ。

 

「この場所への部外者の立ち入りは禁じられている」

 

「何だよケチ!!いいじゃんかちょっとぐらい!!」

 

「出ていけ、ここはニアのための場所だ」

 

いいえ、ニャル様がある日突然勝手に設置していった場所なんですよ(白目。伯父様が何をもって私のための場所と仰るかは謎ですが、そもそも伯父様、アザトースの権能の力である程度邪神関係については把握していらっしゃるはずでは??

 

第四の壁やその先を認識しているわけではないということは知っていますが、ひょっとして私が思っているほど外なる神や旧き神らの動向を把握しているわけではないのでしょうか??

 

「オッサン、俺はその女に大事な用があるんだ!!だからッ!?」

 

「伯父様!!」

 

おお、見事な剃ですね。それをかわすルフィさんもさすが主人公です。庭園に青い薔薇の花弁がごうっと舞い上がり、なんだか劇場版チックな演出に私のテンションもややアゲ~といったところでしょうか。

 

今までは影からコッソリ覗いているばかりだったルフィさんたちの生バトルが、こうして至近距離で見られるわけですからそりゃあテンションも上がりますよ。やめて!!私のために争わないで!!ヒロインならば一度は言ってみたい台詞ですね。

 

「今のは警告だ。おとなしく出ていくというのならば、これ以上手荒な真似はしない」

 

「嫌だね!!おい女!!答えろ!!お前は本当に死んだ人間と話をさせてくれるのか!?」

 

「は、はい!!本当です!!(迫真)」

 

「ニア、少し下がっていなさい」

 

「伯父様、あまり手荒なことは...」

 

そもそも、ルフィさんたちを支援する口実を作るためにここへ呼んだはずなのですが、敵対してどうするんですか伯父様!!と言いたいところですが、仕方ありません。今までルフィさんたちの活躍を生見学するのに、伯父様やゴーントさんを連れていったことは一度もなかったんですよね。

 

精々が頂上決戦編で、あの最後倒壊した建物の中から一緒に眺めていたぐらい。伯父様視点では、天竜人たちに反逆する気概のある奴、ぐらいの認識でしかないわけです。つまり私たちと違って、ルフィさんたちを全面的に無条件で信頼する理由がない。

 

そんな状況で、いきなり姪の部屋(違います)に不法侵入してきたルフィさんに、警戒心が上がるのは致し方ないことであるのかもしれません。そもそも、年頃の娘もとい姪の部屋に勝手に入ってきた見知らぬ男なんて、パパ視点から見れば完全にギルティですからね。

 

「だから海賊は嫌いなんだ。自由、自由とバカのひとつ覚えのように騒ぎ立て、社会のルールも碌に守れやしない」

 

本当に、こんな奴にニャルラト正教会の未来を任せる価値があるのか??と伯父様は疑問に思っているわけです。アイコンタクトでそれを察した私は、とりあえず口元に手を当てておきました。口出ししないから、やってみてください、の意です。どうやら無事に汲んでくださったようですね。

 

うーん、しかし、こんなことなら伯父様も一緒に麦わらの一味の大冒険鑑賞ツアーに同行してもらえればよかったかもしれません。百聞は一見にしかずと言いますから。

 

「おい!!返せ!!」

 

「ふむ。ならば君の言葉を拝借しよう。何だよケチ、いいじゃんかちょっとぐらい」

 

「この!!」

 

おーおー、好き勝手煽りなさる。伯父様、ルフィさんのことなんてほとんど知らないはずですが、トレードマークの麦わら帽子をすれ違い様にパクるという高等テクニックで見事挑発に成功していますね。これはクリティカルですよ。

 

しかも、さっきのルフィさんの言葉をそのままオウム返しにするという高等テクニック。いかつい屈強な熟年男性が、子供っぽい口調を真似るというのは中々に可愛らしいですねフフフ。

 

「やめてくださいふたりとも!!」

 

とはいえ、のんきにキャッキャウフフしながら見物してもいられません。心優しい聖女様は、ルフィさんがやれているのをただ無言で眺めているわけにはまいりませんので。

 

「覚えておくといい、麦わら。君がルールを無視して他人のテリトリーへと勝手に侵入することが自由ならば、我々にはそれを撃退する自由がある」

 

そしてこの程度で撃退されるような人間に、ニャルラト正教会を任せられるとは到底思えない。伯父様はルフィさんだけでなく、私にもそう目線で語りかけてきます。

 

「こん、のォー!!」

 

伯父様に飛びかかってきたルフィさんの姿が、伯父様の手の中にあった麦わら帽子ごと、イアイアの実・モデルアザトースの力でかき消されてしまいました。ここですかさず記憶保全。全てを夢オチにされてしまわないように、こちらでフィルターをかけておきます。

 

「ニア、本当にあの男が信用に足るのか?」

 

「それは、最後まで伯父様の目でご覧になってから判断してください」

 

「そうか、ならば見極めさせてもらうとしよう」

 

それよりも、と私は伯父様の逞しい腕に自分の腕を絡めます。

 

「心配して助けにきてくれてありがとうございます。伯父様、かっこよかったですよ!!」

 

「...そうか」

 

はい、貴重な照れ顔頂きました。普段ムスッとしてる男性のたまに見せる照れた顔というのは可愛いですね。普段迷惑心配ばかりかけている不良娘ですから、たまにはこうやって親孝行もしないと、ね?


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