イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第5話 まさかの原作キャラがやってきましたの巻

煌びやかなパーティ会場からこんばんは。

 

紫のナイトドレスで着飾り、黄金のティアラなんかつけちゃってる清貧の聖女ニアです。

 

今宵はニャルラト教の教祖として、教団幹部の爺様連中とともに、ドリームアイランドのシンボルたる超高層ビル、ドリームタワーで開かれるパーティに参加しております。

 

たぶんアクション映画好きの方なら、さてはあのビル終盤で爆破されるなと序盤で確信してしまうようなわかりやすいドリームタワーの最上階。

 

一握りの権力者や金持ち連中だけが出席できるこのパーティに参加している人間の大半はニャルラト教の、というか、私の狂信者でありパトロンです。

 

怖いですね、とても怖い。いつの間にか巨大な利権のうねり人の夢(悪夢かもしれませんが)に呑み込まれているような気がして、ただの小娘に過ぎない私はなんだか場違い感をひしひしと感じてしまいます。

 

 

そしてそんな私は今、まだ能力者ではなかった頃に両親を海賊に殺されて以来の、未だかつてないピンチに遭遇しています。

 

「やあ、あなたが噂の聖女様かな?お初にお目にかかる。私はテゾーロ。ギルド・テゾーロと申します」

 

はい、原作キャラが来てしまいました。

 

 

しかも、まさかの映画版の敵キャラ。

 

フィルムゴールドって設定的にはパラレルだった筈なのですが、彼がここにいるということはその辺り、結構緩い感じなのでしょう。

 

そもそもが二次創作小説の世界ですしね。

 

もはや何でもありなのでしょう。

 

この様子だと、Zとかも普通にいそうな感じですねこれは。

 

 

「あなたが"黄金帝"テゾーロ様。お噂はかねがね」

 

「はは、どれもこれも、よろしくない噂ばかりでしょう?」

 

否定も肯定もせずに、曖昧な笑みを浮かべておくのは処世術の鉄板ですね。

 

表面上はにこやかに握手を交わしながらも、内心はどうしたもんかなーと頭を抱えてしまっています。

 

 

まさかこの人が来るとは、と予想外すぎる人物との遭遇ですが、冷静に考えるとこの人、死んでしまったステラさんのことを今でも想い続けているわけですからね。

 

下手を打てば、彼女の死を冒涜したとかなんとか逆鱗に触れて、うっかり殺されかねないという危うさがあります。それだけテゾーロさんにとってステラさんという女性は大切な人なのです。

 

 

「テゾーロ様はどうしてこの島へ?やはり、休暇ですか?」

 

「いいえ、お仕事ですよ、お仕事。驚くほど短期間で世界でも指折りの商業地帯に急成長したこの島は今、多くの注目を集めていますから」

 

しかし、本性を隠しているとはいえ、敬語で営業スマイルのテゾーロというのはなかなかに違和感がありますね。

 

 

映画では暴君としての側面が色濃く描かれていましたが、最初にルフィたちを罠にはめた時の丁寧な態度からして、彼も猫を被ることぐらいわけないわけですね。実際、世界経済の20%を掌握しているという彼からすれば、恐るべき急成長を遂げ今では世界でも指折りの超高級リゾート地に成長し、毎日巨額のベリーが動くこの島は、ビジネス的にもかなり要注目であることは間違いないでしょうし。

 

ちなみにテゾーロさんの秘書という名目で、ナイトドレス姿のバカラさんも後ろに控えています。

 

美しいですね、とてもお美しい。

 

私ほどではありませんが。

 

 

突然のナルシスト発言に驚きましたか?いえ、これがどうしようもなく事実なので。

 

何故なら私はイアイアの実・モデルニャルの能力者であるため、APP(魅力)が人類の到達上限である18を上回っているのですね。

 

おそらくバカラさんのAPPは18、人類の到達しうる最高峰の美貌の持ち主、ということになります。伊達に世界最高峰の男の傍にいることを許されておらず、またサンジくんをメロメロにしてもいません。

 

 

そしてAPP18の人間は、顔面が光り輝いて見えるとも言われており、それだけ凄いということなのですが、このAPP、前述した通り人類が到達しうる頂点の数値であり、だからAPPが19とか20とか21の美女が出てくると、あいつニャルだー!!と即座に看破されてしまうわけなのですね。

 

 

そんなわけで、私のAPPは19です。

 

これは、人類の範疇から逸脱しないとありえない数値であり、たった1でありながら、人類にはどうやっても絶対に超えられない壁を超えてしまっているという、人外の証明でもあるわけです。

 

どれぐらい凄いかというと、その気になればパーティ会場の人間は全員男女問わず私の顔面に見惚れてしまうレベルです。

 

なので、地味に聖女としてのカリスマをさらに底上げするバフにもなっているわけですね。

 

 

「いやはや、噂というものはあてにならないもの、と相場が決まっておりますが、あなたに関してはどうやら...噂以上にお美しい」

 

「美しさの頂点を極めた"黄金帝"たるテゾーロ様にそう仰って頂けるなんて、光栄ですわ」

 

ニッコリ笑って、お互い腹のうちを探り合うような会話に勤しむ。

 

どうやらテゾーロさんは私の顔に魅了されてはいないようです。

 

当然ですね、彼にはステラさんという方がいらっしゃいますから。

 

彼女への想いだけで邪神のオート魅了を弾くとは、やはりワンピの強キャラは格が違いますわ。そういった一本芯の通ったキャラクターが出てくるような作品だからこそ、大勢のファンがいるのでしょう。

 

 

「いかがです?私もニャルラト教にはいささか興味がありましてね。詳しい話を、後日お伺いしたいのですが」

 

「もちろん、喜んで。うちは来る者拒まず、去る者追わずの精神ですから。もしも興味が失せてしまったとしても、しつこく食い下がるような無作法な真似はしないこと、お約束いたしますわ」

 

そんなわけで、まさかのテゾーロ襲来イベントが確定してしまいました。

 

どうやら彼は、死者蘇生の噂を聞きつけて遠路はるばるやってきたのでしょう。

 

そりゃそうですよね、いくら胡散臭かろうがなんだろうが、もう一度だけステラさんに会えるかもしれない、となったら、放ってはおけませんよね。

 

 

「では、またいずれ」

 

 

抜かりなく私の護衛を務めるダゴンさんと敏腕秘書バカラさんにアポイントメントの取りつけをしてもらい、私は意味深に見えるだけでなんら中身のない笑みを浮かべ、テゾーロさんの前から去ります。

 

というか、ボロが出てしまう前に一刻も早く逃げ出したくてしょうがないんですよ。

 

だって劇場版の敵キャラですよ?ただメタ的な知識と悪魔の実の能力者ってだけの小娘一匹が太刀打ちできるような相手じゃないじゃないですか。

 

あーほんと心臓に悪いです。

 

しかし、どうしましょうねほんと。

 

もしここでテゾーロさんがこの島に移住!なんてことになったら、フィルムゴールドが崩壊してしまうんですよね。

 

 

いえ、外伝的映画ならば別になくなったとしてもワンピース本編にさほど影響はないのでしょうが。

 

というかテゾーロさんの性格からして、金で私をお買い上げして自分のカジノに持って帰ろうとする可能性の方が高いのでは?という気もします。

 

そうなったら厄介ですよ、戦争ですよ戦争。

 

 

もしそうなった場合、島の狂信者の皆さんは、恐らく私の後を追ってテゾーロさんの移動島に移住することでしょう。

 

なんなら、ニャルラト教徒全員を移動島に住まわせ、ニャルラト教の教会を作ってやってもいい、ぐらいには、お金は力なり攻撃で攻めてくるかもしれません。

 

それはそれでありなのですが、うーんどうしましょうねほんと。


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