イアイアの実・モデルニャルは地雷案件すぎませんか?   作:露木曽人

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第33話 シン・オーディオコメンタリというか舞台裏

「時にお嬢様、そのような破廉恥な格好でどちらへ向かわれるおつもりで!?」

 

「決まってんじゃーん!!映画の見所さんを盛り上げに行くんだよ!!」

 

『そうだよ(便乗』

 

「ぐッ!!や♀糞(やっぱりメスはクソ)でェありましたか!!しかァし!!ここは行かせるわけにはいかないのでェあります!!これ以上遅れたらタイムがお通夜一直線になってしまうでありますゆえ!!」

 

『その通りである!!ウケ狙いでわざと死んだり失敗した風を装う走者など寒いだけで言語道断!!我はそういう邪道プレイは断固認めないのであーる!!』

 

『RTA走者的にはそうかもしれないけどさ、縛りプレイヤーにとっては面白さ優先でボス戦を何度も撮り直すなんてよくあることだし。てか、売って金策にあてるはずだったガバガバの実を食べちゃったのってウケ狙いじゃなくて本当にガチの操作ミスだったの??』

 

『うぐッ!?お、思い出させないでほしいのであーる!!あの時は謎の2年ループ現象ハマりからようやく抜け出せた喜びの涙で視界が滲みまくりでよく見えてなかったせいで...ぐぬぬ!!思い出しただけで思わず涙が...』

 

なんか私たちそっちのけで盛り上がっている、精神体になって半透明な状態で現界してうすぼんやりと空中に浮いてるニャル様とツァトグァさんは放っておいて、さっさとルフィさんたちの元へ急ぎましょう。絵面が完全にスタンドバトルみたいになっていましたが、この世界はワンピースですからね。

 

「お前は、まさか!!」

 

さすがイアイアの実・モデルアザトースで権能の一部を得た伯父様、他の皆さんには見えていらっしゃらない精神体ニャル様が見えている模様。

 

「はーい伯父上、無粋なネタバレはボッシュートになりまーす!!真相に気づいちゃった奴から消されてくってホラー映画のお約束、知らないのカナー?」

 

まずはこちら側の皆さんをニャルワープで空中庭園へすっ飛ばします。ついでに裏拳一発で沈黙させてしまったホモくんと画面外でヤケコーラしているツァトグァさんにごめんね、と謝罪しつつホモくんも転送。

 

『それじゃあ僕、ちょっとあの月を覗き穴にしてこの世界覗き込んでるから、後は適当に頑張んなよ。あ、ケイオスタイドの使い方わかってるよね?』

 

『大丈夫です。ありがとうございますニャルさん。あ、最後ぶっ飛ばされた私があの月にぶつかってこの状態を解除しますんで、ちゃんと避けてくださいね?』

 

『別にいいよ。目のひとつやふたつ潰されたところですぐに再生するし。それじゃ、精々映画のクライマックスを盛り上げてちょーだい』

 

以下の顛末は皆さんご存知のことと思います。あ、あの白ひげさんはさすがにパチモンですよ。あの白ひげさんがこんな木っ端小娘の悪ふざけに付き合ってくれるわけないですからね。グラグラの実で地震を起こしたかのように見せたあのシーンもただ地面を軽く揺らしただけです。

 

黄泉の国でエースさんが白ひげさんに『ありがとな、親父』とか言い出したらどうするのかって?ご心配なく。たとえ白ひげさんが何のことだ、とか俺ァ知らねェぞ、とか仰ったところで、ツンデレ親父の照れ隠しぐらいにしか見えないですからね。どうせ本人にお越し頂く機会もないでしょうし、ご安心です。

 

後は仲間と隔離して独りにしたルフィさんと戦って、ほどよく窮地になったところでエルダーサインを意味深に光らせます。

 

それからゴーイングメリー号の魂を、事前説明も同意もなしにいきなりこの場に召喚すれば、なんかよくわからないけれどとりあえずルフィさんが大ピンチってことで、メリーが彼を救いに一直線というわけですね。

 

「弁明を聞こうか?」

 

「あっ、はい。このままじゃ地味すぎると思ったんです」

 

さて、問題は伯父様たちです。いきなりギャルラトホテプと化したメスガキ黒ギャル悪堕ち大聖女ニアちゃんがやってきたと思ったら空中庭園にワープさせられて、しかもご丁寧にそこから出られないように真っ赤な満月からドロドロ滴る渾沌の泥で出入り口を仮封鎖しておいたわけですから。

 

皆さんからすれば何がなんだかわからない状況であると言えましょう。怒られるのやだなあ、でも説得ロール頑張らなくては。

 

下の戦いは金髪の私に任せ、いつも通りの姿に戻った私は、完全にお説教モードに入ってしまった伯父様とシャンタークさん、それに説明してくれムードの三人を座らせ、いそいそとコーヒーを配ります。ミルクと砂糖はご自由に。

 

「まず、赤ひげ&青ひげブラザーズとテロ組織の残党たちですが、海賊船千隻!!のインパクトはありましたが、創造していたよりもかなりその...戦力不足でした」

 

「まァ、大した強さじゃなかったのは確かっす」

 

「麦わらの一味の力を借りるまでもなかったかもしれんのう」

 

「島への損害を抑え得るよう考慮した結果だが、それが裏目に出た感は否めませんでしたね」

 

今回の最終目的は、ニャルラト正教会の窮地を麦わらの一味に救ってもらうことで、うちが彼らを支援する正当な理由を内外に提示することです。あんな風に助けてもらったんなら、そりゃ支援しない方が恩師らうずだよね、と万民に納得してもらわなければなりません。

 

「確かに、あの戦力差では海軍や世界政府を納得させることは難しかろうな」

 

「これまで世間に公表してきた皆々様方の戦力だけでも、十分に撃退は可能であったことは疑いようもございません」

 

つまりは、説得力がなさすぎるのです。言い方は悪くなってしまいますが、格下のザコ敵を倒したところで、それがルフィさんたちへの恩にはなり得ません。フル装備のG級ハンター4人で次々と出てくる下級クエストのドスギアノス100体を討伐する闘技場クエストのようなものですからね。

 

ブッブー、です。これでは、いけませんね?

 

「なるほど、それで、でっち上げの神様もどきのインパクトでそれを上書きしてしまおう、と」

 

「確かにこの惨状ならば、さっきの連中よりかははるかに説得力があるのう。まるでこの世の終わりじゃわい。...わしのマイワイフやスウィートホームは無事なんでしょうな??」

 

「あ、そこは安心してください。あのケイオスタイド、見た目こそ派手ですが、ただの見掛け倒しみたいなもので(済むように毒素を可能な限り抑えてありま)すので。皆さん、今頃は強制的に眠りに落ちて頂いておりますが、人も建物もみんなご無事ですよ」

 

「それを聞いて一安心じゃわい。全くこの悪戯小娘ときたら、心臓に悪いのう」

 

「すみませェん」

 

タワーから一望できるドリームアイランドはもう一枚のお好み焼きにオタフクソースを10本ぐらい丸ごとドボドボぶちまけたような酷い有様になっていますからね、しかも明らかにやばそうな真っ赤な満月から滴る赤黒い粘液とか、絵面的に完全に世界の終わりですし。

 

ぴえん顔になった私に、皆さん呆れたようなため息を一斉に吐きます。むしろそれぐらいで許してもらえるなら御の字であることは間違いないぐらいの大惨事なのですが、海軍や世界貴族を納得させるためには必要経費やったんや!!許してクレメンス!!

 

「そもそも、あの悪そうなお嬢はなんなんすか??神様とか名乗ってやしたけど」

 

「斯様な破廉恥な格好、爺は悲しゅうございますぞお嬢様」

 

「私だって好きであんな格好になったわけじゃないですよッ!!あの人はまあ、イアイアの実の影響で生まれてしまった私の別人格的な何かです。愉快犯ですが、実害はそんなにはないので放っておいて大丈夫です」

 

「ちょっと待ってもらえるかお嬢様。俺もイアイアの実の能力者だが、別人格など生じていないぞ?」

 

「いい質問ですねダゴンさん。イアイアの実には個体差があります。比較的無害なものからかなり有害なものまで。私の食べたモデル・ニャルや、伯父様の召し上がったモデル・アザトースなどは、タチが悪いタイプの個体でして」

 

私の言葉に、全員の視線が伯父様に集まります。

 

「事実だ。この世には、人間の理解の及ばぬ不可思議で奇妙な事柄が幾つも存在している。だが、生きていく上では全く必要のない知識だ。ゆえにこそ、諸君らが深く知る必要もないだろう」

 

知らない方がいいことが、世の中には沢山あるということだ。言外に伯父様の言いたいことが理解できたのか、皆さん納得したように頷いてくれました。ふー、よかったよかった。

 

「では、俺が時折夢に見る、深い深い海の底に沈んだ海底都市の残骸や、そこで慟哭する巨大な何者かの陰影も、そういった類いのものである、と?」

 

「ダゴンさんそんな夢見てたんですか!?大丈夫ですか!?カウンセリングします!?」

 

「あ、ああ。特に実害はないので気にしないようにしていたんだが、そうか。そういった理由があってのことだったのか」

 

SAN値が!!とか精神分析ィ!!と慌てる私の迫力に面食らったのか、大丈夫、大丈夫だお嬢様、と逆に何故かこちらを宥めてくださるダゴンさんのことは一旦置いておいて、とりあえず今はこの事態の解決に向けて動きましょう。

 

「それで、私たちは何をすればいい?」

 

「伯父様には、ルフィさんにあの私をやっつけるための秘策を授けて頂きます。あれをやっつけて頂くのは、あくまでルフィさんでなければなりませんので。具体的には...かくかくしかじか」

 

「まるまるうまうま、と。わかった、行ってくる」

 

「残りの皆さんには...特にやって頂くこともないんですよね。とりあえず、もうすぐあの赤い月が砕け散って、そうしたら朝が来ますから、後は適当に口裏を合わせてください。麦わらの一味の皆さんが出航するまで、頑張りましょう!!」

 

「なんだか締まんねェ終わり方っすねェ。いつも通りっちゃあいつも通りっすけど」

 

「ファファファ、あれやこれやと働き詰めになるよりかはよかろうよ。あ、コーヒーのおかわりを頂けますかのう?」

 

「はーいただいま。あ、シャンタークさんは座っててください!!敵を騙すにはまず味方からというわけではありませんが、皆さんに相談もせず勝手にオリチャー発動してしまったお詫びに私が淹れますから!!」

 

「左様でございますか。それでは、わたくしめにもおかわりをお願い致します」

 

「はい喜んでェ!!」

 

よしセーフ!!すみませんねニャル様。言い出しっぺの法則というわけではございませんが、映画内で生じた諸々のアレコレは全てあなたに被って頂きますよフフフ。具体的にはおっぱい丸出し寸前ギリギリ衣装とか淫紋発光の辺りとか特に。

 

『君、絶対碌な死に方しないと思うよ??』

 

『既に何度か死んでしまった経験がありますので大丈夫です』

 

『まったく、何が大丈夫なんだか。あ、そろそろ来るね』

 

『そうですね』

 

まったりコーヒーブレイクをしながら和んでいると、不意にこちらに向かって親指を立てながらあの真っ赤な月に向かってイイ笑顔でぶっ飛んでいく私と目が合いました。総員、敬礼!!まあ、別に死にはしないのですが、雰囲気的にこう、ね?


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