人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います 作:黒犬51
その通りだ。
世界は見える必要のないもので溢れている。
覚悟を決めて彼女の部屋へと向かう。最後に部屋を出た時に様子は明らかにおかしかった。私は彼女の大丈夫と言う言葉を信用していたが、よく考えればこよみがまだ彼だった時、既に大学生だったと聞いた。
確か人間の年齢であれば20は超えている。それだけの年、彼はあの能力と過ごしていたはずだ。となれば、先のような他人の悩みや恨みつらみを聞く機会もあっただろう。それに加えて、別に他人からの相談ではなくとも周囲で話す人間の想いも影響を与えるのだとすれば、普通の精神状態でいることのできる人間は居るのだろうか。
彼女の能力が同調よりか、他人の投影が正しいという私の考えがあっているのであれば耐えることは出来ないだろう。心はそんなにも強靭に出来ていない。どれだけ屈強な体を持つものでも心は脆い。その事を私はよく知っている。
扉を開けると既に灯は消されており、寝台で静かに彼女は眠りについていた。うなされている様子はない。静かに、まるで彫像にように眠っている。彼女の頬を愛おしそうに撫で、目を瞑る。
「すいませんこよみ。お邪魔します」
私が彼女の寝ている隙を狙って来た理由は深層心理を読む為。通常コレは起きていても可能だが、彼女の場合、もう一つの能力がある。考えたくは無いが、もしも騙すという能力を既に使いこなしているというのならこのように油断している隙をつかなければ意味がない。
一度深呼吸。サードアイに集中し、彼女の深層心理に侵入する。そこには灯りがなく。辛うじて見える眼前には木製の長い机があった。多くの人が会食をし、賑やかなはずのそこには静寂だけがある。さらに机には何も乗せられていなかった。この空間にはまる生物の気配がない。だが、強いていうのであれば、闇があった。
「ようこそ。さとり。来たなら仕方ない。本意では無いけど、歓迎しよう」
長机の端から突然男の声がする。顔を確認したいが闇が邪魔して見ることが出来ない。
「貴方が、本当の古明地こよみですか?」
少し悩むような声がした後に男が口を開く。
「確かに古明地こよみでは無い。だが、俺自身だ。古明地こよみという名前はここに来た時につけられた名前、俺の本名では無い。別人格だと理解するのが楽だろう」
私の想像は大方当たっていたらしい。やはり、精神構造が少し妙だ。一般人の深層心理はなにか明確に物がある。それはその人が執着したものであり、その人の人間性に直結する。だが、彼の世界には闇と机、それしかない。
「まず。謝りたい。俺はさとりに隠しておく気はなかった。ただ、あの賢者や他の妖怪には隠しておきたかった。何故なら俺は彼女たちをまだ信用していないからだ。だが、さとりのことは信用できる。それに、騙すという能力があるにしても心が読める相手を騙すのは限界が来る」
そして彼は自重気味に笑う。
「悲しいかな俺はそれほど賢く無い。いつか矛盾が生まれ、それに気づく時がくるのは分かっていた。ただ、だからといってふつうの生活で話す事は危険だと感じた。あの八雲紫というのは幻想郷の中の会話の全てを把握していてもおかしくはなさそうだった。だから話すならこの俺の深層心理で話すことにした」
スラスラと紡がれる言葉。だが、その全ての言動に無駄がなかった。まるで全てが準備されているかのようだ。それに彼女がやけに自分の事を話さなかったことも納得がいった。ボロが出ることを恐れたのだろう。
「それは、大丈夫です。ただ、聞きたいことが、古明地こよみはどこにいるんですか。そして貴方はこよみでないのなら誰ですか」
相変わらず顔も姿も見えない。光一つ刺さないこの空間では彼の距離まで歩く事は不可能だろう。それに、足元もよく見えないような状況で下手に動くのは危険すぎる。見えないというだけでなにもないとは限らない。
「ここにいる。ただ、今は出てこれない。出られる状態ではないというのが正しいだろう。俺はこの体が古明地こよみと呼ばれる前の肉体の人格だ」
二重人格。という事だろうか。少し違う気もするが彼が視界に入っていない以上心を読むことができない。ただ、どうやら彼は今の所どのような質問にもかなり誠実に答えている。とそう感じる。古明地こよみという人間のことを知るならきっと今しかないのだろう。先の言葉が本当ならばここから出れば答えてくれる事は当分....いや永遠にないかもしれない。
「ではもう一つ質問です。貴方の能力の同調するというのはどんな能力ですか?わかる範囲でいいので教えてください」
この質問の回答次第で彼がどうして二重人格のような状態になっているのかを聞くことも、最悪教えてくれなかったとしても推測することができる。闇の向こうから何かを諦めたようにため息が聞こえた。何か面倒なことを押し付けられたような反応だ。恐らくいつかこよみに言わせるつもりで居たのだろう。
「あの同調という能力はさとりの感じた通り相手を自分に投影して同調する能力だ。ここにくるまではそんなメルヘンなことを20にもなった大人が言えば周囲からの目はどうなるか容易に想像がついたから特に口外や相談する事はなかった。実質相手の心がわかっているかなんてわからなかったしな。だから今の方が辛いかもしれない」
大方想像通り。ただ、信じていなかったとしても心的負荷というのはとてつもない事になる。到底人間が耐えられるものではない。
「流石は心を読む能力を持っているだけあって心に関しては詳しい。あれはそこにあった想いも感情も全てを一度受け止める事になる。当然、その話を聞いているときの相手の心情に大きく左右される。ただ、別に感情がどうであれ普通にやっていれば正常ではいられない。心というものは他人の想いまで受け取れるほど強靭なものではない。基本的に一人だけが使うものだとして作られている。だが、俺はこの能力と生きてくる他なかった。だから工夫をしたんだ。まず、他人と極力関わらないようにしたが、それでも限界はある。外の世界というのは恐ろしく他人と関わる機会が多い。人間の総数というものがあまりに多すぎる。それに別に俺を対象に話していなくとも会話が聞き取れれば軽くではあるがこの能力は発動する。さとりの読心がその目で見る事で発動するなら俺の能力は耳で聞くことによって発動する。耳を聞こえなくするなんて事は出来なかったから、分担することにした。一人で受け切れないなら受ける人数を増やせばいいと考えたわけだ。人のカタチ自体は能力の関係上沢山心にあったからな。ただ、彼女はここにきてから作られた人格。だから少し慣れて居なかった。それに妖怪の生きてきた年というのは人とは比較にならない。その分想いも強くなっていた。俺は慣れていたからまだ問題なかったが、彼女の容量は越えてしまった。だから休ませている。ただ、休んでいる間、人格がなくなるのはマズイ。だから俺が出てきた、ということだ。二重人格みたいなものだと思ってくれて構わない」
「そんな能力。そんな小細工をした程度で耐えられるようなものでは」
想いとは蓄積する。周囲から虐められ自殺に追い込まれる人間。それは
他人からぶつけられる負の想いと自分自身への負の想いが集積し耐えられなくなった結果起きてしまうものだと考えている。当然世界にあるのは負の感情だけではないが、どちらにせよ想いを背負うというのは尋常ではない不可になる。
「確かにどれだけ器を作ろうが俺が受けないという選択肢がない以上俺に対する負荷はそこそこあるが、実際耐えられているんだ。俺はこうして今も普通に会話ができている。心は意外と強い」
確かに会話をしている限りは彼に異常な点はない。会話も成立している。ただ、闇の中、彼は一体どんな表情をしているのだろうか。どんな姿をしているのか。ふとそんなことが気になる。しかしここは深層心理、何が起きるかはわからない。きっといつか、彼の姿を見ることは叶うだろう。そんな気はしている。
「そうですね。貴方は大丈夫な様にみえます。私ばかり質問してすいません。貴方からは何かありますか?」
しばらくの静寂。何かを考えているのか少し何かを言いかけてやめたようだ。
「そうだな。なら.....質問ではなくお願いだ。俺は外といえば良いのかな。そこでは能力もあったし、結構他人に気を使ったり、長男って立場上色々...何だろうな」
言葉を選ぶような間の後、少し寂しそうな苦笑が聞こえ、続きが語られる。
「伸び伸び暮らせなかった。別に不満だったわけではないが、古明地こよみにはそんな人生送って欲しくない。俺はもう自分で人生を歩めないが彼女はまだ先がある。どうか呑気に過ごさせてやってくれ」
口調からして堅苦しいイメージがあったが実のところそうではないらしい。だが、彼が話す内容ではまるで今生の別れのようで。
「別に俺という人格が死ぬわけじゃない。ただ、俺が古明地こよみというここに住む人間ではないというだけだ。そして俺には身体がない。わかるだろ」
シンプルに自分に出る幕はないとそう言いたいのだろう。だが、それはあまりにも残酷で、悲しい。彼は死んだわけでもなく、心が壊れる瞬間までこの世界に1人、取り残され続ける。一体何が彼をそうさせるのか。
「良い人だな。でも、大丈夫だ。俺も感覚は共有してるから意外と暇はしてない。幻想郷だっけか、その世界も見てる。さとりの思っているよりはずっとマシだ。まぁ、俺の話はあまり必要無いだろう。俺に質問できる機会はそうそう無いのに本当にもういいのか?」
自分が世界から死んだ事にされるのと今の状況は変わらない。にも関わらず、彼の言葉から不安や恐れは感じ取れない。あるのは諦観と達観。まるで他人事のように淡々と言葉を紡いでいた。
「なら、貴方がどんな人間だったのかを教えてください」
「は?そんな事聞いてどうなるんだ。俺はもう居ないも同然、知ったところで何も無いぞ。ほら、もっと色々聞くべきものがあるだろ。何か気付くこととか気になる事とか無いのか?」
素っ頓狂な声が響き、彼が疑問を投げかけてくる。闇の向こうから聞こえる彼の声は明らかに困惑していた。だが、そんな事は関係ない。
「そんなもの聞いても何にもなりませんから。それに私は初めて貴方に会って少し興味が湧いたんです。貴方自身を知りたいと」
「あー…そういえばそういう奴だったな。まぁ良いか。でもこよみが前に軽く話しただろ。普通の男だった。ただ、人付き合いがすごく疲れるからゲームに逃げてただけの男。でもこれだと全く同じか。なら、俺と言う人格が自分をどう考えてるか、それを加えよう。俺という人格は恐ろしくバカで臆病だ。自分よりも他人の願いを優先しているように演出し、自分が傷付かないように立ち回る。そんな人格だった」
淡々と、彼は言い放った。自分は良い人間ではないと。どちらかと言えば屑だと。大方自分の事を他人に告げる者の発言では無い。彼が普通の人間であれば。
「ひどい事を言うんですね。自分自身の事なのに」
「事実だからな」
相変わらず闇の先に居るはずの声の主は見えない。響く声だけが存在を主張している。
「ならこれが最後の質問です。どちらの能力が貴方が元々持っていた物ですか?」
「残念だが、それは分からない。ただ、ここにきてどちらの能力を説明された時はどちらも俺らしいと思った。同調した情報を生かし、理想に沿うように自分を偽って見せる。ほら、しっくりくるだろ」
一つ気づいてしまった事がある。きっと彼という大元の人間は、恐ろしい程に優しいのだろう。普通の人間ならばそれだけだった。だが、彼は同調ができる。他人の求める自分への理想が流れ込んで来る。優しい彼はそれを参考に動く。目の前に成功のルートがあるならわざわざそこ以外を通る必要はない。延々と自分を改竄し、その果てにふと気づく。自分とは一体なんなのか。他人の理想を追った結果。遥か後ろに置かれた自分自身を見失う。探したいが、今に至るまでに作り上げた全ての仮面が邪魔をする。
「さとり」
そして彼はこの幻想郷に辿り着いた。全てが新しい環境。そこで彼は考えたのだろう。
「さとり、それ以上の詮索は辞めてもらおう」
闇から手が伸び、後ろから肩を掴む。慌てて振り返るとそこには、男が立っていた。白いシャツに黒のチノパン。服装は普通だが、それ以外が異常だった。
「あなた」
「それを優しさとは呼ばない。臆病って呼ぶんだ。それに少し、いいように理解し過ぎだ」
顔の部分と背後が黒い霧に包まれていた。その上、読心が通用しない。
「折角だし出てきてみた。こんな機会はそうそう無いしまぁ、いいだろ」
戯けるように笑っているがその顔は、その肌は全てが見えない。彼は本当に笑って居るのだろうか。
「これが臆病の末路ってことさ」
表情も感情も掴めない。彼はこの場にいる。先ほどと全く状況は変わらない。ただ、一つだけわかった事は。彼は私が考えるような生やさしいものでは無いという事だ。雰囲気が明らかに異常だった。目の前に立って居るのはたった1人の人間にも関わらず、妖怪、神、大勢の人々、それらをミキサーにかけ、ごちゃごちゃになったものを人の型に落とし込み、目の前に出されたかの様な不気味さがある。
「優しいんじゃ無いんだよ。自分が嫌われるのが怖くて逃げてた、それだけだ。わかっただろう。これがその結果。これが古明地こよみになる前の俺」
声が出せなかった。彼と言う人間の異常性に恐怖よりも畏敬の念を抱く。そして、彼という人格は読心を用いても読めない。まるで喧騒のような雑音がはいるだけだった。
「そうだ、あと最後に一つ、俺が出るというのは古明地こよみに何か深刻な事態が起きたという事だと考えてくれ。周りにはわからないだろうけど、心を読めるお前ならきっと気づけるだろう。それじゃ、さようなら。もう会わないことを願ってる」
「貴方は!」
手を伸ばすが届かない。彼の姿が闇に溶け、世界に静寂が訪れた。もう何も答える気は無いのだろう。気づけばあった筈の机も、イスも、嘘の様に消えていた。ただ一人闇の中に残された私は諦めて能力を解く。
あいかわらず、こよみは静かに寝息をたてている。外には相変わらず酔いどれたちの喧騒が響いている。
「それでも貴方は私の家族なんです。今度こそ」
静かな決意は窓から光が差し込む明かりに溶ける。未だに静かに寝息を立てている彼女を起こさない様に立ち上がり、部屋を後にする。
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彼女が居なくなったのを確認し、寝台から立ち上がる。そして窓の外の景色を眺める。相変わらず酒を飲み交わす妖怪たちが見える。
「あんな事は言ったものの辛いわな」
当然誰からの反応はない。寝台に腰をかけ、静かに天井を眺める。先ほどまで寝ていたからかまだ人肌の熱を感じる。こうして自分の意思でこの体を動かすことはこの先ほぼないと考えるとやはり辛い。ただ、こよみも俺といえば俺だ、そう考えればまだ心に余裕はある。
それに、仕方のない事だ。俺の選んだ道、これは俺を見つけるいい機会だ。今を逃せば見つけることは出来ないだろう。普通に生きていてこれだけ周囲が変わることは無いだろう。それに、ここであればあまりあの能力を使う必要も無い。
「古明地こよみか。彼女の人生に幸の多からん事を。なんてキザっぽいな」
少し照れるように笑う彼。独り言を楽しそうに呟く彼とそしてその横に座る少女。
「キザっぽいね。似合ってないかも」
驚いて横を見るとそこには古明地こいし。いつの間にやら帽子は何も乗っていない机の上に置かれ、横に腰掛けていた。
「うーわ。恥ずかしいな。まぁ、いいか」
正直かなり恥ずかしくはあるが、別にこれで被害を被るのは俺では無い。こよみの方だ。そう考えておけば問題ないだろう。
「いつからいたんだ?」
「おねーちゃんが入った時から」
「なるほど」
少しの静寂。二人の静かな息遣いだけが部屋に残る。古明地こいしの能力は未だにどういう原理なのかは分からないが、警戒しておくべきだった。
「さよならなの?」
「いや。そんなことはない。別にこよみは消えない」
昔からこういう小さい子供の悲しそうな声には弱い。傷つけたく無いと思ってしまう。俺はもう大人だ、社会に揉まれ、様々な事を知った。彼女達もいつか知ることにはなるだろうが、その時まではどうか純粋にいて欲しい。
「私、会いにくるよ」
「こよみにか?」
回答の想像はついているがあえて外す。そうであってほしく無い。俺は頼まれればきっとブレてしまう。そんな気がした。
「お兄さんに」
最悪の回答だった。こよみちゃん呼びではなく、敢えてお兄さんと呼ぶあたり間違いなく気づいている。
「なんで?」
まだなんとかこいしをこの話題から話せないかと、無かったことには出来ないかと必死に策を練る。
「おねーちゃんから聞いたでしょ。私は人間とお友達になりたかったの。でもね、失敗しちゃった」
胸元にあるサードアイを寂しそうに見つめるこいし。その本来開いていたであろう瞳は、固く閉ざされている。俺も彼女の話は聞いた。能力など使わずとも、人間に何をされたのか簡単に想像はつく。
「でもね。まだ、普通の人間のお友達が欲しいってそう思うの」
「こよみも人間だ」
「違うよ。こよみちゃんは特別な人間。でしょ」
「どうだろうな」
下手に間が空いてもおかしいと判断し、簡単に返したがすぐにそれがミスだったと気づく。しっかりと否定をしておくべきだった。または能力を使ってまでも騙すべきだった。ただ、完全にバレきっている状況から相手を騙せる手が今の俺には浮かばない。
「私も元々はさとり妖怪だし、お兄さんよりもずっと長い間生きてるんだよ」
お見通しだと、諦めろと、そう言いたいのだろう。だが、ここで認めるわけにはいかない。賢者に聞かれていてもおかしくはない。ここで認めてしまったら本当に何のためにさとりにあそこで話したのかが分からなくなる。
「そうか。なら、時々会いにくるといい。会えるかどうかは気分次第だけど」
「そこは確定じゃないんだね」
「寝てるかもしれないし、出かけているかもしれない」
「そういう言葉遊び嫌いじゃないよ」
小悪魔のように笑うこいしを少し諦めたように見つめる。まるでアニメの世界だ。誘拐されて別世界に、周囲には可愛い少女。今でも時々夢なのではないかと思う。だが、こいしに認知されていた事で正直少し嬉しいと思ってしまった自分もいる。いつかは壊れる俺だが、誰かの記憶には残れる。
「いつ戻るの?」
「わからない。数日かかるかもしれないし、明日には戻っているかもしれない」
もう手がない。諦めも時には肝心だろう。どうかこの会話をあの賢者が聞いていない事を願うほかない。
「そっか」
「はい。この話は終わりだ。もう寝る時間だろ。早く寝ろ。背が伸びないぞ」
立ち上がり、寝台に潜り込む。単純な話、これ以上会話をしなければボロがでることはなければ、賢者に聞かれるリスクもない。さっさと目を瞑って寝たふりでもしておこう。
そんな俺の眠る寝台におもむろにこいしは入り込む。
「は?」
「一緒に寝よ」
「...........勝手にしろ」
そうとだけ言って背を向ける。言ったところで何処かに行く気はないようだ。力尽くで退けることもできるが、面倒過ぎる上にメリットがない。にしても初めての家族以外の添い寝がこんな所で消費されるのか。人生本当に何があるか分からないな。
こよみはそのまま背中に気配を感じつつも意識を落とす。