人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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 ぺたぺたぺたりと塗りつぶせ


33話 巡り巡ってもう一度

 

 空を移動する黒い球体。古明地こよみはついに追いつき、その進行方向に立ち塞がる。

 

「止まれ」

 

 その号令でこよみの周囲を飛んでいる様々な武器が一斉にその切先を闇に向ける。

 

「なんで?」

 

 闇の中から聞き覚えのある声が聞こえる。そして、ゆっくりと闇が晴れる。月の様な金髪と血の様に赤い瞳が現れて、彼女を見据えた。先ほどまであの血の中にいたとは思えないほどにルーミアの服は一切の汚れがない。

 

「さっきも殺してただろ。あれで十分じゃないのか」

 

 こよみは警戒を解くことなく、ルーミアに問う。しかし、ルーミアは呆然とその紅い瞳でこよみを見据えている。

 

「なんで?」

 

「ダメか」

 

 こよみは必死に思考を回す。話は通じない。攻撃もしたくない。原因もわからない。だが、何かを犠牲にしなければ結果は得られない。

 

「俺が犠牲にするのは俺で良いんだよ」

 

 頭の中に流れた不協和音を消す様に低く呟く。

 

「なにがあったのか調べさせてもらうぞ。ルーミア」

 

 周囲の武器から鈍器を選択。ルーミアへ射出する。しかし、その一撃は闇に吸われた。比喩でも何もなく、ルーミアを包み始めた黒い闇。その中に消えていった。手応えはない。

 

「なんで?」

 

 未だにルーミアは誰かへと問いを続けている。その赤く染まった瞳は何処を見ているのか。

 

「闇か」

 

 こよみは思考を回す。

 先ほど飛ばした弾幕がどうなったかわからない以上、ルーミアへの接触は出来ない。そしてあの闇がある以上、ルーミアにしっかりと能力を行使出来ない。なにが起きたか知るほどの同調は相手の目を見ないといけない。それに、深い同調には相手の動きを止める必要がある。さとりに過去を読んだ時も、俺は気を失った。あんな隙を晒せば間違いなく殺される。

 だが、なんにしてもまずはあの闇の性質を判明させることが第一。

 避けられた。という線は考え難い。避けたなら後ろから出て来るはずだ。となると受け止められた。または、あの闇に接触するとなんらかの要因で消えてしまうか。この2択。

 

 闇の前に相変わらず立ち塞がり。こよみは右手を振り上げる。その瞬間闇が伸びる。まるで獲物を捉える触手の様に伸びたそれをこよみは距離をとって避ける。

 

「攻撃も出来ると」

 

 さらに、闇の中から青い光弾が円弧状に放たれる。距離は取ったままこよみは弾幕を避ける。

 

「同調ないとやっぱ難いな」

 

 こよみは自分がどれだけ同調という能力に頼っていたか。それを理解させられた。あれがなければ避けられるものも避けられない。これまではわかっていたから避けられた。

 近づけば触手、離れれば弾幕。闇の性質を理解することですら一筋縄ではいかない。

 

「ちゃんと強いじゃんか。恨むぞ。博麗霊夢」

 

 あの闇が俺の攻撃を喰らっているのならあの闇よりも大きな範囲で攻撃すればその武器の動向でわかる。それが現状最も分かりやすく手っ取り早い判断方法。ただ、現状はその余裕すらない。それだけ大きな武器の製作には少し時間がかかるが、その余裕をくれる様子はない。

 

「どうするか」

 

 距離を取れば避けられない攻撃ではない。ただし、近付くと触手が出て来る。弾幕と触手を能力無しに避け切る自信はない。だからと言って距離を取り続けてもこの戦闘が終わらないだけだ。

 

「択を削るか」

 

 こよみは周囲に浮いていた短剣のみを掴み、それ以外は射出する。しかし、それは闇に届くことなく青い弾幕に数発当たると消えてしまう。

 それを確認すると周囲に光を纏った50センチ程度の直剣を5本作り上げ、一列にして射出。先頭の2本は弾幕との衝突で消えてしまったが、残りの3本が闇に突入する。ギリギリ闇の直径を超える程度の長さはあった。

 しかし、相変わらず手応えはない。そして、闇の外に剣が出て来る気配はない。これで合計4本。ルーミアが闇の中で受け止めていたとしてあのサイズの武器を3本プラス最初の鈍器を全て持っている可能性は低い。なら、なんらかの要因で消えていると考えるのが妥当。

 

「となるとだ」

 

 こよみはルーミアに手をかざす。そしてその手を振り落とす。刹那、ルーミアの上に黒いリボンが2つ。ゆっくりとその距離を開けると捕食者が獲物を食う様に黒い空間が広がる。そして、その中から大量の水が滝の様に溢れ出した。

 しばらくの間、その水は闇に吸われる様に消えるが、絶え間なく流れ出す水はやがて闇を押し流して闇を剥がす。

 そのまま地面に向かって流されるルーミア。それを見送ってこよみは水を止め、自らの後ろに開いた裂け目に入る。そして地面に叩きつけられ、肺に入った水を吐き出そうと喘ぐルーミアの目の前に現れる。

 そしてそ身体を裂け目に手を入れて取り出した鎖で周囲の木々と繋ぐ。

 

「なん....で?」

 

 咽せながらそれでもなお問うルーミアにこよみは笑う。

 

「あー、難しい質問だな」

 

 恐らくこの応答に意味はない。ただ、それでも。

 

「これはお前の為だって言い切りたいが。残念。俺の自己満足だ」

 

 こよみは両手の人差し指と親指で窓を作る。そしてその中にルーミアを捉えた。

 

「それじゃ、失礼する」

 

 

 

 くらくらくらり 世界が揺れる

 

       ゆらゆらゆらり また揺れる

 

         じわじわじわり 世界が滲む

 

   べたべたべたり また消える

 

           くるくるくるりと繰り返す

 

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