人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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日常を、怠惰に。

故に、人生に色はない。


44話 血で血を洗う

 

 気分が良い。

 

 こんなことをしたらどうなるかと言う恐怖。そんなことをしてはいけないと言う倫理。そんなものを気にする必要もなく、自分を解放する。思い描いたように体は動き、思い描いたように破壊する。

 

「なに笑ってるのよ」

 

「いや、気にしないでくれ」

 

 こうでなければならないという責任感。こうあって欲しいと言う他者からの希望。その全てを無視する。自分の思うように、自分のしたいように動く。

 刀を作り、身をかがめ、全力で地を蹴る。地面は砕け、こよみはまるで隼のようにレミリアに急接近。刀を抜くが、少女はそれを槍で容易に受け止める。武器の強度の差が出たか、受け止められた瞬間に刀が折れた。

 その隙を見逃さず、突き出された真紅の槍を身を捻って避ける。確実に避けた一撃。しかし、その攻撃は脇腹を貫いた。

 しかし、古明地こよみは止まらない。両手に短剣を持つと再度強襲。しかし、槍を持つレミリアに対して短剣ではリーチが足りない。十分な距離を保たれながら攻撃を繰り返し続けるレミリア。ただ、蝶のようにその攻撃を避けるこよみによって徐々に壁際に追い詰められていく。

 そして、背が壁に触れた瞬間にこよみは先程以上にスピードを上げて懐へ。

 

「甘いのよ」

 

 それに合わせてレミリアは上に飛行、距離を取る。短剣を避けるのには十分すぎる距離のはずだった。しかし、次の瞬間鋭い痛みと共に地面に落ちていた。

 

「なにが甘いって?」

 

 こよみの手には、直剣が握られている。短剣を振る最中に直剣に変えたことによるリーチの変化。それによって蝙蝠のような羽が切り落とされていた。

 それを見て、今度はこよみが上から見下ろすようにして笑う。

 

「少しはやるようね。でも、私を舐めない事ね」

 

 瞬間レミリアが立ち上がり、槍を突き出す。容易に避けることの出来る攻撃だった。こよみは体を捻って避ける。だが、槍は腹部を貫く。それを引き抜こうと古明地こよみは掴む。

 レミリアが右手を掲げ、鈍い光を集める。

 

「消えなさい」

 

 声と共に、赤い光がこよみの右肩を吹き飛ばす。いや、正確には消しとばしたと言った方が正しいか。まるで沸騰したかのように血が煮立ち、肩から溢れる。地面に光で作られた剣だけが落下する。

 

「繋ぐのは簡単でも作るのは難しいのよ」

 

 そのままその光で左肩も消したレミリアは勝ち誇ったように笑い、こよみを蹴り飛ばし、そのまま槍を抜き去る。

 

「お姉ちゃんがそんなことするなんて、私は悲しいよ」 

 

 だが、こよみはなにもなかったかのように立ち上がるとその身体が赤に包まれる。周囲に撒き散らされていたこよみの血が徐々に集まり、球体を形成する。

 

「なるほど。ここからと言ったところかしら」

 

「始めようか」

 

 その球体から現れたのはこよみのはずだった。しかし、視覚の情報がそれを否定している。

 金の髪に紫のメッシュ。右手には身の丈はありそうな赤い槍が握られている。そして、背には竜にも似た黒い翼が生えている。

 ただ、血に塗れた服、それだけが、あれがこよみはではないかと伝えている。

 

「私の思っていた以上に酷いのね」

 

「残念ながら」

 

 こよみと思われるものはニコリと笑う。ただ、その笑みはまるで空虚だ。その姿を確認してレミリアは槍を掲げる。そして、次の瞬間。紅がその槍に集まる。

 

「神槍」

 

 その言葉と共に、十分に紅を吸った槍が朧げに輝きながら脈打つ。

 

「スピア・ザ・グングニル」

 

 そして、その宣言と共に、槍を投げる。

 

「なるほど」

 

 こよみはその槍を、自らの槍で弾く。それを見たレミリアの目が驚いたように開く。

 

「小細工で勝っても楽しくないだろ。ここは正々堂々やろう」

 

 こよみは槍を構えて、レミリアにその切先を向ける。

 

「ふふ。そうね。良いわ。思う存分、殺し合いましょう!」

 

 レミリアは霧を集めて槍を再度出現させるとこよみに対して飛来する。既に翼は回復しており、空気と共に風を切り裂くが、こよみはそれを自らの槍で受け止める。

 

「久々よ。こんなに楽しい戦いは」

 

 紅い館の最奥部。玉座の置かれた大広間で2人の少女が槍を交えていた。

 

「思ったように動けるというのはこんなにも楽しい事なんだな」

 

 風を切って、音を置き去りに、2つの赤が交差する。しかし、そのすべてはお互いに致命傷を与えられない。確実に当たりそうな攻撃もすんでのところで弾かれる。

 

「でも残念。次の機会だな」

 

 こよみの姿が元に戻る。黒い髪に、紅く染まったシャツと傷だらけで肌色が見えている面積の方が多いチノパン。

 そして、レミリアの槍の柄を受けて吹き飛んだ。

 

「は?」

 

「あんたらいい加減にしなさいよ!」

 

 こよみでもレミリアでもない声が響く。扉を蹴り開けて入ってきたのは紅白の巫女だった。

 

「霊夢」

 

 レミリアは槍を構えるが、少し考えた後に槍を置く。その槍は手を離れると同時に周囲の紅へと帰っていく。

 

「降参。あの外来人とやって疲れたわ」

 

 両手をあげて降参したレミリアに紅白の巫女は歩み寄る。そして、

 

「それで、許す訳。ないでしょうが」

 

 思い切り殴った。しかし、その攻撃はあまり効果が無かったようでレミリアは立ったままだ。それを紅白の巫女が憎らしそうに睨む。ただ、睨んでいたのはそれが理由ではないらしい。

 レミリアは殴ってきた巫女ではなく、パラパラと崩れる壁を見ていた。そこは先程古明地こよみを吹き飛ばした場所だ。

 

「流石に強い。後は巫女さんに任せるわ」

 

 悠長に瓦礫の中を退けて現れたこよみが告げる。その身体にはもう傷はなく。なぜか服も先程の血が消えて、新品同様になっていた。

 それを見て、レミリアは少し悲しそうに笑った。

 

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