人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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 終わりがあるから美しい

 あぁ、きっと美しいだろう。

 だが、そのあとは?


45話 幕は降りない

 

 服についた埃を払って、こよみは伸びをする。

 

「じゃ、俺地底に帰るんで。後はよろしく」

 

 あー疲れたと言いながらこよみは紅白の巫女が蹴破った扉から外に出ようとしたところで、飛んできた箒にぶつかった。正確には、箒を乗り物にしている金髪の魔女と衝突した。鈍い音が響き、こよみはうずくまる。

 

「あ、ごめん」

 

「あ....じゃねぇよ....前見て運転してくれ」

 

 うずくまるこよみの背を申し訳なさそうに魔女が撫でる。

 

「魔理沙?遅かったじゃない。もう終わったわよ」

 

 こよみの背をさするのをやめ。霊夢の方に視線を投げる。

 

「知ってるよ。まぁ、怪我がなくて良かった」

 

「はぁ、今度こそ俺は行くからな。後、せめて妹には理由を伝えた方が良かったんじゃないか?じゃ」

 

 先程の衝突でダメージを負った横腹をさすりながら、それだけ言い残してこよみは廊下を曲がっていった。

 それを見送って、霊夢は言葉を発する。

 

「で、どうだったのかしら。あいつは」

 

「強いわよ」

 

 レミリアの回答に霊夢はため息をつく。

 その反応を見て、レミリアが言葉を続けた。

 

「能力の恐ろしさだけで言えば、貴方と同格かもね。霊夢」

 

「まぁ、フランが危ないって言うくらいだ。そろそろなんとかした方が良いんじゃないか?」

 

 そんな、呑気に暮らしたいだけの元人間の対策会議が行われていた頃。こよみは、既に湖の上にいた。

 裂け目での移動はあえてしていない。ただ、呆然と空を飛んでいる。思考が纏まらない。何かを考えようとする度に、思考にノイズが走る。

 正確には、多くの声が聞こえる。

 

「久々だな」

 

 と言っても。ここまで酷いのは久しかった。何かを考えると誰かが意見を行う。それ延々と行っている。そこに議論はない。ただ。各々が自分の意見を言っている。

 

「うるさいな」

 

 原因は大方見当がついている。解決法も。ただ、どうやら少し耐えないといけないらしい。こよみは、こんなことは慣れてると自分に言い聞かせて空を飛ぶ。多くの自分がそれに意見を述べるが、それは無視した。

 気付けは森を越え、村が見えてきている。そう言えば、あの後どうなったのだろうと、こよみはなんとなくでその村に寄ることにした。

 それが、最悪の判断だとも知らずに。

 

      ***

 

「フラン」

 

 赤い霧は既に収まった。霊夢と魔理沙との会話も終えて、レミリア・スカーレット、この館の主人は妹と食卓を囲んでいた。

 上品にナイフとフォークを使って食事をする妹にこえをかけえうが、回答はない。

 

「なんであんなことしたの」

 

 一体何を聞いているのか。それは明白だ。紅霧異変私はそれをもう一度起こした。何故か、そう聞かれている。しかし、私には答えられない。

 

「それは」

 

「言えないんでしょ。そうやっていつも隠すよね。大事な話は。私ももう、子供じゃないのに」

 

 何も言えない。気まずい静寂が走る。もしもここに、咲夜や美鈴がいれば話を変えるなどしてくれたかもしれないが、今は咲夜を永遠亭に連れて行くために美鈴もいない。親友たるパチュリーは先程あの外来人のせいで被害を受けた図書館の修復に忙しいらしい。

 

「ごめんなさい。でも、これは貴方を守るためなの」

 

 これは真実だ。愛しの妹を守るために。あの行為は必要だった。そして、実際に情報が手に入った。

 

「どうせ何を言っても言わないもんね。あそこから出ても結局変わらない。もう良いよ。外の空気を吸ってくる」

 

 私にはその背を止められない。今は、止める権利すらない。

 未だに皿には夕食が残っている。かなりレアで焼き上げられた肉が、少し掛けた状態で放置されている。1人残された食卓で、紅の女王は食事を続けた。

 

「なんなのよ」

 

 食堂を出て、廊下を飛ぶ。何体かのメイド妖精とすれ違うが、皆あえて視線を外す。

 いつも通りだ。悪魔の妹と呼ばれた私を、皆畏れている。

 

「こよみ......ね」

 

 考えているのはあの外来人の事だ。あいつは、私を守ろうとした。それも二度も。悪魔の妹と呼ばれるだけあって、私は実力もある。だからこそ、守られる経験は少ない。あれは私にとって屈辱であり、どこか嬉しかった。

 

「こんな場所......」

 

 右手を構えて。手に握ったそれを眺める。そして、手を振って、窓を開く。外では鳥が青空の下を羽ばたいている。それを遮るものは何もない。

 

「じゃあね」

 

 フランドールはふわりと体を浮かせる。しかし、背に生えた枝のような羽では空は飛べない。

 故に浮くのだ。鳥の様に。例え、羽ばたく事は出来ずとも何にも遮られることなく空を飛ぶということには分かりない。

 故にこれは告別だ。自分で未来を選ぶ選択でもある。

 

 そして、それには責任が伴う。

 

      ***

 

「あれで良かったの?」

 

 先ほどはレミリア以外誰もいなかった食卓に、もう1人の少女が座っていた。黒いクラシカルなワンピース。黒い髪は背中まで伸びている。

 少女と言う言葉の具現化とも言えるその風貌で、食卓に並べられた食事を眺める。

 

「これがあの子のためだから」

 

「あぁそう」

 

 その少女はそれだけ言い残すと、食卓に置かれていた紅茶を一口だけ飲み。裂け目へ消えていく。

 それを見送ってレミリアは紅茶を啜る。

 

「あの外来人のもたらす未来。それはきっと貴方の望むものではないわよ」

 

 そんな言葉を、一つ残して。

 

 

 

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