人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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人間は同じものあろうとする。

故に、突出した何かに憧れ。

それが手に入らないとわかると、妬むのだ。


46話 嫉

 

 腕には暖かい赤が握られている。そして、それに食らいつく。まるで体温のような暖かさが口の中に広がり、続けて錆びた鉄の様な匂いが拾いが追いかける。

 それが誰のものなのか。そんなことに興味はない。

 ただ、一つ言えるのは。

 

 俺達は許せなかった。

 

           *****

 

「パルスィさん。なんでこんなことを」

 

 目の前には緑の蒸気を噴き上げる少女。ショートの金髪は揺らめき、黒い浴衣の袖を揺らす。そして、その中で、深緑の眼光だけが。私を見つめていた。

 回答はない。勝てる見込みもない。

 右には、地面に倒れて動かない鬼。既に地底最強は地に倒れていた。

 

「貴方は」

 

 口を開いた瞬間。緑が肉薄する。咄嗟にしゃがみ、間一髪でパルスィの突き出した釘を避ける。そして、そのまま大きく後方へ飛ぶ。

 緑を吹き出す少女は、追ってこなかった。

 相性は最悪だ。心を読んでも、嫉妬を原動力に動く彼女の次の動きは読めない。

 けれど、なんとかするしかない。勇儀さんはもう動けない。お燐とお空には館を守る様に言いつけてある。そのため助力も望めない。正直、状況は絶望的。ただ、そうであったとしてもなんとかしないといけない。なぜなら、こんな感情の塊をこよみにだけには会わせてはいけないからだ。

 再度距離を取り、手を探る。力は足りない。技術も足りない。速さも足りない。ただ、私には能力がある。

 

「あぁ、妬ましいわ。みんなに嫌われていると言いながら、実のところは家臣にこの上なく好かれている。私には、そんなにも私を思ってくれる人はいなかった」

 

 緑が軌道を描いて、右手に持った槌を振りかぶる。回避が間に合わない。死なない為に、腕で体を庇おうとする。その刹那、その槌が弾かれる。

 

「さとり様!」

 

 その槌は、巨大な砲台によって弾かれていた。と言ってもそれは腕についている。刹那その砲台から光が放たれる。薙ぐように放たれたそれは回避はされたもののそれはパルスィの肌を黒い着物の上から焼いた。

 その光線とは、核融合であった。外の人間ですら手に余る超科学。それをお空はその右手の砲身から放つことができる。

 

「お空、地霊殿は?お燐がもう大丈夫だって」

 

 恐らくそれは嘘だ。限界が来る。ただ、それでも私を守ろうとしてくれたのだろう。なら私がやるべきはこの目の前の橋姫を戦闘不能にし、お燐を助けること。

 

「お空。行くわよ」

 

「もちろん!」

 

     ***

 

「しつこい奴は嫌われるよ!」

 

 地霊殿には妖怪が押し寄せていた。お空の熱線によって多くは焼き払ったが、それでもまだ数は多い。30はいる妖怪達が門を越えようとしている。そしてあたいはそれを相手にしなくてはいけない。

 妖力はまだ余裕がある。けれど、使い切ってはいけない。お空が削ったとはいえ、まだ街には多くの妖怪がいる。

 

「やってやる」

 

 前回、こよみに助けてもらった。ただ、今回はその助けを得られそうにない。地上から、外来人が異変解決に向かったという新聞が届いたからだ。そしてあの異変は、地上の吸血鬼が起こしたもの。一筋縄では行かないはず。

 あたいがなんとかしなくてはいけない。前回の一件以降、こう言った事態に対抗する策を考えていた。

 

「手伝いな!」

 

 右手を掲げる。その瞬間に、地面に倒れて絶命していた妖怪が動き始めて妖怪を襲い始めた。

 

「さとり様には怒られそうだけど。これなら、耐えられる」

 

 瞳を緑に輝かせた妖怪が光を失った瞳を持つ妖怪に蹂躙されていくのを眺めながら、お燐は悲しそうに笑う。

 

    ***

 

 私達は優勢になった。ただ、決定打がない。お空の攻撃は一発一発が遅く、パルスィには当たらない。掠める程度ではあれだけの嫉妬を集めた彼女を止めるには至らない。

 だからと言って、心が読めない以上、私が止めることもできない。

 

「妬ましいわ。貴方には大切に思ってくれる家族がいる。でも私は、私は.....?この手で?」

 

 消え入るような声で何かを言った直後、パルスィの心が揺らぐ。私はその瞬間を見逃さなかった。

 

「ごめんなさい」

 

 能力を用いて、彼女のトラウマを想起させる。しかし、その能力は発動できなかった。

 正確には、その必要が無かった。

 

「誰が死んだって?」

 

 腹部から血が流れてはいるものの、立ち上がったのは地底最強。

 

「勇儀さん」

 

「わかってる。任せな」

 

 そのまま、頭を抱えるパルスィに歩み寄り、抱きしめる。ゆっくりとその力を上げて、いつしかパルスィは崩れ落ちる。

 

「ありがとうございます」

 

 倒れたパルスィをお姫様抱っこで抱え上げる勇儀にさとりは感謝する。

 もし、私があそこで能力を使えていたとして、彼女を止められる確証は無かった。狙っていたのはその隙だった。その隙にお空の全力をぶつける。そうすれば、異変は終わった。多くの妖怪は救われる。たった1人を除いて。

 

「にしても、いったい何があったんだ。こいつはそんなことをする様なやつじゃない」

 

 勇儀は静かに寝息を立てるパルスィんl頭を撫でる。何があったのか、それはわからない。

 しかし、どうやらそんな事を考えている時間的余裕はないらしい。

 

 地面が揺れる。さとりとお空は空に浮き、勇儀だけが盛り上がり始めた地面を睨む。

 

「さとり。パルスィを任せた」

 

 視線は外さずに、空に浮いているさとりに腕に抱いていたパルスィを預ける。

 そして、次の瞬間、地面からソレが現れた。それは百足だ。と言ってもその大きさは異常だ。巻き付けば、家家など容易に砕くことの出来そうな巨体が現れる。

 

「大百足。お前もか」

 

 その瞳は薄ぼんやりと緑の炎に照らされている。勇儀は構えを取り、さとりとお空を行かせる。

 

 しかし、その全てを無視して百足はさとりへと向かう。正確には、その腕に抱えられている黒い着物の少女を狙っている。

 勇儀が追うが、その速度は速い。地面を砕き、地割れを起こしながらそれはさとりへと向かい。爆散した。

 

「気持ち悪い。死になさいよ」

 

 頭部か爆散したままにその百足はまださとりを目指す。しかし、追い討ちをかけるように繰り出された真紅の剣がその巨体を地面に突き刺す。

 その持ち手には、少女がいた。その羽は飛ぶにはあまりにも細く。装飾というには気味が悪い。

 

「フランドール・スカーレット....?」

 

「フルネームで呼ぶの辞めてよ」

 

 剣を地面に突き刺したまま。ふわりと一行の前に降りたつ少女。そのまま、百足に手をかかげた後、此方に振り返り、仰々しいお辞儀の後に、手を閉じた瞬間。

 百足は木っ端微塵に吹き飛んだ。吹き付ける血飛沫を浴びながらもお辞儀を続ける彼女は、歌劇のヒロインというよりかは、悪魔に近かった。

 

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