人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います 作:黒犬51
この世の全ての不利益は、当人の能力不足。
「喧嘩してるの?」
上空から降り立ったお空と呼ばれた少女は、お燐とこよみの間に入る。
「そんな所だ。でも、もう終わったから大丈夫」
それを確認し、こよみは踵を返して身体を浮かせる。
「お燐、安心してくれ。俺は敵じゃない。これだけは信頼してほしい」
そして、振り向かずに、そうとだけ言い残してこよみは館に向かって飛び去った。
「なんでこよみと喧嘩したの?」
肩で息をしているお燐にお空が心配そうに声を掛ける。
「こよみが、一体何なのかを確認したかった。さとり様の家族7日...敵なのかを」
「敵...?なんでこよみがそんな事を」
その発言に驚いたお空がお燐を揺さぶる。疲れてる人を揺すらないの。と言いながらお燐がお空と距離をとる。
「わからなかった?今のこよみは、おかしい。私達の知っていたこよみとは、あまりにも何かが違う」
「そうかな。私には、変わっていないように見えたけど」
不思議な事を言うねと黒い羽を揺らして笑うお空の頬を摘む。
「はぁ」
呑気にそんな事を言うお空に大きなため息を吐き。上を見る。
ただ、もうあたいには信じる事しか出来ない。こよみの最後の言葉が嘘ではない事を。どうやってやったのかはわからない。全方位から、動けない状態にして放った弾幕を無効化された。もう、彼女を止める事は出来ない。
「そうだね。あたいも信じるしかないよ」
***
「あいつは.....」
永遠亭で2人の少女が看病されている。陽は既に傾き、赤くなった日が室内に差し込んでいる。翡翠の髪をした少女は未だに眠っているが、ラムネ色の少女は起きていた。その少女が横になっている寝台に椅子を向けて、妹紅が座っている。その顔色は暗い。
「アタイもわからない。ただ、助けてくれた」
事情を聞けば、人間が2人を襲ったらしい。それをあの黒いナニカが救ったとの事だった。あの黒いナニカが何なのかも問題だが、人間の使っていた黒い機械も気になる。あの後、慧音に確認してもらったが、誰1人その黒い機械を知らないと言った。そして、嘘をついている様にも見えないとの事だった。
そして、その黒い機械は全てが破壊されていた。元々どんな形状だったのかもわからない程に。
「謎が多すぎる」
2人の少女の前で白い髪を掻く。
「でも、アタイは。あいつは敵じゃないと思う」
「そりゃ助けられたと思ってるからそうだろうな。ただ、あそこに私が居なかったら次はお前だったかもしれない。何を言ってるかも分からなかったんだろ」
チルノ曰く、アレが何かを言っていたらしい。ただ、それは理解できなかった。それは日本語ではなく、そもそも言語かも分からないという。
「でも、もしあの人が来なかったら」
「人?あれは化け物だよ」
思わずそんな言葉が出る。私はアレが人間を殺そうとした時、火炎を浴びせた。生物であれば、燃え尽きて死ぬ物だった。しかし、直撃したアレには、何のダメージもないように見えた。
「でも、人からしたらアタイ達も全員化け物だよ」
「それは......」
一体何を言われ、何をされたのか。聞いていない。ただ、ルーミアの一件で想像はついている。だからこそ、私は彼女に何も言えない。
ルーミアを襲うならまだ理解できる。彼女は人喰いの妖怪だ。ただ、チルノは日常的に人間に被害を与えていた訳ではない。逆に彼女たちの存在で低級の妖怪が手を出さなくなっていた。
守ってすらいた。恐らくチルノはそれを意識していないだろうが、人間は気づいていたはずだ。
「みーんな化け物だよ」
ボソリと告げられたその言葉に背が凍る。そして、それはチルノの発言ではなかった。
「お前、誰だ」
眠ったままの大妖精。寝台で横になったままのチルノ。その前に置いた椅子に座る私。そして、その部屋にもう1人、白い面を被った少女がいた。まるで、雪が服を着たような、髪から服から目に映るものは白かった。
「チルノちゃん。一緒に、行こう。貴方には資格がある」
「おい、聞いてるのか」
掴み掛かろうと椅子を立とうとするが、身体が動かない。椅子が凍っていた。
「チルノ?」
横になった少女は身体を起こして、その白を見ていた。
「それで大ちゃんを守れるの?」
「もちろん」
「おい、チルノ!」
椅子を燃やして立ちあがろうとするが、今度は足が凍らされた。身体を熱するより、氷の方が早く、動くことができない。
ふらりと、チルノが起き上がり、大妖精の額を撫でる。
「私が絶対守るから」
「良いね。最高、一緒に行こう」
「チルノ!行くな!」
叫ぶが、体が動かせない。騒ぎを聞きつけてか、扉が開けられて鈴仙が現れて状況を確認し、構えをとった瞬間頭を抑えて倒れた。
「お前、一体何者なんだ!」
「名前なんてないよ。ただ、私はこの世界を恨んでいる者でしかない」
そうして、2人が突然現れた裂け目に消えていく。その裂け目からは大量の瞳が覗き込み、2人が入ったのを確認すると閉じていく。
それは、誰の目にも明らかに、この幻想郷の賢者の能力だった。
「何で、お前が」
眠り続ける大妖精とその横に1人残された妹紅は、動くようになった足を叩く。
「畜生が」
そして、廊下に倒れている鈴仙をチルノの寝ていた寝台に寝かせ、永遠亭を後にした。