人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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喧騒、同調、溶解。


53話 お祭り

 

 平和すぎるほど平和な日常。すでに見慣れて来た地霊殿の自室には、3人の少女がいた。寝台に腰かけるこよみの膝の上にこいしが座り、さとりはその横で、静かに本を読んでいる。

 流石に足が痺れて来た頃に、さとりが本を閉じ、こいしが降りてどこかに消える。

 

「今晩は祭りですね」

 

「祭りか。そういえば、服装はこれでいい?」

 

 いつも通り、黒のチノパンに白いシャツを着ているこよみが立ち上がって声をかける。

 

「そうですね。私のを貸そうかと思いましたが」

 

 さとりの視線がこよみの胸の辺りに向く。

 

「キツイか。なら、このままでいいか」

 

「いえ、サラシを巻けばいけると思うので、それで行きましょう」

 

 何かすごく嫌な予感がする。自分の直感を信じて逃げようと立ち上がった瞬間。こよみの腕が引かれる。

 

「何処に行くんですか?なーにもありませんよ」

 

 ゆっくりと振り返るとそこには、笑みを浮かべたさとりがいた。

 

「さとり....?圧縮には限界があってだな」

 

「圧縮したところで私よりも大きいという自己主張ですか?」

 

 同調をしないでいるだけでこんなにも地雷を踏み抜ける物だろうか。そんなことを思っていると椅子にこいしが座っているのが見える。

 

「こいし。さとりを止めてくれ、殺されそう」

 

 こいしがこちらを振り返るが、流石は姉妹と言ったところだろうか。さとりと同じ表情をしている。そして、一瞬こいしの胸元を見てしまった。

 

「あー、助けてはくれないか」

 

「見てなかったら考えたかも」

 

 そのまま、こいしが消えたかと思うと服を脱がせ始める。

 

「やめてくれ。悪とまじでサラシが怖いわ」

 

 本気で抵抗すれば当然剥がせるが、それは出来なかった。と言うのも、最近力加減がわからない。怪我はさせたくない。

 抵抗も虚しく、シャツのボタンを全て外されたあたりで扉が開かれ、枝から七色の結晶を吊るした異様な翼を持つフランドールが入ってくる。パルスィが暴走した一件があったらしいが、その際にさとりを助けてくれたらしく、以降は地霊殿に居候している。

 

「助けてくれ、襲われてる」

 

「あー、どう言う状況?」

 

 下らないとため息を吐いてこちらに歩み寄ってくるフラン。これでやっと救われると思ったのも束の間、こいしの声が状況を変える。

 

「こよみが、フランちゃんのことまな板って言ってた」

 

「おい、そんなこと一言も」

 

 慌てて弁解するが、既に手遅れだ。ゆっくりとフランが寄ってくる。悲しいが、どう考えても友好的では無い。そのまま右手をこいしに左手をフランに抑えられ、服を脱がされていく。

 俺は抵抗をやめて能力を一度だけ使い、されるがままになる。シャツを脱がされて、下着が露わになる。

 フランはそれをみて舌打ちすると無理やり剥がす。

 

「乱暴だなぁ」

 

 側から見れば犯罪に他ならないが、不思議と心は暖かかった。こんな日常が幸せだと感じている俺がいる。

 ここに来てから、延々と戦っていた気がする。自分の手で人を殺したことなんてなかった、妖怪は人では無いが。まぁ、そこは些細な差だろう。どちらにせよ、言葉を解し、話すものを殺したことはなかった。血も流した、死ぬことはなかったが、痛みは感じた。

 あぁ、だが痛みは最近は感じないか。臆病故に、常に痛覚はある程度騙してある。

 

「なんで笑ってるのよ」

 

 フランが頬をつねる。

 恥ずかしいことに頬が緩んでいたようだ。

 

「いや、平和だなぁと」

 

 それに少し笑って、応対してさらしを巻いているさとりを見る。かなりの力でまいているのだろう。だが、残念なことに思ったような成果はあげられていないらしい。それはそうだ。締め付けると言っても限界はある。

 何周か巻いて満足したのかさとりが扉をあげるとそこには着物を持った燐がいた。

 

「助けてくれてもいいんだぞ。こっち側だろ」

 

「やめてほしいね。アタイはあんたと同じ目に合いたくないし、さとり様の従順なペットなんだから」

 

 それを聞いて、諦める。あとはさとりに着物を着せられて終わった。薄桃色の着物に桜が刺繍されたそれは明らかに女物で少し恥ずかしい。当然女性用の着物など着たことがないので新鮮ではあったが、恥ずかしさと動くにくさが勝っている。袖を振っていると、ふと日本舞踊をしていた妹を思い出す。よくこんな格好で踊ったもこだ。

 

「苦しいな....」

 

 恐らくという言葉を抜いてそんなことを言う。実際、着物で苦しいと感じてはいない。というか...

 そこまで考えて、こよみは心の中で少し笑う。

 

「よし。さとりも着替えてくれよ。玄関で待ってる」

 

 こよみはそのまま身体を浮かせて部屋を後にする。見慣れた廊下をするりと抜けて、ステンドグラスからの光で薄ぼんやりと照らされた玄関には数匹のペットがいた。襲撃で数は減ったものの、まだこうして元気なものもいる。ぼんやりと擦り寄ってくる彼らを見下ろしながらさとりを待つ。足元に他の温もりを感じながら壁に腰をかけて目を閉じる。

 頭を響くのは騒音。誰の声でもなく、誰の声でもある。聞き覚えのあるものもあればないものもある。聖徳太子でもあれば聞き分けられるかと思うが残念なことに俺は違う。

 それは、ただただ、全てを掻き消す騒音だ。まるで溢れる水のように、それは全てを飲み込み、溶かしていく。境界は解け、自分が溶けていく、まるで泥水に流された水のように混ざり合って消えていく。

 今日が最後だな、と静かに頭に声が響く。

 目を開き、虚に天井を見上げる。

 

【あぁ、わかってる。これはみんなが幸せになる物語だ】

 

 

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