人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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 善意での行動が必ずしも、相手にとってよく働くとは限らない。


54話 世の中思い通りに行かないものだね

 

「お待たせしました。こよみ」

 

 階段の上からさとりとこいし、少し後ろからフランが降りてくる。どうやら歩きにくいようで遅れをとっている。まぁ、歩きにくいことには大方同感だ。

 

「ちょっと、早いって」

 

 フランが、少し走ろうとして躓き、階段から落ちそうになる。それを片目で見て、指を鳴らす。

 全てが静止した時間の中で、足元のペットを踏まないように気をつけながら階段を登り、フランの身体を支える。そして、指を鳴らそうとしてふと止まる。

 

「あー、ダメだな」

 

 こよみはフランの身体を少し浮かせ、ゆっくりと元の位置に戻って指を鳴らす。少し浮いたフランは間一髪で身体を浮かせて怪我はなかった。

 

「あぶな。気をつけろよ」

 

 片目でフランを見て、壁から離れて3人の前に立つ。

 

「すごく歩きにくいからな」

 

 そういってはいるものの、こよみの足取りは軽かった。

 

「そういう割にはかなり楽そうじゃない」

 

 フランは不貞腐れて空を飛び始めた。それをみてこよみは笑う。

 

「まぁ、そういう能力だし」

 

 そう、俺の能力において、初めてなんてことは、誰かに会うたびに減っていく。元々、外にいたときは能力への認識が無かった。だから、多少はマシだった。だが、この世界に来てからそれは酷くなった。

 自認というのは、非常に重要らしい。

 

「行こうか」

 

 扉を開き、こよみは数歩歩いて、飽きたように空を飛び始める。すぐに追いついてきたフランと屋台に向かって飛ぶ。後ろからさとりとこいしも飛んできた。

 少し先では祭囃子が聞こえている。あまり良い思いではないが、今回はきっとあんなことは起きない。

 そんなことを考えながらぼんやりと飛んでいると、さとりが追い付いていくる。

 

「こよみ。大丈夫ですか?」

 

「どちらかとすればこっちのセリフだけど。俺は大丈夫」

 

 そういって、さとりはフランとこいしにお金を渡し、そのまま二人を見送った。

 

「あら、二人きりだ」

 

 趣味でもない。趣味でもない?そんな事をさとりにつぶやく。それを見たさとりは俺の手を引いて、祭囃子と町から離れていく。特に抵抗する気にもなれず、延々と手を引かれていると、そのままずっと遠くまで、砂漠を超えて洞窟に入っていく。ただ、この洞窟は地上に出るために使っていたものではない。

 

「どこに行くんだ」

 

 流石に少し不安になり、さとりを止める。さとりがこちらに向き直り、やっと手を放した。洞窟にはどんな技術かは知らないは、手入れはされていないにも関わらずランタンのようなもので明かりが灯されている。何も誰も来たことがないわけではないようだ。ただ、その頻度は高くはないだろう。ところどこに蜘蛛の巣が張っている。

 

「お願いです。もう少し、ついてきてください」

 

 一瞬、同調を使おうか迷う。それを察してかさとりは声を上げた。

 

「お願いです。使わないで下さい」

 

「...分かった」

 

 迷いはあったが、それでも一度さとりを信じることにした。恐らく、騙しながらであれば、同調はバレないだろう。ただ、それはしたくなかった。

 俺を家族と呼んでくれたさとりを裏切りたくないと思った。

 そのまま、前を飛ぶさとりの後を追う。しばらく同じ景色が続き、一気に晴れる。

 そこには一つの丘を囲むように白い彼岸花で出来た花畑があった。そして不自然にその丘の上に机と椅子がある。未だに前を歩くさとりの横に立ち、その風景を眺める、

 

「ここは」

 

「秘密の場所です」

 

「そうか」

 

 恐らく、嘘ではない。実際、アニメでしか見たことのない風景だったが、新鮮だとは感じなかった。さとりが過去に経験しているのであれば辻褄が合う。

 

「じゃ、話を聞こうか」

 

 どこからか風が吹き、花が揺れる。まるで2人を迎え入れるかのように踊る花たち、その舞が終わった時。さとりは口を開く。

 

「話してくれませんか。外の世界での貴方を」

 

 一瞬こよみは黙り込む。それは、あまり話をしてこなかったことだ。それに、この話は、古明地こよみの話ではない。所謂、他人の話だ。

 それに、恐らくさとりの聞きたいことはこれではない。そんなことを聞くためだけにわざわざこんな所まで連れてくる意味はない。

 

「別に構わない。ただ、そんなことを伝えに来たわけじゃないだろ。本題を話そう。本当は何を聞きたい?」

 

「貴方の目的はなんですか」

 

 1人の少女はそれを聞いて歩く。

 

「それって話した気がするけど。必要かな」

 

「私は、貴方と言いました」

 

 それを聞いて、花畑の中で少女は笑う。地面に咲く彼岸花をしゃがんで眺める。少しの間風の音だけが支配した後、その支配権を少女が奪う。

 

「騙し切ったと思ったけど。相手が悪かったなぁ」

 

 そして、ゆっくりと花畑の上を飛び、中央にある椅子に腰をかけ、さとりを見る。

 

「さとりもこっちに来なよ。ここで話そう」

 

 さとりが飛んできて、前に座る。

 

「残念だけど。俺の目的は言えない。これだけはどうやっても読まれないようにする。ただ、一つ言えるとすれば、俺は敵じゃない」

 

 ふざけた話だ。自分でも笑える。ただ、それでも、俺の思いはそこにある。そして、思い出したかのようにまた口を開く。

 

「それに、古明地こよみが不幸になることはない。それだけだ、祭りに行こう」

 

 それだけ言い残して、こよみは飛び去っていく。その背を追って、さとりが飛ぶ。その表情には、覚悟に近い何かがあった。こよみはそれを見ずに飛んでいく。

 

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