人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います   作:黒犬51

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地底で祭りを楽しむさとり一行。
しかし、幸せとは平和とは、長くは続かない。
仲睦まじく酒を呑み交わす2人に喇叭が鳴らされた。


56話 終末を謳う喇叭

 

 「幻想郷にきて少し経ちましたよね。どうですか?戻りたいとは思いませんか?」

 

 さとりに連れ込まれ、街の端にある居酒屋に入った。端にあるからか、街で祭りが行われているからか、店の中は閑散としており、厳格そうな妖怪の店主が皿を洗っている。

 

「思わないかと言われると嘘になる。ただ、戻れないのだから考えても仕方ない」

 

 それを聞いたさとりはお猪口に入れられた酒を飲み干す。

 

「にしても飲み過ぎじゃ無いか」

 

 日本酒は一気飲みするものでは無い、だが、目の前の少女は先ほどから水のように飲み続けている。

 

「これくらいなら大丈夫です」

 

「なら良いけどな。ところで、こいしは最近どうだ。フランとはうまくやってるのか」

 

 古明地こいし。無意識に沈んだ少女。意思とは無関係に現れ消える。それゆえに、姉であるさとりはかなり心配していた。だが、最近は悪魔の妹と呼ばれたフランドールスカーレットと言う吸血鬼と仲良くやっているようだ。

 どう言った原理かはわかっていないが、無意識に消える沈むことなく姿を見せている。

 

「上手くやっていますよ。あの2人は意外に相性がいいみたいです」

 

「それは良かった」

 

 個人的にもこいしが安定しているのはありがたい。血が繋がっていないにしても家族として扱ってくれた者の存在が不安定で何も思わないほど薄情では無い。

 

「こよみも飲んでください」

 

 空にしたばかりのお猪口になみなみと日本酒が注がれる。

 

「俺はそんなに強く無いんだがな...」

 

 ため息を吐き、溢れないように慎重にお猪口を持ち上げ口に運ぶ。米の甘さとアルコールが鼻を抜ける。

 

「これだけ飲めれば十分ですよ」

 

 またお猪口を飲み干したさとりの顔色は何も変わらない。

 本当に強いらしい。妖怪が強いのか、さとりが強いのかはわからないが、これだけ飲めれば恐らく潰される事はないのだろう。

 

「傷もう大丈夫なのか」

 

 浴衣で見えない腹部を見つめる。古明地こよみが地底を離れた後、また異変が起きた。異変名はついていないらしいが、何が起きたかくらいは知っている。一度会ったことがあるが、パルスィという少女の能力が暴走した。被害は出たが、なんとか収束し、今に至る。

 俺がいれば、もっと被害が抑えられただろうか。

 もし、俺が地底にいれば、もし、俺がもっと早く戻れば、そんな”if“を思い描く。

 

「貴方が後悔することは無いですよ。実際私は助かりましたし、貴方が行ったからフランさんが来てくれた。もしもを考えて今後の策を練るのはいいですが、今はくらいは楽しんでください」

 

「それもそうか」

 

 言葉には出していなかった。心を読んでの対応である事は間違いない。

 ただ、お互いに心がわかる者どうしたからか彼女とはそこそこ息が合う。

 お猪口に注がれた日本酒を飲み干して、さとりから次を貰う。

 

「意外と呑めるじゃないですか」

 

「俺も妖怪らしい」

 

 半分嘘で半分本当だ。なんとなく、酒に強くなった気もするが、そもそも酔っているとは一体何か。それが思い出せない。

 最近、少し忘れっぽい気がする。ただ、別に気にすることの程でもない。昨日の夕飯何を食べたか思い出せない程度の物だ。別に外の世界でも特段記憶力が高かったと言う訳でも無いのだから、普通といえば普通と言える。

 

「ぼーっとして、何を考えているんですか」

 

「いや、人間卒業したなと思って」

 

 横を見れば、さとりがこちらをみていた。しっかりと目を合わせてくる。何を考えているのかと、同調をしようとした瞬間。ぬるりとさとりの両手がこよみの手を顔を捕らえて引き寄せる。そして、こよみが何事かと考える隙もなく、その唇を奪う。

 

「ん?!」

 

 一瞬の魔を開けて、こよみは目を見開いて立ち上がる。

 

「え、そう言う関係?」

 

 聞き覚えのある声で店の入り口振り向くとフランとこいしが立っていた。手には水風船が吊るされ、もう片方の手でりんご飴を持っていることからそこそこ楽しんでいたのだろうが、今はそれ以上に面白い物を見つけてしまったらしい。

 

「いや」

 

「あやや、まさかこんなものが見れるとは」

 

 閑散とした店の中からも声がする。聞き覚えはあるが、誰か忘れた、ぼんやりと心にある悪い予感を噛み殺しながらそちらを向くと、カメラが向けられていた。

 

「もっとやばいやつもいるのな。消してくれ」

 

「嫌ですよ。ただ、私のお願いを聞いてくれるなら考えます」

 

 良いだろう

 

 こよみは一瞬怪訝そうな顔をしたが、何かに気づいて即答した。

 これは、自分が受けなければならない仕事だ。やらなければいけないこと。現状で何よりも優先するべき自称だ。

 

「あら、即答なんですね」

 

「調べた感じ、半日も掛からないから別に構わないさ。じゃ、今から行くんで」

 

 椅子を立ち、大将にお礼を行って扉から外に出ようとした際に、何かを思い出したようにこよみが振り返る。

 

「さようなら。さとり。その、なんだ......楽しかった」

 

 少し恥ずかしそうに笑い、こよみは店から出て行こうとするが、扉を開けるその手を走ってきたさとりが掴む。

 

「どうした」

 

 突然手を掴まれたことに驚いたようで、こよみが振り返る。

 

「帰ってきますか」

 

「そうだね。きっと」

 

 悲しそうに笑うとこよみはさとりの手から離れる。そして、ゆっくり扉を開けて、店を出る。

 

「私も彼を追いますね。妖怪の山の問題ですので」

 

 目の前で突然起きたことを不思議に思いながら、文がこよみを追おうとする。その背にさとりが声をかける。

 

「私も連れて行って下さい。足手まといにはなりません」

 

「地上は地獄です。私はここを避難地にしたいと思っています。だから、貴方は連れて行けません」

 

 古明地さとりがここまで強く意思表示をすることを不思議に思いつつ、文は拒否をする。覚妖怪であるのならば、地上の状況は細く説明せずとも分かるはずだ。それに文の意見は間違っていない。実際。地上の戦闘に覚妖怪は入れない。故に聡いさとりであるならば従うだろうと思った。

 ただ、さとりの回答は想定とは異なったものだった。

 

「それでも、こよみは家族です。1人では行かせられない」

 

 その回答を聞いた文はおしだまる。自分の論理はおかしく無い。なら、何故さとりは引かないのか。それがわからない。

 それをみていたこいしが声をあげた。

 

「お姉ちゃん。なら、私とフランちゃんで行く。私たちがお兄ちゃんを止める」

 

「ちょ、何を勝手に」

 

 突然の宣言にフランは瞠目するが、こいしの目を見て諦める。それに、古明地こよみには少なからず恩がある。それに、今ここで引けば地獄と言われた地上が怖かったかのように見える。それは吸血鬼である彼女のプライドが許さなかった。

 

「吸血鬼の貴方と、自衛もできるこいしさんであれば断れません。ただ、もう一度言います。地上は地獄です。覚悟はしておいて下さい」

 

 再度、文が確認する。さとりは難しそうな顔をしているが、地上の状況がわかっており、フランがこいしと行ってくれるという以上。その意見を卑下にはできない。ただ、一つだけ確認したいことがあった。

 

「なんで、地上で人間と戦争が?」

 

 戦争、その言葉にこいしとフランが息を呑む。

 

 そう、地上で起きているのは、人間と妖怪の全面戦争だった。

 

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