人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います 作:黒犬51
幻想郷に残された物は、それぞれの意思で居場所を守る。
目の前の白銀の竜が咆哮する。地面が揺れる。突然化け物が現れたと通達を受けてまだ戦える白狼天狗を連れて迎え撃った。だが、状況は悪い。我々の攻撃が効いている様な気がしない。風も、刃も何も通さない。救援に来た魔法使いの火力でさえも傷一つ付けていない。
「文、なんだあれ」
空から降りてきた箒に乗った少女が、横に着く。その手には先ほどの七色の光線を放った武器が握られている。
「私にも分かりません。ただ、この先を通すわけには」
この先には私の主人がいる。それに怪我を負った妖怪も匿っている。こんな物をこの先に通すわけにはいかない。
「それはそうだけど。あれで無傷ってのはやばい。倒すよりは撤退させた方が良いかもしれない」
「どちらでも良いです。作戦は有りますか?」
本来こんなにゆっくりと作戦会議をしている暇はないが、この化け物は何もしてこない。何故か立ち尽くしている。ただ、油断はできない。視線は外さずに全員が武器を構えてそれに向かい合う。
「上手くいくかわからない」
「私には行けそうな策もないので乗りますよ」
やはり動かない竜を見ながら霧雨魔理沙から耳打ちで策をもらう。あまりに突飛な策ではあったが、特に良い策も無い以上一旦は乗るしかない。
「倒すのは無理でしょうしね。やりましょう」
「話が早くて助かるね。なら、始めよう」
そう言い残して白黒の魔女帽子を押さえながら魔理沙は上空へ飛んでいく。それを見た白狼天狗が狼狽するが、
「安心してください。戻ってきます」
その一言で竜に向かい直させる。今は全く動かないが、いつ攻撃してくるかもわからない。もし能力があるのなら一瞬の油断でも致命傷になりかね無い。にしても何故全く動か無いのか。まるで戸惑う様に自分の体を確認している。まさか、人狼に様に急に竜になった?だが、そんなことをこの世界に来て効いたことがない。文書でも話でもそんなことが起きたという話は聞いたことがない。
何かを思い出しかけた瞬間、空が輝く。それは魔理沙だった。箒に乗ったまま上空から降下、その箒からは星屑の様に魔法が溢れ、それを推進力に空を割く。
「まさかあのまま突っ込むつもりか?」
1人の白狼天狗の一言でどよめきが起こる。
「戦ってこないけれど攻撃が通らないなら、場外だ!」
七色の星屑を散らしながらその箒は竜の体に衝突する。魔理沙は衝突の直前で降りたが、魔法で強化しているのか質量は足りたらしく、簡単に竜を吹き飛ばすと門を破壊し竜を場外へ運んだ。しばらくすると何かにぶつかった様で少し先で大きな土煙が上がる。
「本当に無抵抗だったな。避けるくらいはされると思っていたんだけど」
本当に驚いたとでもいいたげに魔理沙は指を鳴らすと壊れた門の先から箒が戻ってくる。
「ありがとうございます。一難は去りました。次は人間の処理をしないと」
相変わらず、周囲からは銃声と悲鳴が響いている。それにあの竜の襲撃で人避けの結界が破壊された。再度結界を貼り直すか、いや、そんな時間はない。
そんな考え事をしていると正面から何かが吹き飛んで来る。そしてそれは壁にぶつかると地面に落ちる。1人の白狼天狗が飛んで来た物を確認して、絶句する。何が飛んで来たのかと見に行った女性の天狗がそれを見た瞬間悲鳴を上げた。
「一体なんです....か」
急降下し、それを確認する。それは我々の上司だった。
「大天狗様...?」
一体何に攻撃されたのか。腕は折られ、片方は欠損している。脚は皮でなんとか張り付き、腑は貫かれ、穴が空いていた。
既に濁って何も映さなくなった瞳にはとけどなく溢れる血が流れ込んでいる。
「魔理沙さん。まだ、行けますね」
「もちろん」
全員で破壊された門に構える。そこから出てきたのは、神だった。
「神奈子?」
背に注連縄を背負った独特なファッションからすぐに誰なのかは特定できた。だが、おかしいのはその手には何かの手が握られている。
「まさか」
刹那落雷が白狼天狗に降り注ぎ、肉塊に変えた。
「なるほど、弾幕ごっこなんてする気が無いらしい」
再度空が光った瞬間。魔理沙が前に出る。
「こんなこともできる。魔法を舐めるなよ」
突然落雷が落ちていた。それが間一髪で魔理沙の作成した光の壁で止められている。
「戦えるか?」
冗談の様に降り注ぐ雷を防ぎながら魔理沙が問いかける。
「やらないと死ぬでしょう。私も貴方も、後ろの人も」
「よし、よかった。なら頑張ろう」
相手は神。2人で勝てる見込みは正直薄い。ただ、戦うほかない。何より、逃げた所で追いつかれるのが目に見えている。
「カウントダウンするから、それが終わったら左右に散ろう」
「わかりました」
3
魔理沙の貼った障壁にヒビが入る。
2
魔理沙のとこで浮いていた箒が鈍く光り始める。
1
私も次の瞬間のために翼の力を入れる。
0
その声と同時に魔理沙と射命丸は左右に飛ぶ。速度自慢の2人はギリギリの所で落雷を回避しながら光弾を放つ。着弾もするが、神にはダメージになっていないらしい。気にもならないといいたげに、攻撃を続ける。
「風雨よ」
突然神が何か言葉を発したかと思うと落雷が突然止み。黒雲とともに豪雨と強風が吹き荒れる。
「なんでもありですね。ただ、風であれば」
射命丸が手に持った羽で作成された団扇を振り抜く。生み出された風が雨を切りながら刃となって神を襲う。
「本当に、神っていうのは」
ただ、神は無傷だった。確実に着弾したはずだが、効果がない。服が切れたくらいだ。引き続き風雨が続いている。
「一体どうしましょうかね」
魔理沙さんの魔法も射命丸の攻撃も神には効果がない。どちらかが攻撃的な能力を持っていれば良かったが、その様な能力はない。魔理沙さんには火力が無いわけではないが、どうしても溜めがいる。神はその時間を許さない。そしてその時間、私が魔理沙さんも守るのは苦しい。ただ、やるしか無い。
「魔理沙さん。時間を稼ぎます」
覚悟を決めて、武器を構えた瞬間。神の頭が吹き飛んだ。
「絶対私たち相性良いって」
「あーもう。ベタベタしないでくれるかしら」
突然門に現れた2人の少女。1人は翡翠の髪を、1人は月のような金髪。地底のさとり妖怪の妹である無意識少女と運命を操る吸血鬼の悪魔の妹。
そこまでは良いが、なぜか2人は恋人のように手を繋いでいた。