人助けをしたら幻想郷にさらわれたので呑気に暮らそうと思います 作:黒犬51
暗い闇に包まれた森を黒いフードを纏い、手には鎖が巻き付いた。何かがかける。それを追うようにいくつもの炎が走る。追って、落雷のような音と共に閃光が彼を襲う。しかし、何かには当たらない。
走ったまま、何かは口を動かす。
「暗い、昏い、星月夜を喰らう。光は月光を守ることを選んだ。取り残された1人、私はたった一つの願いを告げる」
歌のように響いたその詠唱と共に世界は急激に黒に染めあげる。何かを追っていた炎が闇に飲まれて消えていく。
「私は1人。願い続ける。全てを闇に帰した夜よ」
続けて紡がれた詠唱。それによって、周囲から動揺の声が上がる。
「裁きを」
刹那悲鳴と共に闇が消える。月光に照らされた森のなかにはその何か以外居なくなった。
一息吐こうとそれが立ち止まり、外套を脱ぎ捨てる。何かの手を離れたそれは地面に落ちる前に消えた。
そこに居たのは1人の少年。チノパンに白のシャツ、第一ボタンを開けて着こなす彼は怠そうにため息を吐く。
「どうしたもんか」
憂鬱そうにそう呟いて、近くの木に寄り掛かる。
人里ではなぜか外の世界の武器が出回っている。俺の知る限りは、そんな技術力はなかったはず。鉄製の武器や道具はあった。火縄銃ならなんとか納得できる。だが、彼らの使っている銃はそんな程度のものでない。だが、あれば外の世界でも一線級の銃器だ、とてもあんなものを作成する技術があるとは思えない。
簡単に考えるならそういう能力を持った奴が生まれたとかだが、そうだったとしてもどこからその知識を得たのかがわからない。それにどれだけ調べてもそんなことをできる能力を持った人間がいるなんて情報はなかった。さらには、人間たちも武器の使い方は知っていても誰が作ったのかは知らない。どうしても情報が手に入らない。
ただ、妥当でもある。八雲紫が動けない今。恐れる意味はないのかも知れないが、もし八雲紫がいればそんなことをする人間は直ぐに殺すだろう。
「わかんねぇ」
溜め息を吐き。寄りかかるのをやめると、今度は業火が彼を襲う。避ける素振りすら見せない彼にそれは直撃。彼は炎の中に消える。
「素晴らしい武器だ。これならば人間はさらに強くなれる」
闇の中から、ノイズが走ったような違和感。次の瞬間、複数人のフードを被った人間が突然現れる。
「残念だけど。この程度だと勝てないやつも多いかな」
炎の中から声が聞こえる。次の瞬間、炎が消え、襲撃者と向かい合う。
「どうやら俺の想像よりも進んでいるらしい」
正面の人間は3人。真ん中の人間は大砲のようなもの。こいつだけ黒い仮面をつけている。右の男は足を覆うように何かをつけており、左の男も同じように腕を覆うように何かをつけている。
外の世界でもみたことのない装備。言うなれば、漫画で見た外骨格のような。
「そうでなくては、歯応えが無さすぎると思っていた所だ」
左の人間が動く。足に付けられた装備が光ったかと思うと姿が消える。次の瞬間、背後から衝撃、吹き飛んだ少年を右にいた男が掴む。機械によって異常に大きくなった腕は最も簡単に少年の体を掴む。外そうともがくが、蒸気を上げながら少年を掴むそれは外せない。少しずつ圧力が上がり、骨が軋む音が聞こえる。
舌打ちの後、少年が闇を放つ。しかし、機械が飲まれる寸前、中央の人間の大砲が直撃。少年の頭が吹き飛んだ。それを確認して男が手を離す。
「俺の獲物だった」
不満げに大砲を抱えた人間に、視線を送るが、大砲の人間はそれを無視。
「標的の沈黙を確認。帰還します」
そうとだけ言い残し、背を向ける。それに合わせて気付けば戻っていた足の男と3人でどこかに向かおうとする。
「なるほど。手を抜いてはいけないらしい」
3人が振り返ると、そこには何事もなかったかのように立っている少年。視認の瞬間に足の男が再度消える。
ただ、もう何も驚くことはない。別に思っていたよりも速いというだけ、攻撃をどこにするかわかっている以上。
「もう当たらない」
振り切ろうとした足を掴み。そのまま、腕の男に対して放り、それを盾に腕の男に接近。男が足の男を掴んだのを確認して足払い。別になんの強化も施されていない足は簡単に払えた。そのまま足の男ごと殴り飛ばす。2、3本の木をへし折りながら彼らは飛んでいく。
それを目視した大砲の人間がこちらに銃口を向け、射出。人を殺すには十分すぎる業火が男を襲うが、当たらない。
「なんで、」
「そういう運命だったんだろ」
そう言って大砲を蹴り上げる。なんとか手放しはしなかったもののひしゃげてしまった銃口からは致命的な煙が上がっている。
「さて、横のお二人はダウンしたわけだけど、色々話を聞かせてもらおうかな」
そう言ってジリジリと下がる大砲の人間に迫った瞬間、背後で銃声。ギリギリで飛び退くが、太ももに被弾。
「まだいたのか」
銃声からなんとなくの位置はわかる。そこに向かおうとした瞬間。体の異常に気付いた。足が動かない。何事かと足を見ると注射器のような見た目の弾が足に付いている。
「そんなありがちな...」
徐々に痺れが広がり、体が動かなくなる。
視界の端で大砲の人間が何かを話した後、動けなくなった彼を足の男を引きずりながら戻った腕の男が掴もうとした瞬間。
「またどこかで」
その発言と共に、少年が落ちる。彼は地面に寝ていたので落ちるようなことは本来あり得ないが、まるでそこに穴があったかのように落下。慌てて腕の人間が手を伸ばすが、それは虚しく地面を抉った。
「申し訳ございません。対象を取り逃がしました」
残された大砲の人間がそう呟き、3人は再度闇に消える。