過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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もしも風鳴翼が護国の鬼だったら

 戦闘を終了した十束は移動させたチフォ―ジュシャトーで身を潜めていた。

 そこで改めて最終チューニングをしていた。

 

『十束よ…先ほどは大儀であった……』

「えへへ…褒めて褒めて」

 

 国連軍を一方的に蹂躙した十束は通信越しに訃堂からのお褒めの言葉に嬉しそうに頬を緩ませた。

 相手自身は実に嫌そうなトーンだがそんな事は彼女には関係なかった。

 彼は気を取り直して口を開く。

 

『ではもう一仕事請け負ってもらおうか』

「うん、なあに?」

 

 我儘な一面こそあるが基本的に風鳴訃堂という男の指示には従順である彼女は特段文句を言うことなく命令される内容を聞く。

 シャトー内に残っていたモニターにある映像が映される。そこに映っていたのは翼達シンフォギア装者一行だった。

 

「これは…?」

『十束よ、あやつらを蹂躙して来るのだ』

「それは別にいいけど…たしかあの青髪の人って…おじいちゃんの孫じゃなかったっけ?」

 

 十束は同じ孫(だと思っている)である翼に親近感とも言える感情を持っていた。

 同じ敬愛すべき祖父を持つ物として誇らしいとも言える心持をしていた。

 

『あやつは防人にもそして鬼にも成れぬ半端者…儂にとっては既に孫でも何でもない…十束あやつらを殲滅してくるのだ!』

「そーなんだ!じゃあ仕方ないね。おじいちゃんの敵ならやっつけるしかないね!」

 

 訃堂の敵は己の敵。

 彼女は特段疑うことなくシャトーから飛び出していった。

 

 

「そんなわけでちゃっちゃと倒しちゃうね?」

 

 ここに来た経緯を笑顔で話した十束はそう言った。

 その呆気からんとした言い草に一番最初に反応したのはクリスだった。

 

「……お前あたしらを舐めてるな?」

 

 その一言に響を除いた装者が頷いた。

 これから命のやり取りをする相手を前にしてそのような軽口は普通叩かない。

だとすれば十束は己の優位性や実力差に確かな自信を持っているのだ。

 自分であれば勝つ事は容易だと。

 

「…………」

 

 翼は黙って相手を見ていた。

 その姿は幼い頃の自分の顔立ちに少しだけ似ていたのだ。その事実に寒気がしていた。

 目の前にいるのは恐らく訃堂が欲した歪んだ防人なのだ。

 だとしたら一筋縄で行く相手ではないと本能が警鐘を鳴らす。

 

 そんな一触即発な険悪ムードの中口を開いたのは響だった。彼女にはどうしても譲ることの出来ない信念がある。

 それは笑われてしまうような、側からみれば滑稽なものなのかもしれないがそれでも切り出さずにはいられない。

 もしかしたら望まない戦いの渦に巻き込まれるただの被害者なのかもしれないと思いたかったのだ。

 

「……もし貴方が風鳴機関に脅されているなら私達はー」

「戦う必要がない?バッカじゃない?」

 

 響の信念とも言える理屈に対してあっさりと唾を吐いて踏みつけてみせる。

 その言い草に響だけじゃなく他の皆も驚いていた。

 

「あのさ…そっちの人達がどうか貴方が出会ってきた人達がどうかは知らないけどさー世界中誰もが貴方と仲良くなりたいわけじゃないんだよ?分かる?貴方の物差しで私を決めつけるのはやめて欲しいな」

 

 響のやんわりとした降伏勧告に対して相手は笑顔で却下した。

 世界中の誰もが仲良くなりたいわけではない。それは正論である。だが正論を振りかざすというのがここまで醜悪に映るものだろうか?

 これまでの敵と違って十束は世界の不和に苦しめられたわけでも、それに悩んだわけでもない。

 ただ生まれて意思を持ったその時から心中にある真っ白なキャンパスに刻まれたものは歪んだ防人の願いを叶えるそれだけなのだ。

 それは翼が一歩間違えればそうなっていたかもしれないもしもの姿。

 道具は意思を持たない。だが十束は無邪気な意思を持ってしまった道具だろうか。

 

「…ここまで大きな被害が出てるのに……」

「あはは、まぁそう作られてるから仕方ないよね?」

 

 その姿を見て真っ先に口を開いたのは調。

 そう言われても相手は気を悪くするわけでもなく笑顔で応答をする。

 

「あの風鳴訃堂につくだけはあるわね」

 

 マリアのその言葉聞いた途端、十束の表情が凍る。そしてみるみる刻まれていくのは激情、憤怒、憤慨か。

 装者たちはこれまでの歪みはあるが比較的穏やかだった相手の空気が一変したのを感じ取って臨戦態勢を取る。

 直感で相手が完全な敵対ムードを作ったのを察したのだ。

 

「ねえ…何おじいちゃんを勝手にバカにしてくれてるのかな…?」

 

 ゆらりと体が震えたかと思ったら突如としてマリアの目の前まで移動していた。それは瞬間移動にも近かった。

 

「な……」

「死んじゃえ」

 

 十束は目に明確な殺意を込め、指を揃えて真っ直ぐ揃える手刀の形に変形させて相手の胸に向かって突き込んでいった。

 予想外の挙動に彼女は驚いてこそいたが動くことが出来なかったのだ。ただただ目を見開いて貫かれるのを待つほかなかった。

 しかし切歌と調はとっさに飛び出してその手刀を鎌とノコで弾いて防いで見せた。

 

「マリアしっかりするデスよ!」

「相手は敵なんだよ!?」

 

 二人の言葉にマリアはハッとして気を取り直す。

 歪んでいるとはいえ無邪気な態度の面ばかり見て敵が人を平気で殺せる相手であるという認識が頭から抜けていたのだ。

 それは戦場ではあってはならないミス。

 

「立花続け!」

「はい!」

 

 自分の失態を悔やむマリアを尻目に翼と響はお互いの得物である剣とそして拳を構えて十束に全力の一撃を加えて吹き飛ばす。

 

「貰っとけ!」

 

 クリスは吹き飛ばされている相手に向かってガトリングガンにミサイルの乱れうちで追い打ちをかける。

 十束はありったけの一撃を加えられて辺り一帯が煙幕に包まれる。

 

「今の一撃で倒せたら苦労は無いわね……」

 

 マリアがポツリと漏らす。

 視線の先にいたのは煙が晴れた先にいたのは無傷で立ちあがる敵だった。

そう神殺しを受けたはずなのに無傷だったのだ。

 

「え……」

 

 先ほどの一幕で相手が平然としているのを見て驚いていたのは響だった。

 自分の攻撃が当たれば当然通ると思っていたのだから。

 先ほどの彼女の一撃は確実に頬に入って少なくともひびは入った手ごたえはあったのだ。いくら埒外物理でも神殺しの一撃だけは直す事は出来ない。

 それはこれまで彼女が培ってきた経験から間違いのない事実のはずなのだ。事実としてティキは神殺し受けたらその損傷だけは回復しなかった。

 

「どうなってんだ…?」

 

 クリスは事前に得ていた情報とは違った結果に訝しげな表情を作る。

 神の力は神殺しは抗えないのは当然の摂理のはずなのに敵は無傷でけろりとしている。少なくとも響の受けた一撃分だけはダメージが蓄積して然るべきなのだ。

 驚きと困惑を見せる装者達を見て十束がまるでいたずらが上手くいったかのような楽しげな笑みを作る。

 

「あはは、ガングニールを前になーんも対策してないわけないじゃん?」

 

 それは予測できた事ではあった。何も対策を練らずして神の力を顕現させていないだろうというのは。

 マリアと翼はすぐさま飛び出してお互いの得物の剣を敵に叩きつける。相手の体に深く剣の跡が刻まれるのだがすぐさま体がブレたかと思ったら元通りになってしまう。

 その一瞬の隙に切歌と調が背後に周ってアームドギアを叩きつけて前方に吹き飛ばす。その小柄な体が響の方へと飛んで行く。

 

「クリスちゃん行くよっ!」

「分かってるさ!」

 

 相手の言葉に打てば響く返事をするクリス。

 クリスは響の体に寄り添うと彼女の拳にアームドギアを纏わせていく。すると響の拳にミサイルが覆われる。

 腰をかがめて飛び出すと、脚で蹴った勢いに加えてミサイルの噴射による反作用による推力が加わって爆音と共に拳を突き出す。

 その一撃が十束に突き刺さると当たった瞬間にミサイルがパージして相手を巻き込みながら飛び出し、そして爆発した。

 

『ッ!』

 

 皆があまりの威力と発生した爆風に目を覆ってしまう。

 ドシャリと人の形らしき何かが地面落ちた。

 体がバラバラになって焦げており、元の原形はとどめていないがそれは十束だろうと皆は分かっていた。

 その物体は沈黙を保っていた。普通であれば倒したはずなのだが。

 すると突如相手の体が光り輝いたかと思ったらバラバラになった部品が宙に浮く。

 黒ずんだ部分が剥がれるようにみるみるうちに汚れが取れていきまるで新品かのような穢れを知らない光沢を放つ。

 そして部品やパーツ一つ一つが動き始めて一から体を作り直して元通りに直ってしまった。

 装者達はそれをポカンとした感じで見ている事しか出来なかった。

 

「どーお?驚いたでしょー」

 

 呆然とする相手のリアクションがおかしくて仕方ないのか楽しげなテンションで復活した相手はどや顔をかます。

 

「ど、どうなっているデスか…」

「ふっふっふー…埒外物理で直せないなら錬金術で修繕すればいいじゃない?」

 

 特段隠す気は無いのか切歌の呟きに対して腰に手を当ててネタバラシをする。

 神殺しによって埒外物理が無効化されるのであればオートスコアラーであるこの身に錬金術を使い高速修繕をしたという事だ。

 そもそもオートスコアラー自体が錬金技術の塊なのだから出来ない事はない。

 

「せめてキャロルさえいれば…何かしらの対策があったかもしれないのだが……」

 

 翼は憎々し気に言う。

 稀代の錬金術師でありオートスコアラーやファウストローブを高いレベルで自作できる彼女であれば目の前にいる敵を分析して何かしらの対抗策を授けてくれたのかもしれない。

 しかし今の彼女は間が悪く訃堂の元へと向かっている。

 雰囲気の悪さを察したのかフィーネが分かっている範囲内で意見を述べる。

 

「そうね…いくら錬金術と言っても…魔法じゃない訳だから…この高速修繕術式を成しえるだけの強靭なボディと大量のエネルギーにブレイクスルーが必要なはずだわ……」

「なるほど?であるならば筐体はプロトタイプを解析、そして再現したのだろう。膨大な活力の方はちょうどいいものがあるだろう?」

 

 フィーネの言葉に反応したのはシェム・ハだった。

 相手に言葉を掛けられてフィーネは不満そうな顔をする。腹の立つ相手であっても手を出すことは出来ない。

 突如として響の口調が別人になったのを見て十束が不審そうな視線を向ける。事前に知っていた人柄とは大きく乖離していたからだ。

 彼女が言ったのは体の方はアダムを解析してあの強靭なボディを再現したのだろうと言う事、そしてアダムは錬金術にも精通していたため高速修繕術式そのものを使えた可能性が高い。

 そして残る問題はエネルギーの方だが、シェム・ハのヒントで皆が答えに行き着いた。

 

「もしかして…チフォ―ジュシャトー…?」

 

 調が行き着いた答えを口にする。

 今現在のチフォ―ジュシャトーは未来が改造した結果、自転のエネルギーを抽出変換する機構を備えている。

 その膨大なエネルギーを利用することが出来るのであれば、瞬時に人形を修理するなど朝飯前ではないのかと。

 

「はい正解!良く出来ました〜」

 

 パチパチと手を叩いて褒めているようであって小馬鹿にもしているよな態度で正解を言い当てて見せた相手を称賛する。それは自身の優位性を確信したそれか。

 マリアはその会話を聞いてある方法に思い付いた。

 

「そうだ…未来よ…彼女もチフォージュシャトーに明るかったはず……来るまで持ち堪える事が出来れば……」

「うん?あー希望を持ったところ悪いけど…その小日向未来なら神獣鏡のオートスコアラーと相打ちになったっぽいよ?」

 

 十束は何て事はないと言った感じでそう言った。

 その一言に皆の表情に驚愕が貼り付けられる。彼女であれば倒してここに来ると信じていたのだから。

 響が願うかのように必死な声を出す。

 

「そんなはずない!だって未来は…」

「あー倒して追いつくってやつね…あたしは他のオートスコアラーの視界を共有してて…その未来って人が戦っていたのをジャックした視界越しに見ていたのよ。それで相打ちで機能停止したところで途切れてるから少なくとも神獣鏡のギアペンダントは喪失してるはずだよ。生死は分かんないけど彼女はここに来ないよ」

 

 しかし相手は希望を持たせないように入念に否定を述べて来る。

 響は絶望に染まりかけるが何とかギリギリ気を強く持つ。前の世界では仲間の喪失からギアが解除されたがここで同じことをすればゲームオーバーだ。

 相手の先ほどからの余裕は未来がここに来ない事を分かっており、またキャロルも風鳴本邸で足止めを食っているからこそ、もう自分を止める事は出来ないと考えているのだ。

 少なくともチフォージュシャトーを止められる前に装者たちを倒してしまえば、後は取るに足らない相手しか残っていない。

 

「さっきはやりたい放題してくれたわけだし?今度はこっちのターンって事で」

 

 十束はそう言うと足の裏に力を入れて一気に前方に飛び出す。あまりにも蹴り出す威力が高く、地面が大きく抉れてしまう。

 敵の狙いは響だ。厳密にはガングニールを狙って最短距離を真っ直ぐに飛び込んで行く。

 

「お前の思い通りにさせないデス!」

「切り札は取らせない!」

 

 響の前に立ち塞がるように切歌と調が割り込んでくる。

 それを見ても敵は表情を変える事無く一直線に走って来る。

 相手が一切怯む様子がない事に言いようのない悪寒を感じながらも二人はザババの刃を一切の躊躇なく叩きつける。

 しかし予想に反して、いや予想通りの結果十束の体があっさりと切断されてしまったのだ。

 

「一体どういう……?」

 

 調は困惑していた。

 相手のあの自信からかわすなり、何かしらの対抗策を持っているだろうと予想していたのだ、だが結果は順当に切断できてしまった。

 確かに埒外物理や高速修繕があるとはいえ、響に加えるはずの攻撃をこうもあっさりと防げたというのはあまりにも不気味だった。

 しかしそこで相手が避けない理由を知る事になる。

 

「なんだとっ!?」

 

 翼は目の前で起きている現象に驚愕の声をあげる。

 真っ二つに切断された十束の体が一瞬にして光輝いて、まるで映像を逆再生するかのように元通りになってスピードを落とす事無く真っ直ぐに突貫を再開したのだ。まるで攻撃をすり抜けていなすような妙な現象。

 マリアと翼は剣を、クリスは銃弾を叩き込むがそれらはまるですり抜けるかのように効果をなさない。

 響は予想外の荒技に対して対応が遅れてしまい硬直しても敵が動きを止めるはずもなく、真っ直ぐ彼女の元へと走りたどり着く。

 そして先ほどのマリアの時のように指をピンと伸ばして手刀の形を取り、S.O.N.Gの切り札である響の心臓をひと突きしようとする。

 

(あ……)

 

 響は殺される直前であるここでやっと敵の動きを認識したがすでに遅くかわすのが困難な間合いに入られてしまった。

 結果として間抜けな思考に浸ってしまう。

 しかしー

 

(惚けるな!)

 

 シェム・ハが脳内で怒鳴ると響はハッとして体の主導権を同居人に譲る。

 右腕が響の意思とは別に高速で動いて敵の手を思いっきりはたいて攻撃の軌道を逸らして、胸への一撃が左腕を掠るにとどまる。少しでも遅れていればあの世行きだった。

 ここでやっと響は体を動かし慌てて後方に飛んで距離を取る。

 

「あ、ありがとうございます……」

(お前が死ねば我も消える、当然の事をしたまでだ)

 

 感謝の言葉にも特段の反応を示さずに淡々と返される。しかし声色は決して不機嫌さを内包してはいない。

 

「あれー…いなせるタイミングじゃなかったんだけどな…」

 

 十束は自分の思い描いていた結果が出ない事に不満そうな顔をする。

 人一人の命を奪おとしたと言うのに普通の態度ではなかった。

 しかしそれを責めることは出来ない、彼女は生まれ落ちてからそう言う風に考えるようにそして口にするように作られているのだから。

 冷蔵庫に物を温める機能が備えられていなくてもそれに対して憤慨する人はいないだろう。

 先ほどから十束は響の豹変が気になるのかうんうんと考え込んでいる。

 

「さっきの見て気になってたけどあなた二重人格?そんな報告は聞かなったんだけどなー…」

 

 意外と鋭くそして目ざとい。

 響に限らず装者達全員が驚いた顔をしてしまう。

 それを見た十束は自分の予測が間違っていなかった事を確信していた。

 

「あ!二重人格なんだ…へー…知識じゃ知ってたけど…本当にいるんだ…」

 

 賭け事が苦手なメンバーだった。

 少しほのぼのした雰囲気が流れるが、現在S.O.N.G.が対面している敵は厄介な事この上なかった。

 ダメージを与えても埒外物理や高速修繕によって全てが無効化されてしまう。それを応用した戦法に正直手を焼いてしまっている。

 なによりも敵のエネルギーはシャトーを利用した自転パワーを使って尽きることの無い無尽蔵な消費を実現してしまっている。

 

「倒すには…チフォ―ジュシャトーをどうにかするしかないが……」

「でも誰かが向かうにしてもここの人手が足りなくなるぞ!」

 

 翼が現状すべきことを口にするのだがクリスはすぐさまその意見に否定の意を述べる。

 ここで一人でも欠けてしまったら十束を相手に出来なくなる。そうすれば装者の中に犠牲者が出てしまう。

 しかし援軍を頼もうにも未来は相手の言った事が正しいのであれば来ないと考えられるのだ。

 勿論それがハッタリだと断じる事は可能だ。

 ただ直感的な考えでしかないのだが嘘はついていないと思ってしまっている。不思議と嘘だとは考えなかったのだ。

 装者達が次の一手をどうするのか答えを出せずにいる中で、それをじっと見ていた相手は口を開く。

 

「んー…そっちから来ないなら…あたしから行くね?」

 

 そう言って宙に向かって飛び留まると手を宙にかざす。

 すると掌の先から火の玉が生まれる。

 

「まさか…」

 

 響は目の前で起ころうとしている現象に驚嘆といった感じをする。それはかつてアダムが行ったそれ。

 

『高エネルギー反応を確認!』

『みんな!今すぐ避難を!』

 

 通信越しに本部からの指示が入ってくる。

 その焦った声から相当切羽詰まっているのが伝わる。

 皆が動揺する中でも十束の掌の先の火の玉がみるみる大きくなっていき、小規模な太陽といった形になる。その炎の塊によって辺り一帯が照らされる。

 その一撃はかつて風鳴機関本部を消し炭にしたそれ。いやそれ以上の力の波動を発している。

 相手の腕輪が強く光り輝いている、それは黄金錬成に神の力をミックスした凶悪な攻撃。

 

「ばいばーい」

 

 十束はそう言って地面に向かって火の玉を投げつけた。

 轟音、そして眩い閃光と共に辺り一帯すべてが消し飛んだ。

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