過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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前回の墓参り直後の話デス


神様に聞いてみよう

 雪音クリスという少女の人生は幸せなのか否か。

 それを多くの人に問いかけたとしたらきっとほとんどの人間が可哀想な人生を送っているのだ、とそう結論付けるだろう。

 

 幼い頃に親に連れられて内紛の激しい地域に連れていかれそこで両親を失い、現地人に拉致をされる。

 数年後その地獄から帰還して日本に帰る機会を手にしても、その手引きをしたのが少女に宿る力と素質を利用できると目を付けた組織だったり、その組織内の裏切り者に拉致をされて便利な手駒として使い潰されかける。

 幼い無知を利用されて無自覚に悪行に手を染めている内に自分が嫌っていた暴力を行っていた事に気が付いて苦悩。

 しかし、信じられると思えた仲間と共にシンフォギアという力で戦うが、十代という若さで逃げる事も許されない状況で心身を削りながらも戦い続けた。

 

 客観的に見れば自分が彼女と同じ人生を歩みたいかと聞かれればイエスと答える人はいまい。

 

 

 二月某日の新リディアン校舎。ただし新校舎といっても元々使われなくなった施設を安く買い取ったものであるし、既に移転してから一年半もの時間が過ぎているため、頭に新と付けるのも違和感が出つつある。

 今日は特に何かある日でもなく、本当に何もない平和な日だった。

 

「ったくあいつは…」

 

 雪音クリスは学校の廊下でぼやく。

 先ほどまで後輩二人にいじられてしまいちょっと楽しくない。

 

「っ~…!」

 

 ついうっかり廊下をガンガンと踏みつけてしまう。

 先程後輩である少女の未来に『クリスってば学校好きすぎだよ』と微笑ましいものを見るかのような顔でそう言われてしまい恥ずかしさが爆発してしまった。

 まだそれが仲の良い先輩や上司ならともかく、立場であれば下であるはずの後輩にいじられたのだからどこかイラっとしてしまう。

 なんせ彼女自身その自覚がありありで、卒業したくないとすら思っている節があるくらいだ。

 卒業に必要な出席日数も成績も問題無しの推薦で大学に行けるほどの優等生であり、その日まで一切高校に通わなくても大丈夫であるのに律儀に出席日数を重ねているほどだ。

 幼い頃戦地で捕虜生活を送っていた彼女は日本人であれば当たり前のように通う、通わされる学校生活というのを体験してこなかった結果、当たり前というのがどれだけ恵まれているのか、その当たり前がどれほど楽しいのか。

 そしてその当たり前を汚そうとする存在達を退ける選ばれた力を持っているのをより強く自覚する。

 

「…………」

 

 だがここ最近は錬金術師たちをまとめる一大組織の壊滅、それに神の力を手中に収めようとした風鳴機関の解体によって異能世界は停滞状態。そして現状の動きを読みかねているその他の勢力も世界情勢を計りかねており、動かずじっとしている状態だ。

 ハッキリ言ってしまうとそこそこ平和だった。

 

「ってかもう日が…」

 

 ぼんやりと校舎内を歩いていると既に日が沈みかけて夕日が綺麗になっていた。色々と考えている内に貴重な卒業までの時間を消費してしまったようだ。

 

『アイツから聞いた話だとアタシは前の世界じゃ卒業する前に殺されたらしいからな…何となくだけど学校ってのを心の奥深くに刻まないと許されない気がしてな……』

 

 それは先ほど何となく雪音クリスの口から出たセリフ。

 シェム・ハという存在がシンフォギア装者を打ち倒して世界を手中に収めた、自分の記憶どころか誰の記憶にも残っていないもしかしたらの世界。

 皆が生きているのが奇跡だと言われてもそれを実感として感じることが出来ない。

 

「あんなんがなぁ……」

 

 響の記憶、厳密にはキャロルの口から紡がれたもしもの世界。

 だがクリスの認識ではシェム・ハはドラマ好きのなんちゃって神様という認識しか持てない、その恐ろしさというのは肌で感じることが出来ない。

 なんなら響に力を与えた姿はむしろ頼もしさすら感じたくらいだった。

 

 

 ファミレスの外の景色はとっくに日が落ちて空は暗く、ネオンの光と疲れが顔に出た社会人たちがチラホラと見え始めていた。

 

「クーリースーちゃん!」

「店ん中くらい静かにしろ」

 

 クリスは呼び出していた相手がファミレスに入って来たのをその騒がしさで気が付いた。

 だが多くの人が利用するパブリックスペースで大声を出すのはやんわりとしたマナー違反だろう。

 

「ごめんごめんって」

 

 響は注意された事に対して反省の弁を述べながらクリスの座っているボックス席の向かい側に座る、だが軽いノリでの謝罪なためクリスの逆鱗にやや触れる。

 

「それで話があるって何?」

 

 響は相手の事などお構い無しに明るい雰囲気を崩すことなく相手に問いかける。

 先ほどまで墓参りをしており、事を終えて調と別れて家に帰ろうとした矢先にメールで指定された場所に来るように言われたのだ。

 明るい雰囲気を崩さない反面、今の彼女の脳裏にはかつて公園に呼び出されたあの一件が脳裏をよぎる。それは響がまいた不信感の種が芽吹いてしまった日で、あまりにも不誠実な返答しか出来なかった苦い思い出。

 しかし今の響にはそんな後ろめたい隠し事などしていない。だがそれでも気が付かないうちに相手を不快にさせてしまっているかもしれない、ナチュラルに地雷を踏んでしまうのが彼女なのだ。

 クリスは自分の要望をシンプルに伝える。

 

「シェム・ハと話させろ」

「はい?」

 

 それを言われた相手はポカンとする。がすぐに反応をする。

 

「ほえ、ああ、うん。分かった」

 

 現状、神は響という器の中に封印されている状態に近い。

 ガングニールは響の概念によって神を殺す力を失い神の力の受け皿となっている。同時に自力で神の力を生成する事が出来ないためガングニールは神殺しを失うという致命的なスペック落ちという結果になっている。

 そもそも神はキャロルの力に対して無理に重ね掛けたため響の体の中にガングニールが埋め込まれる前に行って体を乗っ取る予定だったが、ライブ会場での事件以降に乗り移る結果になったため乗っ取ることが不可能になる。

 そのため仕方なく人間の生活を長く見せられた結果、人を自分の強化オプションとして見られ無くなり響の味方をするに至る。

 現在力を何処まで扱えるのか不明だが少なくとも響の体を乗っ取る様な行動は起こしていない。

 その心境の変化が起きるまで一体どのようなカルチャーショックを受け、何を感じて変心したのか。それは本人しか分からない。

 

「なんだ?」

 

 突如として響の雰囲気が変わる。

 人懐っこいオーラと柔和さのある口角と目尻がやや冷たい機械染みた者へと変貌する。

 だが機械ではない、血の通った体に宿る一人の意志を持つ誰かだ。

 

(出たか…)

 

 かつてクリスはその変化を異物感のある不気味なものに感じたが、今はシェム・ハという一人の存在の特徴として捉えられるようになった。

 

「我がこうして出てきているんだ、何を尋ねにきた?」

 

 相手はそう言いながらテーブルに置かれた呼び出しボタンに手をかける。その数秒後にウェイトレスがやってきて注文を受ける。

 

「ミルクティーとチョコレートパフェで、クリスちゃんは?」

「は?えっと、あぁ…ブレンド一つにパンケーキで…」

「はい、かしこまりました」

 

 シェム・ハはメニュー表を指差しながらハッキリとした声でそう言った。

その動作には淀みが無く、手慣れているのが見て分かった。正直クリスや翼の方がぎこちないだろう。

 一方のウェイトレスは笑顔を一切崩す事なく対応を終えて戻っていく。

 

「慣れてんな…」

「最近は我の方が表に出ることが多い」

「そ、そうなのか?」

「そうだよ~クリスちゃん!」

「えっ」

 

 突然響の声色になった事で困惑する。もし仮に学校であったのが響ではなく中身がシェム・ハなのだとしたら…と背筋が凍る思いがした。

 そして考える。もう既に響という人物は消滅しており、神が成り代わっているのではないのかと。

 

「やめてよシェム・ハさん…心臓に悪すぎるよ…」

「悪かった」

 

 響は表に出て来て少し気分が悪そうにする。コロコロと表情と口調が変わるその姿はとても滑稽だ。

 そこでクリスは揶揄われた事に気が付いて顔が熱くなる。

 

「てめっ、このっ」

「すみませーん…」

 

 顔を真っ赤にして爆発寸前になるがそこでウェイトレスの女性が注文の品を持ってくる。だがどこか遠慮がちそうに見えた。どうやらクリスの剣幕に押されてしまっているようだった。

 

「ありがとうございまーす」

「す、すみません…」

 

 響(シェム・ハ)とクリスはウェイトレスの女性にお礼を言い、そして目の前に出て来たパフェにパンケーキ、コーヒー等に口をつけ始める。

 

「それで我を呼び出して何を聞きたい?」

「ゲホゴホッ…!」

 

 いきなり話題を戻されてむせてしまうクリス。

 

「そ、それはだなぁ……」

 

 彼女は少しだけ苦しそうな表情で息を呑む。何か言いづらい事が喉元まで迫っているかのようだ。

 だが何とか口を開く。

 

「お前は前の世界で多くの人を殺して…何で…そんな事が出来たんだ……」

 

 彼女が知りたかったのは過去に神が行った人類に対する悪行ともいえるものだった。

 恐るべき存在として教えられていてもそれを実感として理解できるのはこの地球上には立花響とその記憶を盗んだキャロルの二人しかいない。

 今現在卒業に向けて進んでいける事、そしてその先の未来を掴めるというのがどれだけ尊いものであるのかを知りたいのだ。

 

「ふむ……」

 

 響のその顔でシェム・ハは何をどう口にするべきか苦慮しているように見えた。だがそれは話すこと自体に困っているのではなく、どう説明をすれば相手が理解出来るのかその言葉選びに悩んでいると言った感じ。

 

「蚕という虫を知っているか?」

「はぁ?」

 

 突然口にしたのは人という存在をどう思っているのかという問いに対してズレていると感じるとある虫の名前。それを聞いて質問した本人は少しだけ呆然としてしまう。

 蚕とはかつて大昔の人間がその虫から出てくる糸が人にとって有用であると判断されたため独自の交配と餌やりを続けてきた結果人間に依存する形でしか生存する事が出来なくなる。

 言ってしまえば人のせいで正しい進化の形から外れてしまった歪な存在。

 

「アレだろ?…糸を吐くためにだけに改造された虫…っておい……」

 

 クリスは何となく歴史の授業で担当教員がそんな事を口にしていたのを思い出し、脳内に残る何とか情報を繋ぎ合わせる。だがそこで相手が何を言いたいのか、それをおおよそだが察する。

 

「そうだ」

 

 シェム・ハは悪びれる素振りもなくただ淡々と肯定する。

 

「人は自分たちの都合のいいように野生の生物を改造、改良を行って種を存続させてきた。我もそれと同じ事を…いや、人が我の真似事をしているのであったな」

 

 子は親を見て育つ、一見神と人は違う系統の生物に見えても何処か似ているのだろうか。

 そして人という種の尽きる事の無い発想と行動力はもはや神と同じ次元に居るのかもしれない。

 

「じゃあやっぱ人ってのはお前の手駒の為に…」

 

 クリスからすれば分かっていた事とはいえショックだった。

 人が他者を愛し、生殖の際の幸福感と快、そして自らの子を見た時の愛情。それらが全て作られたものですと言われて何も感じるなと言う方が無理だった。

 そして気が付いたのは結局飼い犬に手をかまれたから始末した。前の世界でシンフォギア装者を始末した理由はそれだけなのだろう。彼女は知りたかった問いに対する答えを何となくだが悟った。

 

「そもそも人間を今の形にデザインしたのは我らアヌンナキではあるが、そもそもの目的は生物の進化限界と変化の系統を調べる為だ。始まりは決して兵器としての運用では無い」

 

 その言葉を聞いてショックで俯いていたクリスはのろのろと顔を上げる。衝撃は受けているが相手の話にはまだ耳を傾けている。

 

「人間を作った目的、我々アヌンナキはどのような過程を辿って今のような形と能力を手にしたのか、実際に生物を一から作る事によって実践証明の為だ」

「なん……」

 

 驚くクリスを見ながらシェム・ハは話始める。

 

 人は何故宇宙というのが場所、または概念が生まれたのか、何が起きれば宇宙が生まれるのかを証明するために、粒子加速器内で物質を投与して宇宙の始まりと仮定されているビックバンという現象を生み出せる事を証明した。

 それと同じでアヌンナキ達は粒子加速器の代わりを生物が順調な進化を行えるだけの環境が整っていた地球を使う。そこで生物の始まりと仮定されている原始的な生物を何種類か生み出して観察、場合によっては自らが手を出して進化の促進を行っていた。

 アヌンナキ自身の自覚が無いだけで、自分たちはさらに上位の存在に創造されているという過程を作ったうえで、機械の人形を作り最初から生み出された完璧な存在として世に出すという実験も行った。

 

 一通り話を聞いたクリスは与えられた情報を処理しきることが出来ずぼんやりとした表情になる。

 

「…………」

 

 お前たちのやっている事は間違っていると自身が受けた不快感を表に出した反論をすることは可能だった。

 だがそれを言うならそれこそ蚕にそのような反論を仮に受けたとしたらどう謝罪をすればいいのだろうか。人間の手の元で安全に生活できるのだから感謝しろと言い返せばいいのだろうか。

 もし仮にシェム・ハから『そうやって悩めるのもそこまでの知力を備えた存在として作ってやったおかげだ』と返されたら何も言えなくなってしまうだろう。

 結局のところ余計な知識など持たず、ただ当たり前のように提示された現実を疑うことなく受け入れるのが幸せなのだろうか。

 

「な、ら……」

 

 クリスは何とか言い返さなければとするのだがどうしてもうまく話せない。

 

「…………」

 

 そんなもどかしい相手に対して、何も畳みかけることなくじっと待っている。急かすような真似はしない。

 しどろもどろしながらもクリスは何とか言いたい事を頭の中でまとめた。

 

「じゃあなんで人間を自分の復活のための道具にしたんだ?」

「……………………」

 

 その問いに対してシェム・ハは初めて困ったと言った表情を作った。

 言い辛そうというよりはどう言ったらいいのか分からないと言った感じだった。

 

「分からん」

 

 出した答えはそんなものだった。

 

「は?」

「覚えておらんと言っている」

 

 クリスが言われた事の意味を測りかねている間もシェム・ハは畳みかけてくる。

 

「何故他のアヌンナキ共と敵対したのか、エンキの奴と刃を交えたのか、そもそも人間を自分のバックアップとして利用しようと考えたのか…理由は恐らく一つの命では奴らに対抗出来ないと考えたのだろうが…何故その選択を取ったのか…その切っ掛けが思い出せん…」

 

 必死に思い出そうとしているが靄がかかったように記憶が鮮明にならない。そのせいでもどかしそうにしているが、客観的に見ればその態度は言い訳をしているように見えなくもない。

 もう開き直りとしか思えない反応が返って来る。その態度がクリスを苛立たせる。

 

「思い出せないって!」

「何千、何万年前の話だと思っている。全てを覚えていろと言うのが不可能だろう。後ここは公共の場、静寂を保て」

「むぐ…」

 

 クリスがヒートアップしている様子は周りに客や店員たちも気にしているようで、チラチラと彼女に視線を送っていた。その事実を指摘されてやっと彼女は気が付いて少し頭が冷える。

 

「そもそも何故貴様はそんな事を気にする?何がしたい?」

「そっ、それは…」

「予想は立てられるが…立花響と同じ立場に立ちたい、その苦悩を理解したいのだろう。知らないという事に対して罪悪感でも覚えたか?」

「…………」

 

 クリスはそこまで突っ込まれて黙り込んでしまう。

 実際に思っていた事を当てられてしまった事、そして相手がそれを当ててくる程度には自分の事を観察していた事に驚いていた。

 

「よくそんなこと分かるな…まさか……」

 

 見抜かれている事に対して畏怖なんてものは通り越して感心してしまう、そして同時に思い至ったのは。

 

「我に人の脳内を見通す力はない」

 

 シェム・ハは若干だが不服そうに言う。自分にも出来ない事が有るのが気に入らないようだった。

 

「そーいう所だっ!」

 

 思考を直接読むことは出来ないと言いながらあっさりと考えを見抜いてしまう。

 言った傍から否定するようなアクションを取る為クリスはついカッとなる。

 

「何でアタシが考えてることをそんな端的に見抜くんだよ!」

「五月蠅いな…人はもとより我が設計した存在、その思考パターンなどとうに理解しきっている。特に立花響と共有した時間が長い者であれば尚更」

「…………」

 

 何だかんだで彼女がツッコんでしまい会話がそれなりに弾んでしまっているのをみて自分よりもコミュニケーション能力が高いなと感心してしまう。

 シェム・ハからすればたくさんあるパターンから最適解を選んでいるだけなのだが。だがそれは彼女だけが特別に持つスキルではなく、普通の人間も気難しい人から気安い人などを経験から見抜いて対応している。

 

「いいか。立花響は本来であれば誰にも未来の事を話さず気取らせず誰も死ぬことの無い未来へ誘導する予定だった。誰にも感謝されず、誰にも尊敬されず、そして誰にも背負わせず一人で全ての方を付ける予定だった。結果何も出来なかったがな…」

 

 シェム・ハはそう言って話を締め括り溶け始めているパフェに口をつけ始める。

 

「アタシは……」

 

 相手が食べている間もクリスはぐちゃぐちゃになった自分の思考に対してどのように決着を着けたらいいのか分からなかった。

 

「…………私はお礼が欲しいとか感謝して欲しいわけじゃないから」

 

 パフェに口を付けていたスプーンの手が止まる。そこには正真正銘立花響がいた。

 

「そもそもお礼をされるほど大したこと出来なかったし…未来とか…キャロルちゃんとか…結局シェム・ハさん頼みだったし…」

 

 語るたびに響の表情がみるみる曇っていく。

 良い方向に向けるどころか悪い方に下振れさせてしまった自覚がある為、感謝される身分でも無いと思ってしまうのだ。

 

「アタシに色々してくれただろ…」

「前の世界で未来がしていた事をやっただけだよ…」

「…………」

 

 クリスが何とか励まそうとするのだが響のネガティヴが留まるところを知らない。

 ここで彼女は立花響という人間は底抜けに明るいポジティブなだけの人物ではなく、相応に悩み苦しんでいるのだと改めて分かった。

 

「…それでも…アタシはやっぱり嬉しかった……あんな酷い事をした相手にも優しくしてくれんだなって…それだけは本物だと思う…」

「クリスちゃん…」

 

 その回答は決して響の胸のつっかえ全てが消えるものでは無かった。それでも必死になってかき集めた言葉には僅かばかりの力があった。

 

「……ありがとう」

 

 響は少しだけ疲れの見える顔でお礼を言った。だが一方でそれは緊張の糸が切れた事で少しだけ顔色は良くなっているようにも見えた。




クリスちゃんがいじられキャラなのって自分だけの解釈?
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