過去に戻った立花響   作:高町廻ル

13 / 106
雪音クリスの進む先には

 フィーネのアジトの洋館の周りには銃を持った不審な男たちが潜んでいる。

 

 フィーネいや今は櫻井了子の姿でデータの整理を行っている。不審な人間たちに気が付かず呑気に。

 突如扉を破って銃を持った奴らが侵入。

 

「な……」

 

 慌てて立ち上がるがもう遅い。部屋の窓ガラスを蹴破って伏兵も入ってくる。蹴破る音の方へ視線を送ると、その瞬間に銃で撃たれる。

 

「ぐうっ!?」

 

 撃たれた瞬間彼女の体から力が抜けて倒れる。

 リーダー格と思われる男が彼女に話しかける。

 

『手前勝手が過ぎたな。聖遺物に関する研究データは我々が活用させてもらおう』

 

 フィーネは忌々しそうにそして苦悶の表情で返す。

 

『掠める準備が出来たら、あとは用無しってわけね。徹底しているわ……』

『ふ……』

 

 男はフィーネが喋っている間も倒れている場所に近づいて、横になっている彼女の体に軽く足をかけて仰向けにさせて傷口を観察する。

 すると彼女の右手が突然光り出す。

 彼の部下たちが経過して銃口を向けるが、

 

「あぁ!?アガアアアア!?」

 

 ミシミシと傷口から音がする、そして瀕死の重傷だったはずなのに起き上がる。

 

『それも、わざと痕跡を残して立ち回る辺りが米国政府らしい』

 

 男とその部下たちからは明らかな狼狽が滲み出ている。何故か瀕死に追い込んだ相手が流暢に喋り出したからだ。

 彼らは歴戦の戦士だからこそ分かるのだ。攻守の逆転。空間の支配者が変わった事に。

 

『ブラックアートの深淵を覗いてすらもいない青二才のアンクルサムが―』

『撃てッ!』

 

 一方的な蹂躙が始まった。

 

 

 自分の中にある疑問と再度向き合うためクリスは再びフィーネのアジトに帰ってくる。しかし、土汚れが酷かった。そしていつもは静かで穏やかな雰囲気は感じない。

 

「何なんだこの匂いは……」

 

 屋敷内を歩くと火薬のにおいに顔をしかめる。フィーネのいるであろう部屋に入るとそこには謎の外国人男性の死体が。

 

「なっ、何がどうなってやがんだ……」

 

 呆然と呟く。その後、物音がすると彼女の後ろには弦十郎とその配下とみられる男たち。

 

「ち、違う!あたしじゃない!やったのは……」

 

 己の潔白を訴える、しかし客観的に見れば自分が一番の容疑者だ。

 男たちがこちらに向かってくる。クリスを拘束-するわけではなく周りの被害状況と実況見分を始める。弦十郎は動揺するクリスのもとに歩くと頭を撫ででやる。

 

「誰もお前がやったなどと疑ってはいない……」

 

 悲しそうな顔をしながら、

 

「すべては君や俺達の傍にいた彼女の仕業だ」

「な……」

 

 彼の言葉にクリスは気が付いた。もう既にフィーネの正体は相手に割れている事に。

 

「風鳴司令!」

「ん?」

 

 部下の一人が死体に貼られた「I Love You SAYONARA」と書かれた紙を見つけて、それを見せようと剥がそうとする。するとその紙にはワイヤーが付けられており、爆弾と連携しておりクリス達のいる部屋を爆破する。

 周りを爆撃が起こした粉塵で溢れかえるが、それが晴れるとクリスをかばう弦十郎がいた。部下たちも全員無事だ。

 

「どうなってんだよこいつは……」

「衝撃はハッケイでかき消した」

「そうじゃねぇよ!?」

 

 そもそも自分よりも大きい瓦礫を片手で受け止めたり、衝撃波で爆発を相殺するなど普通ではない。起こした現象の説明を求めたのではなく、クリスはそれよりも許せない事があるようだ。

 

「何でギアをまとえない奴があたしを守ってんだよ!?」

「俺がお前を守るのはギアの有る無しじゃなくてお前よか少しばかり大人だからだ」

「大人……!」

 

 自分の疑問に対して答えが返ってくるがそれはクリスにとって気に入らないものだったらしい。

 クリスの憎しみが宿る睨みにも弦十郎は一切引かない。体を半身にして話を聞く。

 

「あたしは大人が嫌いだ!死んだパパもママも大嫌いだ!」

 

 親の事をパパとママという愛称で呼ぶあたりまだクリスには親への愛があるのだ。本当に嫌いなら愛称では呼ばない。

 

「臆病者!あたしはあいつらと違う。戦地で難民救済!?歌で世界を救う!?いい大人が夢なんて見てるんじゃねーよ!」

「大人が夢を…ね……」

 

 彼女の培ってきた価値観を相手にぶつける。ここで相手は体を正面に向けて向き合う。お前の声を聞いてやると。クリスの拳に力が入る、そうとう心の中に溜め込んだものなのだろう。

 

「本当に戦争を無くしたいのならっ戦う意思と力を片っ端からぶっ潰していけばいい。それが一番合理的で現実的だっ!」

「それがお前の流儀かなら聞くが」

 

 ここで弦十郎が初めて攻勢に入る。

 

「そのやり方で戦いを無くせたのか?」

「ッ!?それはっ……」

 

 時間が止まる。それと似た事をフィーネにも言われたからだ。

 

「いい大人は夢を見ないといったな?そうじゃない…大人だからこそ夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし力も強くなる。財布の中の小遣いだってちったあ増える。子どものころはただ見るだけだった夢も大人になったら叶えるチャンスも大きくなる。夢を見る意味も大きくなる」

 

 彼の言葉は染みる。彼もまた現実と理想の狭間にいながらも困難な夢に向かう大人なのだから。夢は見るしか出来ないのが子供で、それを胸に刻んで叶えに行くのが大人なのかもしれない。

 

「お前の親もただ夢を見に戦場に行ったのか?違うな。歌で世界を平和にするって夢をかなえるために地獄に踏み込んだんだ」

「何で……そんな事…………?」

 

 彼の言い分にもうクリスはかみつく気力は失せていた。

 

「お前に見せたかったんだろう…夢は叶うという揺るがない現実を」

 

 言葉によってクリスの仮面が剥がれかけていく。彼は一歩ずつ歩み寄っていく。

 

「お前は嫌いと吐き捨てたが、お前の両親はお前の事を大切に思ってたんだろうな」

「あ、うあぁあ、あああぁぁぁ!!!!」

 

 そう言って抱きしめる。そして涙を流すクリス。クリスの失った、そしてぽっかりと空いた愛情を注いでいくように。

 

 

 フィーネがいないと見るやすぐさま撤退の準備を始める。

 

「やっぱりあたしは……」

 

 まだ煮え切らない様子のクリス。素直じゃない。

 

「そうか。お前は自分が思っているほど独りぼっちじゃない。お前の道は遠からず俺達とつながってる」

「今まで戦ってきた者同士がいっしょになれるとでも?世慣れた大人だ。そんな綺麗ごと言えるのかよ」

 

 弦十郎は呆れたように、

 

「ほーんとひねてるなぁ……お前は……よっと」

 

 クリスに携帯端末を投げ渡しておく。受け取るのを見て、そして車に乗り込みエンジンをかける。

 

「カ・ディンギル!フィーネが言ってたんだ。カ・ディンギルってそれが何なのか分からないけどもう完成してるみたいな…」

「カ・ディンギル……?後手に回るのは終いだ…!こちらから打って出てやる!」

 

 クリスをその場において彼らは車を走らせる。

 

 

 今日は決戦の日だ。響にとって最初の関門。

 朝ランニングをしようとしたら直前に弦十郎から今日は出られないという連絡を受けた。今頃はフィーネの隠れ家に行っているのだろうと予測する。響はその場所は知らないが、そもそも知っていたら弦十郎を連れて殴りこんでいた。

 危険な目にあわさないために友達3人を学校から離すか考えたが、ノイズと遭遇する可能性を考えたら下手に街中を歩かせるよりリディアンにいた方が安全だし、そもそも2課が負けたらどうせ助からないのだ。

 

 フィーネを説得するにはソロモンの杖、デュランダル、ネフシュタンの鎧、そしてカ・ディンギルの全てを跳ね返して文句なしの勝利をしなくてはいけない。この最高難易度のミッションを複数抱えながらも敵を生存させなければいけないのだ。倒すことは生かす事よりも難しい、実力面で上回っていなければいけないのだから。

 フィーネいや櫻井了子がその歳月全てをかけた作戦を真っ向から叩き潰さないと話すら聞いてもらえない。

 

 

『はい翼です』

『響です』

 

 本部からの通信に応答する2人。

 

「収穫があった……了子君は?」

「まだ出勤していません。朝から音信不通でして」

「そうか…………」

 

 弦十郎が深刻そうな顔をする。

 

『大丈夫ですってあの人なんか死ななそうなんで!』

『おい立花、女史は戦闘訓練を受けてない。無理を言うな』

 

 呑気な事を言う響を翼がたしなめる。するとモニターに了子から通信がつながったのを示すアイコンが出る。

 

『や~っとつながった!通信機の調子が良くなくって!』

『…………』

「…………」

 

 響と弦十郎が一瞬黙り込む。すぐさま口を開く。

 

「無事だったか了子くん」

『いや~よかったです!了子さんが無事で!』

 

 響の良かったは本音だ。

 

「無事ならいいんだ。いきなりだが聞きたいことがある」

『せっかちねぇ』

 

 核心に迫る質問をする。

 

「カ・ディンギルに覚えは?」

『カ・ディンギルとは……天を仰ぐほどの塔を意味しているわね』

 

 響が会話に割り込む。彼女は答えを知っているが。

 

『でも、そんなに大きな塔ならとーっくに見つかってもよさそうですけどね』

『そうだな。実は衛星のように宇宙に存在するか、聖遺物の力で透明化出来るなどが考えられるな?』

 

 響の軽口に付き合う翼。

 

「響君の言う通り巨大な塔ならとっくに見つけているはずなんだ。しかしようやく掴んだ敵の尻尾、このまま情報を集めれば勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩きこむんだ。最終決戦を仕掛けるからには仕損じるな」

『了解(です)』

『ちょっと野暮用を済ませてからそっちに行くわ』

 

 決着に向かって様々な思惑が交錯しながら進んでいく。

 

 

「カ・ディンギルか」

 

 響は街中に向かって呟きながら一人走っていた。

もう了子は手札も後援組織も失って1人だけのはずだ。もうすぐ巨大な飛行船型ノイズが飛んでくるはず。

 支給された端末から通話を示すアラームが鳴る。

(来た…これが最後だ)

 

『翼、響君敵は大型の飛行ノイズ4体!今すぐ現場に急行してくれ!』

『了解』

 

 響は走り出す。これから彼女の選択は多くの人を苦しめる。話せなかったんだ、致し方なかったでは済まされない。心苦しいものを感じながら。

 

『続報だノイズの進行経路に関する最新情報だ』

「はい!」

 

 響はスカイタワーではなくヘリが自分を拾いやすいポイントに向かって走っている。

 

『第41区域で発生したノイズは第33区域を経由しつつ第28区域へ進行中。そして―』

『司令これは…』

『それぞれのノイズの進行経路の先にスカイタワーがあります!』

 

 スカイタワーは、2課が活動に使う映像や交信といった電波情報を統括制御する役割を担っている。それにカ・ディンギルは塔を意味する。まさにピッタリとも言えた。

 

『よし!スカイタワーに急行だ!』

(たとえそれが罠だとしてもな……)

 

 指示を出すその心の内では弦十郎はそうあって欲しくないと願いながら……

 

 

 響はヘリで拾ってもらい、大型ノイズ一体の上に到着した。

 そのノイズのフォルムは飛行船のようで小型のノイズを生み落としながら飛んでいる。大本であるそれを倒さないと地面にはびこる雑魚ノイズを倒してもキリがない。

 

「すぐに避難しといてください」

 

2課の補助しくれるスタッフにそう言い残し、ヘリから降りて躊躇なく宙に体を晒す。そして、

 

『Balwisyall nescell gungnir tron』

 

 シンフォギアをまとい自由落下の勢いそのままに力を込めた拳で4体のうちの1体を貫く。

 一方地上でそれを見た翼はバイクから飛び降りながら、

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 翼のもまたシンフォギアをまとい剣撃波を放つが、僅かにだが届かない。可能な限り跳躍して放ったがギリギリ当たらない。

 

「チィ……」

 

 結果に舌打ちをする。相手は翼の攻撃が届かない高度を絶妙に維持している。敵はこれまでの戦闘データからこちらの攻撃力や攻撃範囲を把握して作戦を練っているのだ。

 

「相手に頭上を取られることがこうも立ち回りにくいとはっ」

「ビルみたいな高い所に移動しましょう」

「いやヘリを使い高い場所にこちらも移動しなければ……」

 

 現状の敵の戦略と方針を見て話し合っているとヘリが破壊される。

 

「やられた!」

「よくもっ!」

 

 二人が悪態をついていると、飛び回る鳥型ノイズたちが特攻を仕掛けてくる。強さ自体は一撃か一閃で倒せる程度なので大したことはないのだがなんせ数が多い。やはり空を飛ぶ大本を絶たなければ意味がない。

 響はそう考えビルを睨むのだが、そんな事は相手も織り込み済みでノイズたちが高いビルの高層部分を破壊して回っている。こちらに必殺の遠距離技が無いのを分かってる戦法だ。本当にいやらしい。

 ノイズの攻撃と破壊したビルのコンクリートの欠片が2人を攻め立ててくる。

 するといきなりノイズたちが銃弾の餌食になる。戦場の風向きが変わる。

 

「これは……」

 

 2人が放たれた方向を見るとそこにはイチイバルを身にまとう雪音クリスがいた。右手に2課の構成員に配布される端末を手にして言う。

 

「こいつがぴーちくぱーちくやかましいからちょっと出張ってみただけ!」

 

 キッっと2人を睨みながら。

 

「それに勘違いするなよ!お前たちの助っ人になったつもりはねぇ!」

『助っ人だ!!少々到着が遅くなったのかもしれないがな』

 

 クリスの照れ隠しをあっさり封殺する弦十郎。クリスもうぐ…っと赤面する。

 

「おー!」

「助っ人?」

 

 嬉しそうな響と訝し気な翼。司令は翼の疑問に答える。

 

『そうだ。第二号聖遺物イチイバルのシンフォギアをまとう装者…雪音クリスだ!』

 

 翼は情報としてクリスがフィーネに狙われる側になった事、何度もノイズを殲滅している事を聞いてはいた。しかし、実物を見るのは初めてなのだ。

 響は瞬時に間合いを詰めてクリスに抱き着く。

 

「クリスちゃぁ~ん!絶対に分かり合えるって知ってた!!」

「このバカ!!知ってたって予知能力者かっ、あたしの話を聞いてねぇのかよっ!」

 

 バカという愛称(蔑称)も懐かしすぎて響は感激なのだ。じゃれている場合ではないと二人に声をかける翼。

 

「とにかく今は連携してノイズを」

 

 クリスは響を引きはがして言い放つ。

 

「勝手にやらせてもらう!邪魔だけはすんなよ!」

「いや協力しようよ!」

「立花…本当に分かりあえるのか……?」

 

 クリスの唯我独尊で行く宣言にすぐさま慌てて声をかける響。翼はあっけにとられたという不安そうな声。

 取り合えず響は陸にいるタイプの、しかもクリスの背後にいるノイズを殲滅していく。イチイバルは背後に回られると弱いからだ。翼も同じく地上にいるノイズの殲滅にかかる。

 クリスは空にいる敵を手当たりしだいに弾幕をバラ撒いて倒していく。

 響はともかく他2人は周りとの距離を確かめずに動き回るためぶつかってしまう。

 

「何しやがるすっこんでな!」

「あなたこそいい加減にして、1人で戦っているつもり?」

 

 熱くなりがちなクリスと冷静沈着な翼が合わせるのは難しい。あと響は「1人で戦っているつもり?」というセリフに感動していた。

 

「あたしはいつだって1人だっ、こっちとら仲間となれ合ったつもりはこれっぽちもねぇよっ!」

「ッ……」

 

 そうやって2人が口論をしている間にも状況は悪化していく。

 

「確かにあたしたちが争う理由なんてないのかもな……だからって争わない理由もあるものかよ、この間までやりあってたんだぞ!」

 

 クリスは話しながら拳を強く握る。それは彼女の考えの強固さを象徴するかのようで。

 しかし響はその拳を両手で包む。

 

「な……」

「出来るよ、誰とだって仲良くなれる。少なくともクリスちゃんはしたいと思ってる、だからここに来たんだよね?」

「うっ……」

 

 クリスは響の行動に驚く。そして彼女の指摘に詰まってしまう。

 本気でどうでもいいのなら助っ人としてここに来る必要はない。

 いやそれ以前にあの時、弦十郎から端末を受け取る必要はなかった。受け取ったその瞬間彼女の運命は変わったのだ。

気が付くとクリスの手は握られた状態から開かれている。

 そして響は翼の手も握る。つばさはそれを素直に受け入れる。

 本来なら水と油、交わらない2人を1つにする響。それが立花響のアームドギアなのだから。

 

「私はアームドギアが出せなくていろいろ悩んだりしたんですけど、こういう時は役に立ちますよね?」

「立花……」

 

 翼は右手で持っていた刀を地面にさして右手を開ける。そして無言でその手をクリスに向ける。

 

「っ…………」

 

 クリスは知っている手を差し出すことの勇気を、だって今まで自分が躊躇して来たのだから。ピクリと空いてる左手が動く。おずおずと翼の手に触れようとする。触れる瞬間、翼の方からギュッと握る。

 

「うおあっ!!!!」

 

 彼女はおっかなびっくりして手を放してしまう。

 

「ひええっ!!このバカに当てられたのか!?」

「そうだと思う。そしてあなたもきっと」

 

 慌てるクリスに穏やかに返す翼。

 戦場のど真ん中だというのに妙に穏やかな空間だったが、それぶち壊す存在がいる。3人の意識が戦場に引き戻される。

 

「親玉をやらないとキリがない……」

 

 そんな翼のボヤキに反応するクリス。

 

「だったらあたしに考えがある、あたしでなきゃ出来ない事だ。イチイバルの特性は長射系広域攻撃。派手にぶっ放してやる!」

「絶唱?」

 

 響の方を見て疑問に答えるクリス。

 

「バーカ。私の命は安ものじゃねぇ」

「ならばどうやって?」

「ギアの出力を上げつつも放出を抑える。行き場のなくなったエネルギーを臨界まで溜め込み一気に解き放ってやる」

 

 クリスは響の答えに否定の意を伝える。翼は問いかける、そしてそれに懇切丁寧に答える。

 その作戦には致命的な弱点が内包されている。

 

「チャージ中は丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では危険すぎる」

「つまり私と翼さんで必死に守ると」

「!」

 

 クリスは半ば期待していたとはいえ、響にハッキリと言われたことで驚きと照れが含まれた表情をする。2人はすぐさま周りのノイズを殲滅にかかる。

 

(頼まれてもいない事を……あたしも引き下がれないじゃねえか!)

 

 誰もがつながる手を持っている。手は誰かとつながる事も傷つける事の両方が出来る。どちらを選ぶのかはその人次第。

 二人は拳と剣でクリスに近づくものを退けていく。

 するとクリスのチャージが終わる。それに気が付くと響と翼は、

 

『託した!!』

 

 クリスの体から大型のミサイル4丁と腰には前よりも大き目なミサイル群、両手にはガトリングガン。まさにフル装備だ。溜めに溜めたものを一気に解き放つ!

 腰のミサイル一定の高さまで飛んだかと思ったらその中にさらに小型のミサイルが内蔵されており、ガトリングの乱れ撃ちと相まって小型のノイズ達を吹き飛ばしていく。

 そしてとどめの大型ミサイルたちが雑魚たちを散らした道を飛んでいき。見事に親玉のノイズを殲滅してみせた。

 

 ひと段落した後3人はギアを解除する。

 しかし2人はいまだに表情が硬い響を不審に思う。ギアを解除するという事は、響はとり合えず敵はいないと思っているはずなのだ。なのに表情が冴えない。つき合いの短いクリスですら不審に思う状態。

 翼には一度だけ見覚えがある表情だ。それはネフシュタンの鎧を着たクリスと初めて会った日、響はノイズを殲滅したのにギアも警戒も解除しなかった。

 

 すると3人の2課専用端末に通信が入る。男性オペレーターの声が聞こえる。

 

『装者の皆さん早く応援を!リディアンにノイズが―』

 

 ここで通信は途絶えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。