過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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仲が良いから仲間割れ

 チフォ―ジュシャトー内でレイアとファラは今回の計画の進捗状況についての確認を行っていた。

 ファラはガリィが暴れている間に研究所に保存しているデータをコピーしていたのだ。

 ナスターシャ教授が残したフォトスフィア、それは月落下を阻止する際に地球の血管ともいえる力の流れレイラインに沿わせてフォニックゲインを集めて、フロンティアそして月遺跡に向かって照射したのだ。

 世界の解剖にはこのエネルギーを通しやすいラインを使うことが効率がいいのだ。フォトスフィアを解析して一番ラインに力を流し込みやすい場所を特定してチフォ―ジュシャトーを設置するのだ。

 すべてキャロルの残した言葉通りに事は進んでいる。

 

 

 本日は雲がまばらだが概ね晴れの日。

 夏のわりに湿気が少なく涼しいと言えるそんな最高のコンディションとも言えた。

 未来は切歌と調の2人と一緒に学校から帰っていた。理由は弦十郎からエルフナインのように、また技術者である未来がオートスコアラーに狙われるかもしれないため、護衛として一緒に行動するように言われたからだ。

 今の未来は装者ではない、殆ど自衛の力がないため当然の処置だった。

 

 天候とは裏腹に、今の彼女の顔色は冴えない。

 彼女の脳裏に浮かぶのは先日のやり取り『あの時とことん話し合って良かったよ』この言葉がどうにも離れてくれないのだ。

 理由は何となく分かっている、このまま親を無視してはいけないとどこかで思っているのだ。

 今更向き合ってどうするんだと考える。

 昔家にいた時は早く自立して頼らずに生活をしたいと考えていた。

 今は保護観察とはいえ自分で手に職をつけてお金を稼いで生活をしている、今まさに理想の生活を送っているだろうと思うのだ。

 自分は一体何を悩んでいるのかと。

 

「……さん」

 

 考える。

 

「未来さん!!」

「え、へっ!?何っ」

 

 未来は自分の事を考えてばかりで一緒に帰っていた二人の会話をおざなりにしてしまった。

 

「どうしたの?ぼーっとして…」

「色々とねほらまぁその……」

 

 調にも心配されてしまう。

 とっさに誤魔化そうとするがうまく言葉を繋げる事が出来ない。

 切歌と調はどうしても聞いて欲しいのか改めて話始める。

 

「えっとデスね、今朝の検査結果ならイグナイトモジュールも行けると思うデスよ」

「あとはダインスレイフの破壊衝動に抗えるかどうかだと思うんだけど……」

 

 二人は聞いて欲しい相談事を口にする。

 未来はああそれかといった感じだ。とりあえず専門家として言える事を口にする。

 

「客観的に言うならマリアのコンディションやデータだけを見たら2人も十分行けると思う」

『おおっ!』

 

 未来の口から出る2人の望んだ答えに嬉しそうな表情をする。

 ここで専門家ではなく一人の小日向未来として話す。

 

「ただイグナイトモジュールはコンディションで操れるものじゃないと思う。そもそも私はイグナイトモジュール搭載に最後まで抵抗してたしね。勝つのに必要なのは分かってるけど受け入れられるものじゃないんだよね……」

 

 彼女の脳裏に浮かぶのは融合状態が悪化して瀕死に陥った響。

 あれを加速させた暴走を助長するなどしたくはない。

 もうあんなものを見るのは嫌だった、昔と違って未来には守りたいと思える人達が増えすぎた。

 それらを壊しかねないあの闇の力は可能なら使って欲しくは無いのだ。それが必要とされる事だとしてもだ。

 

「う……そうデスか……」

「……分かっている…けど…」

 

 二ばクリスのように上からお前たちは守られるべき立場なんだ!と言われたのなら言い返しもしただろう。

 しかし未来は戦場に立たない、いや力を失って立てないからこそ装者の体と心を奥底から心配しているのだ。

 その気持ちを一刀両断など出来るはずがなかった。

 

 すると三人の携帯端末に通信が入る。

 すぐさま手に取る。出てきたのは弦十郎の声。

 

『アルカノイズの反応を検知した。場所は地下六十五メートルの共同溝内であると思われる。三人から近いはずだ端末に地図を送ったから向かってくれ!』

「了解」

 

 未来は指示に同意を示して、通話を継続したまま二人を連れて端末に記された場所に走る。走りながらも話は続く。

 

「きょうどうこう?」

「何デスかそれは?」

「下水、上水、ガス、電気みたいなライフラインを収めてる場所だよ」

 

 二人の疑問に簡潔に答える未来。

 そうして話しているとすぐに目的地に着いた、案外近場だった。そこは地下に入れる入口があった。

 

「着いた…ここだ。そう言えば他の皆はいつ頃来ますか?」

『三十分以上はかかるな……』

「それ逃げられちゃいますね……共同溝を狙っているならライフラインが絶たれるかも……」

 

 未来が質問をすると弦十郎から絶望的回答が返ってくる。

 それだけの時間があれば3回は施設を破壊できるだろう。自分たちが置かれているのはどう見ても危険な状況だった。

 

「ん?ってあれ?2人は何処に?まさか……」

 

 ふと静かだなと未来が思ったら切歌と調がその場から消えていた。

 

 

「おー…お前タチ来たナ?でも今日は相手をしてやれないんだゾ」

 

 切歌と調が装者達の状況を聞いて独断で共同溝の内部に独断で侵入すると、そこにはオートスコアラーのミカがいた。

 かつての二人に苦汁をなめさせた相手だ。その余裕たっぷりの態度が二人を一層腹立たせる。

 先程見た感じではミカはモニターに何かしらの細工をしていた。

 それこそが今回共同溝に来た目的だろう。

 切歌と調はすぐさま鎌とツインテールノコのアームドギアを生み出して臨戦態勢を取る。実際に二人が新生シンフォギアで実践に挑むのは初めてだが、問題なくアルカノイズ達をバラバラにしていく。

 そしてあらかた敵を倒すと切歌は狙いをミカに定める。

 

「あの時の積年デースッ!!」

 

 鎌を振りかぶって斬りかかる、彼女は当たったと思った。

 しかし、ミカが緩慢な動作で手のひらを向ける、ミカの手のひらの内側は炎を常時精製しておりそこから高熱で結晶を生み出せる。

 しかし、この間合いでは結晶の射出よりも鎌の方が早い。先手を取れるのは自分だと確信していたが。

 しかしだ、突如切歌の体が倒れ込んだのだ。

 

「かえ……かふっ……!?」

 

 彼女は倒れたまま突如苦しそうに喉を搔きむしっている。

 明らかに普通ではなかった。

 

「切ちゃん!?」

 

 調はアルカノイズ達を倒しながらも切歌に声をかけるが敵を退けるのに精一杯で援護に向かう余裕がない。

 

「まだまだ甘いんだゾ?」

 

 ミカはそう言うと結晶で杭を生み出して切歌に向ける。いまだに苦しむ彼女はそれをかわす余裕がない。

 無情にも射出され体を貫かんとするが、

 

「危ない!!」

 

 未来がとっさに飛び出して切歌の体を抱えて何とか避ける。

 ドゴン!と体があった場所を通過した杭が壁にめり込む。

 ミカはそんなに未来と切歌に追撃と炎を掌に溜めて蒸し焼きにしようと放ってくる。

 するとアルカノイズ達を全滅させた調が二枚の大型ノコで炎を受け止めるが通常形態のギアではオートスコアラーの一撃を受けきるには限界がある。威力に押されて膝を着いてしまう。

 

「切ちゃん大丈夫……?」

 

 調の心配そうな声。

 それを聞いて切歌は前に似たようなことがあったなと思い出していた。

 

『大丈夫デスか!?』

『大丈夫なわけないだろ!!』

 

 そうあれはアルカノイズに対して何も出来ずに守らなければいけない相手に助けてもらうという現実に苦しんだクリスだ。

 

「大丈夫じゃないデス……!」

 

 怒りだ無様な自分への。

 切歌はそれだけではない、調だけでなく本来なら自分たちがギアをまとって守らなければいけないはずの未来に助けてもらったのだ。

 意見も聞かず独断で動いてこれでは屈辱の上塗りだった。

 自然の彼女と手がギアペンダントに伸びる、そうイグナイトモジュールに。

 

「ダメ!無茶をするのは私が足手まといだから!?」

 

 調の小さいながらも強い怒りのようなものが内包された言葉。

 するとミカにファラから通信が入る。

 

『道草は良くないわ』

「正論かもだけど……鼻につくゾ!!」

 

 ミカははたから見ればいきなりキレたように見える。

 炎の出力を上げて調ごと全員を吹き飛ばす、切歌はなんとか未来を体で壁に叩きつけられないように守るのが精一杯だった。

 

 

 残りの装者達が来た頃には既にミカは撤退した後だった。

 

「おっとり刀で駆け付けたが……」

「間に合わなければ意味がねぇ……っ!」

「人形は何を企てていたのか……」

 

 翼は努めて冷静に、クリスは内包された自分への怒りが内包されている、マリアは静かに敵を考察する。

 

「大きく破損していますね……しかし相手はわざわざどうして共同溝を……?」

 

 緒川が独り言を呟くと生きているモニターが視線に入る。

 

「まさかオートスコアラーの狙いは……!」

 

 

「検査の結果未来さんに大きな怪我は見られませんでした」

「うんありがとう」

 

 負傷した未来に現状報告をするエルフナイン。

 未来はアルカノイズやオートスコアラーの中に飛び込んで生きて帰れるのだから豪運どころ話ではない。

 

「調が悪いんデス!!」

「切ちゃんが無茶するからでしょ!?」

 

 切歌と調は大絶賛喧嘩中だった。

 

「調が後先考えず飛び出すからデスっ!」

「それを言うなら切ちゃんが…!それに私の事を足手まといだと思てるからでしょ!」

 

 二人はそのままふんっ!といった感じで顔を背ける。

 未来ほどではないが二人もそれなりに怪我をしているはずだがそれを忘れるほど怒髪天のようだ。

 未来個人としては指示を聞かずに共同溝へと飛び込んでいった二人とも悪いと考えているが、それをここで咎めてもこじれが複雑化するだけなので抑える。

 

「傷に触るからやめてくださいっ!そんな精神状態ではイグナイトモジュールを制御できませんよ!」

 

 エルフナインらしい叱り方。

 流石に二人も第三者からの叱責に思うところがあるのか静まり返るが、

 

「ふんっ!」

 

 いざ目を合わせると露骨に逸らしてしまう。

 

「まぁ…そんなに元気なら2人とも外の空気を吸って頭を冷やしなよ。そうすれば見える答えもあると思うよ?」

 

 未来はこのまま医務室に籠っても現状が改善しないと考えてそう促す。

 そもそも当初の指示である未来の護衛すらまともにこなせなかった負い目なのか素直に従う。

 二人が医務室を出るとエルフナインが後ろについてくる。

 

「これを調さんと切歌さんに」

 

 そう言ったエルフナインが持っていたのはモデルKのリンカーだった。

 

「モデルK……?」

「オートスコアラーの再襲撃が予想されます、くれぐれも投与は慎重に」

 

 そして念には念をと付け加える。

 

「副作用もそうですがここに残されているリンカーにも限りがありますので」

 

 エルフナインは言い切った。2人は黙って注射を見ていた。

 

 

「敵の狙いは電気経路の調査だと?」

 

 本部の潜水艇で緒川からの調査を聞いた弦十郎は訝し気に問うた。

 

「はい、発電施設の破壊によって電力の総量が低下した現在、政府の重要拠点には優先的に電力が送られています」

 

 つまりそれを辿る事で表からは見えない首都構造を探ることが出来る。

 たしかにこれは不安材料だが言い換えれば相手の狙いを絞りやすくなる。普通ならそう思う。これまでは後手に回りがちだったが先回りできる可能性があるのだ。

 

 

 ミカは都内の電力の供給先のデータをファラとレイアに見せる。

 先ほどは戦闘になったが本来はさっさと仕事を片づけて離脱する予定だったのだ。

 

「派手にひん剥いたな」

 

 レイアがミカの功績を褒める。すると仕事は終わったとミカはそこから翻す。

 

「どこに行くの?ミカ?間もなく想い出のインストールが……」

「自分の任務くらいわかってる!!あとは好きさせて欲しいゾ!」

 

 ファラの指摘にあからさまに苛立って答える。

 自分の作られた目的を完遂するつもりなのだ。そしてエネルギーの供給源であるガリィがいない以上、彼女には残された時間が少ない。

 

 

 S.O.N.G.本部は切歌と調がオートスコアラーと戦闘に入ったと知ってすぐさま応援に行こうとする。

 しかし、海中なのに突如地震がしたのだ

 

『うわああっ!』

 

 クルー全員が悲鳴を上げてしまう。

 モニターを見ると巨大な人影が見える。何かが邪魔をしてくる。

 

 

 少しだけ時間は遡る。

 夕刻、セミの鳴き声が夏だと教えてくれる。ふと周りを見ると夏祭りの用意が進んでいる。

 切歌と調は気まずい沈黙の中、少しだけ距離を空けて歩いていた。

 やはり先ほどの口喧嘩や任務の失敗を引きずっているのだ。何かを言わなければいけないしかし自分から踏み込むのは怖い。

 

「私に言いたいことあるんでしょ?」

 

 とりあえず先に沈黙に耐え切れずに調から切り出すが、どう見ても挑発だった。

自分でもそれはいけないと思っているのについ口から出てしまう。

 

「それは調の方デス!」

「わ、わたしは……」

「…………」

「…………」

 

 

 つい相手の言葉にカッとなってしまう。そして生まれる気まずい沈黙。

 すると突然近くから爆発が。

 

『!!』

 

 爆発源を見ると見覚えのある結晶が辺りに降り注いでいた。

 引火物に当たったのか辺りが火の海になっている。

 

「あたしたちを焚きつけるつもりデス!」

「切ちゃんあれ!」

 

 調が視線を向けた先に鳥居がありその上でミカが待ち構えていた。

 

「足手まといと軽く見ているのならっ!」

 

『Various shul shagana tron』

『Zeios igalima raizen tron』

 

 二人は素早くギアをまとい戦闘開始する。

 最初は調が鳥居の上から見下されるのが許せないのか小型ノコ射出を行い叩き落とそうとする。

 ミカはそれらを当たる攻撃を全て結晶の棒で叩き落とす。

 鳥居から降りると手を向けて結晶体を射出する。流石に距離が空いているため簡単にかわす。

 調がスカートをノコに変形させてぶつかりに行くが相手が持っている結晶を切断するには至らない。

 しかし、本来ならここで切歌が背後を取って斬りかかるが先ほどまでの口喧嘩が響いているのか連携が悪く、ミカに躱されて蹴り飛ばされる。

 

「うっ!」

 

 短く唸るが大したダメージではない。

 

「これっぽっちぃ?これじゃギアを強化する前の方がマシだったゾ…」

「そんなこと……」

 

 ミカの言い草に肩を怒らせる。

 

「あるもんかデス!!」

 

 真っ直ぐに自分やギアを作りなおしてくれた人を侮辱した相手に真っ直ぐ突貫していく。

 ミカはニヤリと笑うと手のひらを開いて向ける。

 すると、

 

「うぐっ!?ヒュッ……」

「切ちゃん!?」

 

 共同溝の時と同じく切歌の呼吸が浅くなる。

 今回は何とか膝を着かずに済むがそれでも苦しくて足が震えて動かない。

 ミカは空いてる片方の手で結晶を飛ばして串刺しにしようとするが、調がツインテールノコ四枚で防ぐ。

 

「切ちゃん大丈夫?」

「大丈夫じゃ無いデス!何で後先考えず庇うデスか!?」

 

 調に悪意など無い、でも自分の至らなさで危ない目に遭わせたという負い目が素直に厚意を受け入れる事を拒否してしまう。

 

「やっぱり私を足手まといと」

「違う、違うデス!調が大好きだから!苦しい事も一緒に背負ってくれるからデス!!」

 

 そう言ってミカに向かって突撃する。

 相手と切り合っているのに切歌の口は止まらない。

 

「大好きな調だから至らなさで傷つけるのが許せなかったんデス!」

「じゃあ私は……」

 

 切歌の必死な言葉は調に今伝わった。

 大事だから大切だからつい怒ってしまうし、胸がざわついてしまうのだ。

 

「私がそう思えるのは調が庇ってもらったからデス」

 

 みんなが二人を怒ってくれるのは大切だと思ってくれることの裏返しだ。本当にどうでもいい相手なら怒りはしない。

 そんな事を言っているとミカに吹っ飛ばされる。放しながら片手間で相手取れる相手ではない。

 

「マムが残してくれた世界でカッコ悪いことは出来ないね」

「じゃあカッコ良くなるしかないデス」

 

『イグナイトモジュール、抜剣(デス)!!』

 

 2人は覚悟を決めてギアペンダントに手をかけて胸に刺す。

 刺さった先から闇のエネルギーが溢れ出して飲み込もうとする。

 引き上げられた破壊衝動にさらされながらも必死に意識を繋ぎとめる。

 

「…ごめんね…切ちゃん……」

「…いいデスよ…それより……」

 

 謝らないといけない、自分たちが行ってきたのになあなあにした事や真剣に怒ってくれたことに対して、向き合わなかったことに対して。

 

 2人は黒いエネルギーが晴れたと思ったらシンフォギアが黒を基調にしたものに変化していた。

 それはイグナイトモジュールの正常起動を示している。

 

「天井知らずに高まる力あああ~っ!!」

 

 ミカは2人の進化を認めるとバーニングハートメカニクス、残った想い出を全焼却して全身から炎をまとう。

 

「切ちゃん、さっき息が出来なくなったのは多分炎で周りの酸素を燃やして奪ったんだと思う、私が庇った時にノコを回して出来た空気の流れで周りから酸素を取り込んだから息が出来るようになったんだと思う」

「なんでデスとっ!」

 

 調が相手の技の考察を行う。

 ミカが呼吸を奪うのは簡単な理屈だった。

 

「相手の突き出した手のひらををよく見て息を止められないようにね」

「了解デス!行くデスよ調!」

 

 切歌が正面から切り込みに行って背後から大型のヨーヨーで追撃する。

 普通なら見方を背中から斬りかねない連携だが今の2人なら間違えない。しかし、切歌の鎌をを強引に素手で弾いて、調のヨーヨーを受け止めて糸を使って相手を地面に叩きつける。

 

「調!?」

 

 切歌の驚いた声。

 その隙を突かれて蹴り飛ばされる。

 イグナイトモジュールを使っても、自滅覚悟のミカを相手取るのは二人には難しい、それほどまでに強い。

 そのまま追撃しようとするが調の小型ノコの投擲による牽制で出来たすきに切歌は距離をとる。

 それを見るやミカは空に魔法陣を生み出して大量の結晶を叩きつけようとする。切歌は慌てて大量に降ってくるそれをかわす。

 

「そのまま逃げてもジリ貧だゾ~!」

 

 巨大な結晶の上に乗りながら言う。

 

「知ってるデス!だからっ」

 

 ジャンプでかわして躱して周りに大量に配置されたそれに鎌をひっかけてとっさに躱す。

 

「ぞなもし!?」

 

 ミカの驚く声。鎌を外すと肩のアーマーからアンカーを射出して動きを拘束。

 止まった一瞬を逃さずに2人は出せる最大の切断技でミカの体を切り裂いた。

 

 

 オートスコアラーは倒した。

 二人はクリスと弦十郎から雷が降ってきていた。

 

「こっちの気も知らないでっ!」

「偶には指示に従ったらどうだ?」

 

 腰に手を当てて怒るクリスと腕を組んで言いたいことはあるか?といった感じの弦十郎。

 

「独断が過ぎました……」

「これからは気を付けるデス……」

 

 2人は素直に受け止めた。

 

「おっ」

「むぅ」

 

 いつもとは違う反応につい詰まってしまう2人。

 

「なんだ珍しくしおらしいな」

 

 弦十郎がストレートに言ってしまう。

 今までとは何かが違う2人をこれ以上攻める気にはなれなかった。

 

「私たちが背伸びしないで出来るのは、受け止めて受け入れる事」

「だからごめんなさいデス」

 

 そう言って改めて頭を下げる。

 

「うーむ……分かればそれでいい……」

 

 弦十郎は反省している相手に対して感情任せに怒鳴るような自己満足ばかりで器量の無い人間ではない。

 二人はあらためて軽く頭を下げて帰っていく。

 もうすぐ日が落ちようとしている、夕焼けは別れの合図だ。

 

「まったく……」

「先輩が手を引かなくたっていっちょ前に歩いていきやがる……あたしとは違うんだな……」

 

 クリスが言わなくても彼女たちは勝手に考えて勝手に成長していく、自分の弱さも至らなさも真正面から受け止める事が出来るのだから。

 

 

「足手まといにならない事、それは自分の行動に責任を持つこと」

「せきにん……自らの義に正しくあること……」

 

 二人はまだすべてが分からなくてもあの戦いの中で得た何かを求めて、そのとっかかりを忘れないよう心に刻もうとしている。

 

「……でも…それを正義と言ったら調の嫌いな偽善ポイデスか…?」

 

 切歌の言った言葉に1年前の出来事が思い返される。

 

『偽善者……この世界にはあなたのような偽善者が多すぎるッ!』

 

『偽善偽善って…そうやって他人を言葉で貶めてもっ!!あなたのやってることが正しくなるわけじゃないっ!!!!』

 

「そうだあの日の事謝らないと、薄っぺらい言葉で貶めた事」

「ごめんなさいの勇気を出すのは調だけじゃないデスよ」

 

 調はポツリと言った、切歌も一緒に背負うと言った。

 今はきっとそれでいいのだ。

 

「でも…響さん無事かな……」

「そうデスね……謝る前にちゃっちゃと響さんを救わないとデスよ!」

 

 二人は改めて錬金術師たちに立ち向かう勇気を確認し合った。

 

 

―無様である。

 

(分かってるよそんな事は)

 

―虚無におぼれ降参せよ非力な人の身である事に……

 

(だとしても私は諦めない、どんなことがあっても諦めるもんか、傷だらけで周りから笑われても諦めてやるもんか!)

 

―そうか…………

 

 

 チフォ―ジュシャトーのキャロルが普段鎮座する場所の扉が開いた。

予備個体への記憶の高速インストールで復活したのだ。

 

「キャロルちゃん……」

「ほう?この光景を見ても取り乱さないか、いやもうそんな壮健さもないか」

 

 響はキャロルが体を再生させても大きな反応は見せなかった。キャロルはそれを訝しむ。

 実際に死んだ場面を見せられた事や。相手の計画通りに進んでいくのを拘束されて淡々と見せられ続けているのだ、気がおかしくなる寸前だった。

 とはいえ瞳はまだ死んでいない、諦めてはいない。

 その証拠に手首には何とか拘束具を外そうとした痛々しい跡が残っている。

 

「これは……ガリィとミカか……」

 

 キャロルはシャトーの進展具合を見てそう判断する。

 

「派手に散りました」

「これからいかがなされます?」

 

 残った配下の2人が尋ねる。

 

「言うまでも無い。万象黙示録を完成させる、この手で奇跡を皆殺す事こそ……」

 

 

『だったら代わりに解答する。命題の答えは……許し……世界の仕打ちを許せとパパは僕たちに伝えていたんだ…………』

 

 

 響の記憶から流れてくるこの世界ではない場所で生まれた1つの命題への答え。

 

「そんなはずなどあるわけが…………」

 

 

『話し合おうよ!分かり合えるまでさ!』

『話し合おうとして無理解で傷つけられても?」

『そう!』

『逆に殴りつけられても?」

『そう!』

『…………』

 

 

 この世界で生まれた一つの命題への答え。

 

「うるさい!何なんだこれはっ!?」

 

 キャロルは呻きながら頭を抱える。

 響の記憶を読み取ったものが彼女の根源ともいえる何かを攻撃していた。

 

「マスター?」

「最後の予備躯体が不調ですか?」

 

 残った従者2人が主人の心配をする。

 

「負荷を度外視した想い出の高速インストール……さらに自分を殺した想い出が拒絶反応を……」

「どうされますか?」

 

 キャロルは自分の身に起きている現象に考えられる考察を口にする。

 それを聞いてレイアは改めて質問をする。

 

「まかり通る…!歌女どもが揃っているこの瞬間を逃すにはいかぬのだ……!」

 

 キャロルの瞳が疲労や苦痛以外の何かによって揺らいでいるように見えた。

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