過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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望まれない再会

 響を除いた主要メンバーはS.O.N.G.の本部指令室つまりブリッジに集まっていた。

 

「計測結果出します」

「電力の優先供給施設になります」

 

 友里の声と共に正面モニターにマップデータが表示される。

 藤尭がそれを補足する。

 表示されたのは電力が日本の主要施設に優先的に配給されているのを示すもの。

 

「こんなにあるデスか!」

「その中でもひときわ目立っているのが……」

 

 切歌と調はデータを見た感想をそのまま言う。

 電力配布ポイントの中でも一つだけ国内ではなく海のど真ん中にポイントがあった、それは一番目立っていた。

 

「深淵の竜宮……異端技術に関連した危険物や未解決品の管理を行う絶対禁止区域。秘匿レベルの高さから我々にも情報の詳細は伏せられている」

 

 弦十郎はその疑問に対して答える。

 深淵の竜宮、開けると碌なことにならないという事から「玉手箱」になぞらえられて竜宮と呼ばれるようになっている。

 多くの品は危ないというよりは、厄介と言ったものが多く扱いに困るため一緒くたに保管されているだけで、利用価値の高いものはごく稀なのだ。

 

「オートスコアラーはその位置を割り出していたとなると……」

「狙いはそこにある危険物!」

「だったら話は簡単だっ!先回りしてやる!」

 

 翼、マリア、クリスは個々が感じたことを口にする。

 クリスだけはやたら好戦的だったが。

 

「…だが…襲撃予測地点はもう一つある……」

 

 弦十郎は少しだけ弱めな声で話す。

 モニターにその予測地点が表示される。

 

「ここはっ…!」

 

 翼が分かりやすく反応する、彼女にとって覚えのありすぎる場所だからだ。

 緒川はそんな同様には反応せずに報告を繋いでいく。

 

「気になる出来事があったので調査部で独自に動いてみましたが…事件や事故による神社や祠の損壊が頻発していまして。明治政府の帝都構想で霊的防衛機能を支えていた、レイラインの要所を担っていた要所になります」

「レイライン…………」

 

 緒川の説明に未来は何かが引っかかったようで呟く。

 弦十郎はそれに目ざとく気が付いたようで促す。

 

「どうした?何か気になるのなら言っていいんだぞ?」

「いえまだとっかかりを感じただけで意見ってほどでは……緒川さん壊された神社や祠の地点を後で教えてもらえませんか?」

「分かりました」

 

 未来の要求に心よく答えてくれる緒川。

 壊された地点の情報自体はネットで調べれば見つけられるものなので秘匿性は低い。

 

「錬金術とレイライン……敵の目的の一環とみて間違いないだろう……」

 

 皆がここまでの話で感じた事を改めて口にする弦十郎。

 勿論誰も否定は口にしない。

 

「風鳴の家には要石がある…狙われる道理もあるというわけか……」

 

 翼が呟く。

 彼女の脳裏には巨大な石を守る鳥居と柵。それは幼少のころに何度も見た要石。

 

「打って出る好機かもしれんな」

「来ると分かっているなら待ち伏せして叩くチャンスですね。これまで散々不意を突かれてますから」

 

 弦十郎の言葉に同意を示す未来。

 彼女は保守的思考とはいえ決して不戦ではなく、優勢ならここぞの好機はキチンと活かす事を望む。

 今度はこちらが待ち構える番だと考えている。

 残りのオートスコアラーは増えていなければ二体で装者は五人、イグナイトモジュールを全員が扱えて人数的にも圧倒的優位。

 こちらが待ち伏せられるならこれ以上の条件はもう望めない。

 

「キャロルの怨念を止めてください」

 

 エルフナインもそれを考えて今いる装者達五人に向かって言う。

 それに対して全員頷く。

 

「よしチームを編成するぞ、チームは風鳴邸に行くメンバーと潜水艇に乗って深淵の竜宮に行くメンバーだ。まずは……」

「風鳴の家には私が行きます」

 

 弦十郎の言葉に真っ先に手を上げたのは翼。

 その周辺の地形や家について住んでいたので知っている彼女が向かうのは当然だった。

 

「なら私もついて行こうかしら」

「よし、では緒川もついて行ってくれ」

「分かりました」

 

 マリアも翼について行くことに、弦十郎も同意して緒川に指示を出す。

 大体向かうメンツは決まった。

 

「あ、翼さんの家に行くなら緒川さん、このデータを風鳴八紘さんに直接渡してくれませんか?やっぱり通信で渡すのは不安ですから」

「これは?」

 

 未来が持っていたUSBを緒川に差し出す。

 

「これまでのアルカノイズの分解のメカニズムやアルゴリズム、そしてオートスコアラーの思考・行動パターンを分析したものです。まだ完全に測りきったわけではないですけど……」

「分かりました、では責任を持って僕が」

 

 未来の説明にそう言ってUSBを受け取る緒川。

 

「そんな事までしてたのね?」

「アルカノイズは位相差障壁の力が弱いので、行動パターンや効果的な兵器を生み出せればシンフォギアのない普通の人でも対処できるかもって考えて」

 

 マリアの疑問に答える未来。

 もしギア抜きで戦えるようになれればグンと死亡者数は減るだろう。

 一度はギアを持ちながらも失った彼女だからこその考えだ。

 

 

 一台の車が屋敷の前に止まる。

 

「ここが?」

「風鳴八紘邸……翼さんの生家です」

 

 マリアの疑問に丁寧に答える緒川。

 全員が車から降りて荘厳さを感じる正門を見る。翼だけは何か複雑そうだった。

 

「十年ぶりに……まさかこんな形で帰るとは思わなかったな……」

 

 表面上は平静を保つが、言葉には恐れや不安が僅かながら滲んでいる。

 そう言っている間にも正門に続く階段を上る。

 

「了解しました。クリスさんたちももうすぐ深淵の竜宮に着くそうです」

 

 緒川が携帯でもう片方の現状についてやり取りを終える。

 

「こちらも気を付けなければ」

 

 そう言うと正門の扉が開く。どうやら出迎えが来る。

 三人門をくぐって中を歩くと、視線に飛び込んでくるのは要石だ。

 

「要石……」

「あれが…」

 

 翼とマリアがつぶやく。

 彼女が幼いころはただのバカでかい石でしかなかったのだが、今はこれを守るためにここへ再び足を運ぶことになったのだ。

 何とも言えない感慨のようなものを感じている。

 

「翼さん」

 

 緒川が要石を見ている二人に正面を見る様にやんわりと促す。

 すると現れたのは甚平に眼鏡をかけた風鳴八紘とそのボディーガードの男性2名。

 

「お父様…」

 

 翼が挨拶をする。

 しかし三人の前で足を止めると、

 

「ご苦労だったな慎二」

 

 翼の挨拶に対して全く反応をせずに付き人の緒川をねぎらう八紘。

 

「それにS.O.N.G.に編入された君の活躍も聞いている」

「あ、はい」

 

 顔に硬さこそあるが口から出る言葉には他者を気遣う優しさが垣間見える八紘の挨拶に、若干の違和感を感じながらも返すマリア。

 翼は俯いて黙っている。

 

「S.O.N.G.と言えば前に受け取ったアルカノイズのアルゴリズムの資料は大変興味深かった。アーネンエルベの神秘学部門をベースにしたアルカノイズの資料も届いている」

「はい、今回はそれの追加資料を未来さんから預かってきました」

 

 緒川はアルカノイズの話題に偶々なったので預かった資料を手渡す。

 

「そうか彼女か。分かったでは部下に解析させよう」

「はい分かりました」

 

 そう言うとそのまま翻していく。翼には一切目もくれなかった。

 当然本人はこうなる事は分かっていた事とはいえショックを受ける。

 

「ぁ…………お、お父様っ!」

 

 なけなしの勇気を振り絞って声を発する、そして驚く。

 何故なら本人も意外だったのかその声に反応して相手が立ち止まったのだ。

 

「……沙汰も無く申し訳ありませんでした……」

「…………お前がいなくとも風鳴の家に揺るぎはない。勤めを果たし次第戦場に戻るがいいだろう」

 

 翼に対して全く関心も無いと言った感じの言い草。

 この男は血液が冷水なのではと錯覚をしてしまいそうになる。

 

「待ちなさい!!」

 

 マリアは先ほどから翼をいないものか、もしくはあからさまに冷遇している事にさすがに怒りを抑え込めずに爆発させてしまう。

 

「ッ!」

「あなた翼のパパさんでしょ!?だったらもっと他にっ!」

 

 この場で上に立つ人間である相手に噛みつくのは、この場では一応はS.O.N.G.の代表として来ているため相応しくない事はマリアにも分かっているが、どうにも許せなかったのだ。

 

「マリア!いいんだ!!」

「でもっ!!」

 

 翼はマリアをなだめようとする。どこか悲痛な表情で。

 

「いいんだ……」

「…………」

 

 翼の必死な態度にマリアもこの場では矛を収めた。

 八紘たちもこれ以上言うことが無いのならとこの場を離れようとする。

 緒川は終始その光景を黙ってみていたが、視界の端に何かの揺らぎを感知する。それは前にも筑波の研究施設で見た。

 咄嗟に拳銃をそれに向かって発砲をする。

 するとそこからファラと呼ばれるオートスコアラーが現れた。

 

「野暮ね……親子水入らずを邪魔するつもりなんてなかったのに……」

 

 敵に囲まれて欺瞞を公然の場にさらされているというのに何一つとして慌てていない余裕の態度だった。

 当然その場にいた全員は警戒を強める。

 

「あの時のオートスコアラーっ」

 

 翼が憎々し気に言う。

 思い出していた。初めて錬金術に遭遇したあの日、チャリティライブの会場でマリアと翼を襲撃してギアペンダントを破壊したのだ。

 

「レイラインの開放……やらせていただきますわ……」

「やはり狙いは要石か!」

 

 もはや目的を隠す気も無いファラ。

 もし落ち着いて耳を傾けていれば自分たち組織の情報が筒抜けである事に気が付けたかもしれないが、ついてからの突然の襲撃にそこまで誰も考えられなかった。

 

「ダンスマカブル!」

「ああ付きあってやるとも!」

 

 そう言ってアルカノイズ達を召喚する。

 翼はそれを好戦的な顔で受け止める、今度は負けない、前とは違うぞという意思表示だ。

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

『Seilien coffin airget-lamh tron』

 

 素早くギアをまとう翼とマリア。

 アルカノイズ達にひるむことなく突っ込んでいく。

 翼は刀で切り裂いていき、マリアは短剣をその都度生み出して投げ飛ばす。敵達を一方的に蹂躙していく。

 ロンドン時はアメノハバキリをあっさり分解され、マリアは戦いを指をくわえて見ている事しか出来なかった。

 

「ここは私が!」

「務めを果たせ」

 

 勇ましい宣言だが、直後にかけられた父の言葉に悲しそうな顔をする。

 勤めではなく気を付けろのような娘の身を案じる父の言葉を期待してしまったのだろう。

 しかし、そんな心情など相手には関係なく翼を攻めてくるがその全てを一撃のもと切り裂いていく。

 

「さぁ…捕まえてごらんなさい?」

 

 ファラはそう言うと足元に風を生み出して宙に浮いた。

 相手はそのまま突進してくるが、翼はすんでのタイミングでかわして動きの癖を観察していく。よく見ると直線で動く時は早いが方向転換する一瞬だけは減速して攻撃を当てられるタイミングがあるのを見つける。

 そのタイミングに合わせて剣に力を溜めて剣撃波を放つ、迎撃の為に相手も剣を取り出して迎撃を図る。

 しかし、迎撃のために止まった事で風が一時的に停止して足を止めることは出来た。

 簡単に防いで見せるが、翼は上空高く飛び身の丈の十倍以上はある大剣を生み出し、それの柄に蹴りを入れながら突進する。

 

「何かしらぁ」

 

 ファラはそう言うと剣を思いっきり大剣にぶつけた。

 すると翼の剣がその先から崩れ去っていった。腕力で壊したのではなく触れた先からひびが入り砕けたのだ。

 

「あっがっ!?」

 

 翼は突如として剣が消失した事で足に入れていた力の操作を誤り地面に激突してしまう。

地面にもろにぶつかったので意識がもうろうとしている。しかし何とか耐える。

 

「な…ぜ…?……シ、ンフォギア…は分解を…防ぐはず……」

「私のソードブレイカーは強度も硬度も関係なく破壊する哲学兵装」

 

 ファラの残酷な宣言。

 強化されたシンフォギアでも突破することが出来ないのだ。

 例えるならいくらチョキを出してもグーには絶対に勝てない、ルールで決まっている、そう言う話だった。

 

「はああああっ!!」

 

 苛烈な咆哮と共にマリアは短剣を投げ飛ばす。

 しかし、

 

「無駄よ?」

 

 相手は剣に風とまとわせて迎撃してくる。

 風にもソードブレイカーが付与されているらしく当たった先からアガートラームのアームドギアが消失していく。

 

「なっ!」

 

 マリアはあいての防御の一撃がそのまま自分に迫ってきたためとっさに身を投げ出して躱すが、それは背後にある要石に当たって砕けた。

 

「あら?アガートラームも剣と定義されてたかしらぁ?」

「哲学兵装……概念に干渉する呪いかっ……」

 

 マリアの一撃も通じない。

 この場にいる戦姫では歯が立たない。

 

『剣ちゃんに言ってくれる?目が覚めたら改めて貴方の歌を聞きに行きますと』

 

 ファラは姿をくらましながらも余裕そうな表情でその場から消えた。

 マリアは歯噛みする他ない。

 要石は守れなかった。

 

 緒川は先ほどの一件の報告のため本部に連絡をしていた。

 

「要石の防衛に失敗しました……申し訳ありません……」

『2点も同時に攻められるとは』

「2点……?……まさか」

『深淵の竜宮にも侵入者だ』

 

 緒川の耳に最悪の情報が流れてくる。

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