エルフナインの持つトレーにはシンフォギアペンダント四つが置かれていた。
響はそれを見て目の前のそれが何なのかは分かっていたがあえて興味深そうな演技をする。
「完成したんだ」
「はい、急ごしらえですが対消滅バリアシステムを組み込みました」
エルフナインは笑顔で応える。
ここは本部のブリッジ内で一部のスタッフを除いては装者たちしかいない。
調と切歌はトレーからそれを取る。
「見た目に変化はないけれど…」
「これで賢者の石に負けないのデス!」
二人もギアペンダントを見ながらそう言う。
マリアはペンダントを受け取ってしばらく見ていたのだが、ペンダントが四つという事は残り二つは既に受け取っているという事に気が付いた。
「…ところで翼とクリスは?」
「二人には先に渡しておきました。お知り合いに…会いに行くそうなので……」
エルフナインは少しだけ気まずそうに言った。
マリア、調、切歌は何故そんな歯切れが悪いのか理解できなかったが、響はステファンの件だと気が付いて沈む。もともと自分がしっかりしていればステファンの足はアルカノイズにやられなかったのだから。
するとアルカノイズの発生を示すアラームが鳴り響く。
『装者の皆さんはすぐさまアルカノイズ発生地点へ向かってください!』
◎
外は今日までの騒ぎなどとっくに忘れてしまったのか人々がいつも通りの日常を過ごしていた。
クリスと翼は車に乗ってある場所へと向かっていた。そこは関東でも有数の駅だった。そこにステファンとソーニャから呼び出されていた。
最初は乗り気ではなかったが翼に無理矢理結局押し切られて今に至る。ちなみに翼はそのいつまでも引きずった形ではこれからの任務に支障が出るから行けと言った。
彼女らしい言い分ではあるのかもしれないが、残念ながら相手の心情を尊重できるやり方ではないのかもしれない。
「……………………」
車の中でクリスは何か考え事をしていた。ステファンとソーニャに対する不安だけでなく何か違う事も考えているように翼は感じた。
暫くして車が止まった先には赤いレンガでつくられた建物が。クリスは車内からじっと不安そうな顔で外を見る。翼はその不安そうな顔を無言で見る。
政府経由での連絡できた集合場所のレストランへと二人は向かって行く。
クリスの足取りは重い、まるで今から刑務所に連れて行かれる罪人かのようだ。翼は急かすわけでもなく同じ歩幅で隣を歩く。
翼はこういう暗い時に気の利いた事を言ったり、明るく振舞える響を羨ましく思う。
指定された店の前でクリスは立ち止まってしまう。少しだけ息を整えてから勇気を出して扉を開く。
そこは丸テーブルが広がるちょっと高価でシックな雰囲気のカフェだった。
すると店内の奥でソーニャと目がバッチリと合ってしまう。
「あっ……」
少しだけ怯んでしまう。そしてぶり返す記憶。
『あなたが私を許せないように私もあなたが許せない!』
『あなたとはあの混乱に話も出来ずにはぐれてしまった……だからこんな形で再会したくなかった……』
ソーニャの正当性も何もない言葉の数々、しかしそれがクリスをえぐるのだ。
少し怯んだがすぐさまいつもの顔に戻して相手の座る机に向かう。クリスと翼が席に着いたが当然の如く沈黙があった。
ソーニャはクリスの方を見ないわけではないが目は合わせない。それはクリスが嫌いだからではなく、あの後頭が冷えた事でステファンの恩人であるクリスに怒りをぶつけた事を悔いているからだ。
そして何よりも彼女の両親が亡くなった件をまだちゃんと話しても謝ってもいないのだ。バツが悪いに決まっていた。
ステファンがそんな雰囲気を見て最初に話を切り出す。
「今日の夕方の便で帰るんだ。でもその前に……」
彼はふと下を見る。膝から下が消えた機械仕掛けのその足を。
「この事を伝えたかった」
「ああ…………」
クリスは車いすに乗る彼とその足を見て喉を空気が通っただけの乾いた返事をする。それは彼女の選択とその罪が形となった物だ、ちゃんと注意していれば防げたかもしれない。
「術後の経過もいいからすぐにリハビリも始められるって」
「……そうか」
ステファンが努めて明るく話すが一向にこのばの空気は軽くならない。
彼はふと窓の外を見る。そこには自分の住んでいる故郷とは違い爆弾や銃弾に怯えずに暮らす人たちがいる。
「内戦のない国ってのをもう少し見てみたかったけど……姉ちゃんの帰りを待ってる子たちも多いからさ……」
その言葉にクリスはここに来て初めて無表情以外の表情筋を使う。表情力が弛緩してポカンとした表情に。
その情報は彼女にとっては初見の事だった。ついソーニャの方を向こうとするが先に翼が声をかけたためそっちを向く。
「彼女は雪音のご両親の遺志を継ぎ家や家族を失った子供たちを支援しているそうだ」
「え……」
クリスはその情報に驚いてやっとソーニャの方を向く。
ソーニャは目をつむって俯く。決してクリスの事を無視をしているわけではないが、まだ後ろめたさからなのかまともに相手の目を見れない。
今思えば紛争地域にいる子供がおいそれと日本の最新鋭技術の義足を手にする事など普通は出来ないのだ。しかしソーニャは孤児支援活動を通じて国連やそれに準ずる組織に顔が通っているため今回の話を通することが出来たのだ。
恐らくだが、孤児支援をしているのもクリスにしてしまった事への贖罪の意も込められているだろう。
―パパとママの遺志を継いで……
ふと甦るのはあの日両親が亡くなった日。
ソーニャがキャンプ内に入れてしまった荷物に爆弾が入っておりそれが爆発してクリスの両親は建物に生き埋めになって亡くなったのだ。
『ソーニャのせいだっ!!!!』
―分かってた。ソーニャお姉ちゃんのせいじゃないって
当時のクリスは目の前で起きた悲劇をまだ一人で落とし込めるほど強くはなかった。
だからこそ誰かのせいにしなければ自身に降りかかる悲劇を納得させられなかった、心を保てなかったのだ。
ソーニャは信じていた人を自身の不注意で失い、その娘に憎悪の言葉を受けてなおバルベルデのあの地獄で立ち上がり暴力という名の理不尽に叛逆し続けている。
クリスは何かを言わなければいけないと思いその口を開こうとする。
「…………」
すると突然カフェの壁が爆破される。
クリスはすぐに立ち上がり爆発の方へと向く。
「取り込み中だぞっ!」
「アルカノイズ!」
翼は混乱の原因を見て言う。
空いた穴からアルカノイズ達がこの場に侵入してきていた。
「二人は早く避難を!」
「わ、分かったわ!」
翼の指示にソーニャは返事をしてすぐさまステファンの乗っている車椅子を押して避難を始める。
アルカノイズ達は建物の壁や天井そして柱を攻撃して暴れまわっている。
「むしゃくしゃのぶつけどころだっ…!」
『Killter Ichaival tron』
クリスは素早くシンフォギアをまとい、そして両手にボウガンを装着してアルカノイズ達を殲滅していく。
ステファンはそれを見て、
「凄い……」
「…………」
ソーニャもバルベルデで見ていたが人類の天敵であるノイズを赤い霧に変えて圧倒する光景に目を奪われてしまう。
しかしそれがまずかった。足を止めている間に先ほどアルカノイズが分解して天井が脆くなっていたため瓦礫が二人の元へ落ちてきたのだ。
翼とクリスは敵がシンフォギア破壊を狙っているのは分かっていたため、屋内の敵を殲滅した後外に出て錬金術師の注意を引く。
場外のアルカノイズを倒しているとエネルギー弾が飛んでくる。翼は自身に当たる一撃を剣で防ぐ。クリスは横っ飛びでかわす。
攻撃を仕掛けてきた主が声をかけてくる。
「のこのことおびき出されてるわね?」
既にファウストローブをまとっているカリオストロはだった。
二人に本部の会話が流れる。
『敵錬金術師とエンゲージ』
『ですが……単機での作戦行動……?』
『陽動……何かの囮でしょうか……?』
藤尭、緒川、友里の三名はそれぞれの意見を述べる。
敵地の真ん中で今は装者二人だがこれだけの大事を起こしたら当然援軍が来る。何のリターンがあってこのリスクを選んだのか不思議でならなかった。
カリオストロは攻撃を投げつけてくる。
「雪音っ建物に敵を近づけさせるな」
「わーってるっ!」
翼の言葉に分かっているとクリスは返事をする。
クリスはボウガンで矢を放っていくが相手は踊るようにステップを踏みながら回避をしてくる。ふっと跳ねたかと思ったらクリスの真後ろに陣取ってくる。
クリスは振り返ってボウガンを向ける。
「ちょこまかとぉっ!」
しかし敵の背後にはソーニャ達がいる建物が視界に入り攻撃を躊躇ってしまう。
「ッ!?」
「口調ほど悪い子じゃないのねぇ…」
「んなっ!」
カリオストロにからかわれる。クリスはいじられた事で怯むが、その隙を突かれて右手から放たれる砲撃を受けて倒れてしまう。
翼はそれを見て慌てて声を出す。
「雪音っ!くっ!」
しかし翼の周りにアルカノイズが群がり二人は分断されてしまう。
直撃を受けてしまったためクリスは怯んですぐさま立ち上がれない。そんな相手にカリオストロは悠然と歩み寄っていく。
「嫌いじゃないけど殺しちゃお……ッ…!」
すると横から蛇腹に伸びた剣が襲ってきたため慌てて飛んで避ける。
「クリスちゃん平気?」
「怪我人がいっちょ前に他人を心配してんじゃねぇよっ!」
響の心配に素直じゃない答えを返すクリス。
ノコと鎌の刃が翼に群がっていたアルカノイズ達を倒していく。それを見た翼はアルカノイズとつばぜり合いながらも口を開く。
「すまない…月読…暁っ…!」
「偶には私達だって!」
「そうデス!ここからが逆転劇デス!」
二人も打てば響くように返事をする。
「そうね……逆転劇はここからよねぇっ!!」
カリオストロはそう言って結界を生み出せるアルカノイズの召喚結晶を装者達に叩きつける。
響と切歌そして調と翼をそれぞれ亜空間に閉じ込めた。
クリスはそれを見て、
「何をっ……」
「紅刃シュルシャガナと碧刃イガリマのユニゾン」
カリオストロは賤しい笑みを浮かべて答える。
残されたのはクリスとマリア。
「プレラーティが身をもって教えてくれたもの……気をつけるのはこの二人って…」
カリオストロの顔はもう既に勝利を確信しているそれだった。
それを見てクリスとマリアも強気に返す。
「そりゃあまた随分と……」
「私達も舐められたものね」
カリオストロの両手の手甲から砲撃を放つがクリスはすぐさまボウガンで全弾打ち落とす。その衝撃で煙が発生する、そこからマリアは短剣を振るが、
「近づけば勝てると思った?私ってば意外と武闘派よ?」
紙一重で伏せてアッパーをかまそうとするが。
マリアは驚くことなく言う。
「知ってるわよ」
持っていた短剣を伸ばして遠くの木に巻き付けて引っ張ってとっさに体を移動させる。
響が以前空港と風鳴機関本部でカリオストロとやり合った際に、僅かにだが相手は体術にも精通しているのを見せている。
「あ~っもう不満爆発!じゃあ…」
「なっ…」
カリオストロはアルカノイズ結晶をマリアに向かって投げつけたのち、チラリとクリスを見て一瞬で懐に入り込む。そして建物に殴り飛ばす。
体術を使うと知っていてもクリスは相手の予想を超える脚力に初見で対処出来なかった。彼女の本来のスタイルになった事で明らかに攻守の力が上がっている。
クリスの体は外壁を貫通する一撃を叩きつけられて呻いていたが、騒がしいのでその方を向くと、
「まだこんなところに!?」
「ステファンの車椅子が…!」
ソーニャが焦って瓦礫にタイヤが挟まった車椅子を力ずくで押すのだが一向に状況が改善しない。
車椅子を捨ててステファンを背負うか肩を貸すなりすればいいのだが、アルカノイズの襲撃で焦ってしまいそこまで考えが回らなくなっている。焦りが問題解決の視野を狭めてしまっている。
「ごめんねぇ…巻き込んじゃって…」
そんな気持ちなど一ミリも感じない口調で悠然と建物内に入ってくるカリオストロ。
両手に力を溜めて吹き飛ばそうとしてくる。
「すぐにまとめて始末してあげるから」
「そうはさせ…っ!」
クリスは先ほど殴り飛ばされたダメージが残っているのか膝を着いてしまう。
それを見たカリオストロは獰猛な笑みを見せる、自身の勝利を確信した笑みを。
だがステファンは叫び声と共に車いすから立ち上がり義足で落ちていた金属片を蹴ってカリオストロにぶつけようとする。
「自棄のやっぱちっ!?」
カリオストロは突然の反撃に慌てて手で弾くが、思いがけない不意打ちに集中力を乱してしまったため溜め込んでいた攻撃エネルギーは霧散していしまう。
その隙を見逃さずクリスはボウガンで矢を乱射してカリオストロを後退させて建物から追い出す。
「何のつもりだっ!」
クリスは錬金術師に牽制した行動を咎めた。何の力もない彼が相手の気を引く様な行動を取るなど普通ではない。
しかしステファンは姉の助力で何とか立ち上がってクリスに正対する。
「クリスがあの時助けてくれたから…俺も今クリスを助けられた…!」
「ッ…!」
その言葉に息を呑むクリス。
「なくした脚は…過去はどうしたって変えられない!」
ステファンの発した言葉、それはどれだけの勇気を振り絞ったものだろうか。
ある日まで当たり前にあった足が突如なくなったら、いくら義足があるからと言ってももう二度と満足にサッカーが出来るわけではない。それをすべて受け入れた上で彼は己の胸の中にあるものを伝えている。
「だけどこの瞬間は変えられる…きっと未来だって…!」
「ステファン……」
彼はクリスに向かって言っているが内容は自身の姉にも向けているとソーニャは理解した。
「姉ちゃんもクリスも変えられない過去に囚われてばかりだっ!」
ステファンは腕を振って姉の手を振り払い自力で立ってみせた。自分の事でもうこれ以上うじうじするなと言っているかのように。
「オレはこの足で踏みだした!!姉ちゃんとクリスは!?」
ステファンは流石にまだ術後で体力が戻って無いのか車椅子のひじ掛けに手を突く。するとソーニャとクリスがその手に自身の手を添える。
「これだけ発破をかけられて……いつまで足を竦ませている訳にはいかねえじゃねえかっ…!」
クリスは好戦的な笑みを浮かべて言った。
一方外ではマリアがカリオストロに苦戦していた。近接が得意と分かっても相手の方が技量は上なのだ。パンチを食らいダウンしてしまう。
「トドメよっ!」
カリオストロが一撃を放とうとした瞬間。クリスの放った矢が横やりを入れてとっさにカリオストロは守りに入った。
マリアは援護に入ったクリスを見て言う。
「っ遅いっ!だけどだけどいい顔しているから許すっ!」
「さっきのあれ……この本番にぶつけられるか?」
クリスの問いに、マリアは立ち上がりながら応える。
「いいわよ…そう言うの嫌いじゃない」
「なにをごちゃごちゃとおっ!!」
カリオストロは指でハートマークを宙に描いて、そこに投げキッスでエネルギーを充填させて、
「そーりゃあっ!!!!」
思いっきり殴りつける。
ハート形のエネルギー波はクリスとマリアを襲い直撃する。彼女は勝利を確信して笑みを浮かべるが。
「あ……?」
煙が晴れた先にいたのはイグナイトモジュールを起動させた上で攻撃を受け切った二人だった。
信じられないものを見たと驚愕する。
「イグナイト!?ラピスフィロソフィカスの輝きを受けてどうしてっ!」
「昨日までのシンフォギアだと思うなよ?」
クリスのその声と共に二人は敵に向かって突貫する。
カリオストロは手甲にナックルガードを追加して二人に向き合う。
ジャブの動きに連動して弾丸を放っていく。しかしイグナイトモジュールの起動によって能力の大幅な底上げのされた二人はすべてを見切ってかわしていく。
マリアが短剣を伸ばして斬りかかるがナックルガードで受けて逸らす。
「ええっ!」
その捌き切った隙を埋める様にクリスがボウガンで矢を放ってカリオストロに反撃の隙を与えない。
(これってユニゾン!?ザババの刃だけじゃないのっ?)
連携だけでなく歌が合わさった事で出力が底上げされている現状に愕然とする。
弦十郎があの時行った特訓はただ個人の底上げだけでなく、相手がユニゾン警戒で分断された時でもどの組み合わせでも歌を重ねられるようにパターンの模索と指導をしたのだ。
木剣を使ったり、組手をしたり、二人三脚など二人のコンビネーションを上げるためにいろいろやった。
「ラピスの輝きを封じただけでなくユニゾン……こんなのサンジェルマンたちにやらせるわけには……」
カリオストロは焦っていた。ここで逃げるのが最上の選択だが、他の装者を抑えられている内に敵を削らなければ次に討たれるのはこちらだと。
またこれだ、彼女の脳裏に浮かぶのは重症のプレラーティの姿。
また敵の戦力を見誤ってしまった。相手がイグナイトモジュールを使えば賢者の石を使えばいい、昨日までは間違いない戦法だった。
しかし自分勝手いつまでも相手がRPGの敵キャラのように何も変わらないアルゴリズムで動いてくれると愚かにも考えていた。
ユニゾンだって誰かが証明したわけでも無いのに、勝手にシュルシャガナとイガリマのペアだけだと決めつけていた。
敵だって自分たちと同じ考えて戦っているという当たり前のことを失念していた。
クリスはガトリングガンで銃弾を相手に向かって放っていく。相手はハート形のエネルギーで防ぐ、それが破裂してクリスとマリアを襲う。
「やらせるわけにわあああっ!!」
叫ぶカリオストロの両腕にエネルギーが溜め込まれていく。
それを見たマリアが驚愕する。
「高質量のエネルギー…まさか相打ち覚悟でっ!」
「あーしの魅力は爆発寸前!!」
相手は手甲を合体させて一つにしてそのエネルギーを地面にぶつけて反動で空を飛ぶ。
クリスとマリアも、腰のアーマーを一体化させて全方にマリアの件を巨大化させて後方にクリスの作ったブースター設置する形でジェット機のような形を作る。
カリオストロは二人に向かって殴りかかろうとするがそれを二人の融合したアームドギアで受け止める。
お互いに空中を飛び周りながら交錯する。そしてこれで最後だと真正面から全力でぶつかる。カリオストロの全てをかけた一撃は凄まじく押されかけるが。
「今を超える!」
「力をっ!」
ステファンとソーニャの声が聞こえた。きっとこれに応えなければ嘘だろうとクリスは思う。
二人の声援に後押しされたシンフォギアの一撃はカリオストロを吹き飛ばし辺り一帯に爆発を巻き起こす。
「やったわね……」
「ああ」
着地したクリスとマリアは疲労困憊で勝利の爽快感は無かった。
その直後にアルカノイズによって閉じ込められていたメンバーもなんとか脱出する。
前は地面を殴ったら解除できたのだが流石にそんな弱点をほっておくわけもなく、力ずくで暴れまわって何とか結界の元を絶ったのだ。
「無事だったかみんな」
翼が全員の確認をする。
最初に応えたのはクリス。
「ま、なんとかな……」
「…………」
ただ調だけは目を一瞬だが逸らした。
◎
装者一同はソーニャとステファンを見送るために空港に来ていた。
バルベルデ方面に飛んで行く飛行機を見る。
『クリス…また…いつか……』
『また今度……絶対に……』
ゲート前で別れる際の会話を思い出す。
今はこれでいいのだ「さようなら」ではなく「またね」の約束が出来ればそれで。そして今度会った時は話し合うのだ。お互いに楽しかった事そして辛かった事をとことん。
(ソーニャお姉ちゃんとステファンはこれでいい。あとは……)
クリスは飛行機を見ている響をじっと見る。
だが響はその視線に気が付かない。
◎
アダムが再びサンジェルマンの背中に紋様を刻んでいく。
するとそれを見ていたティキが騒ぎ出す。
「やーられたった~きえたった~っカリオストロはぁおほしさまになられたもよう……ちーん……」
ティキはそう言って合掌する。
サンジェルマンはそれを聞いて慌てて立ち上がる。
「そんなっ…カリオストロが……?」
「省けたねぇ…選択のひと手間が……」
アダムは軽薄な表情でそう言った。
それに対してサンジェルマンは顔を蒼白にする。
それはカリオストロ自身はアダムを慕っていなかったとはいえ、しれでもパヴァリア光明結社に尽くしてきた人間だ。それを一切一ミリも労いもしない態度がいくらなんでも信じられなかった。
「なぁ……?」
「贄とささげるはプレラーティ、丁度いいね怪我もしているし」
そのアダムの言い草に彼女は怒りが爆発して突っかかってしまう。
「あなたは…何処までもっ!!」
相手は殴ろうとした相手の腕を受け止めて言い放つ。
「ああ人でなしさぁ……まったくもって正しいよ君の見立ては」
掴んでいた手を振り話して突き飛ばした。地面に倒れるサンジェルマン。
「アダムのひとでなしーろくでなしいっ!わるいおとこはいつだっておんなのこにもてもてなのよね」
「旧支配者に並ぶ力だよ?神の力は……手に入らないよ…人でなしくらいじゃないと……」