過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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仲良くなりたい

 その後、弦十郎から翼は打ち身程度の軽症である事(弦十郎が剣を殴り飛ばしてバランスを崩し地面に落下したのが原因)や今回の翼の起こした癇癪への謝罪が主だった。自分自身もやりすぎたとメールで弦十郎に返したが。

 

 響が2課で活動を始めてから既に1ヶ月が経とうとしていた。その間ノイズの殲滅の速度と装者の翼の負傷具合が劇的に改善していた。

 響は翼の死角になる場所にいる敵、また剣を振りにくい路地裏やオブジェクトの多い場所を重点的に担当している。

 そのため一人だった時よりも明らかに戦果が上がっている。

 しかし―

 

「はぁ…」

 

 溜息が出る。響は翼に手を出した事を後悔していた。いくらイラっとしたとはいえ最後の殴りかかろうとしたのはあり得ないだろう。未遂で終わったからと言って許されるものではない。

響は顔を突き合わせて謝りたかったがなかなかタイミングが合わないのだ。いやそれは正確ではない、あれだけの事をして顔をあわせるのが気まずいだけだ。

 

 現在の時刻は5時半、悪い子以外は寝てる時間だ。響は悪い子、夜更かしをしているわけではなくジャージに着替えて朝の走り込みをしようとしているのだ。基本的に用事が入らなければ欠かさない、ここ2年で染みついたルーティーンだ。

 寮の正面玄関を開けると、

 

「よう!響君!」

 

呼びかけられる。ジャージを着た赤髪の野性味あふれる男がいた、風鳴弦十郎である。

 

「えっと何か呼び出しとかありましたか…?」

「いや違う、ここに来た理由だがな、いまだに我々は同じ志を持つ仲間だというのに微妙な距離感だとは思わないか?」

「そうですね主に私と翼さんが……」

 

 距離感と言われて、響は翼との関係性をさっきまで考えていたのでついそんな言葉が出てしまう。

 

「あ、いやそういうわけではなくてだな。響君は我々2課のメンバーに対して一歩引いているように感じるんだよ」

「…………」

 

 弦十郎に疑問をぶつけられてつい黙り込む響。

彼女自身心当たりは正直ある。未来の事を話せない呪いのせいで気兼ねなく話すのが難しいのだ。どうしても手さぐりになってしまう。

 

「響君の信頼を得るには待つだけじゃなくこちらから歩み寄ろうと思ったわけさ!」

 

 響に対してバッと両手を広げてウェルカム!といった姿勢を取る。別に抱き合いたいわけではないだろうが。

 

「弦十郎さんって司令官って事は組織の頭なわけで仕事とか大丈夫なんですか?」

「…………大丈夫さ?」

 

 問いに対して不安になる回答が返ってくる。

 

「そ、そうですか……あ、私より翼さんの方を気にした方が―」

「いやもう既に翼も響君との走り込みに誘ったがにべなく拒否されたよ」

「…………………………………………」

 

 聞きたくない情報だった。朝から彼女のテンションガタ落ちである。

 

「…時間も押してるんで行きましょうか」

 

 時間は無駄に出来ないため雑談の切り上げを提案する響。弦十郎を引き連れて走りだす響。

 ランニングを始める。ある程度走ると声をかけられる。

 

「思ったより速くないんだな、遠慮は要らないぞ響君、君の邪魔をしたいわけではないからな」

「いえ速さよりもどちらかと言えば、頭をブレさせず真っ直ぐ綺麗な軸を意識するのに重点を置いてますから」

「なるほど頭のブレが少なければ正確にパンチが放てるし、軸がしっかりしていれば体の回転が無駄なく拳に伝わるな」

「基本戦闘中は動き回りますからね、姿勢の事をいちいち考えていられませんから癖になるまで反復練習です」

 

 響は彼と話していて気分が楽だった。

装者である自分に媚びを売ってるわけではなく、本心から仲良くなりたいと思ってくれる相手と会話が出来る事が。まぁ、うら若き女子高生がする会話ではないが。

 響はテンションがちょっとだけ回復していた。いつまでも逃げていてはいけないのだ、だからちょっとだけ勇気を出そうと思った。

 

「弦十郎さん」

「なんだ?」

「私と翼さんを止めた時凄い技を使ってましたよね?あれって教えてもらう事はできませんか?お忙しい事は承知の上です。それでもお願いします」

 

 先日の一件を交えて相手に切り出す響。

前の世界でも色々と教えてもらっていたが改めて教授してもらいたいと思っていたのだ。

 ピタリと足を止める弦十郎、響もそれにつられて足を止める。お互いに真っ直ぐ向き合う。彼の口から出たのは少しだけ響の秘密に触れた質問。

 

「君は何故そんなに力を求めるんだ?」

「守りたい人たちが両手で抱えきれないほど沢山いて、そして私に命を懸けてでも希望を託してくれた人達に報いたいからです」

 

 響はその質問に一切躊躇せず言い切った。

その答えは重要な部分だけを切り抜いた不誠実なものだった。ただ強い思いだけは本物で、それは相手に伝わった。

 

「よし!いいだろう、俺のやり方は厳しいぞ」

「はい!よろしくお願いします!…師匠!」

「時に響君、君はアクション映画とかはたしなむ方かな?」

「映画にはうるさい方です!」

 

 そんなやり取りをしながらも弦十郎は願う。2年前の天羽奏の死によって止まってしまった翼の中にある時計の針が再び動いてほしいと。同じ力を持ち対等な場所に立ってくれる、瞳に強い決意を宿すこの少女に。自分には出来ないから。

 

 

 翼は自室で蝋燭を燃やし、目の前に鞘に納めた刀を置き瞑想していた。

 目をつむるとふと甦るのはあの日の思い出。

 

 

 絶唱を口にしてノイズたちをなぎ倒す奏。その体から力が抜けて立つことすら出来なくなる。

 

『奏―――ッ!』

 

翼は倒れ行く彼女を現世に繋ぎとめようと声を張り上げて必死に走る。

そして抱きしめる上半身が何故か重たく感じる。体から力が抜けてるからだ。

 

『奏!』

『どこだ…翼…?真っ暗でお前の顔も見えやしない……』

『奏ッ!!』

『悪いなぁ……もう一緒に歌えないみたいだ……』

 

 奏の状態をみて翼の瞳から涙が止まらない。

重たい体、焦点の合ってない瞳、掠れて今にも消えてしまいそうな声。本能が分かっている、天羽奏はもう助からないと。

 

『どうして…どうしてそんな事を言うの……?奏は意地悪だ…………』

『だったら翼は……泣き虫で弱虫だ……』

 

 泣きじゃくる翼に対して優しく話しかける。

 

『それでもかまわない!だから…ずっと一緒に歌って欲しい!』

『知ってるか翼?思いっきり歌うとな……すっげえ腹減るみたいだ…………』

 

 彼女の瞳から涙が一筋こぼれてそして、その言葉を最後に彼女の体は脆く崩れ去った。

 

『奏えええええぇぇぇぇっ!!!!』

 

 翼の絶叫が沈黙のステージを切り裂いて響き渡った。

 

 

 翼は自分の動揺切り裂こうとしたのか、火を消すため刀を鞘から抜き蝋燭の導線を横薙ぎに切るが、消火する事は叶わない。この事実がまるでお前は弱いと言われているかのようで。

(すべては私の弱さが引き起こした事だ……)

 強さ―あの日、立花響は自分を圧倒して見せた。あの日から2人は2課の施設内でも、学校内でも、そして現場でもまともに話す事が出来なくなった。厳密には立花響の方が避けているのだが。

 自分の攻撃を効果的な方法で捌く中で、彼女は少しだけ悲しそうな顔をしていた……気がした。何故だろうか?と思う。あれだけ強いのに何故満たされた顔をしていないのか。

 解などでない思考を何度も繰り返す。

 

 

 流れ星。かつて一番の親友と見に行く約束をしながらも反故にしてしまった、願いを叶える伝承を持つ発光体。響は2課から貰った給料で天体撮影用のカメラを買っていた。前回は流れ星をじっくり見られなかったから、今度は撮影して永久保存してやろうと画策していた。

(それなりの値段したんだし撮れないとか無いよね……?)

 実はストレスからの衝動買いだったりする。

 

 ぴろぴろりん。メールの受け取りを教えてくれる間抜けなアラーム音が流れる。

 どうやらミーティングらしかった。ここ1ヶ月ほどミーティングは憂鬱な時間になっていた。風鳴翼と顔を会わせるからだ。そろそろ自分から踏み込まないといけないのだが1ヶ月という期間を開けてることが中々のプレッシャーになっていた。

 

 

「遅くなりましたすみません!」

 

 実際はミーティングが始まる2分前なので遅刻はしていないのだが、頭を下げる響。

 チラリと翼を見るが視線を下にして紙コップに口を付けて「あ、自分飲んでるんで話しかけないでね」みたいな、ボッチや人見知りがやりそうなアピール作戦を敢行している。見てて二重の意味で悲しくなる響。国民的スターなのにむなしい習性を獲得している。その仮面も剥がしてもう一度仲良くなってやるぜ!と気合を入れなおす。

 

「では!全員揃ったところで仲良しミーティングを始めましょうか」

 

 了子の音頭でミーティングが始まる。

 最初にモニターにリディアンを中心とした地図に、ノイズが発生した地点を赤点でチェックしたものを表示する。

 弦十郎は響に顔を向けて発言を促す。

 

「どう思う?」

「赤いのがいっぱいですね」

「ぷっ…あはは!全くその通りだ。これはここ一ヶ月のノイズの発生地点だ」

 

 響のあっさりとした回答に翼以外は緊張が取れたのが笑みを浮かべる。弦十郎はモニターの情報を補足する。

ちなみに翼はもっとましなことを言えないのかといった雰囲気を出している。。

 

「響君はノイズについてどのくらい知ってるのかな?」

「テレビやニュースに載ってる程度しか分からないです…すみません……」

 

 響はその問いかけに一般的な答えを返す。

しかし大嘘だ。響はノイズの正体が先時代の人類がバラルの呪詛による相互不和の状態になったため、理解出来ないものは殺すという思考のもと生み出された人間のみを狙う生物型殺戮兵器である事を知っている。またバビロニアの宝物庫と呼ばれる空間で無限に作られておりそれを破壊しない限りいくら数を倒しても無駄な事も知っている。

 そんな響の葛藤などお構いなしに会議は比較的穏やかに進行していく。

 

「ノイズの発生事例は太古の昔から確認されてるわ」

「世界の各地に残る神話や伝承に登場する数々の偉業はノイズ由来の物が多いだろうな」

「テレビで見たことのある、突如何万人もの人が原因不明の神隠しに遭うとかもですか?」

「証明されたわけではないがそういう理屈で説明できない失踪現象はノイズの可能性が高いな」

 

ここで了子がややそれかけた議題を軌道修正しようと図る。

 

「ノイズの発生率は決して多くないのこの発生件数は誰の目から見ても明らかに異常事態……だとするとそこに何らかの作為が働いていると考えるべきでしょうね…」

「作為……って事は誰かの手によるものだって事ですか……?」

 

 了子と響、二人とも白々しいにも程がある。翼が発言をする。

 

「中心点はここ私立リディアン音楽院高等科。我々の真上です。サクリストDデュランダルを狙って何らかの意思がこの地に向けられてる証左となります」

「えっと…デュランダルって何ですか?」

 

 デュランダル、シンフォギアと違って欠片の力を増幅しているのではなく、壊れることなく現代まで残り続ける先時代の英知の結晶。起動には相当なフォニックゲインが必要だが、ひとたび発動してしまえば誰もが適正関係なく誰もが使えるチートアイテム。

 現在はアビスと呼ばれる2課本拠地の最深部に保管されている。

 響はそんな説明を受ける。知ってるが。

 前の世界ではそれがフィーネにトドメを刺した。厳密にはデュランダルを手にした響によって……

 

「あれから2年……今の翼ならあるいは……」

「そもそも起動実験に必要な許可って下りるんですか?」

「いやそれ以前の話だよ。安保を盾にアメリカが要求してきてるらしいじゃないか。起動実験どころかだよ」

「まさかこの件米国政府が糸を引いてるなんてことは…」

 

 響を除く全員がこの話題でやや殺気だっている。

 最前線にいる人間にケチをつけるのはいつだって、安全な高みから世界を自分たちの都合よく操って利益を得ようとする者たちだ。お互いに理解出来ないし、理解しようともしない、水と油なのだ。誰だって最初は前線にいたのにいつのまにかそれを忘れてしまう。

 そう考えると風鳴弦十郎はいつだって自分の地位よりも部下の命を優先する素晴らしい上司なのだろう。

 

 険悪なムードになったので響は会議前から言おうと思ってたネタをここで投下する事にする。

 

「あ、あのっ!話題が戻っちゃうんですけどちょっといいですかっ!」

「あ、あぁ…すまない……響君を置いて話し込んでしまったよ……何か気が付いた事でもあるのかな?」

 

 弦十郎は響をのけ者にしてしまい、うっかりしてたといった感じで発言を促す。

 

「えっと最初の地図なんですけど……この赤点はここ1ヶ月のノイズ発生地点ですよね?」

「そうだね」

 

 響の確認に藤尭が肯定の意を伝える。

 

「って事は私がガングニールを初めてまとった時から今までの発生地点ですよね?」

 

 響の言葉に皆は一瞬固まる。響の戦闘能力はとても初めてシンフォギアをまとって戦ったとは思えないからだ。

しかし、奏が亡くなってから2年間でガングニールの起動反応が無かったのも事実。なので立花響は1ヶ月前のあの日初めてガングニールをまとったと結論づけるしかないのだ。

 

「…そうだね」

「この地図のノイズ発生地点って私の記憶が間違ってなかったら徐々にですけど…日を追うごとにリディアンから離れていってませんか?」

 

 指摘に全員がハッとした表情になる。

 

「…おい藤尭どうなんだ」

「ちょ…ちょっと調べなおします!」

 

 弦十郎の問いに藤尭は焦ってデータを洗い直す。地図内の発生地点の横に日付のデータが反映される。すると響の言った通り日付を追うごとに発生地点がリディアンから離れていってる。

 

「おいおい……もしかしたらノイズは囮で、シンフォギア装者をリディアンから引き離そうとか考えてるんじゃないのか?」

「でもどうやったらここまで正確にノイズを配置できるの?」

「やっぱり狙いはデュランダル…?」

「もしくは―」

 

 翼の一言に皆が凍りつく。

 

「もしくは装者をリディアンから引き離して孤立無援にする」

 

 

 音楽の授業、クラス全員で合唱をしている。

 真面目に歌ってたのだが、廊下を歩いている翼を見つけてつい目で追ってしまう。するとよそ見してる響に目ざとく気が付くティーチャー。

 

「立花さん!?よそ見しない!!」

 

 ちょっとよそ見しただけでこれほど目ざとく注意されるとは。さすが学年一の問題児だ。

 

 

 友達三人と昼食後に屋上でバトミントンをたしなむ響。ちなみに今日は予定通りならノイズ発生と雪音クリスとの再会というビッグイベントが立て込むため邪魔にならないように課題の類はすべて終わらせている。

 疲れて休憩してる弓美と詩織が口火をきる。

 

「そういやさ今日って流れ星が見れるんだよね?」

「らしいですね」

 

 そういえばと創世が響に質問する。

 

「ビッキーさっ!たしか流れ星を撮影するため高いカメラ買ったんだよね?」

 

 響が先日自慢していたのを思い出して聞く。

 

「よっと!今日は用事が立て込むから見れないの悔しいし寮の屋上にこ~っそりセットしてやるんだ」

「うへ…バレたらまた反省文モノよ?てかそのために10万もするカメラ買うって何考えてんのよ妹さん」

「いや何で替え玉受験したことになってるのっ!?私は一人っ子だよ!」

 

 恒例と化した響いじりで場が和む。

 流れ星が見れる位置は把握してるので邪魔が入らなければ失敗する事は無いが。

 

 

 寮の屋上に侵入して天体観測用のカメラをセットする。するとポケットに入れた携帯電話から通話が来た事を告げるアラームが鳴る。取る前からどこからの連絡かは知っている。

 

「……………………」

 

 この世界に来てある意味では始めての殺し合いだ。翼のあれはノーカウント。これまでの害獣扱いのノイズを倒すのとはわけが違う。ノイズを利用し他者を意図して傷つける者と向き合わなくてはいけない。

 雪音クリス。素直じゃないながらも優しく面倒見が良くて、頭がいいくせに回りくどい事ばかり考えていて、そして誰よりも世界が織りなす痛みを知っていて。

そして何より響たちにとって心強い仲間の一人。今日、響と翼の二人はこの世界で初めて邂逅する。

 

 響はまだ何をするのが正解なのか分からなかった。前の世界では翼の絶唱によってクリスを瀕死に追い込み痛み分けだった。それを再現するのは嫌だった。となると自分が何とかしてネフシュタンを畳むしかないのだ。

 翼と友好的な関係を築いて協力するのが理想形だったが現状は不可能に近い、それにネフシュタンの鎧を見たら頭に血がのぼって突貫するのは想像に難くないのだ。

 考え終わると携帯を手に取り通話ボタンを押す。

 

「もしもし……」

 

 

 2課からの指示通りに地下鉄の出入口に到着する。この駅はもともと周りに大きな建物は無く、住宅街でもない。せいぜい大きな広場があるくらい。敵が何故ここを選んだのか響は分かっている。

 

すると駅の構内にわらわらと湧いてくるノイズたち。決して慢心ではなく響は本気で負ける気はしなかった。

 

『Balwisyall nescell gungnir tron』

 

 常に壁との距離を意識しながら、背後を取られないように小型のノイズを殴る蹴るで対処していく。

 曲がり角や障害物の多い場所ほどノイズとやりやすい、しかしここでネックなのは球体の爆弾を生み出すノイズ。閉鎖された空間である地下鉄の構内では生き埋めにされる事が最も恐ろしい。このノイズはソロモンの杖で生み出されたものであり、装者を殺す意図が相手にあればとっくに生き埋めにされている。

 しかしそれはあり得ないことも知っている。今回敵は融合症例である響を拉致するために動いているのだから。実際、牽制なのか地面か、軽く壁や天井を撫でる様に爆発させている。殺意からは程遠い動き。

 爆弾を生み出すノイズが弾を使い切って、再度生み出そうとする最も無防備な一瞬を狙い拳を直撃させトドメを刺す。

 

 響は戦闘が終わってもギアを解除せず出口から外に出る。いつもなら即解除だが。

 すると翼が空から飛んで傍にやってくる。軽口の1つでも叩いてコミュニケーションを図りたかったが、あいにくここからが本番だ。

 森の奥から白くてごつく刺々しいフォルムの鎧をきた少女が現れる。右手にはソロモンの杖を携えて。

 

「ようお二人さん?ちょっとツラァ貸せよ?」

 

 

 風鳴翼はノイズの発生の連絡を受けて素早く仕事を切り上げ現場に急行する。恐らくすべてをあのリディアンの後輩が終わらせているだろうと思いながら。

 実際、現場に到着するとちょうど地下鉄の出入り口から彼女が出てきているところだった。悔しいが強いと思う、頼りにもなる。不審な点は散見するが間違いなく善と呼べる人間性を備えている。実際ここ一ヶ月の働きを見ると彼女がいなければ危ない場面もあった。

 だがどうしても受け入れる事が出来ないのだ、だって受け入れてしまえば奏は―

するとここで異変に気が付いた。響がガングニールを解除しないのだ、それどころか周囲の警戒を一切緩めない。もうとっくにノイズたちは全滅させたというのにだ……

 

「ようお二人さん?ちょっとツラァ貸せよ?」

「ネフシュタンの鎧……?」

 

 目の前に現れたのは2年前に自身の不始末で失った完全聖遺物。

 

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