不穏な雰囲気を残す曇りの日。既にあの事件から丸一日が経っている。
エルザとその連れの青髪に紅色のメッシュが入っている少女の二人はとある港でいかにも怪しいと言った感じの黒服の男二人と密談を行っていた。
エルザは相手から受け取ったアタッシュケースの中身を確認して、しっかりとお目当てての物があるのを確認する。
「ミラアルク…ちゃんと入っているであります」
ミラアルクと呼ばれた少女はよしと頷く。
そして指をピースサインにして、その間に顎を挟むという独特なポーズで感謝の言葉を紡ぐ。
「あざまぁーす!」
「確かに受け取ったであります。受領のサインは必要でありますか?」
エルザもまた努めて明るい声を出して出来る限り警戒されないように配慮をしている。
いや厳密には相手ではなく、自分の異質な容姿は嫌われやすいまたは嫌悪されやすい事を知っているからこそ先んじて対策を練っているのだ。
「いや……上からの指示はここまでだ……俺達はすぐに戻らなければ……」
エルザとミラアルクは明るくフレンドリーさのある話し方をした。
しかし黒服に身を包んだ相手は及び腰で極力丁寧に事務報告的な内容に終始している。
まるで檻から解き放たれた猛獣を前にしたようなビビりっぷり。
「別に生まれた時からの怪物ってわけじゃないんだぜぇ?取って食ったりなんてするもんか」
ミラアルクは口調こそ明るかったが最後に少しだけ笑顔が陰っていた。
エルザはあからさまに悲しそうな顔で言う。
「こんな体でも私めらは人間…過度に怯える必要は……」
「あ、そういや何でターゲットは先んじて会場を潰したんだぜ?どこから情報が漏れたのか分かっているのかだぜ?」
ミラアルクは気になっていた事を口にする。
今頃はライブ会場にアルカノイズをけしかけて動揺した隙を狙って風鳴翼に催眠をかける手はずだったのだ。なのにその前日に響にライブそのものを中止に追い込まれてしまっていた。
黒服の一人がその質問に答える。
「いや…それはまだ分かっていないんだ…ただS.O.N.G.のシンフォギア装者を使って堂々とターゲットを拘束する算段がついたため棚からぼたもちだが……」
「ならいいです……私めらは…神の器へアヌンナキの聖遺物を融合させる準備を…」
エルザがそう言った瞬間、彼女の持っていたスーツケースに衝撃が加えられて破壊される。中身もぶちまけられる。
その中にはパックに入った赤い物体が。
「な…に、をするでありますか…!」
彼女は台無しにされた己らの生命線に気が付いて耳は逆立って怒髪天になる。
「ち、違う!俺達じゃ……!」
黒服たちは必死に弁明するが相手は正面ではなく何かを飛ばしてきた方に視線を向ける。
視線を向けたそこにはコンテナの一つの上に立っている、ガングニールをまとって既に臨戦態勢の響がいた。
よく見ると手にはコンクリートか瓦礫のようなものを持っている、それを投げてアタッシュケースを破壊したのだ。
「私を拘束するつもりなんだ」
響は無表情で聞こえるように述べた。分かっていた事だが前の世界と違い、この世界では響しか神の器なり得ないため当然の帰結だった。
アメリカに押収された聖遺物に次ぐ優先目標が現れた事に硬直してしまったがすぐさまミラアルクは持ち直す。
「おいおい…これってさっき言ってた……なんだっけ……?」
「棚から牡丹餅でありますか?」
「そうそれ!」
エルザの補足に指をパチンと鳴らして嬉しそうに彼女は反応する。
「ここであいつを捕まえりゃ目的もほとんど達成したしたようなもんだぜ!」
二人がそんな会話をしている間に黒服たちは素早くその場から退却していく。本能でそのままこの場所に残れば戦いの余波でミンチにされると分かっているのだ。
響は冷めた目でそれを見ていた。
ミラアルクは背中に翼をはやして飛び出していく。彼女の力はパヴァリア光明結社に世界の怪物の文献をもとに再現実験によって体をいじくられた「ヴァンパイア」のなりそこない。
今はマントをまとっているがそれの「カイロプテラ」と呼ばれるユニットを自由自在に体にまとわせることで翼を生やしたり、手足をピンポイント肉厚にして怪力を発生させることが出来る。
響は相手が初手に蹴りをかまそうとしてくるのを察して後ろに下がってかわす。
外した蹴りは鋼鉄であるコンテナをまるで紙かと勘違いするほど簡単に切り裂いてしまう。中身は家電の類なのかコードや金属類の部品が辺り一面にぶちまけられてしまう。
響が自由落下で着地する瞬間を狙ってエルザが巨大な鍵爪、テールアタッチメントが響の体を拘束しようと画策してくる。
体を掴まれる寸前に響は右腕の装甲を厚くして鍵爪に思いっきり突き込んで相手の武装を封じてしまう。
「何でありますか!?」
相手は驚くがその硬直を見逃さずに、響は腕の装甲を外して体を自由にしてから左拳で相手の体に向かって思いっきり拳を突き出した。
エルザは拳が直撃する瞬間に持っていたトランクを盾代わりにして攻撃を受ける。
「ぐうっ!」
勢いは殺し切れずにうめき声をあげながら後方へと吹っ飛ばされていく。盾代わりに使ったトランクを見ると僅かにだが凹んでいる。相手は殴られて頭に血が上ったのか先ほどと違い犬歯をむき出しにして「グウウウッ…!」と唸りだしている。
二人の実力からすればイグナイトモジュールを使えば撃退は十分に可能なのだが、今の響にはそれが出来ない。この後、装者たちからの逃走が求められるなかで体力を使いすぎるわけにはいかないのだ。
相手二人が構えたの見て響も外した右腕の装甲を復活させて構えなおす。
エルザはテールアタッチメントを正面からではなく横に振るって横薙ぎの一撃を加えんとしてくる。
響はそこまでスピードのない一撃なので簡単にバックしてかわすが、その一瞬を埋めるように先ほどと同じようにミラアルクが足をカイロプテラで肉厚にしてドロップキックを繰り出してくる。
「あたしらの悲願は邪魔させないぜ!」
「ッ!?くっ…」
響は腕をクロスして真正面から受ける。かわした直後だったため態勢が不十分で勢いに押されて後ろに吹き飛ばされるが背中を地に着けるのだけは避ける。
一瞬怯んだ隙に相手は腕にカイロプテラをまとわせて腕力を底上げして響の手を掴んで力比べをする形になる。
「…くうっ…一応、聞くけどあなた達の目的は何…?…あのライブ会場で何をしようとしたのか身に覚えがないとは言わせない…」
「あたしらか?そうだな…普通に女の子としてみんなと暮らしたいんだぜ?」
この力比べを心底楽しんでいるような口調で願いを口にする。
響も具体的な経緯と心情を全て理解しているわけではないが、彼女たちノーブルレッドは望まぬ形で異形の力をパヴァリア光明結社に植え付けられたと予想されている。
ただ世界を股にかけられるほどの力を単独で所有していれば少しは生き方も変わったのかもしれない。しかし彼女たちの身に宿ったのは並の凡人よりは強力であってもシンフォギアやファウストローブ、そして神の力が行き交う裏の世界では十分すぎるほどの弱者であった事だ。
表の世界では気味の悪い異形として偏見と差別により居場所がなく、裏の世界の居場所ではただ力が無く排斥されるポジションしかない。
響はそこまで考えた上で言葉を紡ぐ。
「他者を傷つけるやり方じゃ、世界の誰もあなた達を受け入れてはくれない……あなた達に居場所が無いのは…ただ不幸にも望まない力を押し付けられたからだけじゃない…その自分達さえよければあとは誰が傷ついても構わないその思想と行動のせいだって分からないの…?」
「なんというか……正義のヒーローみたいな説教って偽善臭いんだぜ?」
響の思いを込めた発言も相手は簡単に切り捨てた。
今のノーブルレッド達には自分たちを受け入れる内輪の仲間か、排斥してくる他者の二択しか見えていないのだろう。
相手の真摯な思いは生まれながらに恵まれた立ち位置にいる奴のご高説な説教としか受け止められないのだ。
「そんなことよりも~」
「っ……」
響がそんな思考を巡らせている間にもミラアルクは顔を近づけて口を開く。
声をかけられてすぐさま現実に思考を戻す。
「イグナイトモジュールを使わないのはなんでかなぁ…ってわけだぜ?」
相手は白々しくそれを口にする。
知っているのだ。響には今仲間がおらず、ノーブルレッド達だけでなくシンフォギア装者からも逃げなければいけない事を。そしてその逃走分の力を残さなければいけない事を。
恐らくは風鳴機関からその手の情報を受け取っているのだ。
イグナイトモジュール使用後の疲労感を抱えたまま装者を振り切って、ギア解除後に身を潜めなければいけない。
恐らく本気で攻撃されることは無いと予想できるのだが、それでも五対一の状況で正面切っての戦闘ではまず退けられない。
ミラアルクは両腕に力を込めながらも目に力を入れる。かつて吸血鬼の再現として改造された彼女の瞳には本物には遠く及ばないものの、ある程度の催眠能力が兼ね備えられている。
その目で催眠をかけようと響の瞳をのぞき込む。するとそこでミラアルクは響以外の誰かの意識を見た。
『貴様…誰を覗き見ていると思っている?不敬で不快である』
「なぁ―」
彼女は先ほどまでいた港のコンテナ群でも、先ほどまで戦っていた港に面している道路でもなく、真っ暗な上下左右が分からなくなる空間にいた。いや厳密には真っ暗ではない、下をふと見るとより強い白い光をまとった人物がそこにはいて―
「くっ…!うぁ……」
するとミラアルクは体に高圧電流を浴びたかのようにビクリと震えて怯んで、たたらを踏みながらふらついた。
「ミラアルク!?」
エルザはその異常な光景を見て慌ててトランクに乗って仲間の元へとすっ飛んで抱えて響から距離を取る。そして体を強くゆすって正気を取り戻せと伝える。
「どうしたでありますか!?」
「あ…い、つ…中にいったいどんなバケモノを……飼ってやがるんだぜ……」
相手は顔を青ざめさせて震えながらそう言った。
ミラアルクは今までバケモノと言われて来た側で、その言葉によってどれだけ傷つくかを分かっていながらも響をバケモノ、いやそれ以上の存在かのように扱う。それを見てエルザも響に対して恐ろしいものを見るような視線を向ける。
(シェム・ハさん……)
(安心しろ…少し灸を据えてやったまでだ)
響は感謝したらいいのか、それとも相手の精神を引きずり込むという危険な行為を咎めたらいいのか困ってしまう。
すると響の目前にいるノーブルレッド達に矢が放たれる。それをとっさにエルザは乗っていたトランクを操作してかわす。
「まさか…であります……」
攻撃を受けた相手は矢が放たれた方向へと視線を向ける。響もまたその方へと視線を向ける。
そこには雪音クリスがいた。彼女だけでなく他4人のシンフォギア装者たちもアームドギアを構えてそこにいた。
「あーっ!そこにいるのはあの時の狼っ子デース!」
「狼っ子って常識人が変な事言わないで」
切歌と調の相変わらずな掛け合い。
「それに隣にいるあの子は仲間かしら…」
青髪にメッシュのミラアルクは初見なのでマリアが訝し気に相手を見ている。
翼は明確な敵だけでなく響も隙なく見ている。
「それに……立花は……これを見る限り仲間ではなく敵なのだろうが……」
「んな事よりどうすんだ?あのバカの確保か敵を倒すのかどっちを先にやるんだ?」
クリスは二兎追うものは何とやらと言うのを思い出して、この場のリーダー格に当たる翼に意見を聞こうとしていた。
ミラアルクは衝撃から立ち直って二本足で立ち上がり、エルザにしか聞こえない大きさで話す。
「エルザ……ここは退くんだぜ、装者たちが来たならターゲットを捕まえるのは勝手にあっちでやってくれるはずだぜ」
「……ガンス…ここは戦略的撤退であります」
話しかけられた相手もここは逃げるのが最上の一手と察して、前と違い不満を漏らすわけでも無く同意を示す。ただし顔色はいくばくか悔しそうであった。
ノーブルレッド達は一対一ですらシンフォギア装者には敵わない。
広く見通しのいい場所でかつ数的不利を見せられているこの場でムキになるのは愚行だと分かっている。
彼女の手にはテレポートジェムが握られており、それを地面に叩きつける。
光に包まれながらミラアルクは捨て台詞を吐く。
「それじゃ装者たち同士で仲良くやってくれだぜ!」
そう言って手を振りながら二人は消えていった。
その場に残されたのは六人の装者フルメンバー、厳密には五人と一人だが。
その場に気まずい沈黙が流れる。会うのは高々一日ぶりだと言うのにこれほどまでに深い溝が出来るのかと思わせる。
響はここで全てを告げられたらどんなに楽だろうかと思う。
彼女が未来に起きる事を話せないのはシェム・ハがかけた術式のせいだが前に相手に呪いを解けないのかと聞いた際に、本来の力を失っているから術式解除は不可能だと言われたのだ。
実際に話せないのは同じ肉体をシェアしているシェム・ハにもかかっている。彼女は自分の名前を口にする事が出来ないのだ。
「叔父様……どうしましょうか……」
『そうだな……取りあえず響君をブリッジに来るように言ってくれ……』
翼の問いかけに弦十郎はまずは話し合いだと指示を出す。
翼はここで響に向き直すと口を開く。
「立花…お前が意味もなくあんな事をしたとは私達も思っていない……話してくれないか…?…何故アリーナを…シンフォギアを使って破壊したのかを……」
「…風鳴機関から生け捕りにしろとか言われましたか?」
響はその視線を受け止めて俯いてそして口を開く。その一言に皆が驚いた顔をする、何故それを知っているのかと。
その驚いた表情で響は自分の予想が間違っていない事を確信する。
風鳴訃堂は響を器にして神の力を手に入れるつもりなのだと。
「ここで私を見逃すのはダメですかね…?」
『……………………』
そして響の無理のあるお願いに一瞬皆が驚愕から打って変わってポカンとした顔をする。
そしていち早く硬直から脱したのはマリアだった。
「いや、いいわけが無いでしょう!あなた今自分がどんな立場に立っているのか分かっているの!?テロリスト扱いなのよ!!」
「そ、そうデスよ!取りあえずこっちに来て事情を聞かせくれデス!」
切歌もマリアに乗っかって投降するように説得する。
クリスはそんな響の姿を見て何かを考え込んでいる。そして意を決して質問する。
「それは…前に言ってた…信じてもらえたら嬉しい…ってやつか…?」
響はその一言に四ヶ月ほど前に言った公園での会話を思い出していた。
あの時はクリスの知りたい質問に対して一切答えずに、無条件に信じて欲しいと言う不誠実極まりない回答で濁した。
だがクリスはそれ以降響の言った事を守ってずっと待ってくれているのだ。
「…うん…あれは…どうしても必要な事だったんだ…じゃないと多くの人が……」
響は苦しそうに顔をしかめながらも言う。
どんな正当な理由があろうとも、多くの人が努力して積み上げてきたライブを台無しにした事は揺るぎのない事実だからだ。
そして響が改変したという事は大量虐殺が起きるからと言ってもそれに説得力など無いのだ。真摯に話せば信じてもらえるかもしれないが必ずしこりは残る。
彼女が捕まれば神の力が風鳴機関にわたるだけでなく、神殺しも失われてしまうのだ。
「そうだ……今は何があっても捕まるわけにはいかない…!」
響は素早くダッシュをする。
傍にあった先ほどまでの戦闘の余波によって一部が壊れている建物に入り込んで身を潜め、相手の視界から一旦消えようとする。
しかし調の小型ノコの投擲が建物を攻撃、粉々に砕いてしまいその作戦を先んじて封じられてしまう。
狙いを先読みされて歯噛みするしかない響。
「ッ!」
「響さんが何を抱えているのか分からないけど……まずは戦場じゃなくてブリッジ内で聞かせて」
調は直接ではなく、先んじて作戦を潰す形で行動を行った。それには可能な限り響を傷つけたくはないという意図が見えていた。
翼と切歌は響が動きを止めたのを見てアームドギアを構えて斬りかかりに行く。二人の刃が響の体へと向かってくるが何とかそれをバックステップでギリギリの間合いでかわしながら下がっていく。
響が二人と手合わせをしていて感じたのは、相手が極力自分を傷つけないように慎重に得物を操っているという事だ。
翼は剣を刀から大きな大剣に換装して思いっきり振り下ろす、響からしたら真正面からのバレバレな動きは簡単に見切れるので大きくバックステップするのだがそこでトン…と何かが背中に当たる。
響は恐る恐るそれを見るといつの間にか背後に周りこんでいたマリアの短剣が頂点になって生み出すエネルギーのバリアが彼女の後ろに逃げるスペースを奪っている。
「なぁ……」
「隙ありデース!」
響が呆然と呟いている間にも切歌は肩のアーマーからアンカーを射出して相手の体をからめとり地面に縫い付ける。その上から調がヨーヨーを投げつけてエネルギーの糸でぐるぐる巻きにして腕を動かせなくする。
更に翼が短剣を響の影に投げつける。それは影縫い、大型の相手や素早い相手には効果が薄く当てにくいが、動きが止まった対人相手であればこれ以上なく効果を発揮する。
「しまったっ…!」
「…………」
クリスは遠くから苦悶の声をあげる響をじっと見ていた。その顔は複雑そうだった。信じたい気持ちと自分に課せられた任務と立場で際悩まれている。
捕縛作戦に一切参加しなかったのはせめてもの情けか。
マリアは真正面から響を見て告げる。
「立花響…あなたが何を背負ってあんな事をしたのか分からない…だけど私達は味方よ…不利な判決だけは止めて見せるわ」
「ッ…!ぐっ…このっ…!」
その言葉を聞いている間も響は必死に拘束から逃れようともがいている。だがガッチリと体が固定されていて動かすことが出来ない。
マリアはそんな姿を見て悲しそうな顔をする。
「叔父様……」
『今すぐにスタッフを派遣する、それもアンチリンカーも持っていかせる』
「分かりました……」
翼は司令官に指示を仰ぐとすぐさま返答が来る。
アンチリンカーの使用は他国と国連の指示によるものだ。響を捕まえたらアンチリンカーでシンフォギアの使用を停止させるという取り決めがある。
「立花……悪いがこのままついてきてもらう、身柄は頑としてS.O.N.G.の方で預かる…安心してくれ」
先ほどから傷ついた獣のように唸りながらも、なんとか拘束から抜け出そうとしている響をあやすように優し気なトーンで翼は声をかける。
しかし響は一切逃げようとする態度が軟化しない。
そんな気まずい空気が流れる中で。
「……………………」
「調?」
調は無言でもがいている響のその姿をじっと見ていた。
切歌はそれを見て何かがおかしいと思って相手に声をかける。
するとヨーヨーのアームドギアを解除して響の拘束を一つ緩めてしまう。
「月読?」
「調どうしたの?」
翼とマリアはそれを見て訝しげな表情をして声をかける。
もしかしてリンカーが切れてギアの維持が困難になったのか、新たな敵でも見つけたのかとそんな事を考える。
するとヘッドギアから小型ノコを響に向かって乱射して、影縫いを行っている響の影に刺さっている小刀の直接破壊とアンカーが突き刺さっているアスファルト舗装された道路そのものを直接破壊する事で相手を締め付けて苛んでいた拘束を緩める。
響は拘束から解かれてその場にへたり込んでしまう。
「んな…」
「何をしているデスかっ!調ッ!」
クリスは突然の裏切り行為に呆然、そして切歌も突然の背信行為に反射的に驚きの混ざった大声をあげる。
調は脚装のローラーを動かして滑るようにして響の前に守るように、装者四人に対して立ちふさがるように立つ。
響は突然味方をしてくれる調に驚いて呆然としてしまう。先ほどまで相手は確かに自分を制圧、そして拘束することに対して余念が無かったはずなのにだ。
「なんで…助けてくれるの……?」
響のそれはごく当然の疑問だった。
それを聞きたいのは響だけでなく、S.O.N.G.の皆が次に来るであろう回答に耳を傾ける。
「それは……」
調は微笑みながら口を開く。
「『私の味方になってください』そう言ったのは響ちゃん…あなたでしょう?」