過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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月読調は私の名前

 逃げられたとはいえ相手の本拠地は分かっている。それに響の事もある。そしてここで黙っているわけにもいかない、動かなければまた闇に紛れられてしまう。

 

「本部!状況を教えてくれ!」

 

 クリスはすぐさま情報を開示を要求する。

 

「先日観測した同パターンのアウフヴァッヘン波形を確認!」

「腕輪の起動によるものだと思われます!」

 

 藤尭と友里が情報を素早く伝える。

 本部のモニターにはシャトーのライブ映像に腕輪の画像、そして波形を照合して工区率での一致を示すデータなどが表示されている。

 

「これがシェム・ハ…アダムが予見した…復活のアヌンナキ……」

 

 弦十郎は少しだが険の刻まれた表情で呟いた。

 マリアとクリスが聞きたいのはそれだけではなかったようで。

 

「それもだけど調と立花響は何処にいるのよ!」

 

 マリアはついらしくなく乱暴な聞き方をしてしまう。生き証人になるはずの敵をむざむざ逃がして自分に苛立っているのだ。

 

「待ってくれ、今すぐに詳細な出現ポイントを……」

 

 すぐさま藤尭は詳細な出現ポイントを検索するのだがそこで驚いた声を出してしまう。

 部下のそんな姿を見てすぐに上司である弦十郎が聞く。

 

「どうした藤尭」

「いやまさかこれは……」

『どうしたんだよ…まさかあいつに何かあったのか……?』

 

 衝撃といった反応にクリスは悪い方に思考が言ってしまう。

 藤尭はデータに示されたとおりの情報を口にする。

 

「ガングニールとシュルシャガナの反応がチフォ―ジュシャトーと平面上では同じ座標にあります……」

 

 

「あなた達は…一体何を企んで……」

 

 廃棄躯体が接続されているのを見て驚いた声を出すエルフナイン。驚きの方が先行してここは今は敵地であり、自身の背後に敵がいる事を忘れていた。

 

「アッ…!…ぐっ…ああ……」

 

 突如彼女の首がミラアルクによって絞められて釣り上げられ苦しそうに喘ぐ。

 気道を絞めて呼吸困難に陥らせることで集中力を乱して吸血鬼の力である魅了の催眠をかけようというわけだった。

 エルフナインの体であるキャロルの肉体を使って施設の一部の機能を解除させて、廃棄躯体に残っている残留されたエネルギーを利用して施設を動かそうというわけなのだ。

 ミラアルクが目を合わせて刻印を刻もうとする。

 

『Balwisyall nescell gungnir tron』

 

 絶望的状況の中、聖詠が響いた。

 

「な…がっ…!」

 

 突如この場に現れたヴァネッサの声でない四人目の人間の声に驚いていると、エルフナインを釣り上げていたミラアルクの顔に拳がめり込んだ。

 そう響は拳を思いっきり振りぬいて敵を遠くの壁まで吹き飛ばした。そして殴られた衝撃で手から離れたエルフナインを抱きかかえる。

 

「な、ぜ……」

 

 エルザにとって衝撃的な出来事が目の前に広がっていた。

 

「何故ここにいるであります!シンフォギアァッ!!」

 

 しかし驚きは止まらない。その場に調が飛び込んでツインテール型のヘッドギアから小型ノコを射出して、棺の形をしたジェネレーターや辺りの端末を手当たり次第に破壊してしまう。

 破壊されて辺り一帯に爆発が起こってしまう。

 

「調ちゃん!」

「分かってる!」

 

 大型ノコを生み出してタイヤのように回転させて移動をする、その際に響とエルフナインを回収してその場から逃走を図る。

 廊下をエルフナインと響を左右に抱えてから進む調。

 

「響さん…それに……調さんもどうして……」

「私もよく分からない…なんか…響さんについて行ったら…こんなことに……」

 

 エルフナインの当然の質問に調もどうしてこうなったのかよく分かっていないようだ。

 響は申し訳なさそうに口を開く。

 

「今答えるのは難しいかな……せめてキャロルちゃんがいれば……」

「キャロルが…?…あ、そうだ!…響さん!未来さんもここにいるんです!すぐに止めないと…!」

「へ…?…どうして未来が……」

 

 エルフナインから告げられた未来もいるという言葉に思考が追いつかなくなる。

 この世界では神獣鏡の一撃を受けていない彼女は神の依り代足り得ないはずなのだ。

 

「敵は未来さんのチフォ―ジュシャトーをハッキングした技術を使ってよからぬことを……」

 

 そこで彼女の言葉は止められてしまう。前方に警備用のオートスコアラーが来たからだ。

 響は調から降りると真っ直ぐに直行して一直線に拳を突き出して突貫する。その勢いと衝撃波で敵達を粉々に吹き飛ばしてしまう。

 

「調ちゃん!もう潜入してるのはバレてるから構わず進むよ!」

「分かった!」

 

 二人の戦姫は目的地である外との通信端末を目指して進んでいく。

 

 敵を蹴散らしながら進んだ先にあったのはかつて響が拘束された場所でもあるキャロルが使っていた大広間だった。そこの一角に明らかに空間の意匠には合わない機器たちが。

 

「あれは恐らく外部と繋がる端末です!」

 

 エルフナインは調から降りるとすぐさま端末にへばりついて操作し始める。

 

 彼女の操作の途中でいきなり地震が起きる。

 

「ッ!?」

「響さん!」

 

 響は突如胸が痛くなり手を当てて膝を着いて唸った。調は不安そうに傍に寄り添う。

 同居人はこの響の不調の理由を察したようだ。

 

(なるほど…腕輪から力が顕現したようだぞ。我に呼応している)

 

 

 転移用魔法陣を抜けて出た先にはボロボロになった部屋があり、それらがヴァネッサを出迎えた。

 

「エルザちゃん!?ミラアルクちゃん!!」

 

 仲間であり、また家族の名前を必死になって呼ぶと、

 

「こっちだぜヴァネッサ…」

「ここにいるであります」

 

 部屋の隅で手当てをしている二人を見つける。

 彼女は慌てて二人の元へ駆け寄っていく。そして尋ねる。

 

「何があったの!?」

「シンフォギアが突如現れてキャロルの肉体を奪って逃走しやがったぜ」

 

 先ほども通信越しで伝えたが、目の前の惨状に混乱している相手を見てミラアルクは再び起きた事を簡潔にまとめた。

 しかしその回答に納得がいかない。

 

「ここに入るには監視カメラや警備用の人形の監視範囲に入るはずよ…バレずに忍び込む…そんな隙なんて…あ、る…はず……が……」

「ヴァネッサ…?…どうしたでありますか?」

 

 口を開くたびにどんどん声に力を失っていくお姉さんにエルザは不安そうに尋ねる。

 彼女は気が付いたのだ。かつて血液センターを襲撃して暴走したミラアルクを助けるために辺り一帯にチャフや電磁波を使って電波障害を起こしてかく乱した事を。もしそれがチフォ―ジュシャトーにまで悪影響を与えたとしたら、その瞬間だけはここの警備が手薄になって忍び込めるのではないのかと。

 勝手に思い込んでいたのだ。S.O.N.G.は灯台下暗しとも言えるこの隠れ家を見つけられないと。そして本当に見えていなかったのは自分達だと。

 それを狙ってしたとするのならそれこそ未来視でも持っていなければ、出来ないような絶妙なタイミングを狙ったという事だ。

 そんな事実に寒気を覚えながらも失態を謝罪する。

 

「ごめんなさい…お姉ちゃんのせいね……」

「ど、どうしたんだぜ…」

「ヴァネッサ、謝るよりも先にシンフォギアを止めるのが先決であります。これ以上暴れまわられたら計画が」

 

 気落ちをするヴァネッサにミラアルクは心配そうにするが、エルザは気を持ち直すように促す。現在進行形で危機的状況は続いているのだから。

 

「そうね。凹むのは後回し、私達が三人そろえばやってやれないことは無いわ」

 

 だがその時、地震が彼女たちを襲う。

 

 

「あのバカがいると聞いて駆けつけてはみたが…」

「調はあそこにいるんデスね!?」

 

 クリスと切歌を含めた四人の装者がチフォ―ジュシャトーの手前で集まっていた。

 目の前にあるのはチフォ―ジュシャトーとその上に鎮座する卵のような繭のような不気味な物体。

 

「あれがノーブルレッドが求めたものなのか……」

「あれって何なのかしら…」

 

 白い気味悪い物体に翼とマリアは嫌悪感を隠せないといった感じの感想を述べる。

 しかし突如として緑色が皆の視界に映る。

 

「さっさと調を助けに行くデス!」

「待てっ暁!」

 

 切歌はそう言って飛び出していく。翼は慌てて静止を促すがもう彼女には調の事しか見えていない。

 前に出るとシャトー上部で鎮座していた繭は切歌を認識して攻撃を仕掛ける。繭から触手が伸びて絡めようとするのだがそれを彼女のアームドギアである鎌で切り裂いていく。あっさりと分断するのだが、その瞬間に輪郭がブレて元通りになってしまう。

 

「やはり…神の力っ……」

 

 マリアはかつてのヨナルデパズトーリやティキを思い出していた。並行世界にダメージを押し付けて修復してしまう埒外物理。

 

「だったら…シャトーに取り付けばいいんデス!」

 

 相手が神の力と知っても迷いなく飛び込んでいく。

 外から見て内部にいると思われる響と調は攻撃を受けていない。

 理由は不明だが考えられるのは力の核となっている腕輪を巻き添えにするのを躊躇っているのか。

 相手は切歌に向かって触手を伸ばしてくるがそれを飛んでかわす。しかしその瞬間頭部に当たる部分に存在する結晶が光ったかと思うとレーザーが放たれる。

 

「なっ…」

 

 切歌は相手が足場を崩して躱す隙を狙ってきた事、そして自分の冷静さを欠いた行動を恥じたのだがすぐさまアームドギアを盾にして守ろうとする。直撃よりはマシだろうと判断して。

 するとマリアの短剣を使ったバリアーとクリスの対光学兵器用のリフレクターが彼女を守る。

 

「おい!頭に血を昇らせるなっ!」

 

 クリスがそう言う間にも触手たちが追撃に来るのだが、翼がとっさに短剣を投げつけて影縫いを発動する。大型の相手には効果が薄いが一瞬だけ動きを止めるのには十分だ。

 

「暁!それにみんなっ今は退くんだ!あれは神殺しでないと無理だっ!」

「焦るのは分かるけど今は態勢を立て直すのよ切歌!」

 

 翼とマリアの必死の説得に、彼女は何とか一定の冷静さを取り戻す。

 ただし悔しそうな表情はそのままだったが。

 

 

「地震…?…一体何があったというの…?」

 

 ヴァネッサは地震に驚いていた。

 世界で発生している地震の十分の一は日本で起きているため発生自体はおかしなことではないのだが、この非常事態に度重なった災害に冷静さをやや失っていた。

 エルザは破壊された中にもあった生きていたモニターに外部の様子を映す。そこには神の力と思わしき物体が鎮座している映像が。

 

「これはいったい……」

「そもそも何でシャトーが動いているんだぜ…」

 

 前からこの場にいた二人も驚いている様子だ。

 キャロルの肉体を利用してオートスコアラーの残留エネルギーを使う作戦は既に失敗しているはずなのに何故か動いているのだ。

 

「まさか……」

 

 ヴァネッサは慌ててモニターに駆け寄ると、腕輪を映した監視カメラを操作するとそこには未来が作業している様子が。

 

『大丈夫だよ響…私が神の力をあげるから…』

 

 未来はうわごとのように呟きながら何かしらの作業をしていた。

 ノーブルレッドはその姿を見て寒気がしていた。前に戦場で圧倒された時とは違う種類の恐怖を。開いてはいけないパンドラの箱、見てはいけない何かを見てしまったかのような。

 ただ理屈こそ分からないが未来が行った作業によって何かしらの方法で神の力を顕現させるためのエネルギー確保をしてみせたということだ。

 

「とにかく、今分かるのは…腕輪から発生した想定以上の質量が場外へと緊急パージしたのがこの体たらくなんだろうぜ……」

 

 ミラアルクは起きている現象を素直に分析する。

 あくまで予想でしかないがそれが事実だろうと全員が考える。

 ヴァネッサは手を顎にやってうんうんと頷く。

 

「なるほど…先ほどの震源はあれが飛び出した衝撃というわけね……」

「遠からずシンフォギアや国連に取り囲まれここは襲撃されていたであります!神の力の顕現でこれ以上の襲撃を防げるのはむしろ僥倖でありますよ。あとはシャトー内にいるシンフォギアを処理するであります!!」

 

 エルザは浮足立つ中、真っ先にするべき事を口にする。

 神殺しが内部にいる以上今すぐにも対処しなければ結局は作戦の失敗だった。

 

「そうね、取りあえず手を修理して追いかけましょうか」

 

 クリスの一撃を受け止めて失った手を見せつけて腕をひらひらとさせる。

 

 

 撤退後、シンフォギア装者達はブリッジに一端帰還していた。

 

「翼の撤退判断が早かったおかげで人的被害はゼロで済んだようだ」

「いえ…悔しいですが…我々では手も足も出ません……」

 

 弦十郎は冷静な引き際を評価したが、翼はあの場では逃げの一手しか選べなかったため俯いて歯噛みする他ない。選べないがゆえに迷わなかっただけだった。

 切歌は部屋の隅でじっとしていた。今暴れてもいいことは無いと思っているのか。

 友里は暗い空気の中発言をする。

 

「司令!マリアさんから提案されたデータの検証完了しました」

 

 皆がその言葉に戸惑う。ただのノイズかと思っていたがマリアには思うところがあり、それに対して別のアプローチがあると提案したからだ。

 

「腕輪の起動時に検知される不協和音に、思うところがあってね……」

 

 マリアは険しい表情を崩さぬまま腕を組む。

 藤尭は説明を付け加える。

 

「あの音に、経年や伝播距離による言語の変遷パターンを当てはめて予測変換したものになります」

「言語の変遷パターンを?」

 

 緒川のその疑問の言葉に呼応するように正面のモニターにとある音声の伝播グラフと音声そのものを流す。

 最初こそ不協和音だったが、少しずつ音声に修正が加えられていく。徐々に音がクリアになっていき聞き覚えのあるメロディーへとなっていく。

 翼はその旋律に聞き覚えがあった、最近聞いたばかりだからだ。

 

「これは…マリアが歌っていた……」

「歌の名はapple…大規模な発電所事故で遠く住むところを追われた父祖が…唯一持ち出せたわらべ歌……」

 

 歌の名と由来を語るマリアの顔は悲しく寂しそうであり、また優しそうな成分を含んだ表情を。

 

「変質変容こそしていますが、大元となるのはマリアさんの歌と同じであると推測されます」

「アヌンナキが口ずさむ歌と…マリアの父祖の土地の歌……」

「フロンティア事変にてみられた共鳴現象…それを奇跡と片付けるのは容易いが…マリア君の歌が引き金となっている事実を鑑みるに何かしらの秘密が隠されているのかもしれないな……」

 

 翼が考え込んでいると弦十郎は改めてかつての戦いを想起する。

 気を取り直して弦十郎はブリッジの皆に宣言する。

 

「敵の全貌は今だ謎に包まれたまま。それでも根城は判明した。俺達は俺達の出来る事を進めよう!おそらくはそこに未来君とエルフナイン君も囚われてるに違いない!」

 

 皆が「おー!」と反応をしようとすると突如アラームが鳴り響く。

 友里が慌てて報告をする。

 

「司令!外部より専用回線にアクセスです!」

「専用回線だと……?モニターに回せるか?」

 

 正面のモニターに出てきたのは。

 

『ブリッジ!聞こえますか!?』

「エルフナイン君!?大丈夫だったのか!」

 

 エルフナインが現れた事で弦十郎は驚いて相手の名前を呼ぶ。

 これまで行方不明だった相手が現れてブリッジの皆も驚きと歓喜の雰囲気が流れる。

 

『はい!ボクは無事ですっ、ここ現在地はチフォ―ジュシャトー内、敵に捕まって危ない所を響さんと調さんが飛び出してくれて!」

「調はそこにいるんデスか!?」

 

 その言葉にいち早く反応したのは切歌だった。

 するとモニターの端に気まずそうに写り込んでくる響と調の姿が。

 

「お前達!何でそんなところにいやがんだよっ!!」

 

それを見て喜んでいいのか怒っていいのか分からなくなりよく分からない感情が爆発してしまうクリス。

 

『え、えーっと…色々とね……』

『わ、私はただ響さんに連れてこられただけで……』

『私たちは運命共同体じゃなかったの…?』

 

 響が必死の言い訳をしようとする中、調は瞬時に仲間を売って罪から逃れようとする。当然それに愕然としてしまう。

 

「調っ!…デスか…?…それともフィーネ、なん…デスか…?」

 

 切歌はずっと思っていた事を聞く。

 この切羽詰まった状況には相応しい問いかけではないのだが誰も止めなかった。調はその切歌の不安そうな表情と問いかけで大方の事を察したようだ。

 

『うん…厳密にはフィーネと私の意識の二つが一つの体で…シェアしているような感じかな……だからこうやって』

『はーい!みんなの大好きな櫻井了子よ~っ!』

『それやめて』

 

 先ほどまでのほとんど動かない表情筋から一変して、ニコニコハイテンションな感じになった調。その鬱陶しい雰囲気と空気感は間違いなくあの年増だった。

 切歌は最初はその光景にポカンとしたが、すぐさま緊張の糸が切れてへたり込む。マリアはそんな彼女を支えて体をさすってやる。

 

『エルフナインちゃん、そろそろ本題に入ろうよ時間もそうないだろうし。この広い場所でノーブルレッドの相手するのは不味いよ』

『わ、分かりました』

 

 響の要求にすぐさまエルフナインは応える。

 今は響や調が暴れたおかげで敵はいないが、態勢を立て直してすぐにこの大広間にも雪崩れ込んでくるのは想像が出来た。

 

『今すぐに神の力への対処と未来さんの救出を行います。幸いにもこちらには神殺しがついています』

「だがそこはいまだにどんな脅威があるのか分からん、承服しかねるが……」

『ん~でもそっちから、こっちには来れないんでしょう?』

「ぐぅ……」

 

 相手の提案に弦十郎は難色を示すのだがそれをフィーネに痛い所を指摘されてしまう。彼はそのストレートな物言いに唸るほかない。

 翼は今ここで何が出来るのかそれを質問する。

 

「櫻井女史……こちらで出来ることは何かないのか…?」

『ここでは分からないわね…取りあえずいつでもチフォ―ジュシャトーに乗り込めるように準備してもらえるかしら?…盗まれた腕輪がどのように使われているのか現物を見て確認するわ』

 

 フィーネは現状では断定できないと言い切った。聖遺物の専門家だからこそ憶測だけであれこれ言いたくないのかもしれない。

 二人はまともに話すのはもう一年半ぶりだと言うのにそんなブランクなど感じさせないものがある。

 やはり櫻井了子としての十年余りは決して無かったことにはならない。

 

「…………」

 

 クリスは無言でモニターに映る調、いやフィーネを見ていた。やはり思うところはあるのだろう。

 かつては彼女をさらってその豊富なフォニックゲインに目を付けて利用した事を。あの日の別れでうやむやになったが、今は目と鼻の先にその相手がいる。

 

『クリスってば…そんなに会いたかったからってそこまで熱烈な視線を向けなくていいのよ?』

「誰がっ!」

 

 からかわれてクリスはついカッとなってしまう。

 そんな中フィーネはふと悪そうな笑みを見せる。

 

『それに…あなたにはあの時の事は感謝しているのよ?』

「…はぁ…あの時だぁ……?…っておいっ!言うなっ!」

『私が出てきたとき殴りかかるふりをして「そいつを連れて逃げろって」って私だけに言って、その後ミサイルばら撒いて隙を作ってくれたこと』

「うわあああああああっ!!やめろーっ!!」

 

 フィーネにバラされて叫び声をあげるクリス。恥ずかしいなんてもんじゃない。

 響はその光景をほほえましそうに見ていたがふと背後を振り向く。そこにはノーブルレッド達が来ていた。

 

『どうやら落ち着いて話せるのはここまでみたい』

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