過去に戻った立花響   作:高町廻ル

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紅茶が美味しい

 クリスはブリッジから出て、本部になる潜水艇の中のある場所に向かっていた。

彼女に限らずテロリストへの関与を疑われ、現状は行動制限がかけられているS.O.N.G.のスタッフたち。

 それぞれが響とキャロルからもたらされた情報を一旦整理して、噛みしめる時間が必要としてそれぞれが落ち着いて考えられる場所に移動している。

 同時にこれまで激戦と精神的な疲労を加味して休めと司令からお達しが出ているのもあるのだ。恐らくだが近い未来、風鳴訃堂との正面衝突は避けられないからだ。

 

 色々と考えながらクリスが足を止めたのはメディカルルームだった。

 ノックをすると「はいどうぞ」といつも体の調子を見てくれるスタッフの返事が来る。

 それを聞いて扉を開けるとそこにいたのはノーブルレッド達だった。

 彼女たちはキャロルにコテンパンにされて、そして訃堂に見捨てられてここにいた。

 調べて分かったのは体内に毒素が注入された痕跡が残っている事、可能性として考えられるのは稀血の輸血用のパックに毒が混入されていたのだ。

 素早い治療と輸血によってギリギリ死亡だけは逃れた形だった。

 

「よう…生きているみたいだな」

「ああ…あの時な初心な子ね…」

「うっせぇ」

 

 クリスに反応したのはベッドの上で体調が明らかに悪そうなヴァネッサだった。口調こそ変わらないが声色は弱々しい。

 クリスは言い返したのち相手の使っているベッドの傍にあった椅子に腰かける。

 雰囲気を察してメディカルルームのスタッフが部屋の外に出ていく。

それを見てクリスは開口一番。

 

「そんでこれからどうするんだ?てかお前たちは結局何がしたかったんだ?」

「…………」

「いや話せよ、黙ってたらこっちだって何も出来ねーだろ?」

 

 クリスの何気ない一言に相手はピクリと肩を震わせる。どうやら相手にとってそれは地雷だったようだ。

 

「何も出来ない?まるで私達に何か出来るとでも言いたそうな感じね?」

「はぁ?」

 

 クリスは何に反応して悪態をついているのか意味が分からなかった。

 ただし悪態をつかれたのは分かったため片眉をピクリと上げたのだが。

 

「口だけならね…綺麗事はいくらでも言えるのよ…でも世界は私達のような異質なものを隔てて拒否するのよ、それをこの世界で生きる中で嫌というほど実感したわ」

「…………」

「結社の外でも中でも私達を待っていたのは無理解と拒絶……好き好んでこの体になったわけではないのにね……」

 

 相手は言いたいことは言い切ったといった感じでクリスの好意または厚意をキッパリと否定した。

 

 彼女はそう言われてかつての自分と重なる部分があるなとここで初めて共感とも言える気持ちを持った。

 かつてのクリスもまた紛争地で親を失い、奴隷として扱われた。それこそ思い出すのも拒否したくなるような日々を過ごした。

 その結果、人に対する拒絶の心や分厚い壁を作ってしまった。だからこそ他者の優しさや言葉が耳に入らずに、力を持ってして力を抑えて紛争の火種を潰そうという本末転倒なことをしてしまったのだ。

 その後、当時の二課に引き取られた直後もその度し難い傾向は殆ど改善しなかった。

 過去に行った過ちこそ自覚し反省は出来た。

 しかしそこで起こったのは自覚したが故の拭いきれない罪悪感だった。どこかで過ちのツケは自分一人で何とかしなくてはいけないという強迫観念が彼女を襲い続けた。

 そんな勝手でどうしようもなくても、周りにいる人達は決して見捨てずに最後まで彼女に呆れずに付き合い続けてくれたからこそ、こうして雪音クリスでいられるのだ。

 

 しかし彼女たちノーブルレッド達にはそんな風に寄り添ってくれる人が現れなかった。彼女たちと雪音クリスを分けるのはその違いでしかない。

 

「…私は違うとか…一緒に頑張りましょうとか言っても無駄よ…そんな言葉には惑わされないんだから」

「…………」

 

 ヴァネッサあくまで敵対的な態度は崩さずにやんわりとだがクリスを拒否する。

 クリスはその態度に同族嫌悪と苛立ちを感じるが何とか抑えて口を開く。

 

「……さっきお前は…世界は自分たちを拒否するとか言ったよな…」

「ええそうよ…世界の全ての人は私達を最後には拒否して裏切るわ……」

「そうか、なら―」

 

 前と変わらない相手の回答。

 それを聞いてクリスは決定的な一言を、

 

「お前たちは世界全ての人に自分たちを受け入れてくれないとその目で見て確認したのかよ?」

 

 ヴァネッサはそんな風に言われるとは思っていなかったのか明らかに動揺した表情を。

 

「な…にを……」

「どーせ世界の広さも大して知らねぇのにでかでかと世界とか使って……笑わせんなよ」

 

 クリスは反省の色すら感じられない言動に下手に出るのは止めた。一度ぼこぼこにしてやった方が良いのだ。大海を知らない温室育ちのお嬢様は。

 

「つーか、神の力を使って世界を脅かそうとしたのに受け入れてくれないって……そりゃ受け入れねーだろ。逆の立場だったら拳銃をこめかみ突き付けられて笑顔で仲良くしましょうとか言われれたら相手に笑顔で返せんのかよ。そもそも自分の生まれや境遇を免罪符にして、甘ったれんな」

 

 彼女はそこまで言われて最初こそ驚いて怯んだが、自分がバカにされている事に気が付いて苛立ちが顔に出る。

 

「……まるで世界の広さを知っているみたいな言い方ね……」

 

 恐らくそれがヴァネッサにとっての精一杯の反論だったのだろう。表情に苦しさがありありと出ていた。

 

「知ってるさ」

 

 だがクリスは自信満々で反論した。その脳裏には二課やS.O.N.G.の仲間たちが。

 相手が悩むことなくそう言い返してきて呆然としてしまう。少しでも詰まっていればいくらでも相手を突き崩せたからだ。そして十中八九怯むと思っていた。

 

「な、にを……」

「少なくとも、あたしみたいなへそ曲がりを受け入れてくれる奴らと出会えるくらいにはな」

 

 クリスの人生は間違いの連続だったかもしれない。

 取り返しのつかない時間や出来事ばかりだ。

 だが今こうして背中を預けることが出来る人や守りたい人たちがいるのも遠回りだらけ道があったからこそ。

 

「そんでもう一度聞くが…これからどうするんだ?お前たちは今何がしたいんだ?」

「わ、わたしは……私達は……」

「まぁ今はゆっくりと養生しな……これから鎌倉にある風鳴機関に殴りこむからその後でしっかりと聞かせてくれよ」

 

 相手はたじろぐ事しか出来ない。

 それを見てクリスはそれ以上追及しても、混乱を極めている現状では明確に答えを出せないと察して回答は後でいいとして椅子から立ち上がりメディカルルームの外に出る。

 

 

「兄貴…行動制限はまだ解けないのか……」

『分かっている、今も外務官が必死の交渉を行っている。あとすぐだ』

「俺だって分かってはいるんだ……だがこれ以上相手に時間を与えるのは愚策だ……」

 

 弦十郎は兄である八紘と通信を取っていた。既に八紘には響の秘密は話している。

 日本国内でのテロ行為なので日本政府が独自に捜査と逮捕は可能なのだが、キャロルが語った響の記憶では鎌倉にはアルカノイズが配備。そしてこの世界ではチフォ―ジュシャトー内にキャロル製には及ばないがオートスコアラーが護衛に当たっている。

 生半可な戦力では一捻りにされるのは目に見えていた。

 本来ならこの事は伝えるべき案件だが、オートスコアラーはともかくアルカノイズを何故知っているのかと聞かれて、響の事をストレートに伝えるのは不味かった。

 彼女のこれからとエルフナイン(キャロル)の安全を考えたらタイムリープした経験とその術式を知っている事は簡単に口外する事は出来ない。

 

『ともかくあともうすぐだ、爪は研いでおけよ』

「ああ…すまない…この状況で乱してしまった……」

 

 そう言って兄弟の会話は終わった。

 弦十郎が「ふー…」と深く椅子に腰かけるとその横には友里がいた。

 

「司令、温かいものどうぞ」

「ああ、温かいものどうも…そう言えば最近はそんな暇もなかったな…」

「そうですね…響ちゃんが失踪したかと思ったら今に至るわけですからね……」

 

 友里がコーヒーの入ったカップを渡すと、それを受け取ってお礼を言う弦十郎。

 ふと彼が思ったのは誰一人として一服を入れる時間的と精神的な余裕が無かったことだ。それだけS.O.N.G.を取り巻く環境はこれまで追い詰められていた。

 

「ええ、響ちゃんがテロ行為したかと思ったら了子さんが実は調さんだなんていまだに信じられませんよ。ほんと忙しすぎですよ……」

「こら、ぼやかない。それにまだすべてが解決したわけではないわ」

 

 藤尭は二人のそんな会話を聞いてぼやく。

 それに目ざとく気がついて友里は咎めるが本気で怒っているわけではない。だって櫻井了子と再会出来たのだから。

 何よりフィーネやキャロルが味方というのは頼もしいのだ。それに響は間違いなく味方だと分かった。

 しかし同時に皆の不安を煽る大きな懸念材料があった。

 

「響さんが神様を宿していたなんて信じられません…」

 

 エルフナインはそれを察して口に出す。

 シェム・ハ、南極に存在した聖骸を守護していた棺の主の名前。アヌンナキと呼ばれるいまだに人類にとって謎の多い存在達。

 そしてバラルの呪詛とはそんな彼女を復活させない為に生み出されたものである事。シェム・ハは仮に死んだとしても人類に刻んだネットワークからいくらでも復活できる不死性を持っていた。だからこそそれを断ち切るために呪詛は刻まれたのだ。

 つまりバラルは呪詛ではなく人が生きるために必要な祝福だった。

 それは簡単に受け入れられる事実ではないが、それでも前に向かって進まなくてはいけない。

 

 

『なるほど…君が響君に宿ったわけは分かった…だがそれでしていったい何を望む…何を求めているんだ…?』

 

 弦十郎はこれまでの経緯を聞いた上で何が目的なのかストレートに聞いた。

 しかし相手はそれを尋ねられて少しだけ考えたのち口を開く。

 

『…………別に、何も』

『は……?』

『…少なくともお前たちが考える人類統一やバラルの呪詛の破壊は現状図っていないと言っている』

 

 わざわざ口にして説明しなければいけない事に苛立ちを見せるが、とにかく現状攻撃の意思は持っていないと伝える。

 その言葉に皆は何を言ったらいいのか分からなくなる。凶悪な相手だと説明を受けたのに当の本人はその気がないと言ったのだ。考えていた人物像とはかなりかけ離れていた。

 

『お前は何を言っている…忘れたとは言わせない…お前がここにいる装者を皆殺したのを…』

 

 だがキャロルだけは違った。彼女だけは響の感じたあの絶望を見たのだから。

 そんな姿を横目で見て言われた相手は鼻を鳴らす。

 

『ふん…お前こそ世界を分解など…そんな血迷い事述べながらも…こうして絆されているではないか…何が違う……』

『違う!ああいや…だがっ…違うッ!…ああクソッ…!』

 

 キャロルは黒歴史なのか最初は反発したが響の顔を見てすぐさま否定しようとするが、脳内がぐちゃぐちゃになって苛立ちを口にするにとどまった。

 

 

 そんな一幕を思い出す。

 ともかく現状は大きな問題にはならない。それよりも大きくそして明確な問題がいま世界を襲っている。

 

「問題は響君たちが見たというオートスコアラーだな…それは記憶にもないと聞いた……」

「ええ…一体何が起こるのか分かりませんね……」

 

 弦十郎と指摘に反応したのは藤尭だった。

 現状最大の不確定要素である存在。響を捕まえられない際の保険として用意されていたと考えられた。

 かつてのパヴァリア光明結社も同じような策を取っていた。そのためティキを調べて解析解剖をすれば似た存在は複製可能なのかもしれない。

 

「ボクは…ティキ以上に脅威な存在だと思っています…直接アヌンナキの力を注入されているであろうこともですが……」

 

 エルフナインは自身の意見を述べる。

 そのセリフに皆の視線が集まる。それを受けてエルフナインは話し始める。

 

「風鳴機関だってただティキと同じ性能では神殺しに討たれるのは目に見えているのは分かっているはずです。なら何かしらの神殺しへの対抗策や大幅にパワーアップしていると考えるべきかと」

 

 その指摘にブリッジにいる皆が顔をしかめる。

 完全復活したシェム・ハより強いとは考えづらいが、かといって簡単に倒せる相手だと楽観視することは出来そうにない。

 

「まぁ…だからこそ、こうやって手をこまねく時間が無駄ではあるがな……」

 

 突如出てきたキャロルが全てを代弁した。

 今すぐにでも鎌倉に移動したチフォ―ジュシャトーとオートスコアラーを対処しなければ状況が悪化しかねない。なのに国連や各国政府たちは文句を言ってS.O.N.G.の行動を制限しようとしているのだ。

 弦十郎はそう言われて顔をしかめた。

 

「それは……情けないとしか言いようが無いな……」

 

 それは人と人同士の無理解が起こす不和。

 それのせいにはしたくないがバラルの呪詛の影響なのだろうか。それは生きるためにアヌンナキから与えられた必要な祝福だと言うのに。

 

 

『……………………』

 

 ノーブルレッド達の見舞いに行ったクリスを除く装者達が集まっている一室。

 それはもうとても険悪な雰囲気だった。

 

「やはりミルクは多量が……」

 

 それもそのはずでシェム・ハが響の体を使って紅茶を嗜んでいるからだ。

 マリアはそれを見て現状は危害を加える気が無いのは分かっているがいい気分ではない。神殺しによって大幅な弱体化を余儀なくされているとはいえあのアダムを倒す実力者なのだ。不安で当たり前だ。

 警戒のあまりに彼女は少し刺々した言い方をしてしまう。

 

「いつまで彼女の体を使うつもりかしら?」

「いつでもこの体の主導権はあちらが奪い返せるが?」

 

 いい加減に体を返せという暗黙の要求にも平然とカップを片手に答える。

 響が神殺しを使える以上はいつでもシェム・ハを締め付ける事は可能だ。しかしかつての仇だとしてもそこまで非情になれないのが響の良さであり悪さ、いや弱点でもある。

 それを分かっているからこそ彼女は首からガングニールのギアペンダントを外す真似をしない。

 

「どうかしらね?」

 

 そんなやり取りを見ていた調、いやフィーネが疑わしそうな感じで相手を咎める。

 再びあの緊張感が辺りを支配する。

 

「そんな事を言って実はもう響ちゃんは―」

「櫻井了子に成りすました貴様に言われたくはないな」

「ぐっ……」

 

 そんなバリバリ荒れ模様なテンションの相手であっても冷静さを失わない。お前には言われたくないと簡単に返される。フィーネは痛い所を突かれて唸って黙るほかない。

 後ろめたいのはどっちも同じ。ただ前の世界で行った事とこの世界でも行った二人の差が出ていた。

 切歌がそれを見てふと思いついたことを質問する。

 

「神の力…こちらに本物がいるなら遠隔で腕輪や神の力を操ったりとかは出来ないデスか……?」

「不可だ。今の我は神殺しによって拒絶されている」

「デスよね…やれるならとっくにやってるデスよね……」

 

 分かっていた事だが改めて相手から告げられて沈む切歌。

 彼女は気まずくなり視線と外すと首から下げている神獣鏡のギアペンダントを見ている未来を見つける。それはシェム・ハの器となり得る人間を生み出す事が出来る唯一の兵器だ。

 そして響がかつて未来を辛い言葉を掛けてそして関係を切ってでも遠ざけようとした一番の理由でもある。

 今の彼女はそのことについて考えている。

 切歌だけでない。それをじっと見ているシェム・ハ…いや、

 

「未来…その……」

 

 その表情は先ほどまで超然とした余裕のあるものではなく、罪悪感に押しつぶされそうになっているそれだった。

 これまでシェム・ハに体を預けていたのは罪悪感から顔を会わせるのが辛かったからか。

 声をかけられて首元を向いていた視線が声の主へと向く。

 響はその視線を受けて一瞬ひるむがすぐに立て直す。

 

「前も言ったけど…もう今更謝られてもだよ…それに事情も分かったからもう過去の事は掘り返さないよ」

 

 未来は響のためだけでない。

 その表情には本心偽りがなく、そう言い切った。

 

「こんな言い方をするのはあれだけど…後ろめたい事をした償いのため…罪悪感を薄れさせたいがために謝り続けるのは止めて欲しい……」

「…………未来…分かった……」

 

 響はもうごめんなさいは口にしなかった。

 未来はそう言うと視線を響から外した。別に怒っているわけでも嫌いになったのでもなく、相手に言い過ぎたと後悔をしていた。

 しかしそれは誰かが言わなくてはいけない事。

 確かに響は第三者目線の大局で見れば間違ってはいないのかもしれない。だが傷つけた当事者を前にしたらそんな事は言えなくなる。罪悪感に押し潰されそうになって仕方ないのだ。

 彼女はそれを察してハッキリと深く切り込んで言い切った。

 

 翼は響が罪悪感から再び謝り未来に切り裂かれた一連のやり取りを見てやるせない気持ちになった。

 響が今こんなにも苦しんでいるのは元を正せば二課いや風鳴機関の怠慢と傲慢さが起こした悲劇なのだ。

 

 なぜ響がシンフォギアをまとって戦うのか?

 それはフィーネの暗躍に気が付かず、そして利用した観客に何の説明せずにそして失敗した際の危険性を無視してネフシュタンの鎧の起動実験をしたから。

 

 なぜ響が未来を拒否するような行動を取ったのか?

 風鳴訃堂が神の力を手にするために未来の命を弄んだから。

 

 結局響は風鳴の人間達の身勝手に巻き込まれて流す必要のない血の涙を流しているのだ。

 それなのに彼女は一切翼や弦十郎を責める事はしない。それどころか守るために身を挺してすらくれるのだ。

 内心ではボコボコにしてつばを吐いているのかもしれないが、表面上はそんな素振りを見せない。

 

(仮に…立花に償えるとしたら……)

 

 翼は考える。

 響の体験した悲惨な真実とこれまで見て見ぬふりをしてきた風鳴の業を。

 自分は本来であれば生まれるはずのなかった風鳴の妄執が生み出してしまった鬼子。そうであるならば汚れるのは自分一人で十分だと。どんなに傷つき鬼となったとしてもケジメだけはキッチリと付ける。

 そしてこの決断は弦十郎や八紘には出来ないだろうと。

 

 そう、風鳴の存在を自分の手で抹消するのだと。血を分けた家族をこの手で抹殺する。

 

 考えている内にいつの間にかアメノハバキリのギアペンダントを強く握っていた。

 それは不安な気持ちを握りつぶそうとする事の表れか。

 

 かつて後輩である雪音クリスが罪の意識から自分勝手に行動しようと一人突っ走った。

 その際、翼は優しく一人ではないと諭したのだ。しかし自分が同じ立場になれば落ち着いて物事を考えられなくなっているのだ。

 

 すると突如として緊急事態を告げるサイレンが鳴ったのだ。

 

「何事ッ!」

 

 マリアはそれを聞いて机に手をバン!とついて立ち上がる。

 いつもの彼女らしくない周りを考えないあからさまな苛立ちをにじませた態度だった。それを見て切歌は一瞬びくりと驚いてしまう。

 

『装者の皆さんは至急ブリッジにまで集合してください』

 

 友里のアナウンスが鳴り響く。

 それは最後の戦いに向けた号令だった。

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