その日、牢獄の街カサンドラでは蜂の巣をつついたような喧騒に包まれていた。
何せこのカサンドラが出来てから最大規模の襲撃部隊が数多のトラックやバイクと共にやって来ているからだ。
「獄長!奴等尋常な数ではないです!」
拳王軍から派遣された看守の1人がこの町の最高責任者であるウイグルのいる部屋にそう言いながら転がり込んでくる。
「ここカサンドラは一度も破られたことはない伝説の場所……なぜ不落と言われているか忘れたのか?」
ウイグルは余裕の表情で立ち上がり、獄舎の方へ歩いていく。
「いくら数を揃えようと私の伝説が破られることはないのだ……ライガとフウガは?」
「はっ!既に門の前におります!」
「ならばよい……念のために人質も用意しておけ、数に臆して裏切らぬとは限らんからな」
「はっ!」
看守はキビキビと動いて獄舎に向かうのを見たウイグルは忌々しそうに呟く。
「ダムの町というたか、これ程の戦力を投入してくるとはこのカサンドラの不落伝説を余程警戒していると見える……だが、拳王様はこの動きを予期しておったわ」
グッフッフと笑うウイグル。そのダムの町で起こる残酷な未来に愉悦を覚えながら外に出ていくのだった。
そしてカサンドラの外では……
「やめておけ……お主達の主は事態を把握できていない、何故今になってカサンドラ攻略を始めたかをな」
カサンドラの門の前、顔を二つの鉤爪で撫で切った様な傷を持つ男は
そしてその男の横にロングコートと背中に大きな二つの拳銃を持った男も出てくると。
「俺の目はサーモグラフィー……熱感知の機能が搭載されている。銅像が人の体温を持っているなどありえん」
「……噂に聞いた機械人形か、端から見ると機械とは思えんな」
「……その二丁拳銃は銃撃のブルーか……我らがただでここを通すと思うなよ!」
銅像だと思っていた二つの筋骨隆々の像は二人の男だったのだ!
「ここを進ませるわけにはいかん……いくぞライガ!」
「応!フウガ」
ほぼそっくりな二人の男は顔に傷ある男を挟むように通りすぎるが。
「我が
南斗白鷺拳継承者……仁星のシュウと呼ばれた盲目の闘将は疾風の様な縦蹴り一つでライガとフウガが仕掛けた二神風雷拳で使われた糸を断ち切ったのだった。
「なんと!」
「我ら兄弟の拳がこれ程容易く破られるとは……」
シュウはそれ以上の追撃を行わず目の前の門に×の字を描くように足を振るうと。
キンッ! バッキャーン!!
割れるような音と共に扉がバラバラになるのだった。
「安心してほしい、貴方達の事も調べあげ、弟殿の救助も隠れて進んでいる……我らは本隊でありながら大きな陽動部隊としてこうして参った次第なのだ」
「そ、そうなのか……」
「まさか我らの事まで調べているとは……」
シュウの話に驚くライガとフウガ。その間にも攻略部隊が扉から突入し、広場の看守達を次々と打ち倒していく。
しかし暫くすると。
「何をしておるか貴様らああぁぁぁぁ!!!」
カサンドラの獄長であるウイグルが両手の鞭をしならせながらやって来た。
原作では御輿のような物の上に設置した椅子に座ってふてぶてしく登場したのだが、シュウ達のあまりの迅速な攻略と部隊の進行速度に焦ったのだろう。自分の足で急いで走ってきたせいか少し息が切れていた。
「随分と遅かったな」
「フン……ライガとフウガがこれ程早く攻略されるとは……しかし貴様ら、負けてなお生きておるとは情けをかけられたようだなぁ……カサンドラを守る者としての義務が全う出来ない罪は重い!奴等の弟をここに!」
シュウの言葉にウイグルは鼻で笑って言い返しながらも鞭を振り回し他者を寄せ付けず、人質を連れてくるよう指示を出す。
しかし一分近く待ってもその弟とやらは現れず、ウイグルの鞭の届かないところに離れた攻略部隊はウイグルを無視してカサンドラにどんどん浸透していく。
それにまたもやキレたウイグルは
「……貴様ら何をしたあああぁぁぁぁ!!!」
と叫び鞭をシュウに向けて放った。
「言っただろう随分と遅かったと……わたし達は既に進んでいた作戦の最後の仕上げに来たに過ぎないのだよ」
シュウは目で見えない速度で放たれる鞭の先端を空中に軽やかに飛んで蹴り散らす。
鞭の先端をバラバラにされたウイグルは両手の鞭を捨て、自分の兜の角を掴むとそれを左右に引き抜いた。
すると兜からどうやって入っていたのかわからない程の細い鞭が角についた状態で引き出され、ウイグルはそれを振り回すと。
「この
シュウに向かって放つのだった。
ウイグルさんが激おこ回です。
ウイグルの兜の鞭とは?
北斗の拳で有名なウイグルの兜に仕舞われた鞭のことである。
気になった方は北斗の拳を読んでその神秘に触れてみてくれ!