だから俺は救世主じゃねえって   作:ガウチョ

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変えられぬ運命など……

「レイ!…ジャギ!」

 

 

ケンシロウが帰ってきたのはレイとジャギがボロボロの状態で病院に搬送された後だった。

 

 

「すまぬケンシロウ……私達が救援に駆け付けた時にはもう」

 

 

肩を落とすシュウ。

 

トキは二人の状態を見て一筋の汗を流した。

 

 

「恐らく二人とも新血愁(しんけつしゅう)という秘孔を突かれている。突かれた者はその後三日間激しい痛みに襲われ、時と共にその痛みは増大していき、最後には全身から血を吹き出して……」

 

 

トキはこれ以上先は言えなかった。なにせジャギの容態を見に来たアンナや両親を助けられたマミヤとレイの妹のアイリが来ていたからだ。

 

 

「……代表なら…代表なら治せるんじゃないですか!?」

 

 

アンナは一緒に来ていた代表に詰め寄った。

 

 

「昔ジャギの馬鹿の頭が破裂しそうになったのを代表が治していた筈…だったらこれも!」

 

 

その言葉に代表が首を振った。

 

 

「あれは特殊なケースでしてうまく治せたのも奇跡に近かった、私も前回の方法で治せるか試しましたがあまりに危険で……恐ろしい秘孔ですよ。確実に死に至るのを三日に延ばす等……人の恐怖を知り尽くした悪魔の技だ」

 

 

「じゃあ……二人は助からないの?」

 

「嘘……兄さん」

 

 

マミヤの言葉にこの場にいた人間に絶望が襲いかかった。

 

トキとケンシロウやシュウはうつむき、アンナは目に涙を溜める。アイリは今にも倒れそうだった。

 

そんな重たい空気の中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから私は備えていたんですよ。こんなこともあろうかと…ね?」

 

「勿体ぶりすぎだお前は」

 

 

代表の言葉と共にある男がトレーに何やら色々な器具を乗せてやって来た。

 

トキはその男の顔を見て驚く。

 

 

「お前は……アミバか?」

 

 

トキの顔だった自分の顔を整形し直したアミバがそこにいた。

 

 

「あのラオウが拳法家にそういった秘孔をつき、恐怖のドン底に落としていた情報を私は掴んでいました。彼の恐怖伝説には必要不可欠なのでしょうが生憎と私は面倒臭がりですから……治せそうな奴に調べさせてたんですよ」

 

「打たれれば確殺される秘孔を治すなんて無茶苦茶な事言っていると思ったが、三日という期限にこいつは可能性を見たのさ」

 

 

アミバは針灸に使われる針や吸い玉という器具を並べてそう説明する。

 

 

「じゃあ……治せるの?」

 

 

絶望から一転して感情が振り切れたのか涙を流すアンナの言葉に代表は力強く頷いた。

 

 

「カサンドラに行った皆さんを死なないよう逃がしてくれた英雄を死なせはしませんよ」

 

 

 

 

「う……うえぇぇぇぇん!!よがっだぁ……よがっだよぉぉぉぉ!!!」

 

 

号泣するアンナを抱き締めたマミヤも良かったねと泣きながらアンナの背中を擦っている。

 

アイリも寝ているレイの手を取って嬉しそうだ。

 

 

「本当に……あの秘孔を破れるというのか?」

 

 

そしてここで一番驚いているのが北斗の二人だろう。

 

なにせ真の伝承者すら破れない秘孔を北斗神拳を使えない人間と北斗神拳の基礎しか知らない男が破れると言っているのだ、驚くなと言うほうが無理があった。

 

 

「仮令(たとえ)二千年無敗の暗殺拳だろうと人が築き上げてきた文明と科学技術を甘く見てはいけないという事ですね」

 

 

機械を取ってきます……そう言って代表は部屋を出ていくのを唖然と見送るトキとケンシロウ。

 

 

「俺が天才という事もあるが、本当に恐ろしいのはあいつだよ。俺一人ではこの複雑過ぎる秘孔の謎は解くのは難しかっただろうな」

 

 

気が散るからと二人以外を追い出したアミバは、寝ているジャギやレイの体の人体における急所といわれる部分にトットットと針を刺していく。

 

 

「お前達に見せてやる。俺とあいつが解き明かしつつある北斗神拳の秘奥の一端をな」

 

 

結局治療が終わるまで面会謝絶となり、関係者がやきもきする運命の三日後……。

 

 

 

 

 

「久々の外だなぁ」

 

「全くえらい目にあったぜ」

 

 

そこには大分やつれたがピンピンしているジャギとレイの姿があった。

 

 

「ジャギ!!」

 

「どぅわぁ!ア、アンナ……くっつくなよ」

 

「うるさいこのバカ!心配したんだこのバカ!……このばかぁぁぁぁぁ!!」

 

「わかった!わーかったから!離れろよ!」

 

 

ジャギとアンナの二人は病院の前でギャイギャイやっている横では。

 

 

「両親達を助けてくれてありがとう」

 

「あそこではああするしかなかったのさマミヤ……それに男って奴は見栄を張りたがる生き物でね」

 

「ふふ、そう……じゃあこれはカッコつけてくれたお礼ね」

 

 

マミヤはそう言って。

 

 

チュッ……

 

 

レイの頬にキスをして微笑みながら去っていった。

 

 

「……こいつはとんだプレゼントだな」

 

 

そう言って笑うレイに

 

 

「よかったですね兄さん」

 

「……びっくりするからやめてくれアイリ」

 

「マミヤさんはライバルが多いですから大変ですよ兄さん」

 

「いやいや、俺とマミヤはそういう関係じゃなくてな」

 

「キスされた時、鼻の下伸びてましたよ兄さん」

 

「……まさか」

 

 

そうじゃれあうレイとアイリの兄妹も。

 

 

 

「ケンシロウ……私は確信したよ。運命は変えられると、そして変えるのは何よりも変えたいと願う意志だと」

 

「トキ……」

 

 

病院から出てきたトキはカサンドラで出会った頃とは違い、目に生きる活力が湧いている。

 

 

「何故私は生きてしまったのだろう……こうして兄弟で争う世界で、余命短い私が兄を殺してしまう運命にあるのかと嘆いていたが……それは甘えであったな」

 

「……俺も痛感したよ。生きる事に必死な余りに忘れていた、より良い明日のための努力を怠っていたと」

 

 

二人は笑いあった。この三日間、自分達が受けた衝撃は数多くあった。

 

何故そこを突けばそうなるのか隠されていた秘孔の謎。

 

そしてそれを破るための備え……ケンシロウとトキはあの代表とアミバが解き明かし、そして開発した技術の数々にただただ圧倒されるしかなかった。

 

北斗神拳を知っていた気になっていた自分達が見えていなかった物をあの二人は見ていた。

 

 

「救世主は一人ではなかったな……」

 

「誰が救世主だ誰が」

 

「本当にそうですよケンシロウさん、そしてトキ先生もお手伝いありがとうございました」

 

 

二人の背後からやれやれ疲れたとアミバと代表が出てくるとケンシロウの言葉に嫌そうな顔で言った。

 

 

「いや代表、私も大変に勉強になりました。アミバには学ばされることも多かった」

 

「ふふん!そうだろうそうだろう……何せ私は天才だからな!」

 

「はいはい天才天才」

 

 

胸を張るアミバにおざなりな代表。

 

 

「まあこうして二人とも回復したのでカサンドラ攻略祝いの宴の準備も終わってますから宴を始めますか!」

 

 

代表はそう言って秘蔵の酒を持ってきますとダムのほうに歩いていくのだった。




変えられぬ運命などない!
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